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切なさと愛しさと心強さと藤井さん



細かく揺れる電車の振動が心地よい。
ゆっくりと流れる景色を見つめながら、藤井は旅の空にいた。

どこへゆこうと決めている旅ではない。
なんとなくどこかへ行きたい。
なんだか頼りない気持ちで切符を買った。

景色を無言で見つめながら、昔を思いだす。
すると甘酸っぱい記憶が蘇ってくる。

「あなたってまるで変わらないのね。まるで甘ったるいダイキリのできそこないみたいに…」

20代の頃、同棲していた女にそう言われたことがある。
女の名前は早紀。

早紀は当時二十歳で、インディーズのロックバンドのメインボーカルだった。
1度ライブに行ったが、歌詞がよく聞き取れないのとサイリウムを振って発狂しているグルーピーに呆れて途中で帰ってきた。
藤井はスティビーワンダーやモーリス・ホワイトの熱狂的なファンでソウルとR&Bが好きで
和風のハードロックはまったくの畑違いだったので感性に合わなかったのもある。
だがステージ上の早紀はピカピカに輝いていた。
藤井はその頃、まだ定職にもつかずにネットゲーム三昧の日々だった。

そもそも二人がつきあうきっかけは、藤井が常連だった居酒屋でバイトをしていた早紀がおもしろがって藤井にちょっかいをかけまくっていたからだ。
くまモンに似ている藤井は愛嬌があり女性にはよくもてていた。
早紀はそこそこ可愛くて藤井も悪い気はせず、二人は意気投合してどちらから言うともなく同棲生活が始まった。

しかし同棲は半年ほどで終焉を迎えた。
破局ではなく、早紀のバンドのメジャーデビューが決まったからだった。

東京に行く。早紀はそう言った。
藤井は「そうか。よかったな」と、ひとこと言って共同生活にピリオドを打った。
東京について行く気はないし、地元を離れるなど考えられなかった。
あとネットゲー内で大規模なギルドのギルマスをこなしていて一日たりとも休めなかったせいもある。

最後の夜に早紀から言われた台詞が

「あなたってまるで変わらないのね。まるで甘ったるいダイキリのできそこない…」

よくわからないが、決して褒めていないことだけはわかる。

藤井はダイキリの意味を大喜利だと勘違いしていた。
まさかカクテルのことだとは思っていなかった。

その頃は意味は全然理解できなかったが、まるで歌の歌詞みたいな揶揄だなと思った。
いま考えると、早紀もかなりキテいる女だと思う。

いちいち言うことが芝居がかっていたが、当時はそれも彼女の魅力のひとつに見えていた。

同棲の初日に、小さなちゃぶ台に置かれた白いカップティーを飲みながら早紀は言った。

「未来が揺れているの。そしてわたしは過去に怯えている」

なにこいつwwwww
まぁ…普通の人ならそう思うだろう。
今で言う中二病の見本のような台詞だ。
自分に言葉に酔っている。
たまに抽象的な言葉を使ってエクスタシーを得る輩もいるが、その手合いよりも純粋なだけに始末が悪い。
真顔で言える台詞じゃないが、しかし恋する男はアバタもエクボ。
早紀の台詞全てにときめきを感じていたあの頃。

風邪をこじらせて病院に言ったときも、熱にうなされながら

「かけめぐっているわ邪悪なソウル。明日に立ち向かう勇気をちょうだい」

早紀は寝言で叫んでいた。

藤井は早紀の台詞を漏らさず日記につけていた。
今思うとかなりキモいのだが、あの頃は早紀の言葉が零れ落ちていくのがもったいなくて、
拾っていくように書き留めていたのだ。
あの頃の日記は既に廃品回収に出してしまった。

早紀は別れてから東京で一年後にメジャーデビューを果たした。
ヒットチャートで40位くらいには顔をだしていたが、バンドメンバーのドラック所持などでバンドは解散。
早紀はソロデビューで独立しようとしたが、鳴かず飛ばずでそのまま引退。

数年後、外資系の大手証券会社の男と結婚し2児の母となっている。
マサチューセッツに住んでいるという噂を、出会った居酒屋のマスターから聞いた。

「マサチューセッツか…。遠くなるなぁ…人も夢も」

藤井はぽつりとつぶやきながら、窓ガラスに映った自分の顔を見る。
歳をとっただろうなあいつも…。いつか…カナダの地で会うこともあるのだろうか。

そんなことを考えている自分が無性に滑稽に思えて苦笑いがこみ上げてくる。

しかし藤井は壮大な勘違いしている。

どこからともなく声が聞こえてくる。

マサチューセッツはアメリカだよ藤井さん。

「はっ!!」

藤井は誰かにつっこまれたような声をかすかに聞いた気がした。
しかし、気のせいだろうとかぶりを振ってビールを飲んだ。

藤井の旅はこれからだ。

どこへ行くのか。
終着点は決めていない。

それを決めるのはあなた自身である。
誰でも心の中に藤井さん。

そろそろ意味が分からないのでこのへんで。

じゃーにー!


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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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非公開コメント

No title

>佐渡さん
まだまだつっこむお!

>かずは
マンチェスターじゃないんだよ!

えーっっ!

イングランドだと思ってた、、、。

No title

心の中で同じ突込み入れてて吹いた^^

No title

>藤井さん
雅厨雪通効果題額に入りたい!

No title

マサチューセッツ
摩擦(^・^)チュッ摂津と覚えるといいよ!

プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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