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北斗の世界で(空想外伝)




人類史上最も愚かな選択によって地球は病んだ。

祈るべき神もいない世界。
そんな世界で生まれたもの達の未来は?

世紀末に起こった核戦争。
すでに時は移り、過去のものとして語られるようになっている。
が、いまだにその傷跡は深く世界中に爪痕を残していた。
傷ついた地球は人類に対して贖罪ともいうべき猛威を幾度となく震う。
異常気象による災害は文明を飲み込み、人類が培ってきた技術や文化は天の怒りにより剥ぎ取られた。

わずかに残ったエネルギーや資源を、特権階級にいる者達はこぞって独占した。
その者達はそれぞれの地で独裁者となり、国家ともいうべき独立した自治区を築いている。


かって、この世の地獄とかした世界で拳のみで人々の魂を救済した男がいた。
世紀末救世主、その名はケンシロウ。
人々の心は荒み、暴力と富のみが支配する世界において、いまだにケンシロウの名は語り継がれていた。
一子相伝の北斗神拳を操る無敵の男。すさまじいほどの哀しみを背負って戦い続けた男。
しかし今となっては風化した記憶の中の残骸でしかない。

救世主はもういない。
すがるべき力は伝説の救世主でも、神でもなかった。
ただ、独裁者達の慈悲にすがって生きる力なき人々は、明日の希望も見えない。

そして人々はさらに新たな脅威に恐怖していた。




■プロローグ


最果ての荒野を一台のジープが車体を上下させながら走っている。


「腹ぁ…減ったな」

後部座席で銃を脇に腰を沈めている男がぼやくと、ガコンッ!と車体が浮き上がった。
その度に舌打ちをしながら、座るポジションを入れ替えている。
舗装路ではない痩せた土の荒野。

見渡す限り岩ばかりで、およそ人が住んでいる気配もない。
ターバンを巻きサングラスをかけた初老の男が運転をしながら地図を開く。

降りかかる砂塵を払い位置を確認する。羊皮に記された赤茶けてはいるが、緻密な地形図が描かれている。

「あと2時間ほど行くと村があるはずだ…」

初老の男は地図を助手席に置くと、シフトチェンジをしながら、胸のポケットからよれよれのソフトパッケージの煙草を取り出した。
コンソールの火種を咥えた煙草に擦り付けて火をつけると、風にあおられて火種が飛散していく。

後部座席に飛んでくるそれを手で払いながら、若い男がぼやく。

「あと一日か…。クロノスの先遣部隊に出くわさなきゃいいけど」

「奴らの補給路からは外れて走ってるから大丈夫だとは思うが…。おかげでタイヤがオシャカにならんか不安だ」

「スペアもないし、ここで立ち往生とかまじ勘弁だ」

「まったく、だ」


初老の男は言葉を切ってアクセルを踏み込むと、車体の上下はさらに激しくなり、後部座席の荷物が若い男とともに宙で踊りだした。
地平線はまだ遠くに続き、ぼんやりとした太陽がゆっくりと沈んでいく。
この世の果てまで続いているような、そんな不安を感じさせる景色だった。


■ベーネのマリア

村が見えた。
完全に陽が落ちるまで間があるのだが、ひっそりと静まり返っている。

漆喰で塗り固められた壁とレンガ造りの建物が、通りを挟んで建っていた。
貧しい村でそこかしこの壁が崩れている。
以前に襲撃を受けたの傷跡が残っている。

しかし廃屋とまではいかず、かすかに生活の跡が見て取れる。
しかし窓や扉は固く閉ざされたままである。


「おーーーいっ。誰かいないのかー」


二人はそれぞれに呼びかけながら村の中心部に進んでいく。
中央広場には小さな井戸蔵とくみ上げ式のポンプが見える。



「ケン!」

何かに気づいたように初老の男が小銃を構えた。
ケンと呼ばれた男も、素早く重心を低くして9x19mmパラベラム弾を込めたサブマシンガンを構える。

小屋から人の気配を感じる。

初老の男が井戸の脇の小さな小屋を指しながら、左から回り込むようにと指示をする。
俺は右から行くと合図をした。

バリケードポジションを取りながら、小走りに小屋の手前に辿り着くと、左右に分かれてドアの左右に張り付いた。

ドアノブに手をかけて確認すると鍵はかかっていない。
初老の男が目で合図する。


「いくぞ」

「オーケー!」


次の瞬間、二人は小屋の中へ転がりながらなだれ込んだ。
二人の銃口は部屋の中心部に向けられている。


「動くな」

巻き上げた埃の膜が部屋中に舞い上がる。

薄暗い小屋の奥に人がいた。

年端もの行かぬ3人の子どもと女だ。
子どもたちは怯えて女にしがみついている。

「なんだよ…。ガキと女か」

ケンが安堵のため息を漏らしながら銃口を降ろして立ち上がる。

初老の男はまだ銃口を下げずに立ち上がった。


「女と子どもだからといって油断すると早死にするぞ。まずは銃をもってないか女を調べるんだ」

「ち、うるせぇーなぁ。こんな時までセッキョーかよ…」


ケンはぶつくさ言いながら、部屋の隅に踞っている女の腕を掴んで引っ張り上げた。

「あうっ;」

「お姉ちゃん!;」

「わぁぁ〜〜ん;」


子ども達が一斉に鳴声を上げた。

ケンはキンキン鳴り響く鳴声にたまらなくなって指で耳に栓をした。
女の両腕を引っ張って武器を持っていないか調べ始める。

初老の男は銃口を向けながら、気を許さずに構えている。

褐色の肌に黒い髪と黒い瞳。
衣服は汚れてボロボロだったが、若く美しい女だった。
女の細かい息づかいが伝わってくる。

ケンは顔を赤らめて女の手を離した。

「女は丸腰だ。心配ねえよ」

呪縛から開放されると、女はキッとケンを睨んで子ども達に駆け寄った。

「大丈夫よ大丈夫。心配しないで…」

泣きじゃくる子どもたちを優しく抱擁しながら、ケン達を睨んでいる。


「ダン…。そろそろ銃を降ろしたらどうだい」

ケンに言われて銃口をゆっくりと降ろしたが、まだ警戒は解いていない。
ダンと呼ばれた初老の男は慎重すぎるほど慎重だった。

信用という言葉ほど曖昧なものはない。
心許したものに背中を向けた瞬間、笑いながら撃たれた奴らも見てきた。

ダンはそんな世界で生き抜いてきた男だった。


「あんたら、一体ここで何をしている」

ダンがそう聞くと、女はダンを睨みつけて無言のままだ。
さすがに怯える子ども達を見ると、胸がちくりと痛んでくる。

大笑いをしながら、ケンがダンの肩をポンポンと叩いた。

「あ〜らら。嫌われちまったなぁおっさん。ど〜れここはひとつ俺が…」


そう言ってケンが女の肩に触ろうとすると、ピシャリと手をはねのけられた。

「さわらないで!」

「ってぇ…!?なんだよ…」


はじかれた手を擦りながら、不満そうに口をとがらすと、今度はダンがケンの肩を叩いて笑う。

「はっはっはっ。嫌われたのはどうやら俺だけじゃないようだな」

ダンは銃を立てかけて、女の前でしゃがんだ。
理解を求めて話し合うときは目線を同じにするのが礼儀だ。

警戒を解かない女に対して諭すように語りかけた。

「お嬢さん、驚かせてしまってすまなかった。俺たちは帝都に行く途中の行商人でね。怪しいもんじゃない」

「…商人?」

「商売上、はったりも必要でね。どれ…」

ダンはターバンを取ってサングラスを外した。
そこには意外に若く彫りの深い顔が現れた。目尻の皺が何とも優しく人なっつこく見せている。

子ども達はそんなダンの暢気な風貌に安心したようだ。
一番小さい女の娘は笑顔すら見せている。


子ども達に笑顔を向けると、振り返ってどうだと言わんばかりにケンに目配せをした。
ケンは面白くなさそうに、そっぽを向いて反対側の壁に寄りかかる。

「あなたたち…レイブンの手下じゃないの」

「レイブン?」

「この土地の支配者…。そして残酷な男」


ケンがバンダナを直しながら眉をひそめる。

「レイブン…。聞いたことあるぜ。東地区の独裁者で妙な拳法を使うと言われているな。相当にいい性格してるらしい」

「悪魔のような男…あいつは人間じゃないわ」


女は唇をかみながらうつむいた。
はだけた服から左肩がこぼれ、背中に近い部分から黒い刺青が見えている。

「これは…デロスの烙印」

思わずダンが呻いた。

デロスの烙印。
その烙印を焼き付けられたものは一生奴隷で過ごさなければならない掟。
烙印を押されたものは、その所有者である主人に対して絶対の服従を誓わなければならない。

人として生きていくのに、最も辛い階層にいる者達が「烙印の者」と呼ばれていた。
子ども達も見ると手や腕に烙印を押されている。
奴隷商人から売られる時に印としてつけられるものである。


「あんた…逃げて来たのか」

ケンが腕組みをしながら苦い表情で聞いた。
女は無言でうなずきながら、大粒の涙を流した。

弱い者は死ぬか強い者にかしずくかどちらかしかない。
おそらく大規模な奴隷狩りで運悪く捕縛されて奴隷にさせられたのだろう。

しかもこんな小さな子ども達にまで…。

ケンは拳を震わせていた。
理不尽に虐げられる理由はなんだ?

弱いからだ。弱いことが悪い。弱いから死ぬ。
そんなことは幼少の頃から痛いほどわかっていたが、許せなかった。

弱い自分も、人を家畜のように隷属させている支配者もだ。
この子達をこんな目に遭わせる支配者ども、どいつもこいつもぶっ殺してやりてぇと思うが、ケンにはそんな力はない。

圧倒的な力を有する支配者達は一騎当千の化物である。
挑むどころか、対峙することさえ適わぬだろう。

「くそぅ…」

ダンは立ち上がって女の手を取りながら笑顔を向ける。

「お嬢さん達、腹が空いているだろう?我々と一緒にディナーでも如何かな?」

ひょうきんなダンの言い回しに重くなった空気が軽くなる。
張りつめていたケンも思わず吹き出して笑った。

女と子ども達もようやく安堵の表情を見せていた…。


【シリアスは疲れるので続くかどうかは気分次第…】

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テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

>マソ君
藤井さんはシーカーでよろしく!

No title


おらぁは、南斗108派に属さない南斗聖拳
神鳥拳のガルダでもない!
藤井さんはなんだろ?山のフドウ系だね( ̄+ー ̄)

No title

ネメシスDあたりで!

No title

>いのきさん
いつか「核戦争後の藤井さん」を書いてみようw

核戦争が起きたら、藤井さんは新たな生命体に!?
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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