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なりきりRP

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その日、藤井がゲームにインすると、一門(ギルド)に見慣れぬネームのプレイヤーがいた。

血屋伊香:僧兵:61

はて?
初見だな。

なんと読むのだろう?
ちやいか?かな。
大方誰かの2垢3垢だろう。

藤井はそう思いながら軽く挨拶をして、本日のクエストの瓦版を眺める。
まだ時間が早いので一門員も4名ほどしかいない。
チャットも誰も活発にしゃべるものはなく、流れるログはNPCの応答ログだけである。

いつもこうだ。
煩わしさはないが、ちと物足りない気もしている。

あと一時ほどすれば、他のメンバーもインしてくるだろう。
中には合戦やクエに参加しながら、状況報告を細かく伝えるプレイヤーもいる。
そんな人たちにつっこみをいれたり、いじったりしてチャットが盛り上がっていくのだ。

藤井も最初は盛り上げようとあることないことを喋り倒して、下ネタも臆すること無くかましていたが、
それはつっこんでくれる度量やノリが合う人たちがいてこそだった。
当初は3人ほどいたノリツッコミの達人達も、日を重ねるにつれて段々インしなくなって消えた。

藤井は1人残されてもスタンスを変えなかったが、
いつしか一門員にネタを冷淡にスルーされてることに気がついてしまった。

そして藤井はさんざん1人で喋りまくった挙げ句、ぼそりと云った。

「キチガイみたいになってる件」

さみしいひと言だった。
喧嘩できる相手もなく、みんなが無関心にスルーをする。

申し訳程度に一門筆頭や古参の人たちが、^^や^^;などで反応してくれるが、
以前の知人達のように突っ込んできてはくれなかった。

ある時から藤井は自ら喋ることをやめた。
気を使うのをやめたのだ。

知人の地獄凸はよく藤井に云っていた。

「藤井さんよぉ。気を使うより腰を使えよ腰をよ」

下ネタ図書館の凸は、フィリピンダンサーのように腰をかっくんかっくんさせて藤井を笑わせたものだった。
その凸もいまはもういない。

今の一門はとにかく上品である。
はっちゃけて、ロールプレイをする人もいなければ、暴言や陰口を叩く人もいない。
ただ、ただ、大人しく目だたずゲームを嗜む大人の集まりである。

それはそれで正しい。
いや大いに正しいと云える。
この一門員は、人に不快な思いをさせず水のように静かにゲーム内で楽しく過ごしている。

しかし…

しかし藤井には物足りない。

白河の清きに魚も住みかねて〜ではないが、よくも悪くも藤井はその半生を泥渋の中で生きて来た香具師である。現在の一門員の清き清廉なプレイスタイルが窮屈に感じられ、どうもしっくりこない。
自然、一門員と距離を置くようになる。
近頃では挨拶だけでひと言も発せずにログアウトすることも多くなっている。

時期をみて一門を抜けようかなとも思っていた。

サイドボードに置いてある「獺祭(だっさい)」を無造作にコップに注ぎながら本日のクエを物色する。

これと言って琴線に触れるものはない。
といって、特にやりたいこともない。

今日は軽く攻城戦でも参加して寝るかな。
獺祭を軽く流し込みながら、隣のモニターで流してあるniko 動画に目をやるが、
特に面白くもないので信オンのモニターに目を戻す。


ほどなくして一門筆頭がインしてきた。

「こんばんわ^^」

筆頭は丁寧に挨拶をして入って来る。
リアルは役所勤めの妻帯者らしい。


「ええっと〜、ちょっと新人さんを紹介しますね。一昨日一門に加入した血屋伊香(チャイカ)さんです」

ほぅ。あれはチャイカと読むのか。

「よろしく〜」

「ようこそ〜」

と他党員が歓迎の意を現す。藤井も同じく「よろしくです」と、お決まりの挨拶をマクロで表示した。

「チャイカさん、挨拶をどうぞ^^」

筆頭に促されて「うぃ」と短く頷いた。

もとより、それぞれ別の場所にいるのだから、蔵は見えず文字でしか雰囲気は分からない。
だが藤井は、この新人に妙な親しみを感じた。
同じ匂いというべきか、長年探していたパーツを見つけたような…。

「名前、チャイカ。ワタシ新人。まだまだ未熟。教え乞う」

たどたどしい言葉使いは、まさしくアニメのあのキャラの口調そのものである。

普段はあまりしゃべらない一門員のデガラシさんがつっこむように聞いた。

「えーと…チャイカって名前はもしかして、あのアニメのチャイカ?」

「うぃ!。肯定。ワタシ、チャイカ大好き。なりきりプレイ楽しむ。大事!」

「なるほど^^;」


筆頭が補足して説明をしてくれた。
どうやら、この人は純粋にRPをしたくてゲームを始めたらしい。

RP(ロールプレイング)か…。
日本人は気恥ずかしくてなかなかやらないのだが、欧米人などは結構多いと聞く。
現実世界ではありえない自分になりきれるバーチャル世界だからこそ、なりきるのが当たり前で自然だという人は多いと聞く。


しかし…日本人の中でまともにRPをやってうざがられないキャラ作りはなかなかに大変である。
例えば、猫耳をつけて「だにゃ〜」とか云い続けると、確実に晒される。
ひどい時には、性別まで捏造されて、ハゲデブニートのネカマのおっさんに認定されることもある。
とにかく危険だ。

藤井も一度試したことがるが、長くは続かない。
なりきりで、ネカマぶりっ子キャラを演じてみたが、どうしても「チンチン」とか下ネタを云わずにいられない性分で、リアルが透けて見えてしまうのだ。
たまに勘違いしてくる奴もいて、しつこくメアドを聞くものだから、闇サイトのメアドを教えてやったら
数日経って「殺すぞ」と脅しの信書が届いた。

さてそのキャラがいつまで続くか。
誰に迷惑をかけるわけでもないから問題はないだろうが、それをうざがるプレイヤーもまた多い。
よくあるのが、史実の人間のそのままRPだが、なかなかそれをやり通しているプレイヤーはいない。

藤井はカマをかけてみようと思った。
果たしてチャイカがRPを続けていくだけの根性と熱意が本当にあるのかどうか。

もし本物だったら…
俺は新たなるパートナーを手に入れることができるのかもしれない。

藤井は意を決してチャイカに聞いてみた。

「チャイカさんってチンチンついてる?」

セクハラまがいの質問に場の雰囲気は凍り付いた。

チャイカは無言で押し黙っている。

「ちょっと藤井さん@@;」

「それは新人さんにはセクハラ超えてますよ^^;」

次々に党員になじられる藤井。

「シュッシュッしてるかと思って…;だってチャイカって「かもめ」って意味でしょ;」

藤井は泣きをいれて意味不明な言い訳をした。

すると──

cxbfnchmtgdm

チャイカは無言でダディクールのAAを貼った。

藤井がこいつとはいい酒が飲めそうだと思ったのは言うまでもない。

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テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

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No title

>藤井さん
俺がいれば!と思うと涙がちょちょぎれる

No title

織田だと一人か二人くらいは乗ってくれるぜ!
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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