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殿(しんがり)は藤井さんにおまかせあれ

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地獄突はふと気がついた。

さっきまで並走していた藤井が見えない。

「ありゃ?はぐれてしもうたか」

一本道ではぐれるとは面妖な。
さても、神隠しの如く姿は見えず予兆もなかった。

伊賀忍軍にでも攫われたか。

しかし、それなら首だけとったほうが楽だ。
藤井のような侍大将クラスを攫ったところで、持て余すだけで戦局に何ら影響もしないだろう。

ましてやここは殿。

殿こそ戦の華ではないかと、どこぞのカブキものが言い放ったがとんでもない。
殿なんぞ御免である。

地獄突は格好良く死ぬより、格好悪く生き延びるほうが結局は勝ちだと思っている。
生に対するみっともないほどの執着心が、木曽川、川中島と名だたる大合戦を生き延びてこれた証だ。

ましてや自決などもってのほかである。
土下座どころか、敵の足をなめても生き延びたい。
生きていれば何とかなる。そう思っている。

故に周囲からは「糞蠅」などという戦国の男子としては真に不本意なあだ名を拝名するに至っている。
しかし、笑うなら笑えと気にもしていない。
蠅だろうが糞虫だろうが、生きているからラッキーだ。

死にたくない。その一点だけは誰にも負けない自信がある。

地獄突は後方の闇を振り返りながら、藤井の安否を想った。

「饗談の乱派者などに遅れをとる藤井さんではないはずだが…。あっ!まさか」

そこへ、速度を緩めて前線より後退してきた侍がいた。

同じ侍大将の三浦である。

「おおう、とっつあん。殿御苦労!」

「御苦労じゃねーよ!藤井さんが消えちまったんだよ」

「何?藤井殿が…。さてはやはりな」

「あ?やはりって何だよ」

「実は、藤井殿が徳川の密偵ではないかと内々に裏で調査をしていたのだ。徳川方の女性と逢い引きをしているのが何度も発見されている」

「なんだとぉお!!!」

「だから殿をまかせて様子を見ることにしたようだ。旧知の仲のお主にも嫌疑がかかっておったそうな」

「ちょっ!んじゃ俺は藤井さんのとばっちりで殿やらされてんのか」

「そのとーり」

「…早く言えっつーの」

「とにかく、お主の疑いは晴れた。藤井殿はお尋ねになり、捕縛されたら打ち首だろうな」

「というか、殿にいる俺たちのがやべーだろこれ」

「ふふ。殿こそ戦の華、漢の生き様だろう。死して本望。拙者ホモじゃねーけど」

「やだー!死にたくねぇー!!」

突は手綱に力を込めて闇夜を切り裂くかの如く疾走し咆哮した。

「ふじいいぃさんめぇぇええ!!!!生きて帰ったら覚えてろよぉ!!」

その慟哭にも似た叫びは、陰っていた雲から覗いた月にも届くようであった。



その頃、藤井は既に鎧を脱ぎ捨てて国境の峠にいた。

「おい、露葉(つゆは)ここだ!ここ」

藤井が声をひそめて呼ぶと、薮の中から百姓姿の女がするりと出てきた。


「あんた…。よく無事で」

月明かりに見える女の横顔に安堵が映る。
心底ほっとした様子で抱きついてきた。

「殿はあの突とかいうおっさんにまかせてずらかってきたんだね。ほんによかった」

「ああ、殿なんぞで命を落とすくらいなら、俺は露葉の上で腹上死したほうがましさ」

藤井はそう言って尻をなでながら、露葉を強く抱きしめた。

露葉は低い声をだして喘ぐと身体を引き離した。

「ばかっ…こんな時に!」

「へへ…。お楽しみは後にして、まずはここからずらかる算段だな」


藤井は悪びれず、懐から白い紙を拡げた。

「この先には関所があるが、迂回しながらこの川を渡ろう。川を渡りきっちまえば戦場とは無縁のパライソだ。そこでお前と夫婦(めおと)になって、今度こそまっとうに暮らすんだ」

「どこだってあんたとなら…」

露葉は藤井の腕にしがみついてゆっくりと頷いた。

「いこう」

「あい」


二人は関所をぐるりと迂回して、川の流れる東南へ歩いた。
山道の歩行はさすがに厳しいものであったが、それでも月明かりが出ているのはありがたかった。

半刻ほどで、河原に出た。ここらは高天原となづけられている場所である。

「大丈夫か、露葉」

「はぁ、はぁ…。だ、大丈夫。少し息がキレただけ」

露葉の小さい肩が震えながら上下していた。
さすがに女性の身でこの山越えはきつい。頬が桃色に上気してほんのり桜色になっている。
月明かりに照らされて、なんとも艶っぽく見える。

対岸は真っ暗で川の流れはことのほか緩そうだが、川底は結構ありそうだった。
ところどころに大きな岩が隆起してはいるが、それを伝って渡れるほどのものではない。

藤井はどこかに橋のようなものがないかと見渡したが、さすがに易々と関所越えをさせないための地形である。
明るいうちならまだいいが、こう暗くてはさすがに危うい。

しかし朝まで待ってたら、必ず見廻り組に見つかるだろう。
チャンスは今しかなかった。

この向こうに未来がある。

息を整える露葉を見ながら、長い木切れを薮から探し出してそれを頼りに何とか対岸まで渡ろうと考えた。
暗い川を見ながら、決心がついたように川に入ろうとした時、背後でがさりと音がした。

振り向くと、そこには着崩れをした浪人のような男が立っていた。

長刀を右手に下げている。


「お、おまえ…マソ、マソじゃないか」

「けひぃ…。ご無沙汰でやんすねぇ藤井さん」


マソと呼ばれたこの男。藤井とつるんで悪逆算真を繰り返していた不埒者である。
二人で郎党を束ねて、一時期は東海一の山賊と怖れられていたが、藤井が山賊暗しに嫌気がさして抜けてしまいあろうことか武田に仕官をした。

マソはそれ以来、裏切られた思いで藤井を憎んでいた。

「お前なんでこんなとこに…」

マソはそれには答えず、露葉を舐め回すように凝視した。
そして舌なめずりをしながらゆっくり近づいて来る。
露葉はマソの狂気を感じ取ったのか、がくがくと震えている。


「けひゃああ。藤井さんよぉ〜、俺らを裏切ってパライソに逃げ込むなんざぁ、つれねえじゃねぇかよぅ」

ふらふらと、おぼつかない足取りで近づいて来るマソに藤井は制して叫んだ。

「マソォ、もうあの頃の俺とは違うんだ!ほっといてくれ。俺はもう剣を捨てる!パライソで畑でも耕しながら静に暮らしたいんだよ」


それを聞いたマソは、顔を醜く歪めて泣き叫ぶように喚き散らした。

「はぁあああん!?何、寝言ぶっこいちゃってるのこのチンカスはよぉ!!てめぇーだけ楽隠居決め込んで女とくんずほぐれつなんざ、天が許しても俺ぁ許さねえょ!!」

マソが絶叫しながら刀を振り回して、突進して来た。

「マソ!やめろ!!」

「逃げ出した先に楽園なんざねー!死ねやぁ!!!」


マソが袈裟切りに、刀を振り下ろすと、「あうっ!」という短い悲鳴とともにどさっと人影が崩れ落ちた。

「露葉ぁ!!!!」

なんとマソが斬り降ろしたのは、露葉であった。
致命傷である。鮮血がぶしゅうと河原の砂利に飛散した。
藤井の身代わりとなってかばったのである。

「うわぁぁああああ!!!!!!」

半狂乱になりながら露葉を抱きかかえながら、藤井は名を呼ぶ。

「おいっ!露葉、露葉、しっかりしろ!!こんな!こんな…!頼む、死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな!!」

露葉は、藤井の頬に手を当てている。体温が急激になくなっていく感覚。
迫り来る死に露葉は満足そうに

「あ、あんた…あんただけでも…に、げて…」

首ががっくりと落ちた。
にっこり笑いながらこときれた露葉の顔は、安らかに眠る慈母のようであった。


藤井は天を仰ぎながら、魂が吹っ飛ぶくらいに叫んだ。

「露葉ぁあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

闇が泣いていた。




「はっ!?」

その頃、武家屋敷にいた藤川みさおの脳裏に何かがよぎった。

「今のは何かしら…胸がざわざわする」

しかしそう思ったのは一瞬で、次の瞬間にはお洒落装備の色染めに考えを戻していた。


その後、藤井と突がどうなったのかは歴史には記されてはいない。
ちゃんちゃん!

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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

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No title

>藤井さん
奴はホモではないんだ。ゲイなんだw
そこを間違えるなと奴は言うw

>凸子
藤井さんは浮気はしていない。
全部本気だ。だから尚更悪いw

>みさおん
思考が単純なのでまるっとお見通し!

>マソ君
つうか色々諸事めんどいことがあって最悪の盆になってる件w
9月まではツキがない模様

No title

ろばばばばばばばあばば!
良きお盆をW(`0`)W

No title

お洒落装備の染め替えは毎日インする度に考えるんだけど
何で知ってんのw

ふじーさんのうわきものー。
三浦にーさんにやられちゃえばいのに。

と、凸兄が言ってました。

⇒みさおっち
そこはやっぱ豪華染めでしょー。

No title

三浦さんはどこに行ってもホモでわらたw
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生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
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