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信オン 三浦を訪ねて三千里②




「おっぱーい!!」

叫んだ瞬間に目が覚めた。

凸は、ぼぅっと天井の梁を見つめながら、ここかどこかと思念をめぐらせるまでしばらくかかった。

「う…」

こめかみを抑えながら、少し呻く。

ようやく思考がはっきりしてきた。布団に寝ている。
あたりを見回すと、囲炉裏を挟んだ正面に小さな出窓があり、そこから眩しい陽光が差し込んでいる。

チチチ…ピピピ…と鳥の囀りが聞こえてくる。

確か森で幻術をくらって…意識がなくなって…。

「どこだここは…」

起き上がって体を伸ばしてみると、不思議なほどに体が軽い。
濡れていた鎧も脱がされて、こざっぱりした作務衣に着替えてさせられている。

戸の向こうからは、トントンとなにやら音がしていた。

凸はようやく合点がいった。


ははーん。これはお決まりの展開だ。

おそらく倒れていた俺を、巨乳美女がここまで運んで介抱してくれたに違いない。
そして戸の向こうで朝餉を作っているんだろう。

ほのかに味噌のいい匂いが漂ってきている。
腹もほどよく減っていた。

ふむ。
これは激熱展開じゃね?
しかも7でテンパイ、キリン柄とか鉄板な状況だろう。
享楽の激熱は糞ほどもあてにならねーが、サミーのはそこそこ信頼感が高い。

これはキテル!悪いことの後にはいいこともあるさ。
天、我を見捨てずだ。

勝手な解釈と妄想を膨らませて思わず小躍りをする。

うひょひょひょひょー!ぶんぼぶんぼぶぶんぼぶんぼ!
ひーっひっひっひっ~!

凸は意味不明な奇声をあげながらエジプシャン踊りをした。
はたからみればキチガイで通報されるレベル。
テンションが高まると、意味不明な行動を取ってしまうのはおやじの性か。
な、わけはない。

戸に近づき、そ~~っと勝手口を覗いてみる。

台所に立っている、巨乳美人(推測)をその視界にとらえた瞬間…


「げぇっ;」

なんと台所にたっていたのは6尺をゆうに超える大男であった。

凸の声に気がついた男は、振り向きもせず挨拶をした。

「おっ、起きましたか。おはようございます」

汁の味を確かめて満足そうに笑ったかに見えた。


凸と男は囲炉裏の前に対峙して座していた。
二人の前には、朝餉が出されている。

山菜の漬しと川魚、そして飯に味噌汁。

小さな草庵だったが、よく見ると拵えも立派で簡素ながらも品が漂っている。
この男、ただものじゃねえ。

凸は警戒心を解かずに、静かに男を見つめていた。

その様子に気がついたのが、男が目じりを下げて口を開く。


「いやぁ、危ないとこでしたね。あのまま魔獣の餌になるとこでしたよ。とりあえず私が退治できるレベルでよかった」

にこやかに笑いながら男は言う。

体躯は迫力だが、端正な顔立ちと水のように静かな風情を纏っている。
着ているものからすると僧のようだが…。

まさか、この男…衆道の気はねぇだろうなあ。坊主はホモ多いしな。
俺はホモとムカデは大嫌いなんだ。

そんなことはさすがに口にはだせず、まずは介抱してもらった礼を告げた。

「いやぁ…助けてくれて感謝いたす。不覚ながらまだまだ未熟ゆえ…」

凸はぺこりと頭を下げ警戒心を緩める。

男は、いやいやと手を振りながら朝餉をすすめた。


「しかし、なぜあんな森におられたのですかね。地獄突さん」

汁を啜っていた凸の手が止まる。


「…なんで、あんた俺の名を…」


男は一転、かしこまった表情になり、軽く頭を下げた。

「これは申し遅れました。拙僧、徳川義宣の友人のアントキと申します。以後お見知りおきを」

徳川義宣…?ああ、自称可愛い侍のよっしーか。

「…あっ!あんたが、よっしーの連れのアントンさん?」

「はい、常日頃から徳川殿より話は伺っておりました故」

「よく俺がわかったね。顔も知らんだろうに…」

「鎧の後ろに書いてありましたよ。じごくとつって」

「げっ;それって、かずはが両替前で書きやがったんだなー。人の後ろでコソコソなにをしてるのかと思ったらあのガキャァ!」

「はは…。おかげで労せず凸さんとわかりましたよ。それに…」

「それに?」

「刀の柄にぶら下がっていた根付。あれは僧兵のフィギュアでしょう?」

「ああ、あれは…確かに」

「僧兵好きな人に悪人はいませんから」

「いや、まぁ…」

凸は頭を掻きながら照れ隠しに笑ってみせた。
つられてアントキとも笑った。

凸は旅の目的を告げ、三浦がいる尾張へいくところだと説明した。
アントキによれば、ここから南西に二山ほど超えたところに尾張の関所があると言う。

あの森には、様々な高レベルの魔獣が生息しており、幻術で人を誘い込んで餌にするのだと言う。
下手すると今頃俺は奴らの糞になってたわけだ…。

運がいいというか、なんと言うか。
ともあれ助かったことを天に感謝した。

そもそも、三浦があれほどツケをためなければこんな苦労をすることもなかったのである。
俺がホモならケツを掘ってすまきにして駿河湾に沈めるレベルだ。糞っ!覚えてろよ。

そんな苦々しい思いとは裏腹に笑顔を浮かべて朝餉を啜る。


朝餉が済むと、二人は外に出て陽の光を一身に浴びた。
陽は暖かくなんとも清清しい。

のどかな山河の風景が目の前に広がっていた。
遠方の紅葉しきった山々の色彩が目に痛いほど鮮明で美しい。
まるで桃源郷のようである。


「ところで、ここはどこっすかね?」

凸がそう聞くと、

「ここは、尾張と美濃の境にある郷です。といっても、人外以外はそうそう入り込めませんから、人は私しかいませんが」

「なんでこんなところに一人で?」

「話せば長くなりますが…時間がまだよろければ茶でも飲みながら如何です?」

「伺いましょう」


男の名の正式名称はアントキノイノキ。僧兵である。

当時─といっても、数年前までは僧兵は徒党にとってアウェー扱いされる存在であった。
問題となっていたのが、効率狩りの徒党枠の皆無、極楽改だけのボス要員、ネタ特化としてのいじられ職、さらに開発から虐めとも取れるような、斜め上修正等…。

かくいう私も僧兵でね…。

僧兵を自虐ネタとした秀逸なAAも流行った。

炭山だけが友達さ!汚れちまった僧衣の上に 今日も消し炭の降りかかる

僧兵は不遇特化として最高に不名誉な地位を磐石にしていた。

そこで立ち上がったのが、全国の僧兵たちであった。

「僧兵を舐めるな!僧兵に徒党枠を!」

王立僧兵騎士団、モンク・カンパニーインダストリアル、僧ふぇいふぇい(株)、僧兵地位向上委員会…
各地で様々な僧兵だけの団結した私設、一門が乱立した。

世論は僧兵連合を支持し、ネラー達まで味方につけた。

僧兵に光を。僧兵こそ攻防一体のマルチスキル特化であると、人々が口にするようになる。
これにより、開発陣も僧兵の強化に本腰を入れざる得なくなり、現在の僧兵の立ち位置が創りあげられたのである。


「そうやって僧兵は完全に生まれ変わったのです。しかし…」

アントキは表情を曇らせながら続けた。


人がいるところ問題は起こるべくして起こる。

この世には二人と同じ人間はいない。同じ考えを持っていても、その根幹はまったく違う意識で構成されている。
つまり、目的と意識が完全にシンクロしている組織集団などありえないのだ。

当然、そこから綻びが出てくる。対人間関係に疲れ果てていた僧兵たちは、一気に上がった特化ステータスにより一時は歓喜し、共に抱き合い喜び合った。

だが、僧兵に限らず1オンリー特化だけの集団にはおのずと制限もあり、限界も出てくる。
東西だけのお祭り集団ならいざ知らず、僧兵だけで日常を生き抜くには、さすがに無理があった。

特に1st僧兵だけを集めた組織は数ヶ月で瓦解した。

北条の風魔衆によると、貧に慣れたものは贅に弱いと言う。
貧乏から急に贅沢な暮らしをあてがわれると、人はもう暮らしの水準を落としたくなくなる。
贅に楽しみ、貧に慣れるバランスがなければ、山禍の集団の絆は強くならない。

目的は同じくしても、個々の絆が希薄では集団として息は短い。

一時は20を超えていた僧兵組織は、見る間に消滅し跡形もなくなったという。

「かくいう私もある僧兵一門の筆頭をしていまして…。しかし同じ理由で強化パッチがあてられた後、数ヶ月で瓦解してしまいました。そこで、ほとほと嫌になったのですよ。特化に振り回されるこの生活も人々もね」

アントキは、静かに茶を啜りながら目を伏せた。

「結局、人というものは勝手です。その時々の優遇特化をもてはやし、特化を転々と変えて要領よく生きる人も多い。しかし、私はそんな器用な生き方はできません。僧兵は気高く崇高な特化です。気軽に変えていい特化じゃない…」


凸は話を聞きながら、タツヲなんかに聞かせたら、同士よ!とか言って抱きつきかねないだろうなと思った。

「それで世捨て人になってこんなとこに潜んでるってわけか」

「まぁ、ひどい掃滅の仕方をしましたからねぇ。私を恨んでる人も少なからずいたでしょう。正直そのほとぼりを冷ます意味もありました。徳川さんとは定期的に連絡を取り合っていますけど」

「ふぅん。でも、僧兵ラッシュも落ち着いてきたみたいだし、もう戻ってもよさげだろうがね」

「まぁ…そのうちにとは思ってますよ。頭も冷えて僧兵とは何かとずいぶん悩みましたしね」

「そりゃいい。戻ったら是非、俺の店に来てくんな。たらふく飲ませてやるよ。もちろん奢りだ」

「ははは。そのときを楽しみにしています」

それから半刻ほど雑談をして凸は発つことにした。

アントキに幾度も礼を言いながら、草庵をあとにする。
笑顔で手をふるアントキの顔には、スレに爽やかな風が吹いたように清清しいものが感じられた。

道すがら、昼飯にとアントキが作ってくれた握り飯とタクワンを腰下げにぶら下げて、さてこれをいつ食おうかと思案する。

凸は快晴の天を見上げてしみじみとつぶやいた。


「しっかし…なんだかんだで、みんないろいろ背負っているんだなぁ。うわべだけで判断するには、この世界は情報が脆弱すぎるよな」


とかなんとか、わかったような口ぶりで口笛を吹く。

「しかし…あのおっぱいはなんだったんだろう…もしや藤井さんの」


などと、どうでもいいことを考えなら歩みをすすめる凸であった。
三浦への道はまだ遠く険しい。



【③につづく…だろう】
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鎧が現職のいのきの1stが

僧兵だと知ってるとは!

ハズカシス(/。\)

地獄耳改も実装してるのね。

No title

>三浦
ラスボスはちゃんと出番があるから安心しろw

No title

これはまた、散々ダシに使われて、
結局俺の登場がないパターンですね!
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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