スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

認識のボーダー 後半



紹介という言葉には様々な人の思惑が入り混じるものだ。

善意にみせかけた大いなるお節介。単純に利害関係を享受しうる関係の構築。
己の優位性を誇示するための矮小な悪意。欺瞞に満ちた友人のふりをする負のコラボレーション。
そして純粋な愛情によるコミット。

タツヲは今まさにその渦中にいる。
別に人見知りではないが、異性を改めて紹介されることに慣れてはいない。
というか、お見合いを完全否定しているような人間だから自然の成り行きの「出会い」以外は、
免疫がないのである。言ってしまえば、純粋で頑なに男女の睦ごとに関しては高潔である。

高坂が時計を見ながら「そろそろ来るな」とつぶやく。

タツヲは飲み干したアイスコーヒーのグラスに残る氷をジャラジャラとマドラーで鳴らしながら、
落ち着かない。

「やっべ!まじやっべ!げーすー緊張してきた」

「大袈裟なんだよ。さすが僧兵だな」

高坂の気の利いたダジャレも今のタツヲには刺さらない。
顔色はそれに反して青くなりつつある。
まるで腐った屍体のように顔色が悪い。


「おい、大丈夫か?トイレにでも行ってこいよ」

見兼ねた高坂がそう言うと、力なく頷きながら席をたつ。

「ちっと行ってくる…」

見ると足はガクガクさせて体全体を子猫のように震わせている。
今、喧嘩を売られたら小学生にもカツアゲされそうな風体である。

「大丈夫かあいつ…」

心配そうに丸めた背中を見ながらため息を吐く高坂。
始まる前からこれでは前途多難は必死。
どげんかせんとかんと頭を捻るがいい知恵は浮かんでこない。

それより、ここのウエイトレスの制服がエロ可愛いく、粒ぞろいなので
鬼のいぬ間にたっぷりと目の保養ができるのが嬉しい。
タツヲのことは成り行きまかせでなんとかなるだろう。

にしても、あのカウンターにいる娘、いい足してるなとチラ見をする。
くそっ、やりてぇなと高坂はたぎる股間を抑えて少し前かがみになる。
正直、彼女がこなければ、粉をかけて軟派していただろう。

男の性衝動は愛情のSEXと放出のSEXがある。
これは男の有史以来の生まれ持ったDNAのせいであると俺の空の安田一平が言うとった。
彼女がいてもやりたいものはやりたいし、それは自然の摂理である。

一度、高坂は浮気がばれた時に、彼女に言い訳をするためにこの理屈を説いた。
すると彼女は、激昂するのを抑えて考え込んだ。

「そう…。男の人ってそうなの。放出…女とはメカニズムが違うんだものね。それじゃ仕方ないわ」

そう言って納得して笑った。


が、次の瞬間に股間をけたたましく蹴り上げられた。

「んなわけあるかぁボケェ!!」

「ばもらぁ><!!」

睾丸が破裂せんばかりに蹴り上げられて、高坂は白眼をむいて蟹のように泡を吹いてぶったおれた。

いくら浮気の詭弁を弄しても、女性には通じないのである。
高坂はその後こってりと色々と絞られ、二度と浮気をしないとの念書まで書かされたという。
浮気はばれてはいけない。
嫁は知らない知られちゃいけない。
ばれるならやるな。やるならばれるな。これはぶれることのない高坂のモットーである。

そんなことをつらつら考えていると、トイレからタツヲが青い顔をして帰ってきた。
見るとかけているメガネのレンズに少し曇りが生じている。

<どんだけ緊張こいてるんだこいつは〜>

高坂は口にこそ出さなかったが、さすがに見ていて疲れてきた。

タツヲはげっそりとして、内臓まで放り出したような面を見せていた。
緊張感が融点に達するとタツヲの精神は内部崩壊して自律神経を失う。

いきなり、手を大きく広げて

「なんて日だ!!」

バイキングのギャグを力いっぱい大声で叫んだ。
完全にあっち系の人になってしまっている。
一瞬、店内の客から一斉に何事かと注目を集めた。

高坂はあわてて、手招きをして、なんでもないよと頭をぺこりと下げる。

「どうしたよいったい」

少しイライラしながら小声で訊くと、タツヲは鼻息で曇らせた眼鏡を外して呻くようにテーブルに手をついた。

「気持ち悪くなってきた…」

「お前なぁ…」

「でも眼鏡外したら少し気分が楽になった。眼鏡外して会おうかな」

「ちょっ!まてよ。お前の眼鏡はコブラのサイコガンと同じでキャラが唯一立てるアイテムだぞ。それ外したらお前はただの人じゃんか」

「俺は銀魂の新八じゃねえよ。それに眼鏡が唯一のキャラだちアイテムって影が薄すぎんだろ俺」

「客観視しろよ。お前は眼鏡あってこそのタツヲだ。眼鏡がないお前はタツヲですらない。タダのウンコ」

「俺に謝れよ。てか、俺は眼鏡しかアイデンティティーを保てるものがないのかよ!」

「ない。あきらめろ」

「ひでぇ…;高坂っち、お前人間じゃねーよ…」

「おりゃーヤクザなんだよ」

「どうりで真珠いれてるわけだな」

「見たのかよ!真珠なんかいれてるわけねーだろ。人聞きの悪い」


タツヲと高坂がそんな愚にもつかないやりとりをしていると、
店に二人連れの若い女性が入ってきた。
髪を後ろに縛って黒髪を揺らしている水色のワンピの女性がこっちを見て手を振った。
すらっとした美人である。
高坂の彼女の明美だ。

その横でおどおどしながら明美の陰に隠れているのが、紹介したい友人らしい。
顔がよく見えないが、背は明美より低く服装は白いブルゾンのジャケットとミニスカートから覗く足が可愛らしく見える。

タツヲの動機が激しい。
ドックンドックンと音まで聞こえてくるようだった。
緊張感はもはや臨界点にまで達している。

「こ、こ、こ、高坂っち…」

「声が震えてんぞ。まぁ深呼吸しろ」

「お、お、お、俺ぁ、まず何をしたらいい?彼女が話す時俺は何を…」

「とにかく笑顔で頷け。相槌を打て。話を合わせろ。お前の話はそれからだ」

「わ、わしゃ、き、き、聞いてるだけでええのんか?」

「なんでジジイ口調なんだよ。そうだ、まずは徹底的に受けろ。彼女がピッチャー。お前がキャッチャー。話題は俺が誘導してやる」

「わ、わ、わかった。よ、よ、よろちゅく頼む;」

「噛むほど緊張することでもないだろうに…。まぁまかせとけ」


高坂はそう言うと、彼女に手を振り返してテーブルに呼んだ。

「オマタセェ。ごめんなんさい。ちょっと特急に遅れちゃって」

明美は高坂とタツヲに目配せしながら手を合わせて謝った。

「タツヲさんもおっひさぁ!今日はよろしくねん」

「へ、へい。喜んで!」

返事は威勢がいいのだが顔色は悪くまさにタツヲ・イズ・デッド状態だ。
緊張も臨界点をすぎると精神世界に意識は飛ぶ。

明美はそんなタツヲの様子を見てそっと高坂に耳打ちする。

「ちょ、ちょっとぉ!彼大丈夫?なんか変んな汗かいてるし病気じゃないの?」

「大丈夫だ。ちょっと眼鏡が具合が悪いだけさ」

「眼鏡の具合?なにそれ」

「奴の切り札さ。それが唯一の武器なんだ」

「眼鏡が武器??よくわからないけど、ま、いっか。じゃあちょっと座ってお話しましょう」

「だな。まずは自己紹介からさせよう」


4人掛けのゆったりしたテーブル席に移動すると、
男女向かい合わせに座ることになった。

手前に初対面の二人。
奥は高坂と明美だ。

「あ〜、じゃあ簡単な自己紹介から、かな」

と、高坂がリードする。

明美が続けて

「じゃあ、あたしは全員と面識があるからいいとして…今日の主賓を紹介するね」

すると、隣にいる明美の友人はちいさく体を震わせた。
長い赤っちゃけた色の髪を前に垂らして俯いているので、その顔がなかなか見えにくい。
もじもじしながら、落ち着かない様子である。
もっともそれはタツヲも同じことだが。

「亜子。ほら自分で自己紹介して。ほらほらぁ」

「う…うん」

亜子と呼ばれた娘は、こくんと頷いて顔をゆっくりとあげた。

その瞬間、タツヲに脳髄に衝撃が走った!

zukyun


makis


「初めまして…。岬 亜子です。ペルフェローナ美術大学に通う2年生です…」

こ、これはーーーーー!!!!!

タツヲは刹那、飛ぶ夢を見た。
↓こんなん
tobih

タツヲはそのまま気を失って病院に搬送された。

明美が驚いて、声をかけてやりなよと高坂に云う。

高坂は面倒くさそうな顔をしたがきを失っているタツヲの耳元で大声で叫んだ。

「元気ですかー!?」

もちろん元気なわけはなかった。

原因は突発性の貧血だそうで心配はなかった。
しかしタツヲは大事をとって1週間の入院を余儀なくされた。
明美の友人の亜子は、その後すぐにサークルの先輩から告られてつきあうことになったらしい。

高坂と明美がマクドで食事をとっている。
ふぅとため息まじりに高坂がぼやく。

「タツオの奴、逃した魚は大きかったなぁ…」

「亜子ねぇ…。ちょっと可愛すぎたかもねえ。タツヲさんには刺激が強すぎて舞い上がってしまったのかしら」

「人間、思いがけない幸運が転がり込むと、期待はしてないよと口では言ってもパニックになるものだな」

「今度は…2代目、引田天功みたいな娘にしておこうかな」

「微妙すぎだな」

「だよね」

二人はくすくすと笑って外の歩いているカップルたちに目を移した。


タツヲはあれ以来、フォークギターを手にしてばんばひろふみや、南こうせつを歌うようになっていた。
普段の格好も長髪にバンダナというスタイルになった。
そして、ことあるごとに部屋で「ラブ&ピース!」と叫んでいるので、大家から苦情がきている。

タツヲはあの一件以来、自分に言い聞かせている。

認識せよ。
そして達観するのだと。

期待からの裏切り、落胆。
そしてその逆もしかり。

女の可愛いを少しだけ信じるようになったタツヲは、今地球に向けて愛を発信している。


わけねえだろ。


【お終い】






スポンサーサイト

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

コメントの投稿

非公開コメント

矛盾

>いのきさん
織田が滅亡する時点で信長の野望になってないという矛盾に気がついたw

藤井さんが信長休止してる間に藤井さんの所属国、織田家滅亡。藤井さん家なき子(>_<)
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
リンク
最新コメント
ブログ内検索
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。