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コブラ的

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「だるいぁ…」

海賊ギルドの末端構成員が休憩室で一服しながらぼやいている。

この構成員、本名は藤井という地球名を持っていた。
中学からぐれだして、気づいた時には立派なヤンキー、18歳の頃には地元でヤクザも恐れる愚連隊。
親と喧嘩して家を飛び出し、組の鉄砲玉になったはいいが、見事に失敗。
刑務所に送られ、2年で出所。組を破門され日雇いで日銭を稼ぐ日々。

いっそ銀行強盗でもやってやろうかと思ってた矢先に、海賊ギルドの幹部と飲み屋でもめてぼこぼこにされる。
その時の幹部に根性と腕っ節を見込まれて海賊ギルドへ誘われて入ったはいいが、聞いてた話と労働条件がまったく違う。

初めての星間飛行に浮かれていたのは最初だけ。
未開の地での発掘作業や民間人の誘拐、街への襲撃、炉度麻薬の精製業務、広大な敷地の24時間警備etc…

「きつい (Kitsui) 」「汚い (Kitanai) 」「危険 (Kiken) 」のバブル時代の三拍子以上だ。
しかも思ったより実入りも少なく割に合わない。

しかも、最近では恋人を殺されたコブラが怒り狂って各方面の支部をことごとく壊滅させていると聞く。

「そりゃ恋人殺されりゃ誰だって怒り狂うわなぁ…」

コブラの気持ちはよくわかる。

藤井にも愛する彼女がいる。ショウパブで働く21歳の踊り子のナオミである。
薄給ながら半年ローンで指輪も買った。明日のナオミの誕生日にプロポーズをする予定だった。
ナオミにはギルド員だということは話していない。
今のところ中堅家電メーカーの営業マンということで通している。


ギルドの最大の敵は、銀河パトロールだが、今は最も恐ろしいのは復讐に燃えたコブラである。
そもそも末端構成員はコブラには何の恨みもない。

それどころか中には憧れている奴さえいる。
コブラのライバルと言われているクリスタルボーイ派もいるにはいるが、藤井にはどうでもよかった。

中卒で反グレの半端者を雇ってくれたギルドには恩義を感じるところはあるが、末端構成員は本部の幹部の顔すらリアルではまず拝めない。いわんや総統の顔などスクリーンでしか見たことはない。

藤井はそろそろ潮時だと思っていた。
既に30半ばだし、身体もあちこち痛いし無理がきかない。
同じ頃に入った同僚は、ほとんどがすでに死んでいたし、奇跡的に部隊長クラスに昇進した奴もいたが、
一回のミスで辺境の地に飛ばされている。

「地球に戻って野良仕事でもしようか」

ナオミに言うプロポーズの言葉である。
それを考えるとバックンバックンと心臓のタコメータが跳ね上がる。
ギルドを辞めてナオミと一緒に新しくやり直そう。
藤井はそう考えていたのだ。

普通に考えて犯罪ギルドを辞めるには、ひとつの選択肢しかない。

死ぬしかないのだ。
実質、辞表など存在しない。ギルドのわずかな情報でも流出を防ぐためである。

藤井には考えがあった。
コブラが今度襲うターゲットは、ここ火星支部であろうと予測されている。

コブラが襲って来た時がチャンスである。
殺してもらうのである。正確には”殺してもらうふり"をするのだ。
敵に回したら恐ろしいが、彼は決して無差別殺人鬼ではなく男気もある奴だ。俺みたいに末端構成員を殺してもどうしようもないし、慈悲を乞えば情けもかけてくれるはずだ。

奴のサイコガンは精神力によってその威力の強弱をつけれると聞く。
何とか話をつけて撃ってもらい、死んだふりをしてとんずらをかまそう。

そしてその足でナオミを連れて星港ゲートに向かい地球へと向かう。

情報では、コブラが来るのは二週間以内だという。
とにかくもう末端構成員のモブキャラはごめんだ。
便所掃除や風呂掃除、炊事洗濯まで俺らの仕事でいい加減うんざりだった。


藤井はマスクをかぶり直して持場へ戻ると、別の構成員が銃を持って立っている。


「遅いよ!交代の時間はとっくに過ぎてるだろう」

蝉を形どった戦闘員用マスクであるから、顔の表情は見えないが怒気を放って怒っているのはわかる。


「すまんすまん、ちと疲れて寝ちまってな」

「まったく…。あんた明日オフなんだろ。俺は明日も一日警備なんだぜ。勘弁してくれよな」

「わかったわかった…。今度、一杯驕るからさ」

「しょうがねえな…。じゃハーパーダブルな。2050年ものだぜ」

「へいへい。高い一杯だな」


構成員は笑いながらよろしくと手を振り休憩所に歩いていく。
ここは北のゲートで最も手薄になっているが、ゲートの手前にはサイファーが待機して常時監視しているし、高感度サーモグラフやビームシールドが張り巡らせてある。しかし、危急の対応にはやはり人間の柔軟な思考力と行動が不可欠だ。
よって機械だけにまかせずに人為的な体制も盤石にしておく必要がある。

なにせここはギルドの資金源であるロド麻薬の精製所が地下にある。
ここを潰せばギルドにとって大きな痛手となるのだ。

コブラは近いうちに襲撃をしてくるはずだとギルド中に伝わっていた。
 

「コブラを見つけたら…まず敵意がないことを示して、中を案内してやろう」

そしてその後に死んだと見せかけるように撃ってもらおう。

大体、あんな化け物にまともに戦って勝てるわきゃねえし、所詮、雑魚キャラはなんざ刺身のツマにもなりゃしないんだ。総統に絶対的な忠誠を誓っている構成員なんて半分もいるのだろうか。
大概はギルドの名をちらつかして傍若無人に振る舞えるから構成員をやっているにすぎない。

過ぎた野心は命取りだし、無能すぎても生きられない。

金も女も自由だ。
藤井を誘った幹部に入るときにそう言われたが、実際は街を襲撃した盗品のおこぼれや、ギルドと聞くだけで怯えて逆らわない女を自由にできるだけだ。およそ人としては終わってる。まぁ、海賊ギルドに入った時点で終わってるっちゃあ終わってるのだが。

その幹部も失態を演じてクリスタル・ボーイに殺されている。
確か俺より10歳上の妻子持ちだったはずだが。
ようやく家のローンも終わって、子ども有名なハイスクールに入ってこれからだって時にな。

クリスタルボーイのことを、噛んでしまい「クリトリスボーイ様…」と間違えて呼んでしまい逆鱗に触れたらしい。
哀れ、先輩幹部は宇宙空間にそのまま放り出された。
クリスタルボーイも案外ちっちゃい男だ。それくらい笑って許してやれよと思う。
死んだ理由なんざ家族には話せないだろうなぁ。

藤井は手すりにこびりつく火星の赤砂を指ではじきながら、家族は気の毒になと思った。
しかし、明日は我が身だ。

とにかく、敵であるコブラに自分の命運がかかっているのが皮肉だ。

「ナオミ…プロポーズ受けてくれるかなぁ」

ナオミのことを考えて渡す指輪をポケットから出して眺める。
金星ルビーで造られた指輪だ。
紅く透き通った光が仄かに揺らめいている。


「へぇ。いい指輪だな。サンタさんからの贈り物かい?」


背後からの声に、振り向いた瞬間に大きな光とともに身体の中から何かが爆発したような衝撃を受けた。

そこに立っていた声の主は、コブラだった。


「コ、コブラ…。お前…何故」

「悪いな。頭に来ている時の俺は手加減はできないんでな」

「ナ、ナオミ…」

身体をサイコガンによって真っ二つにされてしまった藤井は息絶えた。
その手から転がり落ちた指輪を拾って、藤井の胸に置いてやる。

コブラは藤井の亡骸を一瞥すると、ライターを取り出して葉巻に火をつけた。

「生まれ変わったらギルドなんぞ入らないで、クワイヤボーイズ(少年聖歌隊)にでも入るんだな」

そう言って、ゲート前のサイファを次々と撃ち落としていく。


大いなる誤算で藤井は死んだ。
よくよく考えてみると、コブラにとってはギルドの構成員は全て敵であるし事情なんぞ知る由もない。
しかも明後日来ると言う情報だって確定じゃないわけだ。

とにかく藤井は死んだ。最愛の恋人に想いも告げられずに。

翌日、ギルドの火星支部がコブラによって壊滅させられたと星間ニュースが報じられた。


─火星、中央シティ、オーロラビジョン噴水前

時計を見ながら一人の若い女性がベンチに腰掛けて待ち人を待っている。
ブロンドの長い髪で、露出したボディスーツがチャーミングだ。


「おっそいわねえ…。なーにしてんのかしらあの人は…。大事な話があるからって連絡してきたくせに」


はす向かいのビルのオーロラビジョンには、「コブラ、ギルドを襲撃!」という見出しでセクシーな女性レポーターが現場で取材をしている様子が映し出されている。

そのニュースを見ながら、女性がため息をつく。

「美人のため息は、ぐっとくるねぇ」

長身で金髪の逞しい男が声をかけて来た。
赤いボディスーツに映える胸板は鋼鉄のようだった。
葉巻を加えて、口元に笑みをためている。

うっとりするほどのハンサムではないが、セクシーで渋いおじ様といった感じだ。

「ええ、そう!約束した男がもう2時間も連絡つかずなのよ」

「こーんな美人を待たせる奴ぁは、何回生まれ変わっても女にはもてないな。俺ならデートに遅れた時点で首を吊るね」

女性は「まぁ!」と言いながら顔を赤くしてクスクス笑った。

女心をくすぐる会話を知っている男だった。
そう言って葉巻をくゆらせる仕草が何ともセクシーである。

「もう帰ろうかと思ってたところ」

「じゃあどうだい?その先にいいBARを見つけたんだが、こんな晩に一人で行くには寂しいんでね」


女性はすこし迷ったふりをしたが、連絡すらしてこない藤井が悪いのだと見切りをつけた。

男の太く逞しい腕を両手に巻き取って

「ええ、いいわよ。行きましょう」

そう言って歩き出す。


「ありがたい。これで苦くない酒を飲めそうだ。っと…ところで君の名前は?」

「私はナオミ。踊り子よ。あなたは?」

「俺か?俺の名は…」

彼女は、小首をかしげて男の横顔を見た。
それがオーロラビジョンに映っている男の顔とは気づかずに。

そして二人のシルエットは、火星街のネオン光線の中に融けていった。




【終】


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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>藤井さん
とことんやのうw

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最近の信onブログはまんこさらすのが流行らしい
見たいのだがいつも消されている;w;
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凸

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生息地:都内在住
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