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信怨2

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爆発騒動もおさまって、町の喧噪も戻ってきた。
みさおが団子を10皿食べ終わって茶を啜っている傍らで、藤井が鼻を抑えながら呻いている。

「いてて…。ひどいな、みさおさん。さすがに素人だったら死んでるぜあれは…」


藤井が文句を言いながら、茶屋娘を呼んで茶を頼む。

「失礼なことを云うからですよ。自業自得です」

そう云って、飲み終わった湯吞みを置いた。

積み重ねられた団子の皿が、時の経過を現しているように見えるが、実際はほんの四半時足らずである。
みさおの胃はそれほどに食を渇望していたのだ。

藤井は茶屋娘の置いた湯吞みを取り上げると、ふぅっと息を吐いて口に運んだ。

「で…」

周りを窺いながら声を落として、先ほどの話の続きを切り出す。

「その怨念の場所ってのを教えてよ」

「場所…。そう場所ね」

言葉を切ってみさおが目を細めて動きを止めた。
さっきの突然の爆破で緊張感が走る。

「場所は…越前:ろ-ニ…」

「…わかりづらいな。座標じゃなくて地名で云ってよ」

「東尋坊よ。それぐらい覚えておきなさいよ」

「座標で覚えてる人はそうはいない気がするんだけどなぁ…」

「とにかく!東尋坊の青龍が湧く場所だと三浦さんに聞いたの」

「東尋坊の青龍が湧く場所…。あの勃起岩?」

「ばかっ!真面目な話なのよ」


みさおの剣幕に、いつもの下ネタが通じないと藤井は頭を掻いてたじろいだ。

東尋坊と云えば…確かに今ではほとんど訪れることはない。
あそこは初期のワキ待ち叩き合いのメッカだ。
確かに先に叩かれて悔しまぎれに晒したプレイヤーもいただろう。

「しかし、東尋坊といえば初心者の頃なんざ憧れの場所だったけどなぁ」

そう云って藤井が怪訝な顔をする。

藤井の言葉に、みさおは顔色を蒼白に染めて震えながら首を振った。


「いいえ!東尋坊は恐ろしいところよ…。何が恐ろしいって入り組んだあの迷路のような洞窟…」

「ああ、始めの頃は迷ったけどねえ。でも他より全然単純な道じゃない。朱雀より全然まし」

「初心者の頃に野良で挑んで…壊滅させられたのよ。グラフィックにも酔ったしあたしにとってあそこはトラウマしかない」

「壊滅…。レベルいくつで行ったんだい」

「徒党の平均レベルは15…くらいだったかしら」

「馬鹿か…。そりゃ死ぬよ。無謀にも程がある」

「まぁね。でも、あそこはそれ以外でもてんこ盛りであたしには最悪の場所なのよねぇ」

みさおは遠い目をして、在りし日の未熟さの失敗を東尋坊になすりつけている。


とにかく場所は判明した。

東尋坊の青龍の沸き場所だ。

「ところで…そこには一人で行かないとダメなんだろう?大丈夫かい」

藤井が心配そうにそう云うと、みさおはきょとんとして答えた。


「は?何云ってるんですか。藤井さんが行くにきまってるでしょう」

「え?…いや、なんで俺が行くの?」

「なんでって…あなた、高崎さんとは友人だし男だし当然でしょ」


藤井は目を丸くしながら、腰を抜かさんばかりに驚いた。

「ええ〜〜っ!?ちょ、ちょっと待ってよ!俺やだよ」

「大丈夫。骨は拾ってあげますから」

「ふざけるなwwwなんで俺がそんなことw」

「ふざけちゃいませんよ。当然の流れでしょうに」


みさおは狼狽する藤井を尻目に残ったお茶を啜った。

始めからそのつもりだったのだろう。藤井の屍を踏み越えて安全マージンをとる腹だ。
恐ろしい女である。
藤井の安否などは最初からどうでもいいのだ。


「どうせ死ぬときゃ死ぬんです。腹を括りなさいな」

まるで人ごとのような物言いに、さすがの藤井もキレた。

「冗談じゃないよ!俺は「それでも世界は美しい」を全話完走しなけりゃならない使命を帯びてるんだ。
それに、死亡フラグがち●こビンビン物語じゃないかー。絶対いかんよ!絶対にだ!」

みさおは、けたたましくまくしたてる藤井の様子にも動じない。

そして、ためいきをひとつ吐くと、うつむきながら人差し指を目の前に掲げて何やらつぶやいている。


「Elohim. Essaim. Frugativi et appelavi…我は求め訴えたり…」

「えっ、何その呪文…」

藤井が何事だと思ってみさおの顔を覗き込んだ刹那、みさおの目の奥に青く光る魔法陣を見た。
意識が途切れ暗闇に融けていく。

藤井の目は光を失い、体全体が弛緩したように立ちすくんでいる。

みさおは、藤井に呪詛をかけたのだ。
傀儡の呪である。


「藤井さん。今夜2時に東尋坊の青龍の場所に1人で行ってね」


みさおがそう云うと、藤井はゆっくりと首を上下させて頷いた。
もはや藤井の意識はそこにはない。
精神の監獄結界に捕われて、呪詛が解けるまではみさおの言いなりである。


「じゃ、一回屋敷に戻って休んでいいですよ。あたしも少し休みますから。あ、ここのお勘定お願いしますね」


ぼぅっと立ち尽くす藤井に、ぺこりと頭を下げると、足早に自身の屋敷のあるほうに駈けていった。


「あのお客様ぁ…。お勘定を…」

「……」


でくの坊みたいに立っている藤井に、可愛らしい茶屋娘が勘定の催促をするが藤井は答えない。

何回か問いかけて、反応がない藤井にどうしようもなくなった茶屋娘は主人を呼んだ。
奥から出て来た主人は、身の丈が7尺ほどの山のような豪壮な形をしている。

「俺の店で無銭飲食たぁ、いい度胸じゃねぇか。ない袖は触れないってんなら…身体で払ってもらうしかねぇな」


この時代、衆道はそうめずらしくもなく、町人でもそっちの気があるものは多かった。
とりわけ、剛の者に見えるほどに衆道者は多かったようだ。

動かない藤井の尻を見回して、舌なめずりをしている。
すると、なんと意識がないはずの藤井のこめかみから、つつ〜っと冷や汗が流れ出していた。

大概の男は皆そうだろうが、藤井は入れるのは好きだが入れられるのは大嫌いだった。

藤井の手を引っ張って、奥に連れ込もうとする主人に声をかけてきた者がいた。


「ちょっとマッテクダサーイ!」

見ると青い大浄衣をしつらえた金髪の僧がにこやかに笑っている。

「なんだい坊さん。うちにゃまだ死にそうな年寄はいねぇよ」

「あなた、その人をドウスルツモ切りデスカー?」


言葉使いが変だ。

異人か。

主人が面倒くさそうに顔をそむける。

「どうするもこうするも、金がないから身体で払ってもらうのよ。何か文句でもあるのかい」


金髪の僧は、端正な顔を歪めて哀しそうな表情を浮かべた。

「オゥ〜;その人は実はワターシの知り合いでありやがりマース。どうか許してアゲてんぷらーのデース」

「ああ?知り合いだぁ?だったら耳を揃えてあんたに勘定を払ってももらおうじゃねーか」

「…ヒジカタトシゾウです…※。オイクラマンエーンなのデスカー?」

※しかたがありませんね という意味らしい

「ひいふうみい…。しめて1貫と60文だよ」

皿を数えながら、せっかくのチャンスを失った主人はぶっきらぼうに云う。
だんごとチャの料金としては、かなり、ぼったくっている料金だ。


「ウウ…。ナケナシの路銀デスガー…義を見てせざるはオナニーありデース;ハライマショー。カナワンデー;;」

「へっ、とんだお人好しがいたもんだ。まぁ勘定さえもらえりゃ文句はねえよ」

主人は残念そうに藤井を一瞥して奥に引っ込んだ。

僧が勘定を払って藤井は開放された。


僧は藤井の前に立つと、気を高めてぱんぱんと柏手を打った。


「はっ!!」


すると呪縛から開放された藤井は目を覚ました。
なんだか頭がぼぅっとする。喉も乾いている。


「危ういトコデシターネ。あのままホットイタラ、ケツにねじりん棒ツッコマレーテ、切れ痔にナルトコデストラーデ!」

「は?あんた一体…」


藤井は目の前の見覚えのない男が何を云っているのかわからなかった。

「オゥ!これはシツレイシマウマキリン。ワターシ、あんときのいのきとモウシマース。トニーと呼んでクダサーイ藤井さん」

「え、あ!あんた凸さんのとこでよく見かける…紺碧の」

「HaHaHa〜!デスデス〜!その、いのきデース」

「てっきり日本人なのかと思ってたよ」

「ワターシ、日本人デスヨー。フジヤマ、ハラキリ、スシ、イクラー」

「ま、まぁどうでもいいんだけど、どうしたんだ俺は。えーと…みさおさんと話してて…」


藤井は首を捻りながら、記憶を探る。


「何やら術をカケラレテマシータ。でもその術トテモ強力デース。一時的に解いたダケ。藤井さんあのままいたら、茶屋の主人のデカマラー突っ込まれてマシタネー。セフセフ」

「なんだそりゃ;それに術って…。あ!あの時か!!みさおの奴、俺に術を駈けやがったのか」

「よくワカリマンセンエンデスガー、ちゃんと術を解くには、その人に解いてモラウしかネーデスン」

「まじかよ;めんどくせえ。それに何の術をかけられたんだろう」

「サー…ソコまではワターシにもアインドンノウデース」

「…ま、何にしても助かったよ。金はあとで払う。それに泊まるとこが決まってないなら今夜はうちで休んでいくといい」


これを聞いて、紺碧のトニーは小躍りして喜んだ。


「ヒャッホー!アリガタヤー!カノカッチャンー」


二人は並んで藤井の屋敷へと歩き出した。

今夜の深夜2時まではまだ時があるが、藤井はかけられている術の真実をまだ知らない。
2時になったら自らの意思とは関係なく、東尋坊に一人で向かうことになるのだ。


その頃のみさおはと云うと…

アナと雪の女王のサビを歌いながら、月曜バイキングの地引き網クッキングの録画を見ていた。

「サンドウィッチマンってロケで輝く芸人だったのねぇ…」

そんなどうでもいいことを、つぶやきながら、煎餅をバリッと食べるのであった。

もちろん、藤井の安否なんぞは気にもしていなかったのは言うまでもない。


【続く】
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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>みさおん
青龍のキャンプ時代を知らないとは…
ワキマチの数秒手前に叩くか叩かれるかというギスギスした緊張感は最高だったぜ!
女子どもはすっこんでろって感じー

No title

青竜に並んだ時代を知らないゆとり子ですがなにか。
むしろ地獄谷 朱雀までたどり着くのに三日間とか
忍者屋敷の白虎にたどり着くのに・・・・のほうがずっと苦労したけどw
東尋坊は敵国なことが多くて関所抜けるときどきどきしたなぁ
顔の表情ほどにゆたかな乳のみさおからでした^ー^

No title

>いのきさん
それも考えたんだけど話が終わっちゃうのよねえw

藤井さんにデカマラー突っ込まれるシーン期待してたのに~

No title

>藤井さん
ワラタww

No title

いのきさんはTwitterでまんこって騒いでる;w;
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凸

Author:凸
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生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
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