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秋に読む本

神保町界隈で働く身にとって、昼休みは本のハンティングを兼ねた楽しい時間である。
とは言っても、在籍する会社には昼休みという明確な時間の縛りはない。
大手の企画制作会社ならともかく、日々自転車操業の小規模な会社では多かれ少なかれ食事の時間はかなり自由度が高い。

平均すると、私が食事の時間を取るのは13時〜14時が多い。
都庁界隈とまではいかなくても、やはり昼時はそれなりに混雑するし混雑時に無理やり飯を食おうとする気は起こらない。

食事をする前に、神保町の書店前の100円小説が並べられたカートを物色しながら、未だ読んでいない作家や作品などを探す。大概が買う気にもならないタイトルが並ぶ中、若かりし頃に読んでみた作品などを見つけることがある。
そんな時は、ガラクタの山から小さな宝を見つけたに等しい感慨を得る。
滅多にない小さな幸運に幸せを感じることができるのは素直に嬉しい。

しかし残念ながらそのような幸運など1ケ月に2回あるかどうかだ。
そうなると、必然的に新しい書が並ぶ本屋に行くしかない。

そういえば、月末に知人であったライターを偲ぶ会があるのだが、本屋でわざわざ検索して著書を購入した記憶がある。
アマゾンのレビューで酷評されていることを知った故人は、評価してくれ!と憤ったメールを私に投げてきたのだが、
そのような不特定多数のある程度の批判は覚悟せなと窘めた。
故人が亡くなってから、酷評されていた書を購入したのだが、内容は確かに故人の作品とは思えぬほどお粗末な内容だった。アマゾンの酷評レビューはあながちというか、全くの正論であったとため息。

すべての作品を傑作にすることなどできないわけで、しくじりもあるだろう。
だが、そこそこネームバリューもあり、彼流の文体で多くのファンを楽しませてきた故人の遺作があれでは、ファンであった自分としても首をひねらざるおえない。精神的に不安定だったことも起因しているのは確かだろうが。

亡くなった故人より少し歳上の作家に沢木耕太郎氏がいる。
初めての沢木氏の作品を読んだのは、赤坂のデザイン事務所にいる頃で、一年遅く入ってきた後輩からの情報だった。
「深夜特急」
実写にもなっていたが、作者が世界中を回ってルポルタージュをしていくというノンフィクション。
借りた本を貪るように読み、遠く異国に思いを馳せたのが懐かしい。
その後も沢木氏の著作を2冊ほど読んだが、「深夜特急」のような鮮烈な衝撃はなくタイトルや中身より、カバーのデザインが瀟洒だったので購入したと記憶している。

先日、昼休みを幾分か過ぎた頃、神保町の三省堂の2階に私はいた。
平日だというのに人はそこそこ多い。昨今はKindleなどのデバイスで、電子書籍での作品購入が一般的になりつつあるが、活字離れというより若者の本離れが著しいのだろうか。

いや、しかし
以前、やはり三省堂で新書を手に取っていたときに後ろを通る女子高生らが話していたのを思い出す。

「花火読んだぁ?」「あ、まだだけど読みたいね」

若者の〜離れというのも、ほとんどがメディアが報じた憶測の虚偽であるのかもしれない。
実際に統計的なリサーチデータを見てみる気も起こらないが。
本と云うパーソナルなハンディタイプの印刷物には、色んな人々の想いが詰まっている。
企画、構成、文章、装丁、監修、編集、印刷、書店 etc
電子書籍のテキストだけでは、伝わらないニュアンス。紙とインクの匂い。
それらをひっくるめて本であるのだ。それが年々失われていくのは、やはり紙をベースに制作業に携わってきた身としては、寂しいものがある。

幻冬舎の文庫コーナーで、沢木耕太郎著の「旅の窓」という作品を見つける。
沢木氏が撮った作品にコメント風のテキストを載せて、ちょっとした写真集のようになっている。
左ページにカラー写真、右ページに散文詩とまではいかないが、詩的なテキスト。
すぐ読み終わってしまうのだが、写真をじっくり見ながら電車でひと時楽しむのも悪くない。
様々な国のワンシーンを切り取ったもので、もちろんプロの写真のものではないがアナログのインスタグラムといったところの出来栄えである。
テキストに関しては、偉そうに批評などすることは控えておこう。
とにかく美しい本ではある。個人的に秋の旅の友にもお勧めである。

tabi



常々思うのだが、自分が読みたい本とは、「誰かに読ませたい本」でもあるのだなと思う。
たとえそれが、その人に合わなくても自己の感性を理解してほしいという願望なのだろう。

秋はやはり「読書の秋」である。
読み終わった後に、少し寂しさを感じる本が秋に最適な本なのかもしれない。

曇天の神保町から。
ではまた。
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テーマ : 日々のつれづれ
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凸

Author:凸
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