スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

狼たちの回廊

とあるバー。

狭い店内のカウンターには客が一人。
男はスツールに軽く腰掛けてギムレットを飲んでいる。

外はひどい雨だ。
こんな日は鬱になる。

私はこのバーの雇われマスターだ。
友人であるオーナーの酔狂につきあって、グラスを磨きながら酒を出している。

BGMがブラコンのどっしりとしたリズムに切り替わる。
モーリス・ホワイトの伸びやかな高音が素晴らしい。
ちなみに、ブラコンとはブラザーコンプレックスではなくブラック・コンテンポラリーという音楽のジャンルだ。
間違えないように。

客の男は三十そこそこといった風貌で、目の前のつまみ皿からピスタチオをつまんで食べている。

店に据え付けの時計は既に0時を回っている。
営業時間は基本午前2時までだが、明確な就業規則はない。
客がいなけりゃもう終わりだし、いれば5時頃までやることもある。
しかもこの雨ではもう誰もきそうにないだろう。

目の前の客は無言だ。
だが私も今日は無駄におしゃべりをしたい気分ではない。

静かに今日の業務が終わるのを待つだけだ。

「マスター」

男は顔をあげずに左手をあげて、今度はズブロッカのトニック割りを注文する。
そしてまた沈黙の時間。

やれやれ…。こいつ始発まで粘るつもりだろうか。
このまま客がこなかったら2時頃でしめるかな。

しかし…この男、ほんとに無口だな。歳は32〜5歳くらいか。服装は黒いハーフコートに紺のスーツ。
やや面長の整った顔をしているが、やけに顔色が青い。そのくせ双眸はぎらついて見える。
客の値踏みをするつもりは毛頭ないが、あぶない匂いのする客はカンでわかる。
どう見ても堅気には見えなかった。

こういう手合いには自分から話しかけないことだ。
話しかけたが最後、穴の空いた風船のように自分語りにつきあわされるか、同意を求められるたびにうなずきトリオのような道化になりさがる覚悟をしなければならない。

最近寝不足の身体にそれはさすがにきつい。
そもそも、バーテンとは人の話を聞くだけでよいのだ。
勢い余って自分のことを語りだすようなバーテンは半人前である。

酒を出して話を聞き、あいづちを打つ。それだけでいい。
私は先輩である藤井にそう教わった。

藤井は腕の良いバーテンで、この店のマスターだったが、オーナである友人と折り合いが悪く、半年前に止めてボストンへと旅立っていた。

時折、メールが着ていたが最近では音信がない。
ボストンに着いた途端、スパニッシュに喧嘩を売られたので「キスマイアス!」と唯一知ってるスラングをぶちまけたら、「shut the fuck up you mother fucker!」と罵られて、殴られたそうな。
どこに行っても豪快な人だった。今頃どうしているのやら。
彼のことだ。今頃、金髪娘とむっしゅめらめらとよろしくやっているのかもしれない。

時計の針が午前2時を指し示すところで、男がガタリと席を立った。

「マスター…。まだ…いいかい?」

スマホで時間を確認しながら聞いてくる。

「ええ…。まだ外はひどい雨でしょうしね」

「ありがとう」

ふらふらとおぼつかない足取りでトイレに向かっていく。

雨音は轟音とともにドアを叩き付けている。更にひどくなっているようだ。
台風だろうか?しかしそんな予報はなかったはずだが…。

つうか、暗いやっちゃな。明るいワルならまだしも、陰気なワルは苦手だ。
よく見ると、整った鼻柱に傷がある。刃物傷のようだった。

「ふぅ、厄日かな今日は」

ためいきまじりに、グラスに氷を落としてウイスキーをシングルで頂く。

トイレから戻ってきた男は、多少血色がよくなったように見える。
細かく震えていた手を見ると、ぴたりと震えは止んでいる。
相変わらず、スツールに半掛けをしながら、グラスに残った液体をぐいっと流し込んだ。

「マスター」

男が再び声をかけてきた。


「はい。おかわりで?」

「いや…。ちょっと聞きたいことがあるんだ」

「聞きたいこと…。なんでしょう?」

「いや…その、だな…」


男は鼻をこすりながら、私に顔を見ながら照れくさそうにしている。

うへぇ;まさか…。こいつ…そっち系か?
いやいやいや、昔からホモに何故か好かれるのだが、やめてくれ。私はノンケだしストレートだ。
以前、渋谷の警察署の裏にあるカマバーでも妙な色目を使われて困ったことがある。
そういえば、あそこは区役所連中のたまり場だったと聞いたことがあるが…公務員にはそっち系が多かった。
抑圧された管理主義の世界に生きる公僕は人知れず裏の顔を持つ者が多い。

もしかしたらこいつも公務員か?いや、しかし…。

私の引いた様子に気がついたのか、男はあわててかぶりを振った。

「いや、マスター。勘違いしないでくれ。俺もそっちの趣味は無い」

「あ…いえ。そうですか、失礼しました…」

「この店で気になったものがあってね。ずっとそれが言い出せなかった」

「ほぅ?なんですかそれ」

「あれだよ」


男はカウンターの奥の壁に貼ってある一枚の写真を指差した。
それは昔、信長の野望オンラインの仲間と行ったバーベキューの写真である。

「ああ、あれですか。あれは仲間とバーベキューをやった時の写真ですけど…。それが何か」

「そこの右に映ってる奴…。あれは僧兵だろう?」

「えっ!タツヲをご存知で?」

「…昔のなじみさ。炭山でな」

「と、いうことはあなたも信オンを?」

「ああ…。まだ現役だ。マスターのことも知ってるぜ。あんた軍学侍だろう?」

「うっ…。あんた一体…」


確かに私は数年まえ信長の野望オンラインに興じていたプレイヤーである。
もうしばらくインはしていないが、止めてはいない。

私を軍学と知っているこの男。しかもタツヲの知人らしいが一体何者だろう。


「安心しなマスター。全体沈黙の霧は奥義で実装されたぜ」

「なっ!なんだってぇー!!」

「あんたが熱望していた技能さ。どうだい?勃起するモチベにはなったかい」

ならねーし。

しかしこれは誘導下ネタだ。シリアスな会話にさりげなく下ネタをいれる高等テクニックだが、
爆死する可能性は高い。一門や施設ならまだいいが、合戦チャットなどでやる冒険はできない諸刃の剣。
こいつ…ここでそれをやるとは。できるな。


「……えーと…。勃起はしないが復帰する指標のひとつにはなるかもです」

「ふはは。すまん、ちょっとぼけてみたんだが、あんた下ネタの切り返しも切れが悪くなってるな」

「むぅ…。そりゃさすがにねぇ。離れてしばらく経ちますしね。しかし私が復帰したところでもう新仕様についていける気がしないんですがね…」

「確かに今はやることが多すぎてコンテンツが散漫になっているが、それでも信オンはまだ死んじゃいない」

「ですかねぇ…」

気のない返事を返しながらもうロートルである己を振り返る。
一昔前は戦場を駆け回り、クエに東奔西走をしながら戦国時代を満喫していたが、世界は変わっていく。時と同じく流砂のごとくとどまらずにその形を変えていく。新仕様はすでに我々のような老兵を置き去りにしていく。
いや…それだけ歳を取ったということでもあるだろうな。

私なぞもうそのうねりに取り残されて、そのありようを横たえて見守る形骸を晒す存在でしかない。


男は金をカウンターに置いて席を立った。

「マスター…。そろそろ行くよ。いつかまた…戦国で」

「ええ。機会がありましたら…」


雨はもう止んでいるようだ。

男がギィッと入口の扉を開けると、ほのかな光が差込んでくる。
月が出ているようだった。

男は軽く右手を挙げながら

「いいぜ。沈黙の霧は」と言いながら夜の闇に消えていった。


軍学にチンキリ。伏雷が無理ゲーだと言われていた時代から熱望していた技能。
はっ、しかし今さら…。今さらジローだ。
せめてもう2年早く…。

しかし、あの男は一体何者だったのだろう。
謎すぎる。

今度タツヲに聞いてみよう。

カウンターに目を戻して置いていった金を見る。

xsfcasvaqqqq

また…やられたか…。

ガバスで飲み代を払う男。
あの男の正体はもうわかっていた。

じゃ、お決まりの文句で今日を〆よう。いいよな。いいよね。

ほいじゃ…

gnhvj,kfymtsd

「み、みうらぁ~~~!!!」


ではまた明日。にゃんぱすー。

スポンサーサイト

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

コメントの投稿

非公開コメント

No title

>かずは
のんのんびよりを観るべし
たまには田舎でのんびりしたい!

にぃに、、、。

にゃんぱすー!ってにゃんなの???
肥る呪文をメールにのせるのは止めてください♪(о´∀`о)

にゃんぱすー!


No title

>藤井さん
衣食足りたとてガバスが足りなきゃホモにはもてず
あなたにはガバスが足りないわ!

No title

昔、ガバスを貯めて何かと交換した覚えがあるようなw

No title

>三浦
ガバス──
それは選ばれし者の心に膨らむ 奇跡のつぼみ。
ある者は清浄の花を咲かせ、ある者は毒の花を咲かせる。

つかいらねえw

No title

おい待て、そのガバスの量!
ファミコンソフトが50本は交換できそうじゃないかっ

こいつは、うっかりと払いすぎたようだ、こうなれば仕方あるまい
もう1年ほど延長で働いてもらおうか!
うむ、勿論込みだ、それに、ボーナスもつけてやろうじゃないか!
俺の玉を打ち、見事夜のホームラン王になった日は、もう50ガバスやろう!
どうだ、50ガバス欲しいだろう?
何安い?500ガバスよこせだと!強欲な奴め、良いだろう!

あれ?このながれ、どこかで見たような? いや、気のせいだな。 
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
リンク
最新コメント
ブログ内検索
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。