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モブって藤井さん!



SAOサーバーがそのまま流用されたSAOの後継とも言えるアルブヘルム・オンライン。
レクト・プログレスから発売されて既に一か月が経っている。
さすがに、藤井さんでも最初は購入をためらったが、空を自在に飛べるというキャッチコピーに我慢ができなくなってしまったのだ。

散々ためらったすえに、アマゾンポロロッカの購入サイトで購入ボタンを押した。
SAOで散々な目にあったにも関わらず懲りない男である。

ナーヴギアの後継機であるアミュスフィアを購入しなくても、ALOはナーヴギアでそのままプレイ可能だ。
SAO事件以来、押入れにしまっていたナーヴギア。捨ててしまおうかと思ったが、やはり捨てきれなかった。

久々にナーヴギアを装着してログインする。

ALOは完全スキル性でレベルが存在しない世界。9つの妖精族が天上界を目指してしのぎを削る。
藤井さんはアバターに妖精猫妖精族(ケットシー)を選んだ。

雄の猫ちゃんアバターである。名前を「フゥニャン」と決めた。
フライト・エンジンを搭載したALOでは全ての種族が羽を広げて飛行移動が可能だ。
これが慣れると超絶楽しい。やみつきになるのだ。

「今度はしくじらないぞ」

藤井さんは、SAOで失敗している。女で失敗したのだ。女の情念を侮っていた失態である。
女は怖い。女は当分もうやめとこう。そう固く誓った。

所詮モブキャラ。キリトやアスナのように主人公どころか、周りの主要キャラにだってどうせなれない。
モブはモブらしく慎ましく遊んでいるのがお似合いだ。

考えてみれば、だ。

よく歴史好きの豪放な団塊世代の親父が「時代が時代なら俺も…」とか言っていたっけ。
戦国時代に生まれていたら、俺も時代に埋もれず名を成す英傑になり得たとか、うそぶくのを聞いていた。

戦国時代に侍がどれだけいたのか知ってるのだろうか。
日本中の隅々に、英雄豪傑が雲霞のようにいた時代。戦塵の中にどれほど武功を挙げ、名を成した人物がいるのか。
その多くは一兵卒のまま、矢に撃たれ、槍につかれ誰にも知られず一生を終わる。それがモブの宿命だ。

尾張中村の百姓が太閤とまで成ったとは言え、戦国だったからではなく、その人間の資質がそうさせたわけで。
あれだけの乱世に太閤は一人しか出ていないのだから。
時代じゃない時代じゃないんだぜベイビィ。

そう思うと、やはり己の分をわきまえた生き方が一番心地よいのだと、藤井さんは沁沁思う。
SAOでハーレムを作ろうなどと、自分には過ぎた望みであったのだと猛省する。
モブはモブらしく生きる。俺はモブット族の王になる!とまでは当然言わない。

それなりに遊んで、それなり楽しもう。
今度はリアルで死ぬこともないのだから。

藤井さんは、始まりの街でNPCに情報を聞きながら世界観を計る。

さすがに妖精の国だけあって、ディズニーアニメの世界のように全てが色鮮やか極彩色で目に痛いほど。
街を横断して流れる河ですら、キラキラと光輝いてる。

女性はこの景観にうっとりして、雰囲気に流されたチョロインになりそうだ。

おっと、いけない。女は当分御法度だ。首をブルブル振りながら藤井さんはすかさず己を戒める。
二の鉄は踏まない。これがモットーだ。

でもしかし…。

そこらを歩いている妖精の姿、特に女性はあまりにも可愛すぎるし美しい。
スタイルはいいし、アバターとは言え惚れてまうやろ。
中身は知らんが、とにかく美男美女のオンパレード、バーゲンセールだ。
リアルがこんなんだったら、美人とかハンサムとかの概念はないだろう。これが当たり前の現実なのだから。
逆に不細工はもてるかもしれんなと藤井さんは苦笑する。

とは言っても、自分の猫ちゃんアバターも捨てたもんではない。
少し小柄に設定しているので、とてつもなく愛くるしいケットシーになった自信はある。
あとは「猫語」をマスターすれば完璧すぎる。

ともかく、まず安い装備を買おうと武器屋に入ろうとした時に、目の前の建物に何かがぶつかった。

ズガガァン!!

「ん?」

その反動で歩道に黒いものが落ちて来た。
黒い姿のスプリガンである。まだ初心者だろう。羽がぎこちなく上下している。飛行に慣れてないようだった。

近づいて見ると、顔があのキリトに似ていた。
まさかな…と思ったが、声をかけてみる。

頭を抑えてながらスプリガンの男は立ち上がった。

「おい、あんた…まさかキリトさんじゃ?」

藤井さんがそう聞くと、スプリガンの男は怪訝な顔をしながら首を振る。

「うんにゃ。オラは美しき魔闘家タカハシってもんだべー」

この馬鹿がっ!
まぎらわしい顔しやがって。誰だよおめーは(タカハシだけど)。
美しき魔闘家じゃねぇ!サイチバあたりのカッペがよ。
そう言いかけたが、特に関わる必要もないので人違いだったと謝ってその場を去った。


さて、装備を一式買いそろえたが、もう手持ちの金がない。
狩りやクエストをしながら金を貯めるしかない。

「まぁ簡単なお使いクエとかあるだろう。NPCに片っ端から聞き回るか…」

街の外れに一人の行商人が立っている。
明らかにNPCである。栗色の髪を後ろで縛って愛くるしい顔がたまらない。
しかもすげぇボインちゃんで藤井さん的にはドストライクである。

だが、女断ちをしている藤井さんは冷静だ。賢者モードに入った藤井さんの結界は盤石である。
話しかけると行商人にこりと笑って話し始めた。

「あっ、こんにちはー。あたしは旅の商人のリムナスと申します。フゥニャンさんにお願いがあるのですが聞いて頂けませんか?」

なんかつまらなそうなので断る藤井さん。そこに痺れる憧れるぅ。

「はい ×いいえ」

「ええっ;そんなこと言わずに、お、お願いしますよぅ。聞いてくれたら今夜一晩あたしを好きにしていいですから…」

藤井さんは鼻で笑った。

「ふっ…。甘いな。それぐらいで賢者モードのATフィールドを破れるとでも」

「あ、そうそう。あたし挟むの得意なんですよぉ♡」


「○はい いいえ」


やっぱり藤井さんは全然懲りてなかった。
世界よ、これが藤井だ。と言いたくなるほど藤井さんらしい。

挟むという語彙に反応してしまう己の性は、前世の業ゆえか。

リムナスの頼みとは、初心者が最も簡単にできるお使いクエだった。

城外の神殿にある「クリスタル・プレーン」を取って来て欲しいというもの。
初心者ゾーンとも言える始まりの街周囲は、モンスターも弱くデフォルトの戦闘スキルでも十分倒せる。

「めんどいけど、最初はコツコツやるしかないかぁ」

装備を確認して城外へ出ようとすると、一人の音楽妖精族(プーカ)が立ちはだかった。

男性の妖精族で、優男タイプだ。とんがり帽子にハーブを持って如何にも軽薄そうに見える。

「へい、そこの猫の人!お待ちなさい」

「……」


藤井さんは無視して通り過ぎようとした。

「ちょっ、ちょっと、待ってぇな。猫の人。無視せんといて」

耳に障る関西弁だ。
女の関西弁はいい(おばちゃんを除く)。しかし藤井さんは男の関西弁はうざくて嫌いだった。

「どいてくれ。これからクエにいくんだから」

「クエですて?ははーん…あんさんもあれでっか、あのボインちゃんにクリトリス取ってきてと頼まれましたか」



ピキーンと場が凍り付く。恐ろしいほどつまらねぇ下ネタだ。こいつ…

が、しかし…

なんだろう、この腹から沸き上がってくる衝動は。

「ぷっ…くっ;」

藤井さんは気がついた時には爆笑していた。
こんなしょーもないギャグで笑わされてしまったのだ。

しょーもなさすぎて笑うしかなかったのだろうが、不覚にも笑ってしまった。
これを掴みと言う。藤井さんはまんまと掴まれてしまったのである。

笑い終わると、藤井さんは下ネタ男に握手を求めた。

「藤井だ。よろしく」

「あんた、それリアルネームちゃいまっか?フゥニャンって出てますがな」

「あっ!しもた><つい癖で;」

「ははは。なんやけったいなお人やな。わいは、ガクト言います。よろしゅう」


二人は固く握手した。

男達は出会った。この妖精の世界で。

この出会いが藤井さんのネトゲライフを大きく変えていくことになる。



わけはなかった。


ガクトもつい先日ログインしたばかりだと言う。同じ初心者である。

「まぁ、フゥさんとでも呼ばせてもらいますわ。わいのことはガクやんでもガクトンでも」

「わかったよガクやん。しかし、なんで俺に声を?」

「ふふ。わかるんですよ。同じくせ者の匂いはね」

「くせ者…。確かにそうかもな」

「まぁ、ここで出会ったのも何かの縁。なかよぅやりましょ。で、まずはクエでっか?」

「うん。正式名称はリムナスの願いと書いてあるな」

「わいも受託中なんですが、出張で九州に行ってたんでそのままほかしっぱなしで。ほしたら、ちゃっちゃっとやりまひょか」

「了解。じゃあ行こう」

「あいあいサマンサ!」


思いもかけず仲間ができた。
MMORPGの醍醐味はまさにこれ。

リアルではまったく接点を持たないだろう人達と知り合えることだ。

面白い男だと藤井さんガクトを気に入った様子。
それに女じゃないので気兼ねしないでいいのが楽だ。下ネタをばんばん言える。
SAOでは、下ネタを徹底的に禁止されていたからなぁ。

そういや…レイラは無事に復帰できたんだろうか。
すげぇトラウマになってんだろうなぁ。
思えばひどいことをしたもんだが、まだ若いしリアルで傷物にしたわけじゃないからいいだろう。
おっさんと女子高生なんぞ本来接点を持つべきではないのだ。

つらつらとSAOの想い出を頭に浮かべて森を歩いてゆく。
途中、ゴブリンに数匹遭遇したが問題なく撃破した。

森の中央部に小さな神殿があった。クリスタルで建造されているらしく青い光をたたえている。」

「ごっつ綺麗でんなぁ。こりゃすごい」

「う〜む、ゲームの世界とは思えないリアルさだな…」


神殿が放つ光に感動する二人。

扉を開けて中に入ると、ローブを纏った老婆のNPCがいた。

「おやおや…。妖精がこんなところに来てはいけないよ。さっさとお帰り」

そう言うと、いきなり大蛇が現れた。よくあるシナリオだ。

藤井さんとガクトは戦闘準備をした。

ケットシーである藤井さんはするどい爪と俊敏な動きによる直接攻撃。
これに魔法力を加えるとさらに強力になる。

プカーであるガクトは音楽妖精族らしくハーブを鳴らして敵の動きを鈍くしたり、命中力を下げたりする戦闘サポート。もちろん魔法攻撃もできる。

あっさりと、大蛇を倒してクリスタルを手に入れる。クエなので二人にそれぞれクリスタルがロットされた。

先ほどの老婆が、美しい妖艶なハイエルフの娘に変わって、呪いを解いたお礼を言って来た。
競り上がった丸い物体が目の前に迫ってきたとき、藤井さんの理性はふっ飛んでしまった。

「お礼よりおっぱい触らせろ!」

藤井さんは、ハイエルフに抱きついて胸を揉みしだいた。
ハイエルフの娘は苦悶に満ちた表情を浮かべて悲鳴をあげた。

「いやぁっ!!」

その瞬間

バシィッ!!と音が唸り、画面がノイズにまみれた。



「……あれ?」

「……ここって、まさか…」


二人とも転移された先は監獄牢だった。

NPCとはいえ、自由度が高いVRMMOにおいてはPCと変わらないくらいのフィジカルAIが設定されており、ハラスメント行為も有効となっているが、AI判定の許容範囲であるならば、NPCと恋愛もできてしまうという。

また、アンチクリミナルコード有効圏内において、殺傷行為をしたものは全て数日のアカウント凍結のペナルティが科せられる。

藤井さんの行為に関して、ハイエルフのAIが認めた許容範囲であったなら、問題はなかったのだが、いきなりおっぱいわし掴みにされりゃ、AIも怒りますよね。パーティーメンツもとばっちりをくらうのでご注意あれ。


「フゥさん…、さすがにあれはあきまへんて;わしでもようやらんわあんなセクハラ…」

「いやぁまぁ…すまん。しかしあの胸だきゃあ揉んでおかないとって思って」

「なんや、しょーもないことでわいまで同罪かい;おえんでほんま;;」

「まぁまぁ。俺たちの冒険はこれからさ。ヒュー!」

「なんやのヒュー!て…。えらい人と知り合うてもうたわ」


そう言いながら悪びれもせず、屈託なく笑う藤井さんに当てられてガクトも笑い出した。
こんな失敗も初期の冒険のひとつであろう。

12時間後監獄から放免された藤井さんは、ガクトとフレ登録して別れた。

ガクトとギルドを作るのも悪くないなと思ったが、種族が違うので難しいかなとも思う。
もともとは住むべきエリアが違うし、ALOでは種族自体が大きなギルドとも言える。

「さぁて…と。何をしようかな」

とりあえずスキルの習得が課題だが、何か職についたほうが金は楽に稼げる。
この世界はもう夜の時間帯だった。

実は風俗も存在するこの世界。
といっても、あくまで搭載された動体アクセラレーションによって、脳がそう感じるだけのことだが。
だが、脳が感じるということはリアルに体感しているということにもなる。

RMTやチートなどのように、このような行為は運営的に禁止事項であるが、それでも人の欲求に戸は立てられず。
女はこりごりと言って憚らない藤井さんは、先のセクハラ事件で悪い癖がむくむくと起きて来てしまった。

「風俗か…。つーことは、自分で経営すりゃ儲かるんじゃねーかな」

いい女を集めて、斡旋する。一晩だけのパートタイムラバー。
知らず知らずのうちに、口ずさみながらスティービー・ワンダーの真似をしている藤井さん。

「一人!まずは一人女をたらし込んで商売してみようか」


おいおい…。最初の趣旨とまったくちゃうぞ藤井さん。
あんた一体どこまでいくんだ。

そんな俺(筆者)の声も届いておらず、風俗経営、夜の帝王となるべく繁華街を練り歩く。
ここらは、アルブヘルムすすき野と言われる一番の繁華街である。

露出の多いコスで客を勧誘している美女達。
その中で明らかに過剰サービスまでしている風な店も見かける。

「まずは…自分が体験してみるしかないな」

藤井さんはそう言って、なけなしの金で派手なネオンを掲げる店に入った。

「くんずほぐれつん」という名前のキャバクラである。

店に入ると、かなりの広さだ。客も多い。
バニーちゃんの格好やレースクイーン、ビキニギャルなど、肩甲骨から生えた羽をブンブンさせて動き回たりボックス席で接待したり。

妖精なのだからあえてコスしなくてもと思うのだが、まぁ人の嗜好はそれぞれだしな。

男の従業員が来て、手前のボックス席に案内された。

「よし!ここで一発いけてるネーチャンをヘッドハンティングしてみよう」

と邪悪なことを考える藤井さん。
いいのか?ばれたらあんた海に丸太と一緒にうかぶぞまじで。

そんな俺(筆者)の声ももちろん届かず、悪い顔をする藤井さん。

女の娘がきた。背が高く金髪でブルーの瞳が憂いを帯びている。
ミニスカートでカジュアルなコスだが、妙に色っぽい。どこか陰のある雰囲気が色っぽさを際立たせている。
誰かに似ているような…。

「いらっしゃいませえ。ケットシーの人が来るなんてめずらしいですね」

たどたどしい言葉使い。まだ仕事に慣れてないようだ。

「まぁ猫と言っても性欲はあるからにゃ〜。にゃっははは」

猫らしく猫語を使う藤井さん。つかまじうぜぇと思うのは筆者だけではないだろう。
あざとくも毛繕いをする仕草をする。可愛いんだがなんだか許せない。

「可愛い…猫ちゃあん♡」

娘はそう言って藤井さんをぎゅっと抱きしめる。
猫が嫌いな娘なんざいないわけだよ藤井さん。
うらやまけしからん。俺も猫になりたいのん(筆者)

「むぎゅっ;;」

胸の圧力に窒息しそうになる。

押しつけてくる胸につけてあるネームプレートが目に入った。

「Reira」

そう書いてあった。

藤井さんは固まった。岩のようにカティンコティンに固まった。
ティンコだってこれほど硬くはならない。
すっごく嫌な予感が脳裏をよぎる。

「おや、どうしたんだい猫ちゃん?」

く、口調もあのレイラと…ま、まさか…ね。

藤井さんは心臓バクバク、冷や汗タラタラ、尿意全開。

娘から離れて、作ってあるジンロをロックで一気にあおる。
レイラという娘の顔をじっと眺めてみると、多少作りは変わっているが、面影が…ある!

「え、え〜〜とさ、つかぬことを聞くけど…」

「なんですか?」

「レイラにゃんは〜他のオンラインゲームとかやった経験とか…あるかにゃ?」

「………」

レイラは下を向いて押し黙ってしまった。

すると、テーブルになにやらこぼれ落ちるものがある。

涙だ。大粒の涙。
声を押し殺してむせび泣くレイラ。

これは…間違いなく、あのレイラだ。うっはぁ!まじやべぇ;;これはやばい;
ばれたらえらいこっちゃ;

レイラはうつむきながら、か細い声で途切れ途切れに語りだした。

「やって…ました。その世界である人に出会えて…すごく幸せで毎日が嬉しくて…」

ぐすぐすと泣きながらしゃべる様子。まさに浮気を咎めて泣きすがるレイラである。

「浮気をされて…悲しくて…。ある日、わたしは彼を許せなくなって…それで」

藤井さんにあの時の様子が浮かんでくる。

悲しい目をしたリアルの姿のレイラ。最後の最後まで美しかった。
殺された瞬間に藤井さんは、後悔や怒りより、正直すまんかったとしか思わなかった。

意識がとんで目覚めたら下田の病院だったという。
同僚はもう香典の準備をしていたのにと冗談を言っていた。

なぜ、帰れたのかは不明だが、生きて生還できたことは暁光とも言える。
しぶとい生命力と悪運が強い。それが藤井さんである。

「あたしが悪かったんだ…。あたしが;師匠のプレイのバリエーションについていけなかったあたしが…」

レイラは泣き崩れてテーブルに顔を伏せた。
何事かと周囲の視線が集まる。

「あはは…いやなんでもありませんから…」

取り繕って、レイラの頭を撫でてやる。

「レイラにゃん…師匠はレイラにゃんに殺されても本望だったと思うのにゃ。こんなに愛してくれる若い娘が一時でもいてくれたんだから」

「猫ちゃん…」

レイラは涙を吹きながら笑顔を作った。

「そうかな…。そうだといいな…」

「そうに決まってるにゃ。今頃あの世で天使に浣腸しまくってるにゃ!」

「ありがとう…。そう、だよね。師匠のことだもん……ん?」


そう言い終わるとレイラの美しい顔が不審な色に曇った。

レイラは藤井さんをじっと見る。


「猫ちゃん…あたしは師匠を殺したとも、浣腸プレイをしたとも言ってないはずだが…」

「え、えー!そうだっけにゃ?まぁたまたまにゃ…ってか、顔がこわひにゃレイラにゃん」

「それに、それはあたしと師匠しか絶対に知らないことなんだけど…」

「………にゃんとも不思議なこともありもうすでごわすねぇ;」

「はぐらかす時に、絶対西郷さん口調になる癖…ま、まさか」

「にゃ、にゃ〜〜〜ん…」


藤井さんは、また毛繕いを初めて誤摩化そうとしている。

レイラはずわっ!!と立ち上がると拳を握りながら、震えだした。

「師匠〜〜〜〜〜っ!!!生きてたのかぁ!!!」

怒号とともに藤井さんにつかみ掛かるレイラ。

ちびりながら、「やられる!!><」と思い、丸まった藤井さん。

その刹那、身体全体を激しい抱擁が包み込んできた。

「生きて…生きてたんだ師匠;よかった、よかったぁ〜ごめんよ師匠ごめん;」

わんわん泣きながら藤井さんの身体にしがみつくレイラ。
というか、アバターは猫だから愛猫家がペットを可愛がってる風にしか見えないけど。

レイラはまだ藤井さんにしがみついて泣いている。
心がほんのりと暖かくなってくるのがわかる。
藤井さんもレイラの頭をなでたり鼻の頭を舐めたりした。
ま、猫アバターだから許される所行っすよねこれ。
でなけりゃ、犯罪行為でしょっぴかれても文句は言えにゃいぞ糞!

藤井さんは思った。

一から出直しだな、と。

つーか、あんたまだ初心者だろう…。

と、無粋なつっこみはやめておこう。

この後、藤井さんとレイラがどうなるかはわからない。
だが、ひとつのわだかまりが解け、一人の女が大切な何かを取り戻したのである。
それで十分だろう。

できればこの後の話を語ってみたい気もするが、野暮はよそう。
男と女は夢芝居。恋のすじがき 花舞台 行く先の 影は見えないってなもんである。

この時間に平行してキリトとリーファが出会っていることなんぞ、藤井さんは知らない。
だって物語に1ミクロンも影響のないモブだから。

しかし、モブはモブなりに懸命に生きている。
群衆の中の一人であってもそれぞれ過去も未来もあるのだ。

藤井さん、我々は大いなるモブである。
されど世界を形づくるモブでもある。

主役じゃなくてもいいじゃない。
モブキャラに栄光あれ。

さらば、モブの中のモブ。藤井駿河守─。

【終劇】
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テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

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No title

>烈風さん
楽しんでもらえるとこっちも嬉しいもんです
しっかし、これ仕事の合間に30分ほどでやってるけど時間があれば書くかっていったらかけないんだよねぇw

おもしろすぎる!
一気読みした、ほんとでごわすにゃん

No title

>いのきさん
にゃー!

>藤井さん
実装したら3割は復帰すると見た!

城下町に花街ユニット実装してほしいね!

藤井さんネコ語でコメントして~

No title

途中の東伊豆ってところに住んでるおw

信onで花街作れば貫が自動でウハウハになる!

あんときのいのき親類の葬儀で下田に行ったんだけど、藤井さんの香典持って行くの忘れてた!
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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