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信オン 三浦を訪ねて三千里⑩



山に入ってからは、歩き通しである。
細かい雪も降っているが、まだ大したことはない。

緩やかな傾斜から勾配のきつい坂を休むことなく歩く。
疲労のためか、さすがの美代も口数少なくなってきた。

「疲れたか」

凸が聞くと、美代は首を振って平気とだけ云った。

下界はまだ木々に紅葉もあり暖かみを残していたが、さすがにこの時期の山は寒い。
峠に近づくにつれ、積もった雪が多くなり寒々しさを煽っている。

しかし古い万屋で見つけた防寒具が寒さを遮断しているのでありがたい。
店の主人が娘が小さい頃着ていたというお下がりの防寒具をくれた。
これも美代の見目の良さを主人が気に入ったからに違いない。

なるほどと思う。

出会った時に、真っ黒でみすぼらしい身なりをしていたのは、山賊どもの目をごまかすためかと気づく。
これほどの器量があれば、山賊じゃなくとも別の利用方法を考える。
あの姉っぱりの娘はそう考えて泥で見目を汚していたのだろう。
必死で生きてるのは何も大人だけじゃないわけだ。

手をこすりながら、はぁと息を吐く美代を見て沁沁思う。


「おじさん、もうすぐ峠?」

「峠はまだ先だな。峠まで着いたら昼飯にすっか」

「わぁい」


飯と聞いて美代ははしゃぐ。
ガキは現金なものだ。

苦笑しながら、まだ積もりきっていない薄い雪の上を歩く。
時々振り返っては、足跡がついてきてるか確認するように。

歩いていくと前方に雪で盛り上がったものがある。
それは道を塞ぐように横たわっていた。


「なんだこりゃ…」

美代は凸の後ろに隠れて怯えている。

「これ人なのん」

「なに!?」


驚いて雪をかきわけてみる。
さくさくと雪をどけてみると確かに人が現れた。

眼鏡をかけて青白い顔をしている男だった。法衣を纏っている体躯はなかなかに立派である。


「なんだタツヲか…」


  /\___/\
/ /    ヽ ::: \
| (●), 、(●)、 |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |  < まーたはじまった
|   ,;‐=‐ヽ   .:::::|    \_______
\  `ニニ´  .:::/
/`ー‐--‐‐―´´\

そう云って凸は無言でまた倒れている男に雪をかけ始めると

「おおい!!」

そう叫んで男が跳ね起きた。

「お前、助けろよ!行き倒れだよ?僧兵だよ?なんて奴だまったく!!」

「なにやってんだタツヲ」

この男、武田の古参である僧兵 龍尾凶介 通称タツヲである。

「行き倒れだよ…。途中で飯がなくなって歩く度にぶっ倒れてる」

「飯か…。お前ら僧兵は炭食ってりゃ問題ないだろ」

「僧兵は機関車トーマスじゃないんだよ」

「お前も関所に行く途中か?」

「ツカさんと関所で待ち合わせしてるんだ。パタゴニアツアーの打ち合わせでね」

「ご苦労なこったなぁ。で、そのノボリは何だ」

タツヲの背中には真紅に染めたノボリが差してある。
白抜き文字で「世界で一番僧兵になりたい」と書いてあった。

「ああ、これか。これは結城さんに造ってもらったんだ。いかすだろ」

「アホや…」

「なぁ、とにかく飯をわけてくれ。丸二日何も食ってないんだ」

「しょうがねえな。行李飯とタクワンしかねえぞ」

「わぁいー。やったぁ」

タツヲが小躍りをしながら万歳をする。
まるでガキのようにはしゃぐタツヲを見て、美代がけらけらと笑い出した。


「さっきから気になってるんだが、凸さんよ…」

「なんだ」

「なんだ、その可愛い生き物は」

タツヲは美代を見ながら眼鏡をクイッと押し上げる。

美代は相変わらず凸の後ろに隠れて様子を伺っている。
怯えはないようだが警戒心は解いてはいない。

「ああ、これか。これは三浦の子どもだよ」

タツヲは目を剥きながらあらんばかりの声をあげた。

「な、なんだってぇーー!!」

「まぁ諸事情あってな。ツケ払いをもらうついでに三浦のもとに送り届けることになっちまった」

「ふぅん…。あの三浦さんにこんな子どもが」

「やることはやってる三浦。そこに痺れないし憧れないな」

「しかし…、三浦さんが結婚してたとか聞いたことなかったがなぁ」

「たぶん三浦のことだから、バックでやってる時に耐えきれずにコッペリオンしちゃったんだろう」

「…そのギャグすげぇ難易度高いぞ。ほとんどの人はわからん」

「さすがにガキの前ではこんなんストレートに云えんわな。とにかく…」

凸は覗き込むように二人のやり取りを見ていた美代の頭をなでた。
おっさん達のいみふな会話に困惑しているようだった。

「あの祠で飯にするか。な?」

凸が確認するように云うと、美代はうなずいて祠へ向かって駆け出していった。

「可愛いもんだなぁ」

タツヲが美代を見ながら、また眼鏡をクイッとあげて歩き始めた。
空腹でふらふらして頼りない足取りだ。

「まぁ、猫みたいなもんだな。幼い頃ってぇのは」

「器量が悪けりゃ、いくら子どもだって可愛く思えまいよ」

「まぁ、そりゃな。ドルジみたいなデブの糞ガキだったら蹴り飛ばしたくなるだろうな」

「だろう?可愛いのは正義だ。小学生は最高だぜ!」

「ロリコンは死ね!」



先ほどまでのささ雪は止んでいた。
古い祠の前にはちょうどいい切り株が無数に残っており腰掛けるには具合がよかった。
そこに腰掛けて笹包みを広げる。

美代は自分の包みをあけて口いっぱいに握り飯をほうばった。

タツヲは、合掌して涙を流しながら飯を食った。
丸二日食ってないのでさぞかし美味いだろう。

「おじちゃん、どこか痛いのん?」

美代がタツヲを見ながら不思議そうに聞いた。

「いや…嬉しいのさ。生きてるって嬉しいなぁ、ちくしょー!」

涙を流しながら飯をほうばるタツヲの様子がよほどおかしかったのか、美代はじっと眺めながら飯を食っている。
涙で眼鏡が曇ってまるでアニメのモブだ。
こんなに一生懸命飯を食う奴は久方ぶりに見る。

かずはも一生懸命食うは食うが、奴のは食事ではなく作業だからな。
清々しいまでの食いっぷりだった。

凸も笑った。大いに笑った。
3人は寒々とした空気が暖かくなるのを感じていた。

飯を食い終わると、タツヲはふぅと一息をついて寛いだ。

「いやぁ助かった。もうだめかと思ったよ」

「そもそも、なんで飯を持たずに山に入ったんだよ」

「かっぱらいだよ」

「かっぱらい?」

「山の入口でちょっと一息いれて寝ていたら荷物まるごとかっぱわれた」

「お前馬鹿だろ」

「認めたくないものだな。僧兵故の…以下略」


ともあれ僧兵タツヲが仲間に加わった。

といっても、関所につくまでの間だが。
とにかくこの山は今日中には超えられそうにない。

もう昼をだいぶ過ぎているし、日も陰ってきた。
峠に宿が一軒あると聞いていたので今夜はそこで一晩明かして、明日中には関所に着くだろう。

腹もふくれて体も温まったのだろう、美代は元気に飛び跳ねている。

タツヲという道ゆきの仲間が加わったのを喜んでいるようだった。
美代は先を歩くタツヲと寄り添うようにして話しかけていた。

「おじちゃん、僧兵って面白い?」

「ん〜〜、面白いっつうか…誇りある特化だ。崇高で優美でちょっとシャイなあんちくしょうみたいな…」

「叩けば埃(ほこり)が出てくる特化なのん?」

「僧兵の初期ステータスに犯罪履歴なんざねーよ!」

タツヲは笑いながら錫杖をカランと鳴らした。

「うちもなれるかなぁ。僧兵」

「ふっ…。幼い身で僧兵の道を志すとはな。おぬしなかなか見込みがあるな」

美代の頭をかいぐりと撫でながら満足そうに云う。

「うち煮込みうどんは大好きなのん」

「拙僧はハンバーグだな。あとラーメン」

凸は、その話を聞きながら何の話をしているんだか…と呆れている。
そういやタツヲって猫が好きだったよな。
よく、チャットでAA作ってニャー!とか云ってた気がする。

美代はどことなく猫に似ている。
そして藤井さんはトトロに似ている。

だからか。

何がだからなのか、意味不明だが何となく納得した。


そんなまったく関係ないことを思いながら歩く
雪を踏みしめ払いながら。
峠はもうすぐのはずである。


その頃、三浦たちは…

「いっき!いっき!」

尾張の繁華街で斬と共にキャバクラで、女に囲まれて一気飲み勝負をしていた。



もちろんこれは真紅の裏歴史に記されて

いるわきゃあなかった。

【続く】
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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>藤井さん
そろそろ鬼斬にいきますか!

No title

日に日に信の減退が・・・

No title

>いのきさん
あの歌の空耳がw

>三浦
いや既にクライマックスだぜ!

No title

そろそろ準備体操しだしてもいい頃合か?

コッペリオーン!!
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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