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信オン 三浦を訪ねて三千里④



リーダー格のやせぎすが、無言で突っ立っている凸の様子に業を煮やして怒鳴り散らす。

「おぅ!なんとか言ったらどうなんだ!!おい!」

すると、小太りの男が目を丸くして身をすくめた。

「ごめん兄貴;え〜と…何か、何か…」

「おめぇじゃねえよ、この馬鹿!」

やせぎすが呆れてペチンと小太りの頭をはたく。

小太りはちと足りないらしい。


凸は3人を見据えながら、背後の女と子どもをチラと見た。

その様子に爬虫類顔がいよいよしびれを切らして刀を構えた。

「このおっさん、俺たちを舐めてやがるぜ。構わねえからぶっ殺そうぜ」

やせぎすもそれにうなずいて刀を抜いた。

「おぅ、おっさん。冥土の土産に教えてやる。かっては、あのタッチャマソが筆頭だった鯖最強最悪の一門「ギニュー特戦隊」の四天王だった者よ。光栄に思い死んでいきな」

タッチャ…マソ。マソの仲間だったのかこいつら。
それにしてもセンスがだせえ。
特戦隊というよりダチョウ倶楽部のがしっくりくるんじゃないのか。

とにかく勘違いで知人の知人と下手にもめるのもよろしくない。

とりあえず…

「あ〜、ちと待った」

凸はようやく声を出して、向けられた凶刃を制した。
やせぎすと爬虫類の動きがぴたりと止まる。

「あ?なんでぇ」

「今更謝ったって勘弁はしねぇぞコラ」

「いや、っていうか…殺してねーし」


そう言って、子どもを抱きかかえている女に顔を向けた。

ひしと子どもを抱きかかえて泣いていた女の顔に驚きの色が見える。
「うっ…」と呻いて子どもがぴくりと動いた。

「美代っ!おお…」

女が肩を震わせてさらに強く子どもを抱きしめた。

見ると括り付けられていた岩の前には、斬られた縄とまっぷたつに割られた蛇の頭と死骸がある。
斬ったのは縄とこどもに這っていた蝮であった。

3人の山賊は、きょとんとしてその様子を見ていたが、ようやく事情を飲み込んで顔を見合わせている。
子どもは不意の斬撃によって驚きのあまり気を失っていただけであった。

「さて…誤解も解けたようなので、行かせてもらうよ。先を急ぐ身なんでね」

そう言って橋へ向かって歩き出した。

「待ってください!」

踞っている女の横を通り過ぎようとすると、女が不意に追いすがってくる。

「私達を助けてください!」

「あ〜ん?」

凸は足を掴まれてつんのめりそうになった。

「あの山賊は私達のような戦災孤児を集めて囮にして旅人を襲っているんです。もう…嫌なんですこんなこと…」

女はやはり身なりは祖末だが、よく見るとまだ若く二十歳を出ていない風だった。

「この子もまだ10歳なのにこんな非道なことを手伝わされて…。お願いですお侍様。あの山賊から私達をお助けください」


目に涙をためて必死に懇願してくる娘を見て、凸は思った。

乳でけーな。Fカップ…はあるな。

それはともかく、面倒ごとはもうごめんである。
けんもほろろに、その願いをはねつけた。

「えー、やだよ。俺、正義の味方じゃねーしよー」

「お願いします;お願いします…どうかどうか」

顔もあげずにすがりついてくる女を見て、何ともいたたまれない気持ちにはなる。
しかしここはあえて心を鬼にして言わねばなるまい。

「お前らなぁ…。そうやって北斗の拳のリンみたいに人に頼ってんじゃねーよ。あれだろお前ら、平和なときだとピンポンダッシュとか平気でやるだろ。虫がよすぎんだよ、困ったときだけ大人に頼るとかやめてよね!」

「うちらピンポンダッシュなんかしません…。そもそもこの世界に玄関にピンポンついてる家なんてありません;」

「いいから、手を離せ。おりゃ、これ以上他人事に首を突っ込むのはごめんなんだよ」

「あんな外道を見て見ぬ振りですか、あまりにもひどい;」

「ひでーじゃねーんだよ、生きてくために皆必死なんだろ。だったら非道も糞もねー。今は悪魔が微笑む時代だ」

「そんな…むごすぎます;」


娘はよよよと泣き崩れ、掴んでいた手を離した。

妹と思われる娘は相変わらず真っ黒な顔で目だけは大きく無言で凸を睨みつけている。

やだなぁ…。なんでこう面倒ごとが降り掛かるのやら。

「とにかく、そんなんは電人ザボーガーか、僧兵をデリバリーしてもらってくれ。俺には関係ねぇし」

すると、妹がいきなり泣きべそをかきながらぐずりだして泣きわめく。

「僧兵半端ないってー。転生中のケガ人めっちゃレスキルするもん。藤井さんだってできひんやんあんなん;」

なんで関西弁で大迫ネタなのかは置いといて、面白いので凸はちょっとこの童女が気に入った。
予定がなければ持って帰って磨きたい。そしてネコ耳つけさせてにゃぁと泣かせたい。



……冗談である。

断じて俺はロリコンじゃねえし、猫耳萌えでもない。


「ま、生きていくためにはきれいごとは通じねえのよ。とにかく山賊のおじさんの手伝いでもしながら生きてくんだな。ガキの時分は我慢しろ」


「……;;」

姉妹はようやく諦めたのか、黙ってうなだれてしまった。
ちょっと可哀想に思ったが、だめだ、ここで気を向けては。

もちろん凸にもいっぺんの良心がないわけでもないが、捨てられて泣いてる子猫をいちいち育てるわけにもいかない。サムライフラメンコみたいに、がむしゃら愚鈍に正義を貫くポリシーもないのだ。

気の毒にとは思うが、人には持って生まれた宿命がある。
これはどうしようもないことである。
それを打破したいなら、自らが宿命を打破する力を持たねばならない。

力なき正義は無力であり正義無き力は暴力。
しかし、正義だけでは飯は食えない世紀末。

いつの世も蹂躙されるのは弱きもの…か。

助けてはやりたいが、3人相手は分が悪い。
非情のようだが、こんなことをやっていてはきりがない。
踞る姉妹に背を向けて、凸は重い足取りで橋へ向かおうとした。

「おい、待ちなよおっさん」

「ん?」

今まで様子を見ていた、やせぎすが背後から声をかけた。

「わりぃな。ガキを殺っていようといまいと結果は同じなんだよ。このまま黙って行かせると思ったかい」

「……おいおい。俺はあんたらが何をしようと構わねえし、ここの所行を言いふらそうとも思わんよ。殺されるのは弱いからだしな。山賊も生きていくための仕事だろうし。もめ事が嫌なだけなんだ」

「そうさ仕事さ。なら、俺たちがおめぇさんを殺っちまうのも仕事ってことになるよなぁ」

下卑た笑いでもっともな正論を吐く。

「なるほど。確かにそりゃそうだ」

さすがリーダーだ。他の二人に比べてちっとは頭が回る。凸は納得がいったように笑った。

爬虫類が舌を出しながらじりっと詰め寄ってきた。
快楽殺人者の目だ。こいつのは仕事じゃなく、ただ人を斬りたいだけの変態だ。

「おっさんよぉ。じっとしてりゃ一瞬で終わらしてやるぜ。下手に手向かいすると死ぬほど痛い思いをすることになるがな…」

…どうせ殺すつもりだろうにこいつは馬鹿だな。
ため息まじりに煽り文句を返す。

「お前、顔も悪いが頭も悪いな。言ってることが超絶矛盾してんだろ」

「おっさんに言われたくねぇよ、それに俺は図工は5だよ」


そう言い返すと、爬虫類が斬り掛かってきた。

「けひゃあっ!」

袈裟斬りに左斜めから降ってくるするどい斬撃をひょいとかわす。

「あぶねぇな」

凸は素っ頓狂な声を出して身構えた。

「へぇ、よくかわしたもんだ。だてに侍の身なりはしてねぇか」

「侍といっても俺は武芸のような脳筋じゃねーんだ」

「どうでもいいよ。とにかく死ねや」

「やだ!生きる!!」


ひょいひょいと繰り出される鋭い斬撃をかわして逃げ回る凸。
刀も抜かずに反撃をしようともしない。
そのうち爬虫類が疲れを見せ始めてきた。

「はぁはぁはぁ…。ちょこまかと虫のように;おっさんのわりに素早いじゃねえか…」

「なぁ、もうやめようぜ。また別の獲物を待ちゃいいだろう。俺、金なんざ持ってねえしよ」

「ふざけやがって、てめぇ…一体…」


凸の静止にも関わらず、爬虫類が凝りもせず斬り掛かってくる。


すると突然、断末魔の悲鳴が聞こえた。

「ぎょえっ!!」

「ぶべっべえ!」


少し離れて戦いを見ていたやせぎすと、小太りが血を吹き出して倒れている。

「ぬっ!?」

爬虫類が足を止めて、二人のもとにかけよった。

「お、おいどうした!何が…」

二人は完全に絶命している。一撃のもとに斬りさげられていた。

「おいっ!何があった!?兄貴、竜兵!」


やっぱダチョウ倶楽部じゃねえか…。

まぁいいや。

凸は悲しみに震える爬虫類の背後から、抜いた刀で背中を心の臓まで貫いた。

「ぐぼっ!!」

爬虫類は胸に生えた刀を見ながら、ゆっくりと振り向く。

「て、てめぇ…き、きたねぇ。卑怯だ…ぞ」

「はっ!それこそお前らに言われたくねーよ。いいからとっとと死ね」

刀を引き抜いて、さらに肩口から斬り下げた。
爬虫類の苦悶に満ちた顔が地面に落ちた。

「正しい社会の構図だぜ」

へっと鼻をかきながら、刀を鞘に収めた。

凸は勝てる私闘しかやらない男である。
100%勝てるものしかやらなかったので生き残ってこれた。
卑怯だろうが外道だろうが、どんな手を使ってもとにかく生きる。
戦国において死んだら負けだからだ。
勝つためなら、毒も使うし女も使う。落とし穴だって使っちゃう。
この世は勝てば官軍負ければ地獄なのだから。

3人では100%の勝ち目はない。しかも個々の力量は未知数。
だからあえて戦いをしなかった。
勝負は何が起こるかわからないものだ。
楽観視をすると足下をすくわれる。

それを長い戦国生活で嫌という程味わってきたのだ。

「しかし、マソの奴に今度会ったら文句を言っておくか。こんなんを野放しにしやがって」

ぶつぶつ言いながら、てぬぐいで手についた血を拭き取り辺りを伺った。
姉妹はおびえて震えている。

それにしても一体誰が…。


周りの木々がざわっと揺れた。

「むう?」

気配があらゆる方向に動いている。
しかし、先ほどのような殺気は感じられない。

何やら懐かしい気配だ。
不意に背後に気配を感じて柄に手をかけると、肩をぽんと叩かれた。

振り向くと柔和な顔をした薬師風の男が、笑顔を向けていた。

「佐渡さん!」

「どうも。お久しぶりです。美しき魔闘家 鈴木です」

「どう見ても佐渡先生です。ありがとうございました」

武田古参の知人の佐渡先生であった。だいぶ前に、青年海外協力隊で国際支援のためにカルカッタに旅立ったと聞いたが。

「任期が終わったので戻ってきたんですよ」

「懐かしいなぁ。で、さっきの奴らは佐渡さんが?」

「ここいらでたちの悪い山賊が旅人を襲っているということで、美濃の自治体から退治を頼まれていたんです」

「なるほどそれでー」

「凸さんなら、ささっとやっつけるかと思って見てたんですが、時間もないので先に片付けようかと。もしかして余計なことをしちゃいましたか?」

「いやいや。もう歳なんで助かったよ。若い頃みたいに無茶はできんし」

「まだまだいけるでしょ。あっちのほうも」

「はは。もう水涸れ状態よ」


佐渡先生は、おびえている姉妹に近づいて、優しく声をかけた。

「もう大丈夫だよ。心配ない」

そう言って二人の頭をなでた。

「佐渡さん、その娘っ子たちはどうなる?」

「この子たちが捕われていた寺にはまだ十数名ほど孤児がいますしねえ。まぁ自治体にかけあって保護施設に収容してもらいますかね」

そう言って佐渡先生は、妹の汚れた顔を手ぬぐいでゴシゴシと拭いてあげた。

「ほうら、やっぱりお姉さんと同じで器量がいい」

佐渡さんが褒めると、姉妹は顔を赤らめながら、少し落ち着いたようだった。
特に妹のほうは、確かに奇麗な顔立ちとしている。眉は細くキリっとした少年のような顔立ちだった。
こりゃ相当な美人になるなぁ。姉のほうはとにかくボインボインで藤井さん好みか。

と、そんなことを考えている場合じゃない。
先を急がんと。

凸は一息つくと、腰を伸ばして軽く屈伸をした。

「じゃあ、佐渡さん、俺は行くよ。三浦に会いにいかなきゃならんのでね。後はよろしく頼む」

「三浦さんか。懐かしいなぁ。確か今は尾張で問屋をしていると聞きましたねえ」

「羽振りもいいだろうに…。あの野郎、ガバスでいちいち支払うとか。どんだけファミ通が好きだったんだ」

「ははは。ともあれ三浦さんにもよろしくお伝えください。ではお元気でいつかまた」

「ああ、じゃあ…」

佐渡先生は寺の様子と子どもを確認してから、自治管理事務局へ向かうと言った。

あの姉妹も逞しく生きてゆくことだろう。
そう。心身ともにタフでなければ死ぬだけだ。

手を上げて背を向けると、さきほどの罵倒まじりの声とは違う可愛い声が凸を呼び止めた。
なんだよもう。いい加減に…。

うんざりしていい加減にしろよと言いかけたが、先ほどの生意気なガキの面影はなく、小さな童女が可愛らしい目でこちらを見つめている。

「おじちゃん、尾張の三浦って人に会いにいくのん?」

「さっきとはえらい違う口利きだなぁ…。ああ、そうだ三浦に会いにいくんだ。それが?」

「……それ、うちのお父ちゃんなのん」

え?


え??

一瞬、耳を疑った。


佐渡先生と凸は顔を見合わせ大いに叫んだ。


な、なんだってーー!?


その叫びは冬の乾いた空に高く登っていった。


【たぶん続くんじゃないかな】
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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>藤井さん
だがちょっと待ってほしい。これは孔明の(ry

>あんときさん
藤井さんの隠し子説をどこで!

>凸子
ねーよw

>三浦
それ当時は理解するまでに時間がかかったw

No title

亜qwsでrftgyふじこlp;@:」

No title

な、なんだってー!!

にぃにに隠し子が居るのは知ってるけども・・・
まさか、、、まさか三浦兄さんまでっ!!

隠し子いるの藤井さんだけじゃないんだね!

No title

隠し子がっ!
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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