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信オン 三浦を訪ねて三千里③



ひとつの山を越えたところで平坦な道に出た。
そこで休めるとこを見つけて昼食にした。

ここまで魔獣には遭遇していないのは、アントキが教えてくれたルートによるものである。
もう魔獣の棲息地は抜けたようだった。

老木のイチョウの下で握り飯をほうばりながら、舌鼓を打つ。
塩味が程よく効いていて美味い。
周りには色づいた葉や銀杏が落ちていていて、独特の香りが漂っている。
快晴の空の雲に幾多の友人の顔が浮かぶ。

あるものは結婚やら引越しやらで引退し、海外へと出張したり、けじめをつけて辞めていったり、不幸にも亡くなったり。いまだに残っているものは数えるほどしかいない。
しかし、一時でもあの高揚感を共有できた戦友の思い出は消えることがない。
雲のひとつひとつが消えていった戦友の顔に見える。

あの時は対立し、いがみあい、なんて嫌な奴だと思った者でも時が経てば、なぜか懐かしく思えたり。
意外とリアルで会ったらいい酒が飲めたかもしれないと思えてくる。

それだけ歳をとったのだと思うと、複雑な感情が沸いてくるが、それもまたオンラインの醍醐味だろう。
少なくとも、あの共有した時間は仮想であろうとも現実に消費したかけがえのない時間であり財産なのだ。

ネットの世界は世界と繋がっている。しかし、濃密な時間を共有できる仲間というのはおのずと限られてくる。
そこで出会ってリアルまで発展した関係は、考えてみれば奇跡だ。

その奇跡を大事にできるかどうか。それはリアルでも仮想空間でも同じに思える。
ネットにリアルを求めるのを良しとしない人種にとっては、キモイの一択で片付けられてしまうのだろうが、われわれは気にしない。出会いの形など今更どうでもいい。

俺たちは仮想の人生を電脳という無限の監獄で過ごすトガビトだ。
だがそれがいい。そこにこそある真実もまたリアルなり。

あれ…いいのか?それでいいのかタルタロス。
よくわかんねーけど、ま、いっか。

古臭い価値観や常識など弊履のように投げ捨てるのも一興。
藤井さんもそう言ってたづら。


「ふぅ。食ったな」

最後の握り飯を食べ終わると、竹筒に入った水を流し込む。


遠方に見える山脈は、その頭に少し雪をかぶっていた。

「はぁ…。まだ遠いなぁ…先は長いのう」

ため息とまじりに、前方の山脈へと歩き出す。

拓けた道の傾斜は緩やかで、以前に人が通っていたと思われる名残がある。
あたりの木々の彩り豊かな紅葉に目を奪われる。


「へぇ、まるで花鳥山脈みたいだな。こりゃすげぇ」

しばらく歩いていくと、道は広がりぽつぽつと行き交う人も増えてきて民家も見える。
この旅に凸が徒歩(かち)にこだわって馬を借りなかったのは、さしてたいした理由はない。
ただなんとなく、ぶらりと歩いてみたくなったからだ。
普段の早馬では気づかないものを拾っていこうかと、柄にもなく酔狂を試みたのである。


極彩色の景色にみとれながら歩いていくと小さな河が目の前をさえぎっていた。
河には頼りない木々で寄せ集められた橋がかかっている。

「ふむ」

橋の袂に来ると、大きな岩がありなにやらその岩にくくりつけてある。
人だ。それも子どもである。

見れば、蓬髪で真っ黒なボロボロの絣を着ている。
乞食のような身なりだが、目だけはぎらぎらと光ってこちらを睨んでいた。

「なんだこのガキ…」


気にいらない目つきだ。ガキがこんな目つきをするのは感心せんなと憤る。

凸はむっとして子どもを睨みかえした。
あちこちに打撲と見られる傷がある。

おおかた何か悪さでもして、懲らしめのために括られているんだろう。


「おいガキ。そのざまはどうしたよ」

凸の問いに答えず、その子どもは相変わらずぎらぎらとした目でただ睨むだけである。

「ち、生意気なガキだなー。近頃のガキはほんと可愛げのねぇこと…」

とにかく早く尾張に行かないと、また面倒ごとに巻き込まれそうだ。
こんなこ汚ねぇガキにかまってる暇はねぇ。

関わらずに橋を渡ろうとした瞬間に、子どもが口を開いた。


「縄をとけ!」

高い声でそう叫んだ。妙に澄んだ声である。

「あ?」

凸は岩の前まで引き返して、子どもの前に立った。
耳に手をあてながら、とぼけて聞き直した。

「あー?なんですかー??」

子どもは凸の顔を睨みながら、繰り返し叫ぶ。


「この、つんぼ!早く縄をとけ!じじい」

凸のこめかみにぴくぴくと青筋が浮かぶ。


「おい…糞ガキ。てめ、人様にものを頼む前に礼節ってもんがあるだろ?親に教わらなかったのか」

「親なんざいないよ馬鹿!」

「えらい口の悪いガキだな。泣かすぞこの!」


恫喝ともとれる大人気ない態度でガンをとばす。
しかし子どもは恐れも見せずに睨み返してくる。


「いいから縄をとけ!この禿!」

「おい…。おい、どこがそう見える。俺は確かにおっさんだが、爺さんじゃねぇし禿げてもいねぇよ!ふさふさだよ!」

「うるさい!早く縄をほどけこのチンカス!!」


凸は血管が切れそうになった。
こんな年端もゆかぬ子どもにチンカス呼ばわりされて黙っているほど人間はできてはいない。

「いい加減しろよ…。ケツの穴にダイナマイトねじこんで、すまきにして河にたたっこむぞ!糞ガキが!!」

「できるもんならやってみやがれ!その前にじじいのチンコを噛み千切ってやる」

「くっ…このガキ、まじで…」


人間、怒りが頂点に達すると臨界点を突破して冷静になると言う。
怒って暴言や殴るとかの行動は臨界点の一歩手前である。
怒りの飽和状態になると、人はもっとも残酷になれるのだ。

凸は血の気が引いて妙に冷静になった。

ふっ…。こんなガキ相手に何を熱くなっているんだ俺。
大人になれ大人に。

凸は子どもの前に立って刀を抜いた。

「おいガキ…。そんなに言うなら縄をといてやるよ。ただしな…」

刀を頭の上に持ち上げて、ぎろりと睨む。

「その体ごとまっぷたつにな!」

言うが早いか、そのまま、無造作に刀を振り下ろす。


ザシュッ!!

「ぎゃぁっ!!」

子どもは短い悲鳴を出して、ぐったりと岩からはがれるように前のめりに突っ伏した。


刹那、後ろからけたたましい悲鳴がした。

「む?」

「美代!」

そう叫びながら子どもにかけよってきたのは若い女である。

「美代!美代!なんで…こんな;わぁぁぁああ!」

子どもを抱きかかえ、半狂乱で泣き喚いている。

名前からすると、このガキは女だったのか。
黒く汚れていたし、あの口ききではわからないのも無理はない。

女の剣幕にぽかんとしながら様子を見ていたが、なにやら背後から凶悪な殺気を感じた。

見るといかにも悪人面の山賊風情の三人組が、ニヤニヤしながら立っている。
ははーん。さきほどから誰かに見られている気配はあったのだが、こいつらか。

リーダーと思われる真ん中の長身でやせぎすな男が、下品な笑いを浮かべながら前に出てきた。

「あ~あ…。おっさんよぉ。いくら乞食でもガキを殺っちゃうのはアウトだろう」


それをうけるように、左のでっぷりとした小男は、もごもごと口を動かしながら、うんうんと頷いた。

右の男は、普通の体躯だが、口に爪楊枝を挟んで口元を歪ませている。爬虫類面で一番凶悪そうな面構えだ。
その爬虫類がぺっと楊枝地面に吐いた。

「しかし、つかえねぇガキだな。ちったぁいい餌になるかもと思ったが、糞の役にもたちゃしねぇ」

なるほどな。子どもを餌にして旅人を襲うって寸法か。
縄を解いて油断しているところを後ろからばっさり、ね。
古典的すぎて逆に新鮮だ。

あのガキはこの山賊どもに無理やりやらされていたのだろう。
ガキが、もし素直で可愛げがあったら、油断してやられていたのかもしれん。

リーダーのやせぎすが、片手に持った刀を肩に乗せてトントンと上下させている。

「おっさんよぉ。このガキは俺らの身内でな。ちょいと悪さをしたんで懲らしてただけなんだ。それを、おめぇさん、殺っちまうとかあんまりじゃねえか、なぁ。この落とし前は一体どうつけてくれるんだい?」


凸は悪人の常套句のような口上を聞きながら思った。



(´・ω・`) 帰りた~いん。



【続く…ような気がする】


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プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
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