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梅雨の怪談4

舗装された林道を走ってゆく。

相変わらず藤井は無言だ。時折、「ぐふっ;」と苦しそうな呻き声を出すが、しっかり前方を見て運転には支障はない。労りの声をかけようと迷うが、返事をするのもだるそうなのでこちらも同じく押し黙る。
覇気はないのだが、目だけは異様にギラギラしている。
声をかけるのを躊躇うのは、その様子に臆したこともあるだろう。

青森市小畑沢字小杉。
ネットでは驚くほど情報がなく、Googleでも地図情報が出てくるぐらいである。
その中に「杉沢村伝説」というサイトがポツンと上位表示されていた。

私も元の戸籍は大字(おおあざ)がつくような、宮崎の田舎の生まれであるが、昨今の情報社会に至って情報が薄い。

実際ほんとに何もない山林地帯なので、オカルトではなくリアルな杉沢村消失の検証としては

1.外部から遮断された寒村
2.余りに周辺に町がないため過疎化
3.最後の住民も引っ越す
4.村が消滅

といった経緯らしい。

民間伝承や言い伝えの類いには、こぞって尾ひれがついてくるものだが、さて一体誰が噂を広めたのだろうか。
それとも、このような怪異に対しての現実的な裏付けで、神秘的好奇心を打ち消すのが無粋なのか。
流れていく緑色の景色をぼーっつと眺めながら、つらつらと考える。

八甲田山方面に向かう国道103号線を南下して、1時間ほど。
青森県グリーンバイオセンターの前を通り過ぎた。

ここらはもう山道である。
くさぶえ温泉の看板が見えた。

その先の道路脇に、杉沢村の目印である赤煤けた鳥居が見える。

「ここか」

私はそう言うと、藤井は車を道路脇に停車させた。
蒼い顔をしながら、びっしりと顔に汗をうかせている。

「おいおい…だいじょうか?」

藤井はステアリングに顔をうずめて、小刻みに身体を震わせている。

「…ここは邪悪な気が充満している。危険だ…」

「は?いい歳してギアスみてーな廚二臭いこと言ってんじゃないよ」


藤井はフェイスタオルで顔を拭うと、吐き出すように息を何度も吐いた。
外に出てみると、うっすらと暗くひんやりした感じである。

林に囲まれて、いかにもという情景なのだが、結局はただの過疎った村の跡地である。
オカルトブームに乗っかって、誰かが面白半分に伝聞を拡げただけだ。
それを、若い奴らが面白がってネットで拡散していったのだろう。

所詮、怪異なんざ俺の周りには起きようも無し。
それなら、静岡の田舎の墓地のほうがよっぽど怖かった。

「藤井さん、行こうぜ」

「まじで行くの?ここやばいって;まじでまじ」

「やばいのは、あんたの顔だろ。いつもの強気はどうした」

「幽霊とかほんとダメ!ここ、まるで死霊のはらわたで見たような森だし怖い;」

「残念ながらアッシュ(死霊のはらわたの主人公)はいねーぞ。それに車の中が絶対安全というわけでもあるまい」

「夜中に観たら卒倒するレベル;」

「と・に・か・く!行くんだよ。あんたが提案したことだろう。いい加減にしないとあの呪文唱えるからな!」

「呪文って…まさか」

「そう、カンダ・エストラタ・アマントス・イアグレッツ…」

「やめてぇええ!行くよ…。絶対祟られるこれ」

「祟られたら、俺の後ろの百太郎を貸してやるよ」


ごねる藤井を車から連れ出して、我々は鳥居をくぐった。
鳥居の横には、髑髏に似たような石がある。演出凝り過ぎだろと呆れた。

いくつかに分かれた道の一本の鬱蒼とした杉林の林道を進んでいく。

藤井は、どこかで買ったものか十字架をぶらさげて何やらぶつぶつ言っている。
経でもなし、九字でもなし。

「オン・マリシエイ ・ソワカ…ナウマク・サマンダボダナン・ ベイシラマンダヤ・ソワカ…」

いつ覚えたのか知らないが、真言、マントラである。
簡易的な退魔法かもしれないが、そもそも祈る神と正式な契約を行なわないと、効力はない。
しかし気休めにはなるだろう。

日本語で摩利支天様、毘沙門天様と唱えてるだけだとしても。

先に100m弱ほど入ったところに突然空き地が広がっていた。
人気のない廃虚らしき建物が4棟。当然ボロボロである。
そのうちの1軒には花輪のようなものが飾ってあった。

こんな光景は、小さい時分によく見た光景だ。寒村の人の離れた民家。
荒れ放題のたたずまいで、そんな家には怪かしの類いが住みつくと言われている。

「妙な風情があるなぁ。確かにうすきみわりー」

「突さん;これやばいって。すごい嫌な感じがする。戻ろう」

「まぁまぁ。とりあえず写真撮っとく」

アイフォンを取り出して、ピントを合わせて辺りの写真を3枚ほど撮った。
ついでに怯える藤井の写真も撮ってやった。

人が長らく住んだ土地には、情念が残ると言われている。
人間の持つ生体エネルギーが、残留の思念体として残っているとでも言おうか。

よく、使い込んだ愛着のあるモノに念がこもると言うが、人の想いのたけはそれほど強烈な磁場を生み出すのかも知れない。

特に昔の人は土地に愛着を持ち、容易にそこから離れない。
土地に精神が根付くのだ。

そう考えると、この跡地の残骸は村人の無念が重く溜っている場所ではあるのかもしれない。

まあ悲しい話ではあるのかもしれない。前にも朝のテレビでどこかの消失した村を特集していたっけ。
人が居なくなった土地というものは、確かにせつなくうすら寒いものがある。

怯える藤井を振り切って、更に奥に進むと、何かの墓があり、その墓の脇には、いくつかの地蔵が奉られている。
地蔵の顔は笑っているような、泣いているような微妙な顔だ。

「こんなところか…」

私はもう見るべきものはないなと、来た道を引き返そうとした。

すると背後にいた藤井が顔をひきつらせて私を見ている。
いや私の後ろを見ているようだ。

明らかに恐怖に表情が歪んでいた。

私はゆっくり振り向くと、地蔵の横に独りの白い着物を着た老婆が立っていた。

「へげぇえ!」

思わず、素っ頓狂な叫び声をあげて尻餅をついた。

どこから沸いたのだろう。今の今まで気配はなかった。
老婆は無言で私達を見ていた。

私は声もでないほど恐怖していた。

長い白髪に顔を隠して腰を曲げている。
着物はしみ一つない純白で目に痛いほど白い。

ゆっくりと、右手を挙げ人差し指で来た道の方向を指差している。


私は、腰が抜けそうなほどに取り乱して後ずさりながら、立ち上がった。

「ふ、藤井さん、もう帰ろう;」

震える声で藤井に呼びかけたが、返事はない。

「藤井さん!?」

藤井はいなかった。その場から隠を使うように消えていたのである。

「!????』

わけがわからなくなった。今まで差込んでいた申し訳程度の光も失われ、辺りが暗くなっていく。

老婆が白髪を掻き分けて、隠れた顔を見せた。そしてにっこりと笑ったその顔は…

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そこからどうやって逃げたのかは、記憶がない。

不思議なことに、青森から自宅に戻るまで藤井の存在を、まったく忘れていたのである。
置き去りにしてきたのだ。

なんということだ。友人を置き去りにして一人だけ逃げ出すとは…。
しかし、なんで藤井のことをまったく忘れていたのか。

あれから2週間。藤井には連絡が一切取れない。
もしかしたら置き去りにしたことに腹を立てて、無視されてるのかも。
ブログもあれ以来更新されていない。

陰鬱とした思いで過ごしていたが、どうにも気がかりだ。
もしかしたらと思い信にインしてみる。

私設にいたタツヲやかずはに聞いてみた。

「おい、最近、藤井さん見かけたか?」

「いや?見てないな」

「見てないー」


インしてないか…。どこにいったんだ藤井さんは…。

私は何をするでもなく両替前に立って、時を過ごした。
たまに知人から対話がくるが、藤井の情報は得られなかった。

0時近くになり、そろそろ落ちるかと思った時に、一通の信書が届いた。

「誰だこんな時間に…」

信書を開いてみると、なんと藤井からだった。
驚きながらもほっと安堵する。信書にはこう書かれてある。


武蔵の「ほーも」で待ってます

そう一文で綴ってある。

私はすぐさま神速丹を飲んで、武蔵へ駆け出して行った。
隣国とは言え、距離は長い。

関所を抜けて、指定の場所に着いたが藤井の姿は見えない。

っていうか…

こんなとこに村とかあったか?

藤井の姿が見えないので、農家に配置されたNPCに話しかけてみる。
すると驚くべき返事が返ってきた。

その百姓は笑みを浮かべながら言った。

「ようこそ。ここは杉沢村です」

「は?」

よく見るとそのNPCの顔は…顔は

なんと、あの藤井のまんまである!

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私は一目さんにその場を離れて甲府に帰った。
まとわりつく恐怖の連鎖。
藤井はまさか…。

後日、インして、杉沢村のことを私設や一門の知人に聞いてみたが、夢でも見たのだろうと一笑にふされた。

藤井は相変わらず連絡はとれない。また、あの謎の村も、藤井の顔をしたNPCも、同じ場所に行ってみたが二度と見ることはできなかった。

依然として藤井の消息はつかめない。
しかし、あのNPCの幸せそうな笑顔は充足され満ち足りたものだった。

藤井は本当の自由を手に入れたのかも知れない。
もしかしたら、永遠の楽土へ旅立ったのかも。

私は仕事をしながら、少しだけ藤井をうらやましく思った。
また、どこかで会うこともあるだろう。

もちろん信の中でだろうが。
あの後、アイフォンで撮った写真をみたが撮ったはずの藤井の姿はどこにもなかった。
私はそれを恐怖するでもなく、すんなり受入れていた。

今頃、杉沢村で住人として村人達と暮らしているのかも知れない。
時の狭間に消えた藤井。

だがそれもいいじゃないか。

「やれやれ…。悪いことのあとにゃ良いこともあるかね」

外は快晴である。

先週までの湿った空気もどことなく軽い。夏近しだ。
長い梅雨も終わりを告げていた。




しかし…お察しの通り、問題が解決したというわけではないのであった。

ま、いっか。

【おしまい】

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テーマ : 雑記
ジャンル : ゲーム

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No title

>藤井さん
直しといたw
昔、知人がODA(政府開発援助)を、オダと読んで、シベリアに送ってやりたくなったw

No title

武蔵の「ほーも」で待ってます
なら完璧だったのにw

昔、110番通報してて後輩が字(あざ)を
じとか読んでてビンタしたw
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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