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信オン 三浦を訪ねて三千里⑭



関所を突破してはや五日が経っている。
凸と美代はいまだ名古屋目指して旅の空にある。

「──しかし」

そう言って言葉を区切り、美代を見る。

美代は元気に道ばたの草などをからかいながら、くるくると動き回っている。

「いい加減めんどくさくなってきたな…。そもそも名古屋って日本の特異点だろ。なんで三浦は名古屋なんぞに行ったのか…」

しかし空を見上げてぼやいてみても始まらない。そもそもぶらり途中下車の旅気分で出て来たものだが、妙な連れあいもできて無茶もできない。独り身の気軽さが失われて女も呼べない。

そんな美代に情が移りつつあるのも確かだった。
それを認めるのがどうにもくすぐったい。

あんとき俺も所帯持ってりゃ、今頃、美代より大きな娘がいたかもしれない。
昔の女を想いだすと、妙にせつなく寂しくもある。今頃どうしてるだろう。
家庭ができて楽しく笑っているのだろうか。

秋空に吹く風は、柄にもないセンチメンタリズムを誘発するから始末が悪い。

そんな凸の胸中を察したように、美代が手を握ってくる。
そういえば妹の姪が小さい時によく遊んでやったっけ。
あれも今では二十歳を過ぎているだろう。

子連れ狼ならぬ子連れ侍、そして見上げれば秋の空と師走の匂い。
まぁ、悪くない取り合わせかもな。

美代は何が面白いのか笑ってばかりいる。
凸はほんのり紅潮した頬をつついて遊ぶ。

「なんなん!」

「なんでもない」

「あっ!赤とんぼ」


美代は手を離してトンボを追っかけていく。
まだ日は高い。名古屋まではまだあと三日ほどかかるだろう。
暮れるまでに宿を探さないと。

しばらく歩くと、道が二手に別れ分かれ目の中央に小さな石碑があった。
石碑に掘られている文字を読む。

「ぬ…。ここより右…抜首村…ぬっくびむら?」

右の道は本道よりやや細く遠方に見える山の麓までのびていた。
左が多分、名古屋までの道だろう。

凸はその奇妙な村の名前が気になる。
額に手を当てて記憶の断片を拾いだす。

「ぬっくび…というと…」

そうだ。九州の染野付近にあった旧名の場所である。
お袋から聞かされたことがあった。

ぬっくび、くびなげ、とりくび…。いずれも昔人のネーミングセンスに感心したことを思い出した。

「首をとられちゃうのかなん?」

「さぁな。たぶん、昔に罪人が咎を受けて首を抜かれるとかあったんだろうよ。にして気味の悪い名前だ」

「怖いのん…」


美代はぎゅっとしがみついて震えだした。
最初に橋のたもとで会ったの剣幕を思うと笑いがこみ上げてくる。


「いってみるか!その村へよ」

凸はまるでお化け屋敷にでも入るような物言いで、村への道を指差した。

「え〜〜〜!!;;」

美代は悲鳴をあげると、泣き出しそうな怒ったような顔で凸の腰をたたき出した。


「やだやだやだやだやだやだ!!!行きたくない〜」

「まぁ、落ち着け美代。ちょっと確かめたいこともあるんだ」

「なんなのん、それ;」

「それを確かめにいくんだ」

「意味がわからないのん…」

「ガキにはまだわからんだろうな」


美代はすねてぷいっとそっぽを向いた。

子どもは子どもなりにプライドがあるらしい。
そろそろガキ扱いされるのが嫌になってきたようだ。

しかしガキはガキだ。
よく小学生の子どもなどを「大人だねぇ〜」と褒める馬鹿がいるが気が知れない。

ガキはガキなりに分別を持たせないといかん。
決して大人と対等ではないのである。

「どうしても行きたくねぇならここで待つか。俺はどっちでも構わねえぞ」

ちと意地悪く凸は言う。涙目になって意固地になる幼子を見ると、イライラしてくる性分なのだ。
大人大人と偉そうに言っても凸自身も大人になりきれない子どもである。

凸も意地になっている。美代と精神状態が変わらないのだ。


「………」

美代は石碑にうつむきながら腰掛けて黙っている。
肩が小刻みに震えて今にもわんわんと泣き出しそうだ。


ったく…これだからガキは何かとめんどくせえ。

もちろん、本気で置き去りにするつもりはない。
怖いというのもわかっちゃいるが、どうしても確かめたいことがあるのだ。

それに、このまま名古屋を目指しても暮れるまでに道沿いに宿がある保証はない。
この時期に野宿だけは勘弁である。

村にいけば、それなりに夜露をしのいで最低でもネグラにはありつけるのだ。

凸はため息をつきながら、美代の頭をなでた。

「おい美代。怖いことなんざ何もねえよ。それに村についたら夕食はハンバーグにしてやる」

ハンバーグと聞いて美代の目がキラーン!と輝いた。

「ハンバーグ!!本当?」

「ああ、嘘は言わねえ」

「行くのん!」


やっぱガキは現金なもんだ。食い物でほいほい釣れる。


と──

その刹那異様な殺気を感じた。

粘り着くような鈍い殺気。これは──


「にぃにー!!」


振り返ると奴がそこにいた。

ポテトチップス(うす塩)を片手にボリボリと咀嚼するでかい口と丸い目と顔。
武田所属の妹分。不動かずはである。

「いやぁ、うす塩ポテチうめぇー!ボリボリ…」

「またお前か」



美代は首をちょこんとかしげながら、かずはの食いっぷりを見て凸に訪ねた。

「おじちゃん、この丸いおばちゃんだぁれ?」


【続くん】
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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>藤井さん
ポテチよりカラムーチョ!

>かずは
九州しょうゆとか知らねえw
丸いといえば、どらえ(ry

No title

そこは「九州しょうゆ」でしょ><*
たしかに「うす塩」も捨てがたいが・・・

ってか、丸い・・・おば・・・

コロス!ブッコロス!!!

No title

Wコンソメ!
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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