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戦国BAR 弐ノ陣 【恋のカタチ】



わたしは甲府でBAR【SENGOKU】を営むマスター凸。

傍観者にすぎない私に、ドラマのシナプスを覆すチカラなどない。
しかし、少しだけスパイスの効いた調味料を加えることはできる。

全ての冒険者達のドラマに幸あらんことを願いつつ…。


さて、今日は恋の話をしてみよう。

恋。甘くせつない響きである。古来より恋についてのテーマを現したものは数限りない。
恋をしている間は、宙にフワフワ浮いた状態になる。これは誰でも例外なくそうなる。

恋は病だとよく言われるが、実に私もそう思う。
本気で恋している時は、とにかく幸せである。楽しいのだ。
そして道ばたに咲いている雑草でさえ愛おしくなる。

恋は色んなカタチが存在する。

時間をかけて育むもの。出会った瞬間一目惚れというもの。最悪な出会いからするめのように味が染み出てくるもの。
なんとなく好きになってそのまま成就するもの。

人の数だけ…と毎度同じことを言うボキャブラリーの無さを許して頂きたいのだが、
やはり人の数だけ恋のカタチは様々だ。

昨今はLINEやSNSなどで人が簡単に繋がる時代。
オンラインゲームで結婚も珍しくはなくなった。
といっても、ネットゲームをやったことのない人にとっては、まだまだ驚くべきことなのだろうが。

ネットゲームにおいて恋愛ざたはタブーとされていた時代がある。
しかし裏ではひっそりと愛を育む者達も少なくなかったはずだ。

古くはniftyなどの電子会議室でのコミューンで結ばれるもの。
私の友人など犬のコミューンで知り合った女性と結婚した。当時、なんと10歳も歳上で驚いたものだ。

私はFFのサービスが始まった当時から思っていた。

絶対、これやって結婚とかする奴いるだろうなぁと。
純粋にゲームに興じるプレイヤーがほとんどなのだろうが、恋愛をしたく始めた人もいるのではないか。
そんな出会いを期待して始める人もいただろう。
もちろん動機は人それぞれだから、それを別段咎めるわけでもない。

おっと…

前置きが長くなってしまった。
そろそろ店を開ける時間だ。

今夜は何かが起こりそうだ。
私はそんな予感がしていた。


カラン!

ドア鈴が鳴ると、すーっと音もなく客が入って来た。

女性だ。それも若い。陰陽の綺羅やかな束帯をつけて、滑らかな黒髪を後に長く垂らしている。
アダルトな衣装とは反対に顔は少し童顔である。
妙なバランスだが、不思議に全体のイメージがうまく調和していた。


「いらっしゃい」


私は初顔、それも若い女性には少し渋みをきかせたナイスミドルを演じることにしている。
決してスケベ心ではない。それが大人の男のダンディズムというものだ。


女性はカウンターの端に座った。
客はまだ誰もいないのに、このような座り方をする女性は、他人と会話を楽しむタイプではない。
少なくとも、好き勝手におしゃべりをするタイプではないだろう。


私はカウンターの端に身体を滑らせて、コースターを置く。

「ご注文は?」

女性は困ったような顔をしながら、指を口先に置いて考えている。


「えーと…じゃぁピンク・パンサーできるかしら?」

「かしこまりました」

私は軽く頷いてレシピを確認するためにカウンターの奥に入った。

ピンクパンサー。ご存知、1963年のアメリカ映画『ピンクの豹』のタイトルだ。
ヘンリー・マンシーニが作曲した有名なテーマ曲が思い浮かぶ。
ルパン3世の原型とも言える物語だ。


ジンベースのカクテルでレシピは下記の通り。

pink

[ 材料 ]
ドライ・ジン…20ml
ドライ・ベルモット…20ml
クレーム・ド・カカオ・ブラウン 15ml
オレンジ・ジュース…30ml
卵白…1個分


「どうぞ…」

鮮やかなピンク色の液体は、わけありの女性に実によく似合う。
絵になるのだ。
常々思うのだがバーテンダーとは酒を出すだけが仕事ではない。
演出も大切なファクターである。
客が最高のタイミングで楽しめるシチュエーションを創りだす。
それこそが、この仕事の醍醐味であり最も難しい部分でもある。

女性はにっこりと頷くと、軽くグラスを傾けた。
1/4ほど飲んでグラスを置いて、ふぅと軽い呼気を吐き出す。
その表情から察するに、少なくとも悪い味ではなかったのだろう思われる。

女性はしばらく無言で空を見つめていた。

その瞳が何を見ているのかは皆目わからない。
私は声をかけることもせずに、グラスを磨きながら流れているBGMに耳を傾けていた。
曲はトーマス・ドルビーのShe Blinded Me With Science(彼女はサイエンス)。
懐かしい。この時代のエレクトリック・ポップは妙に歌詞が脚本めいていて面白いものが多い。
今聴いても新鮮だ。


1時間ほど時が過ぎた。

なんと贅沢な時間だろう。美女と二人きり。
客とバーテン、会話もない静かな時に私は至福の喜びを感じている。

だが、そんな満ち足りた時は長くは続かない。

「ういーっす」

その時間を打ち破る客がきた。
また馴染みの顔である。

周防玄徳。周囲からはツカさんと呼ばれている。神職にありながらまったく信心深くない男。
そしてどこでもいつでも寝る男。寝るといっても女とではなく、ソロでどこでも寝ている。
目を離すと道端でも平気で寝る男である。
甲府のスリーピーとあだ名がついたが、FF14では寝落ちはしてないと言っていた。
そこそこでかいギルドに所属したようだが、基本はソロでやっているという、わけのわからないプレイをしているようだ。


「ツカさん、最近ご無沙汰だったじゃないか」

そう声をかけると、ツカさんは細い目をさらに細くして言う。

「電車の事故が相次いで、俺の仕事が増えてしょうがねぇ(笑。だめだなあの会社は」

ツカさんは電車関係の仕事をしている。
トラブルがあるとすぐに出張が入るので、忙しいと思っていたが、ほとんど定時上がりで休日がとにかく多い。
我々から見ると割とのんびりとした生活を送っている。

「電車ってあれか、あの追突とかか」

「まぁあれもあるが…色々よ、色々」

「社会のインフラを支える業務だ。せいぜい気張ることだな」

「オラやだもうやだ;」


泣き言を漏らすツカさんが頼むのはいつも普通のビールだ。
EBISUがお気に入りである。

端にいる女性に目を向けたが、一瞥しただけで視線を戻す。

長いつきあいだが、ツカさんは、いい女を見てもほとんど反応が薄い。
もしかしてホモ?と疑ったことがあったが、出張していたシンガポールには現地妻もいたらしいので、そういうわけでもないらしい。
生来のこと性欲が薄いのだろう。かの宮本武蔵や柳生十兵衛などもそっち方面には淡白であったらしいと文献では書かれている。

男が皆、性欲の権化とは限らない。
一子を成しただけであとは女いらずといった武士もいたそうだ。
藤井さんやマソのように性欲の塊のような肉食系ばかりではなく、草食系のツカさんのような男もいる。

私?私はもちろん肉食である。毎日が教師ビンビン物語である。
まだまだ若い者には負けないという自負がある。

と、言いたいところだが…最近はちと自信がないのも本音だ。


私はちょっと話題を振ってみた。
せっかくいい女がいるのに、仕事の話ばかりでは無粋である。


「しっかし、ツカさんも浮いた噂をきかんな」

「ああ…。見合い話ならよく来るがね」

「へぇ。で、見合いをしたのかい」

「何度かね。その後はめんどいから断ってる」

「ふぅむ。その中で気になる人とかはいなかったのか」

「ない!つーか、会うたびに品質が下がっていくんだぞ;コピー機かっつうの」

「誰がうまいこと言えと…。だが、会ってみるだけでもいいやん。そのうち宝クジクラスを引きあてるかもしれんし」

「この流れだと、そろそろトロルやゴブリンクラスが来そうで怖い…」

「まぁ相手にも選ぶ権利があるしな(笑」


私がそう言って笑うとツカさんは大真面目な顔をしてかしこまった。

「見合いってさ、その時点から点数つけていくわけだろ?恋愛の場合はつきあっていくと、ほとんど引き算でマイナス面しか出てこないから、見合いのほうが気楽は、気楽なんだがねぇ。如何せん相手がどうにも俺のキャパを超えてる生命体ばかりで…」

「それなら信オン内で探してみたらどうだい。いい女がいるかもしれんぞ」

冗談めかしてそう言うと、ツカさんは頭を振りながら、話にならないと言った。

「そもそも、ネトゲで恋愛とかあり得んよ俺は。どういうんだ結婚式の時にさ。出会いは戦国です!とか言えんだろう(笑」

「う〜〜ん、確かに一理あるが…出会いのカタチはそれぞれあるしなぁ。一概に否定できんぞ。それにパチンコ屋とかで咲く恋もあるし」

「ふ〜む…でも現実は小説や漫画みたいにはいかんからな」

「確かにはがないみたいに学園ハーレム展開なんぞ、普通ありえんしな」


そんな話をしていたら、ずっと無言だった女性がこちらに目を向けている。
今の話に食いついたのだろうか。


「あの…」

女性が声をかけてきた。

「何やら気になるお話をしているようで…。よろしければ、あたしもお話に加えていただけません?」


なんと!

女性が自ら話に加わりたいと言って来た。
恋愛話を振ったのは正解だったようである。

ツカさんも別に女嫌いではないから中年二人には願ったりの展開だ。
いい女との会話は酒の最高の肴になる。


「いいですとも!」

私たちは声をそろえて彼女を会話に加わえた。


「自己紹介がまだでしたね。私はこのBARのマスター、凸と申します。軍学侍をやっております」

「まぁ…軍学を。それで沈黙というか、無言でらしたんですね」

女性はクスッと可愛らしい笑顔で笑う。

「俺は周防玄徳です。特技は寝ることです」

「周防さんは甲府で時々、お見かけしました。寝落ちしてたまに神社でくるくる回ってますよね。」

「ふふ。照れるなぁ」

「褒めてないだろうそれ」

私がそうつっこむと、彼女は我慢しきれずに声をあげて笑った。
先ほどまでの雰囲気とは大違いである。

とにかく、掴みはOKだ。


「ごめんなさい、お二人の会話があまりに楽しくて…。あたしは、ソニ子と申します。よろしくです」

「そに子って…スーパーそに子??」

着かさんが質問すると

「いえ、そのそに子でありませんが…。ソニーが好きなのでソニ子です」

「ほほぅ…」


ソニ子と名乗った娘は、1年ほど前に信オンを始めたという。

「お二人に聞いて欲しいです」

ソニ子はそう言うと、自分の身上を語りだした。


信オンを始めて3か月ぐらい過ぎた頃、狩りで仲良くなった武芸侍がいた。
レベルはカンスト状態で装備もすごく、強くて巧い。
ことあるごとに、面倒を見てくれてアドバイスもしてくれる頼れる存在。
ギルドに誘われたときは、即答で快諾した。

ソニ子は、すぐに恋に落ちた。
そもそもリアルでも経験は少なく理想が高いので彼氏もいなかった。

ネトゲ内のアバターは美化された偶像だが、そのときの彼はまるで白馬の王子様だ。
敵をなぎ倒していく凛々しい姿と、優しい気遣い。加えて人望。

ソニ子の目には、それこそあたしだけのヒーローに映っていたことだろう。

聞いているうちに、我々とはまったく正反対なので気分が悪くなってきた。
もちろん、そんな野郎は一皮剥けば、リアルで包茎短小のデブオタヒッキーに相場が決まっている。
そうでなけりゃ世の中あまりにも不公平じゃないか!


ソニ子はそんな我々の胸中など知る由もない。
とにかくソニ子の想いは日に日に募る。

彼からあるとき、オフ会に誘われた。一門のメンツも数人来るという。
ちょうど関東圏の集まりなので参加できる範囲である。


「どうかな?嫌なら無理して出なくてもいいんだけど」

「…行きます。あなたに会えるなら…」

「えっ…。俺?いやぁ会ってもリアルはしょぼいからなぁ」

「ううん…。リアルとか関係ないの。あたしはあなたに会いたい。会ってお話がしてみたい」

「そっか、じゃあ楽しみにしてるよ。日時は一門掲示板で知らせるから」

「うん!」


しかし、彼はその後二度とインすることはなかった。
一門員に聞いても彼の素性を知っているものは誰もいなかった。
思えば、リアルの話などまったくしていなかったことに気づく。

オフは結局行かなかった。彼がこないのでは意味がない。

それから、ずっとフレ登録の欄を眺めているのだが、1年以上立った今でも彼の名は点灯することはなかった。


「考えました。悲しくって泣きました。彼はあたしが、うざくなったんでしょうか?ゲーム内で自分から告白するような女は引かれちゃうんでしょうか」

涙目になりながら、ソニ子は嗚咽を我慢している。
本当に好きだったのだな…。

結果はどうあれ、気持ちが宙ぶらりんになって終わっていないのだ。
恋はどっちの転ぼうがきちんと終わらせたほうが良い。
でないと、いつまでも隙間を埋めるためだけの無駄な偽恋をしなければならない。


「事故とか病気とか、もしくは仕事の都合かねぇ…」

「そのくらいでどん引きするとは思えないがな」

私とツカさんはそう言って慰める。

「せめて、気持ちを伝えたかった…」


この言葉に私とツカさんは胸を打たれた。


私は黙ってあるカクテルを作ってやることにした。

レシピはめんどいので割愛する。


「これを…店の奢りです」


「これは?」

「ハートブレーカー。恋の終わりを意味するカクテルですよ」

「終わり…」

「想いを飲み込むのも良し。すっきり忘れて新しい一歩をという意味でもあります」

「新しい一歩…。あたしにできるかしら…」


「できますよ。それにいい女は、次に向かう術を持ち合わせているものです」

「うむ。いつでもここに来て鬱憤をはらせばいい。新しい恋を俺たちが応援してやる」

ツカさんも涙を拭きながら激励する。つーか泣くなよ。


「ありがとう…。おじ様たち。あたし…頑張ってみます」

そう言ってカクテルを飲み干すと、彼女は風のように去っていった。


「俺、あの娘に惚れたかもしれん…まいったな」

「ツカさんもやはり男だなぁ。まぁいい娘だったな」

「今度会えたら飯に誘ってみようかな。嫌がるかな…」

「大丈夫だろう。それにスケベ心は出ていなかったと思うぜ」


ツカさんは、そうか!じゃあ俺も頑張るかなと意気揚々と帰っていった。
客はいなくなり、私は煙草に火をつけて一服をした。


いい話が聞けた夜だったな。
人あるとこドラマあり、か。


ふっ…何を今さらと苦笑いをすると、カラランとドアがいきおいよく開いた。


「凸さぁん!ぺぺろんちんすこう!」

毎度おなじみの藤井さんである。
今夜みたいな気分のいい夜にこの人はまったく…。

少しは余韻に浸りたかったのに。


「藤井さん、もうすぐ看板だよ」

「まぁとりあえず一杯だけ。あれ?なんか香水の匂いがするし」

「さっきまで、とびきりの美女がいたのさ。ツカさんも一緒にね」

「おっぱいでかかった?」

「それなりだったな」

「くそぅ!もう少し早かったらなぁ…」


藤井さんは地団駄を踏むと、いつものソルティーDを塩を舐めながら流し込む。


「で、その手に持てる紙はなんだい?」

「あ〜、これ瓦版の奴が配ってたのよ。何でも最近、たちの悪いネカマがいるから注意ってね」

ネカマ?


私は嫌な予感がした。

「これが人相書き。なんでも恋に破れた女のふりして、一門をしっちゃかめっちゃかにしたり、飲み屋でただ飲みしたりと最近ひどいらしいよ」

「!!!」


その人相書きは、先ほどまでここにいた、ソニ子そのものであった。

「こいつは…想定外だった、な」

「そいつ、リアルでは角刈りの中山キンニクくんらしい。まぁネカマは女より女らしいから怖いよねぇ」

そう言って藤井さんは大笑いをしていたので、サービスだと言って別のカクテルを出してやった。
もちろん、唐辛子とタバスコ全開のスパイしーな奴を。

とりあえず、やられた。
やられたなり。
とりあえず見つけてぶち殺したい。
おっさんの純情を踏みにじりやがって、あの角刈り野郎。
届くといいな。この気持ちこの想い。

ツカさんには面白いから黙っていよう。


わたしは甲府でBAR【SENGOKU】を営むマスター凸。

ご同輩…今夜もいい夢はみられそうにないなぁ。


【終】

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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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非公開コメント

No title

それなりはDだろう。高尾部長はIカップはありそうだ

にぃににしつもん。

おぱーいのそれなりはなにかっぷぅ??

きになるんだにゃん♪(*´ω`*)

次は藤井さんのバソだな

ふふふw 藤井さんw

ペペロンチンコだおw

No title

工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工
記者さんは俺と一緒に一匹狼だと思ったのに!( ;∀;)

No title

>藤井さん
まぁ色々できるからねぇあれは
ただ、操作や細かい設定がだるすぎるw

>みさおん
きゅん♩に殺意が湧いたぜw

>ナミ
たまにはツカさんに連絡しろよなw

>烈風記者さん
おぅ!これはおめでたい!
ご多幸をお祈りします

おもしろせつないね。

先日、俺、プロポーズしましたよ。

バツイチから早8年。
ようやくハートブレイカーを飲み干しました。

No title

ツカさんに現地妻、、、
なるほどね、あの時の話はそーゆーことか
謎はすべて解けた!!

No title

周防さんって確かに淡白そうな。。。あ!ゲホゲホ
人の恋話ほどおもしろいものはなしw
その後が読みたいきゅん♪

No title

ツカさん戻ってこないFF面白いんだろうなぁ
同僚も廃プレイしててわらたw
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Author:凸
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生息地:都内在住
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