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信オン 三浦を訪ねて三千里⑫




翌日、宿を後にして一行は関所へと出発した。
美代はぐっすりと眠って疲れも取れたようで、ことのほか元気がいい。

それと対照的に凸は浮かない顔で歩いている。

武田と織田が敵対とはまったく気がつかなかった。
国勢を確かめれば普通わかるものだが、合戦から身をひいた凸は頓着がない。

「まいったなり…」

ぼやきながら思案にくれるが、そもそも侍は隠形の術が使えない。
僧のように踊り念仏で敵の目を欺く術もない。

関所は敵国どころか、浪人ですら厳重なチェックをしているという。
一人だけならまだしも、子どもの連れがいて突破できるとは思えなかった。

「なぁタツヲ。どうすべぇ」

「ん…。一番いいのは変装かなぁ。紋を隠して顔も変えるとか」

「変装できる衣装なんて持ってねえし。大体、どうやって顔を変えるんだよ」

「化粧とかかな」

「化粧道具もねえよ」

タツヲは足を止めてしばし考え込んだ。
そして何か気づいたようにぽんと掌を叩いた。


「よくよく考えてみるとだよ」

「なんだよ」

もったいをつけているのが、凸にはイライラする。
横柄な口利きで返すと、先を行く美代を見ながらタツヲが云う。

「誰かに預けりゃいいんじゃねーの」

「美代を…誰に預けるってんだ」

「さぁ。でもあんたと一緒に那古屋まで行くのは難儀すぎるだろ」

「……」

「美代っぺは、まだ無印だし子どもだし関所は特に問題なかろう。旅の商人とかに紛れて那古屋を目指すのが妥当だと思うが。互いの身のためにもさ」

「そりゃそうだが…」


凸は美代を見ながら、なんとも淋しい想いにとらわれている。
押しつけられた荷物だったが、今では空気のように当たり前にいるのが自然となっていた。

ここまでひと月ちょっとの旅だったが、親のような気分にもなっていた。
それにここまで来て、三浦と美代の対面に居合わせられないというのも気持ちが悪い。
少なくとも、三浦にはここまでの諸経費も請求するつもりである。
しかしそれは美代を送り届けてこその話である。


「あとは、もうひとつ方法があるが…これは危険だろうなあ」

「なんだそれ」

「強行突破。しかしこれは…運次第という諸刃の剣」

「俺一人ならなんとかだが、美代がいては難しいな」

「うまくいけばすんなり。失敗すれば二人揃ってお尋ねだな」

「ううむ…」


腕を組んで考え込む。
美代を危険な目に遭わせるのを覚悟で強行突破か。

それとも、誰かに預けて那古屋まで送り届けさせるか。
しかし、信用にたり、すっとんで来てくれる知人など皆無である。

「強行突破って何か策はあるのか」

「一応。でも成功率は五分五分ってとこだろう」

「50%の賭けか…。ふむ」

「等価パチンコに比べりゃ結構な鉄板確率だろう」

「とりあえず作戦を聞かせろ」


関所まではもう一本道の緩い坂道を下るだけだ。
凸とタツヲは道々に強攻策の仔細を語りながら、前を歩く美代に連なって歩く。

ここらは山の反対側に位置して雪も少なく歩きやすい。
中腹を過ぎたあたりから、行き交う旅人も多くなってきた。
道も幅が広くなり、徐々に関所に近づいていると実感が湧く。

前を歩いていた美代が道ばたにしゃがんで何かを拾っている。
タツヲのところまで、てってっと走り寄ると黒い塊を差し出した。

「僧兵のおじちゃん!はいこれ」

「え、なんだなんだ」


見るとそれは炭の塊だった。

「いや…もう炭はいらん」

そう断って制すると、美代は泣きそうになって震えた声でじっとタツヲを見た。

「僧兵のおじちゃん…炭ほんとにいらないのん?」

「いや…炭はほんといらないんだ。もう僧兵は炭を掘ることもなくなったのだよ」

「残念なのん…」

目をうるうるさせながら、炭を見つめている。
いまにも泣きそうだ。

タツヲは困ってしまった。
幼女の泣き顔と猫の肉球にはめっぽう弱い。

「タツヲ。もらってやれよ」

凸は泣かすなよと云わんばかりに、ぞんざいに言い放つ。


「いや、でも炭とか一個だけもらってもなぁ…」


タツヲは観念したように美代の掌から炭をとろうとした瞬間、黒い陰がザッと目の前を通りすぎた。


「うわっ!!」

「ひぇ!」


美代とタツヲが短い叫び声をあげて尻餅をついた。

旋風のように風の中に人形が現れると、そこには紫の水干を纏った若い男が立っていた。
手に持たれているのは、タツヲが受け取ろうとした炭である。

「1炭を笑うもの、消し炭に泣く」

そう云うと持っていた炭をタツヲに放り投げる。


「あ、あんた…」

タツヲの言葉をきって凸が云う。

「木乃…!?」

「やぁ僕です」



木乃と呼ばれた男は、表情を一切変えずに右手をあげて挨拶をした。

「生きてたのか…」

「ええまぁ」

タツヲが美代を抱き起こして、泥を払って怒気を込めてなじった。


「木乃さん、脅かすなよもう!」

「タツヲさんおひさしぶり。相変わらず僧兵ですか」

「僧兵はやめらんないよ。木乃さんだってずっと仙論じゃないか」

美代は不思議なものでも見るように木乃を見てぽかんとしている。
女みたいな容姿だからであろう。
纏っている水缶罐も鮮やかな紫で染めてあり、よく寒くないなと思うほどの薄着である。
凸とタツヲのようにむさ苦しい出で立ちではなく、華やかさがあった。

そんな美代に微笑みを浮かべながら木乃は云う。

「ヒント:職業は勇者」

「魔法使いだろお前は」

凸がつっこむと、木乃はいきなり態度を崩して

「その呼び方やめて!(´・ω・`)」と懇願してきた。


木乃は凸とタツヲの共通の知人であり、武田古参の戦友でもあった。
昔からつかみ所のない性格で、ゲリラに漏れて晒されるという特異点を持つ男である。
タツヲとは炭山で炭を掘っていた仲間だ。やはり炭をこよなく愛していた。

「よく生きてたな…。てかなんでこんなとこにいる」

「僕はどこにでもいるさ(´∀` )」

「相変わらずわけのわからない…。変わっとらんなぁ」

凸は呆れながらも懐かしそうに木乃の方を叩いた」

タツヲの横にいた美代が木乃を眺めながら、水干を引っ張る。

「これすごく奇麗なのん!魔法使いはみんなこんな奇麗なのん?」

木乃は目を輝かせて水干の手障りを確かめる美代の頭を優しくなでながら、しゃがんで目線をあわせる。

「お嬢ちゃん、お名前は?」

「うち、美代っていうん」

「美代ちゃんか、いい名前だね。でも僕はおじさんでも魔法使いでもないんだよ」

「だっておじさんが、魔法使いって言ってたのん」

「あのおじさんの言うことは全部嘘さ。魔法使いはね、30歳過ぎた童貞君しかなれないんだよ」

ぱしんっ!


凸が後ろから木乃をはたいた。


「幼女に何を教え込んでんだ馬鹿」

「木乃さん…さすがにひくわー、まじひくわー」

「 アメリカン・ジョークっすよ(´-ω-`)」


木乃は、あるクエストの依頼をこなすために尾張へ向かうのだという。
陰陽は隠形が使えるので敵国だろうと問題はない。

凸は今までの仔細を話すと、木乃は自信ありげに胸をはった。

「そんなことでお悩みか。では僕が力を貸そう」

「お!何かいい知恵がりそうだな」

「さすが木乃さんや!星のカービィーや」

凸たちが褒めると、ぷいっとそっぽを向いてツンデレ口調になった。

「べ、別にあんたたちのためじゃ以下略(笑)」

「(笑)が気になるが、まあいい。じゃあ早いとこ関所へ向かおう」


凸が表情を明るくして言うと、美代も手を上げながら走り出した。
また一人、関所までの道連れができたが、果たして無事に関所を突破することができるのだろうか。

その不安は完全には払拭できてはいない。
美代の笑顔がその不安をいくらか和らげてはいた。

ま、何とかなるだろう。
関所はもう半刻ほどに着くはずである。


と、突然その緊張感を打ち破るようにタツヲが猫言葉でぼやいた。

「関所はまだかニャア?早く辿り着きたいもんですニャ」


「……( ´_ゝ`)」

「……( ´ω`)」

「……(´-ω-`)」


以降、凸をはじめとする4人は関所まで無言であったと言う。

【続く】


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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>いのきさん
僧兵だよ!ぺぺろんちんこ!

>ナミ
俺の副業は空き缶広いだ
いい空き缶見つけたら持ってこい!

No title

久々にのぞいたらミウ-ラシリーズ⑫!!なげぇw

わたくし9月から休止中ですが、
最近凸さんの副業が半愚連ともっぱらの噂<丶`∀´>

僧兵の品格が…
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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