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信オン 三浦を訪ねて三千里⑪



峠の宿には夕刻に着いた。
思ったより立派な門構えで敷地も広い。
関所手前で旅人の往来もそこそこあるからだろう。
宿というよりちょっとした旅館だった。

「ふぅ。ようやく着いたな」

凸は宿の土間で雪と泥を払いながら荷物を預けた。
動きを止めるとさすがに冷える。
隅に置いてある火鉢の温もりが何とも暖かく心地良かった。

お決まりの挨拶をしながら人の良さそうな宿の主人が顔を出す。
まず名を書いてくれと番台に帳簿書きを広げている。


「うん?今まで名を書くようなことはなかったが…はて」

凸がうさん臭げにそう云うと、主人は頭をさげながら関所の役人から申し付けられてるという。
近頃、他国の間諜が多数入り込んでいるらしく、豊臣方がぴりぴりしてるとのことだ。
なるほど…。今は戦国時代ということを忘れていたな。
先の豊臣の小田原城陥落で各国の大名の動きもきな臭くなってきているわけか。

そんな思惑をよそにタツヲはごねることもなく帳簿に記入した。
すらすらと流暢に白い半紙に筆を走らせる。

筆で記入された文字をみると アルミン と書いてあった。

「タツヲ…。アルミンって誰だよ」

「しっ!いいんだよこんなん。偽名でさ」

タツヲはひそひそと小声でささやきながら、目配せをした。
あくまでも形式だけだから本名を明かす必要はないとのこと。
それもそうだな。何も馬鹿正直に書いて痛くもない腹を探られるのは塩梅が悪い。

「ふむ。それなら俺も…」

凸も負けじと筆を走らせる。

タイガー&バニー

「凸さん。ねーよ。これはねーよ。ねーよねーよねーよー」

タツヲが首を振りながらNGを出している。

「虎さんとうさぎちゃん。俺と美代にぴったりだろ?てか、ねーよねーようぜぇ」

「ゴリラと猫の間違いだろう」

「誰がゴリラだこの野郎!こんなキュートなゴリラがいるか


美代は二人のやり取りなど興味もなく、宿屋の主人にあれこれ聞いている。

「ここお風呂あるのん?」

「ありますよ。お肌によろしい天然温泉ですから」

「温泉!すごい、すごい!!」


美代は温泉と聞いて飛びあがらんばかりにはしゃいだ。

「おじさん、早くいくのん!温泉いくのん」

「温泉は後でな。先に部屋にいって荷物を置いてくるのが先だ」

「早くお部屋にいくのん!」


案内する女給をせかしていてもたってもいられない様子だ。
女給も美代を気に入ったらしく背中を押されながらもするがままにさせていた。

長い廊下で数名の逗留客とすれ違う。
我々以外にもそこそこ客はいるらしい。

部屋に入るとこぎれいな十畳間だった。
十分な広さではある。

女給は火鉢に火を入れると茶を持ってまいりますと云って襖を閉めた。

「タツヲ。ところでお前金持ってんの?」

凸が足を揉みながら聞く。


「あるよ」

「ほぅ。荷物をかっぱわれたのにか」

「荷物には食料と数冊の書物だけさ。金は肌身離さず持っている。これマチュピチュ観光で学んだことだ」

「ふぅん。ま、金さえありゃ何の問題もねえか。俺もぎりぎりしかねえし」

「人がいなけりゃ金があってもたらふく食えないからなあ。山の中では物交換のが価値は高い」

「そういや…支那の奴らが私鋳銭の模造品を日本に輸出して利益をかっぱいでるらしいと客から聞いたな」

「ああ、南京のか。あいつらはほんと節操がない」

「そもそも永楽銭は奴らから輸入したものだしなあ。こっちの事情が筒抜けなのは堺か長崎あたりの回船問屋あたりが一枚噛んでるんじゃネェのか」

「銭の価値もどこかで一気に暴落するだろう。貨幣流通が成熟するまでには、この国はまだ時間がかかるってことだのう」

戦国時代の命の重さ。足軽なんぞ米1俵すらに満たない。
銭にしてもどれだけ積み上げれば、命に見合う対価になるのか。
幾多の戦友が死んだ。
モモや源、ユキヲにアサミ、こももに壬生、安倍、林檎に葵に清音…まだまだ数えきれない。
奴らはもういない。そしてそのうち俺も…。

その命ひとつひとつの重さが、饅頭一個だとしたら、あんま安いと腹いっぱいにもならんということか。
なんとなくおかしさがこみ上げてくる。

と、たまに真面目なことを考えてみるとぷすぷすと頭から煙が出てくるようだ。
元来、頭は悪いのだから考え込んでもしょうがないのだと凸は思う。
しかし悪いなりにも考える。考えて考えたすえに照れ隠しに下ネタに行きついてしまう。
やはり生来の品性が野卑であるのは否めない。

凸は三浦の残したガバスを荷物から取り出してみた。

それを見てタツヲがめずらしそうに目を輝かせた。

「おっ、ガバスか。ファミ通の奥付から切り離して取っていたっけ」

「飲み代代わりに三浦が残していったのよ。しかし、遠い未来にはこれが日本国の流通紙幣になったりしてな」

「ねーよ」


言い忘れたが、このようにタツヲはことごとく否定をするのが日課である。
FBの「いいね」があるが、タツヲだけのために「ねーよ」があってもいいのではないかと思えるぐらいだ。
一日に多分100回は「ねーよ」と云っている。人の意見を一蹴することが生き甲斐なのである。
故に、別名「一蹴さん」とも呼ばれていた。

「あっ!このガバス裏書きがしてあるぞ」

ガバスを眺めていたタツヲが裏書きされたガバスを凸に見せた。

「ほんとだ…。なんて書いてあるんだこれ」

「走り書きだなこりゃ。何かメモったんだろう」

凸は暗号を解読するかのようにまじまじとそのメモを読んだ。

「え〜〜と…なになに…日曜 19:30/ラピュタの録画予約…」

「三浦さん…ジブラーだったのか」

「ラピュタってテレビで何回もやってるよな?今更なんで録画予約とかしてんだ」

「たぶん…パルス言いたいだけちゃうんかと」

「あれ?その後に何か書いてあるぞ…ん〜?」

目を凝らしてみて見るとさらに小さな文字でこう書いてある。


できたらいいなぁ



「してねえのかよ!」

思わずつっこんでしまったことに凸は赤面した。
それを見てタツヲはニヤニヤにしている。

どうやらまたしても奴の術中にはまってしまったようである。
三浦という男はまったくもって謎が多い。

風呂に行くのを待っている美代はしゃがんで火鉢を覗き込んでいた。
火鉢にあたりながら灯の行方を見ているようだが、その目の行方はどことなくうつろに見える。


「とにかくさ、難しいことを考えてもせんないことだ。明日生き抜くことで皆必死なんだからな」

タツヲが外した眼鏡を吹きながら云う。
美代の様子を見てそろそろ風呂に行くかという合図である。

凸は大きく伸びをしながら立った。


「じゃ風呂に行くか」

「うむ」

「いくのん」



かぽーんと音がする。

桶が並び岩肌がむき出しになった浴場は、外気の冷たさに湯気も飛んでいた。

男湯には客が数名いた。
美代は女湯である。

空には満点の星。
あれがデネブアルタイルベガ〜とタツヲが唄う。

「星に詳しいな。陰陽のほうが向いてるんじゃないのかお前」

「陰陽術は学んだけど四天降魔法と十二神将召還術でつまづいて止めたよ」

「陰陽術は高度な数学であると同時に万象哲学であるとも聞いたな」

「向いてないのさ。だから僧兵をやってる」

「そうか。俺にもとても無理だな」


湯に入りながらいい気分で目をつむると、緩やかな疲労で眠たくなってきた。


「美代ー!!そっちはいい湯か?」

凸が大声をだして板越しの女湯の様子を聞く。


「いい湯なのーん」

美代の声が即座に返ってくる。
凸は反響してこだまする声に満足するようにうなずいた。

タツヲが頭にのせた手ぬぐいを絞りながら、また肩口まで湯につかる。


「なぁ、凸さんよ。あの娘っ子を本当に那古屋まで連れて行くつもりか?」

「ああ。まぁ成り行きだがここまで来たらしょうがねぇ」

「う〜〜ん…」

「なんだよ、何か問題があんのか」

「いや…あんた、大事なことを忘れてないかと思ってな」

「なんだよ」

「あんた武田だろ」

「もちろん。お前もだろう。そんなん紋みりゃわかんだろが」

「尾張は何領だ?」

「尾張ったら…そりゃ織田だろ」

「やっぱな…。武田と織田はいま合戦の真っ最中なわけだがね」

「ん…合戦…中?合戦……」


タツヲがあきれ顔でざぶんと顔を洗った。

「そう。武田と織田は合戦中だ。あんた敵国にそのまま乗り込む気か?」

タツヲの言葉に凸は顔を硬直させたまま夜空を見上げて悲鳴をあげた。

「う、うぎゃぁあーーーーーーーーーっ!!!!!」


美代は身体を洗いながら騒がしい男湯のほうを伺った。

「おじさん達、何さわいでるのんな」


【続くのんのん狸ですよ♩】
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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>藤井さん
ガバスと言えばチャングンソク!

>いのきさん
今はただ待つしかありませぬw

>三浦
おっぱっぴー!

No title

ログイン時間は短いけど、辛うじて生きてますよ

最近、安土で三浦さんにもかずはちゃんにもお会いしてません(。>д<)元気なのでしょうか?

No title

三浦さんと言えばガバス
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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