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藤井さんのパチンコ日記【パチ友】

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いつの頃からか、そのホールでは色々な顔なじみができてしまった。

もう10年以上は通っているそのホール「遊楽」では、私のことを「ふぅさん」と呼び、常連客が声をかけてくる。

常連といっても、やはりそこに専業者はいない。

年金で週に1回1円パチンコを終日楽しむ「山さん」。以前は大手の証券会社の役職をやっていたらしい。
駅前で小料理屋を営む「信子ママ」。いつも海のシマにいて画面をじっと食い入るように見ている。
髭面だが意外と若い左官工の「ベラ君」。夜遅くに甘デジコーナーをうろうろしながら、調子の良い台を物色している。
ネイルサロンに勤めている「百合ちゃん」。30歳手前で婚活中だが、なかなか目にかなうお相手はいないらしい。

特に懇意にしているのは、この4人を含めて数名だが、他にも知人という程度なら10数名はくだらない。
パチ友というのは、いささか憚り(はばかり)があるだろうが、やはり知り合いは多いほうが何かと便利だ。

例えば、どこそこの飲み屋がいいとか悪いとか、どれそれを買うならあそこがいいとか、パチンコのイベント情報に限らず地域の気にもかけなかった情報が舞い込んで来る。

何事においても情報は最も重要な勝利へのファクターである。
特にギャンブルのような勝負事は何となくやっていてもたまには勝てる。
勝てるが、それは頼りなく揺らいでる炎のようなものだ。

パチ友の運んできてくれる情報には思わぬ金の果実が実っていることも多い。
たまに、詐欺まがいの騙しをくらうこともあるが、笑って済ませる範囲ならそれもまたありだろう。

ふいに私は苦笑する。

「ネトゲもパチも知り合う場所は関係ないか」

思わず言葉が出た。

実は、今まさに「遊楽」」で甘デジの「CR新鬼武者」を打っているところだった。
左隣に座っている、やはり顔馴染みの「健さん」が、「えっ?」と私のほうを向いて聞き返していた。

「何?ふぅさん。今なんて言ったの」

私は大慌てで手を振りながら首を振る。

健さんは自分の打っている「ルパン〜主役は銭形」の甘デジの画面に顔を戻しながら悪態をつく。

「しっかし連チャンしねぇなあ今の台はよぉ。なぁ、ふぅさん?」

「うん…そもそもスペックがなぁ。返しもシビアだし、ゲージも糞だから回らんしね」

「昔はよかったよなぁ。スーパー7やブラボージャンボにエキサイトヒーロー…。演出はシンプルだったけど夢があったよな」

「うんうん。ルーキーZなんざ入賞時の出目移行パターンが狙えたし。あの頃はまじで専業で食っていこうかと思ってたっけ」

「馬鹿親が車に子ども放置でパチなんざするのが問題になってからだな。射幸率を煽るとか言って規制がかかっちまって…」

「あれから一気にパチ自体のシステムが変わった気がするね」

健さんはここのホールはもう20年選手だ。
もう40半ばで仕事は営繕をやっている独りものであるが、以前は結婚していて子どももいたらしいが、生来の呑む打つ買うが祟って、奥さんから三行半をつきつけられたと聞く。
奥さんが子どもを引き取って離婚したらしいが、いまだに子どもの誕生日にプレゼントを送っていると言っていた。

お互いぼやきを止めて画面に集中すると、私の画面がいきなり「ちゅいーん!」という音を立てて画面が制止した。フリーズ予告だ。ここから「駿府城」か「down of dream」ステージに以降する。
「down of dream」なら大当たりの可能性はかなり高くなる激アツ演出の一つである。

鬼武者と言えば…カプコンのPS2のゲームで金城 武がモデルになったのをやりこんだっけ。
なかなかよく出来ていて面白かった。その次に出た松田優作バージョンからやってはいない。
今は新鬼武者というゲームに進化したらしいが、主人公に特にモデルはいないのだろうか。
見た目は何エグザイルにいそうな今風のご面相だ。
大当たりラウンド中のテーマ曲も浜崎あゆみが歌っていて、結構力を入れている。
享楽の新しいブランド「オッケー」の台だ。
「ベルセルク」なども「オッケー」の台なのだが、私には相性が悪かった。

しかし、新鬼武者では柳生宗矩がキャラとして現れ、慶次で言うところの伊達扱いになっているが、そもそも江戸柳生の宗矩は相伝を受けておらず、こんなに無頼なキャラでもないはずだが。
なんか色々デタラメだがそんなもんか。時代考証なんざどーでもいいのである。当たればね。

最近の甘デジはとにかくシビアだ。
MAXが1/400ほどだとして、ミドルは250〜200/1。甘デジはライトで約1/100くらいで、当たりやすい。

…はずなのだが、3倍4倍嵌りも普通に頻発する。
しかも通常演出はマックスなみに退屈とかある。

昔の北斗の甘台はばんばんプレミアが出て楽しかった記憶あり。
MAXでは拝めないプレミアを見れるからこその甘ではないのかと憤慨する。
最近のライトはただ激アツの演出が多少多くなった程度で、楽しめないし回らない。
普通に1万ぐらいなぞMAXと同じいきおいですっとんでいくのだ。

「お、いいリーチがきてるね、ふぅさん」

健さんが私の台をチラ見しながら言う。

「そういう健さんも、準備中タイマーがでたよ。ほれ」

「あっ!ほんとだ。おいおい〜頼むぜほんと。もう1万も使っちまったんだからよぉ。るぱ〜〜ん!」

下手なもの前をしながらおどけて見せる健さん。
逞しい褐色の肌に短い短髪。
顔つきは板前顔のなかなか渋い面構えだ。
そんな男がふざけてるのだから、おかしくたまらない。
思わず、ぶっと吹き出してしまった。

今のホールはこのような会話ができるのが楽しい。
鉄火場のイメージがある昔のホールは煙草の空気も重たく、殺伐としたものが漂っていたものだ。
周りはみな敵。
いまや、ホールにはリラクゼーションコーナーに漫画やテレビが置かれ、ソファでゆったりとくつろげるとこもある。

健さんが身を乗り出して叫んでいる。

「おっ!おっ!!ロゴ落ち赤タイマー50秒!」

ルパンの現行MAX機にも搭載されている激アツ演出だ。
直当たりのほとんどがこれに絡むといっても過言ではない。
ロゴは赤から金保留にレベルアップして、タイプライターのステルスが来た。

ルパンはどんな激アツ演出がきても最後のカットインが緑の場合、信頼度が激減する。
確定演出がこない限り安心はできない。いまの平和の台はすべからく皆同じ演出になっている。

しかし、MAXならいざ知らずほとんど完璧な流れだ。
最後のカットインボタンを祈りを込めて押す健さん。

「どやっ!!」

おお!金カットインだ。虎柄ではないがいただきだろう。
当たりの瞬間を待つ健さんの目は輝く。

ぷしゅううん……。

「え……?」

「あら…」

外れた…。いやこれは…。

健さんは放心状態で次回転の変動を声もださずに見ていた。

いやこれはない。
これはないだろう甘デジで。
MAXですら当たってもおかしくない流れだ。甘でそれを外す分岐を入れて来るとは、平和は一体どうなってる。開発陣は頭が腐っているのか?出玉が期待できなくともそこそこ遊べるからこその遊パチでさすがにこれはひどい。あまつさえ、この台は16Rを取れなければ、400発ちょいの4Rをループして 全然当たらない10回転のSTを繰り返す地獄台である。

「ひでぇな…何これ」

そう云ってさすがの私も毒を吐く。
こんな豪華な演出のオンパレードで甘デジで外れるとか…。昔なら確定もののプレミアキャラが出てもおかしくない。

しかし、これもパチンコである。
鉄板がこない限り外れるのは当然。

だが…それにしても。

健さんは椅子に腰を沈めてうなだれている。

「潮時かもなぁ…」


健さんはぽつりと細い声で確かに言った。
そして上皿に残った50発くらいの球を私の上皿に与えて席を立った。


「なんだい健さん。終わりかい?」

「んー。ちとさ、この後用事があってね。じゃ、ふぅさん頑張って」

そう言って私の肩を叩きながら、笑って健さんはホールを後にした。

私のリーチは駿府城の秀吉リーチに行って無事当たったが、ラッシュはゲットできず。
その後100回転ほど打ち込んでみたが、当たりは得られずその日は3kのマイナスで終わった。
健さんの見せたその笑顔が妙に私の不安をかきたてた。

数日後の夕方、遊楽に顔を出すと早速、常連の山さんが声をかけてきた。

「よぉ、ふぅさん。いまご出勤かい。もぅ俺はあがりだい」

「なんだよ早いなヤマさん。今日は勝ち逃げかい」

そう言うと、山さんは面白くもないような顔をして、掌にある景品を見せた。

「さんざ、粘ってこれだけさ。今日は回収日だぁね」

私は苦笑しながら、肩を落とす山さんの肩を軽く叩き、お疲れさんと労った。
リングのシマを見てみるかと足を向けようとすると、山さんが私を引き止める。

「そうそう、ふぅさん。知ってるかい健さんのこと」

「お?健さんが何かあったのかい」


私は嫌な予感がした。

「健さんよぉ、やっちまったらしいぜ」

山さんが親指を立てながら、喉をかききる仕草をした。

「えっ!何それ」

「だからさ、殺っちまったのさ。同棲している女をさ。ニュースにもなってるぜ」

「ニュースはほとんど見ないから…」

「なんでもまだ20代のわけぇ女らしいぜ。別れ話でもつれたらしいが…」

「健さんが…そんな…」


あの時、力なく笑った健さん。
用事って女と話しあいに行くすがらだったのか。
何かのはずみだろうか。あの健さんが女を殺すなんて…。

人はわからん。何年つきあっていようが人の内面に住まう鬼性なんてわからんもんだ。
あの人がまさか?っていうのがよくあるが、まさに。

こうして常連だった健さんは姿を消した。
今も高い塀の向こうで服役中である。

パチンカーと呼ばれる人達もそれぞれ何かを背負っている。
その浮世の苦悩を一時でも忘れるために球を弾く人もいる。
健さんもその1人だった。
明るくて愛嬌があり男気があった健さん。

そんな健さんが私たちに見せていた顔は一部に過ぎない。
みんなそうだ。皆、仮面をかぶりながら一心不乱に球を弾く。
裏に隠し持っている哀しみや不安を隠しながら。

そしていつしかホールから消えて行く。
その消息も知らせずに。

パチンカーの最後はいつもそうしたものなのだ…。
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テーマ : パチンコ・パチスロ
ジャンル : ギャンブル

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凸

Author:凸
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生息地:都内在住
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