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信オン 三浦を訪ねて三千里⑤




橋を超えてからは、かなり歩を進めることができた。
尾張の関所は、前方に見える山を越えればすぐだと茶店の親父が教えてくれた。

ドタバタしていた旅はようやく落ち着きを見せた。
もう余計なトラブルはご免だ。

たかが三浦に会うのに、なんでこんな苦労をせにゃならんのか。
理不尽である。

一服いれよう。

凸は軒端のちょうどよさげな石に腰掛けて煙草を取り出す。
最近は一日一箱も吸わなくなった。

火をつけて白煙を吐き出す。
まぁのんびり行こうか。
ちと色々ありすぎて疲れた。

尾張に着いたら、まずは宿を取って三浦を探そう。

しかし…


凸は横にちょこんと座っている、美代と言う先ほどの娘を一瞥してため息をつく。

「はぁ…」

美代は凸を見ながら、まるい目をくりくり動かしながらニコニコしている。

なんだこの状況は…。
なんで俺はガキ連れで尾張に向かう羽目になったんだろう。


この美代は三浦の子どもだと言う。

じゃ、お袋は誰だと聞くと

「いないのん」

美代はそう言ってうつむいた。
美代の姉だと思っていた娘は佳代と言って、戦災前に美代の家の近所に住んでいたものだった。

佳代が仔細を話してくれて、あらかたの事情は理解できた。
住んでいた一帯は先の合戦で焼き払われ、大人は皆殺しにされたという。

村のはずれの豪に隠れ、生き残ったこども達を集めて寺の和尚がしばらく面倒を見ていたが、その和尚も病で倒れてそこにあの山賊たちが住み着き悪さをするようになった。


美代の家は地主だったが、入婿の三浦が美代が生まれた翌年に戦に出ると言って家を出てしまった。
家のものは必死にとめたが三浦の決意は変わらない。

若い女房は悲しみのあまりに床に伏せってそのまま亡くなった。

ある時、三浦から便りが届いた。三浦は合戦の武功により武田に士官したという。
もう少し手柄を立ててから故郷に錦を飾ると記してあった。
女房が亡くなったことを返信で知らせると、それ以降、三浦からの文は途絶えた。

祖父たちに育てられた美代は両親の顔は知らない。
ただ、祖母から父の話だけはよく聞かされて知っていたのである。

数年後、三浦が尾張で卸問屋をしていたという知らせを、村にくる行商人から知ることができた。
祖父祖母は何とか帰ってきて欲しいとの文を行商人に託すが、返信はなく時は過ぎた。

凸はさすがに怒った。

「ゲイ疑惑は晴れたが…腐れ外道だったか。外道はドブネズミに劣る」

三浦の真意はわからない。
娘に対する慚愧の念か、会わせる顔がないのか。

とにかく、三浦にはこれでツケ以外に色々貸しができたことになる。
ノシをつけて返してもらわねば。

途中の旅籠でこぎれいな古着を買い、風呂に入らせて身ぎれいにさせたり、飯を食わせたり。
なんで俺がこんな慈善事業をせなならん。

美代は着いていくと言ってきかなかった。

「うち、お父ちゃんに会いたいのん」

そう言って泣きじゃくる童女の姿は、ビームサーベルよりも強烈である。
佐渡先生や佳代は、無言で俺を見つめている。


「おい…やめてくれよ。なんで俺が…なぁ?」

「凸さん…。さすがにこれは連れて行かんと。ねぇ?

「えぇ〜〜っ;つか、なんで、あんた半笑いなん?」

「い、いや…笑ってませんけど。楽しそうだなぁと思って」

「やめてくれ;」


追い打ちをかけるように、佳代があのすがるような目で懇願してくる。

「お侍さま。何とぞ、美代の願いを聞いてあげてくださいませ。お礼は…お望みとあれば…あげます…」

佳代は顔を横にして顔を赤らめる。

「お礼…って。お、俺は別に…」

そう言いながら、佳代の胸の谷間をチラ見する。
ほんとに男はしょうがない生き物だが、股間は何よりも正直だ。

佳代は豊かな胸の谷間から、取り出したものを凸の手に握らせた。

「これを…」

佳代が渡したものは、数枚の紙切れである。

ガバスであった。


「……またこれかい!!」


そう言って地面に叩き付けた。

「わかったよ…」

凸は二人を見ながら観念したというポーズで両手を上げた。

「人は人のために何かをやらなきゃならん。不運にも俺にもその巡り合わせが来たらしい…」

佐渡先生が凸の肩を叩いて笑う。

「そのとーり。情けは人のためならず。ですしね」

「ありがとうございます!よかったね美代!ほら、お礼を言うんだよ」

美代は満面の笑顔で、凸にすり寄って抱きついた。


「ありがとう!おっちゃん

「おっちゃん言うな!!」



で……この状況である。


美代は凸の苦悩も知らず、草を織って遊んでいる。
髪も奇麗に梳かして縛ってもらい、年齢相応の身なりになっていた。

「おじちゃん!」

「なんだ」

ふてくされた顔で凸は答えた。


「おじちゃんって、悪い人なのん?」

「まぁ…少なくともいい人じゃねぇわ。お前たちを見捨てようとしてたし」

「おじちゃんはお侍?」

「昔はな。今は格好だけで、ただの飲み屋のマスターだ」

「お父ちゃんとお友達?」

「友達っていうよりターゲットだな。ツケ払えば客になるが」

「うち、早くお父ちゃんに会いたいのん」

「知らねえよ…。ったく、人の気も知らねえで」

凸はうんざりしながら答える。
ガキはこれだからうっとおしい。

屈託のない笑顔で質問をしてくる美代は、冬の曇天も暖かく感じさせた。

凸は、首を振っていかんいかんと戒める。

考えてみればこいつは人質みたいなもんだ。
三浦がツケを払い渋りやがったら、こいつを売っぱらうぞと脅してやる。

幼くてもこれだけの器量だ。有名どころの店に高値で売れる。
交渉次第では当分遊んでくらせるかもしれない。

そんな邪念も頭をよぎる。
さすがにそこまでやったら、いくらなんでもけじめってもんがないから、最終手段ではあるがな

「さて…行くか」

腰をあげてまた歩き出す。今度は一人ではなく二人だ。

美代は、凸の横に並んでひょこひょことついてくる。
しかたないので、少し歩を緩めて歩いている。

なんで俺がこうまで気をつかわにゃならんのだ、糞ぅ。

しかし…三浦の野郎は飲んでるとき、一切身の上は語らなかったなぁ。
浮いた噂がないのも、死んだ女房への義理立てだったのか。

よくよく考えてみると、結構長いつきあいなのに三浦のことはほとんど知らなかった。

ま…尾張に着きゃわかるか。


「美代」

「なぁに?」

「この話、続くと思うか?」

「もちろんなのん」


どうやら長くなりそうだ。

【ということでまた明日】

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凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
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