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カイジっぽい林檎ちゃん




林檎は負けた。

もちろん一発逆転のギャンブルにだ。
敗者には何もくれてやるな。それが勝負の世界の鉄則である。

地に堕ちた鳥は二度と飛ぶことは敵わない。
しなだれた陰茎が元に戻ることはないように。

自ら望んで堕ちたわけではない。

普通に生きたかった。ただそれだけである。
しかし、友人の借金の保証人になったばかりに、1000万の借金を背負うことになった林檎。

人生は糞だ。

そして、生まれた時からツキの定量は平等ではない。
財閥の御曹司に生まれるもの。アフリカの飢餓寸前の村で生まれるもの。
頭脳体躯容姿ともに恵まれて生まれてくるもの。
重度の障害を盛って生まれてくるもの。

これを仏教では生命の「業」と言う。

林檎は背負っている「業」は、徹底的なツキのなさだった。
あと一歩というところで全てを逃してしまう。
ほんの1ミリ。
それを掴めない。その1ミリの違いが、勝者と敗者。天国と地獄を分つ分岐点である。
その1ミリに泣いて滅していく者は、運命という人間の創りだした都合のいい言い訳で自らを紅蓮の炎にゆだねるのだ。ゲヘナの業火で身を滅せられるに任せる。

林檎はツキがないわけではなく、むしろ人生はついていたほうである。
女性にはそこそこもてたし、可愛い彼女もいた。友人も多く、実家は富豪でないしても中流の上だ。
学校の成績の悪くなかった。金にだって困ったことなどほとんどない。

どうしてこうなった。いつからこうなった。
それがわからない。わからないからここにいる。
あっ、保証人になったからだった。糞、あの野郎。
無心でただ掘る。穴を掘る。
粉塵舞い飛ぶ地下の労働キャンプで穴を掘っている。

自分の墓穴をまさに掘っているのだから救えない。
いっそ殺してくれとも思うが、思ったより自分の身体は頑健である。

ここで、15年以上の筆舌に耐え難い労働を終えて、やっと地上の光を見れるのだ。
帝王グループ幹部のための核シェルター。
なんで俺がこんな奴らのために…。

そう思うと呪いの言葉しか浮かんでこない。
不思議なもので、知人への怨みは雲散霧消している。

ただ、ただ、勝負に負けた自分のツキの無さが情けなかった。
悔しかった。そしてどろどろとした怒りが腹の底から込上げてくる。

一日の苦行とも言える作業が終わり、点呼をとる。
朝までいた隣の奴がいない。

またか…と思う。作業中に倒れたのだ。そして医療病棟とは名ばかりの人体スクラップ工場に運ばれる。
そこに運ばれたものが帰ってきたという話は聞かない。

当然だ。こんな穴蔵で日夜強制労働をしているんだ。体力のない奴はぶっ倒れないほうがおかしい。
戦場ではあきらめたものから死んでゆくと言うが、ここは夢も希望もない。
そして、それを願うことすら罪になる。

機械の洗浄のようなシャワーを浴びながら、林檎は歯ぎしりをしていた。
ここでは作業員は、班ごとに分けられてグループとなっている。
そして大部屋にまとまって収監され24時間いつも一緒である。まさに監獄のシステム。

粗末な夕食が済むと、消灯時間までの自由時間が来る。

古い雑誌、古新聞、トランプ、将棋などの娯楽道具は揃っている。
テレビ、ラジオといった情報を知らせるものはない。

畳敷きの蒸し暑い大部屋での、このひとときだけが唯一身体を休めることができる。


「はーい、みんな注目ぅ」

班全員が、いかつい身体をした一人の男に目線を向ける。
その後ろからカートに積まれたビールやレトルト食品、菓子類などを押してくる2名の男がいる。

声をあげたのは第9作業班の班長の「藤井」という男だ。
見た目は30半ばであろう。坊主刈りにして何が楽しいのか、容赦のない破顔を向けてくる。

「今日もお仕事ご苦労様でしたね。出勤簿に判子は押しときました〜」

慇懃でやわらかな物腰だが、目が笑っていない。
林檎には一目でくわせものだとわかる。

「え〜、みなさん。今日は待ちに待った給料日でぇす。呼ばれた人から前に来てくださーい」

林檎の番になると、班長の藤井はひと呼吸おいて周囲に呼びかけた。

「はーい、みなさん。林檎君は今日が初給料でーす。拍手拍手」

そう言って、初給料を祝福する。
林檎は恥ずかしさと情けなさで赤面した。

やめろー!やめてくれー!!そう叫びたかったが、ささやかな反抗もここでは罪だ。

マニラ封筒に入った薄っぺらい給料を受け取ると、林檎は無造作に端を破り紙幣を取り出した。

9,1000マソ。
紙幣にはタッチャマソと呼ばれる帝王の創始者の顔が印刷されている。

これがこの地下社会のみで通用する貨幣である。
その価値、表社会での1/10!

こんなもん…。
ふざけるな!ふざけるな、ちくしょう!ちくしょう!!

林檎は、その言葉を拝むように額に紙幣をこすりつけて、声に出さずに飲み込む。
利息や食費など色々差し引かれて実際に手元に残るのは実質350円!
筆舌に尽くしがたい労働をしいられ、飯はタクワンとメザシ3匹。

これでは、信オンで僧兵となって炭を掘っているほうがよっぽどましだった。

とはいえ、全てはこれにかかっている。
労働奨励賞として設けられたシステムの50万マソを払えば一日極楽ソープ優待券が手に入るのだ。

給料を配り終えると、藤井を含む3人が食品の販売を始めた。
ここでは娯楽が乏しい上に粗末な食事しか与えられない。

ビールやつまみの惣菜、コンビニの焼鳥、スナック菓子などは収監者達にとっては願ってもないご馳走である。

それに群がる男達を林檎は侮蔑の眼差しでじっと見ていた。

馬鹿が!!目先の欲に捕われて夢も負えないのか。
救えない屑が!!

缶ビール1本で5,000マソだぞ。どこまで足下を見ていやがる。
あんなもん、調子にのって使い続けていたら、こんな金一瞬で消し飛ぶんだぞ。

俺は違う。俺は50万マソ貯めるんだ。
そして一日優待券を手に入れて、ソープ嬢をたらし込んで1000万ぐらい貢がせてやる。

でも…。

なんだこの…ざわざわした思いは。

周りはビールを飲みながらツマミを食い、思い思いに親しいグループで固まって談笑している。
林檎はぼっちだった。誰も信用できない。そんなぎらついた思いは態度に出る。

当然孤立していき仲間と呼べるものはいなかった。
だがそれは都合がよかったとも言える。
この地獄の負け組連中とのわずらわしい馴れ合いを拒絶することによって、
一片の光、可能性を失わないでいれる。


だけど…

買えるんだ。俺は買える。半年貯めても4万マソは端数で残る。
じゃ、いつ買うのか?

身体中の血管が泡立つ。欲望という甘美な誘惑の罠。
御し難いこの思い。

バカバカッ!やめろ。
林檎は激しく葛藤する。

我慢するんだ未来のために;

膝を抱えながら、身体を固くしてうつむいていると、めざとく藤井が声をかけてきた。
林檎が顔をあげると、藤井はニタニタしながら諭すように話しかけてきた。

「林檎君。わかるよ〜。目標はあれだろ?優待券」

「えっ…」

「考えることは皆おなじさぁ。ワシも昔はそうだった。ははは」

「……」

「となると、こんなところで金を使ってるわけにはいかんよなぁ…でもな」

藤井は相変わらずの破顔で語りかけてくる。

「無理はいけねぇ。無理は続かない。適度に自分を許してやるのが長続きするコツなのさ」

「自分を…許す」

「そうさ。自分へのご褒美さ。さ、これ…」

藤井はそう言って、250mlの缶ビールを林檎の前に置いた。

「はぁ?あの…」

「林檎君の初給料の俺からのお祝いさ。金はとらねえよ」

林檎は手を振りながら立ち去る藤井に目もくれず、目の前に置かれた缶ビールを手に取った。


うおぉぉぉぉぉぉぉおおお!!!

キンキンに冷えてやがるぅ!!

震える手でプルトップをひきちぎると、冷えたビールを喉から一気に流し込んだ。

のど仏をならしながらゴクゴクと飲んだ。
自然と涙が出てきた。

噛みしめる。噛みしめる。
まさにシャバの味である。

くぅ〜〜〜〜〜〜;;;きくぅう〜〜〜;;

美味すぎる;;殺人的だ;

全身が強烈な快感に痺れて、林檎は思わず射精しそうになった。

残り半分を流し込むと脳に流れ込んでくるシャバでの当たり前の生活。
それがこんなにありがたいものだったとは…。

まじでビール1本のためなら、人だって殺せる。
心底そう思った。

空になったビール缶のふちを舐めて、我に返った。
すると、すぐ横でムシャムシャと肉を咀嚼する音が聞こえる。

むしゃむしゃ、がつがつ

横に座っていた男が、ビールを飲みながらコンビニの焼鳥を齧っているのだ。

うぁああああ;;;あんなもんでビールを飲めたら…。
くそっ;くそっ;美味そうに食うんじゃねぇっ。

強烈な誘惑に林檎は頭が狂いそうだった。

しばらくして、カートの中身も減り、販売は一段落ついた。
売っていた男達が今日はもう尾張だなと思った時に、じっとカートの中身をみつめる男がいる。

林檎である。

「ん?何?どうしたの林檎君」

男の一人が声をかけると、林檎は背中をむけて何やらつぶやいた。

「本だけ…」

「えっ?何?何だい?」

「缶ビール…1本だけ…」

「缶ビールかい?そりゃこの350mlの缶ビールってことかい?」


林檎は無言でうなずくと、販売員の男は声をあげて缶ビールを取り出した。

「はぁーい!林檎君缶ビール1本お買い上げぇ!」

1本…1本だけならいい…。今日は給料日、特別な日だ。
そうさ、1本だけならご褒美だ。

「じゃぁ、つまみは?」

「えっ…!?」

突とネームプレートに書かれた売り場の男がニコニコしながら言う。

「おいおい、せっかく冷えたビールで一杯やるんだ。つまみも無しじゃ味気ないって。つまもうよ!なんでもいいからさ」

林檎はカートの中を見渡すと、嫌でも目につくのがコンビニの焼鳥だ。しかし7000マソである。高すぎる。
柿ピーに目を移して指差しながら

「…じゃぁ、その柿ピーを」

そう言った瞬間、藤井が声をかけた。

「下手だな林檎君」

「へ?」

「下手っぴさ。欲望の開放が下手」


藤井はカートから、パックされた焼鳥を取り出して目の前にぶらさげた。

「本当は、これで冷えたビールを飲みたいんだろう?でもそれはあまりに値がはるから、こっちのしょぼい柿ピーでごまかそうとしている…」

「………」

「だめなんだよそれじゃあ。欲望ってのは小出しにしたら。やるときはきっちり開放してあげる。それでこそ明日への節制につながるってもんさ」

考えてみればそうかもしれない…(←おい)

もともと、半年で50万貯めるなんざ計画に無理があったんだ(←おいおい)

そうだ!7ヶ月にすりゃいいんだ。無理してもどうせ続かないんだし(←お〜〜〜い)

藤井に促されるまま、林檎は焼鳥を購入。

「あと…実はポテチも」

すると、さらにそれだけじゃビールが足りないと、勧められてあれよあれよと言う間に給料の半分以上を散財。


ビールを流し込みながら、焼鳥をかじる林檎。
さらに肉じゃが、ポテチと貪りながら、先ほどまでの葛藤など雲散霧消して食の快楽に酔っていた。

うめぇ〜〜;もう最高〜〜!身体に沁みるぅ〜〜;;

まさに天国である。そして、すぐそこには地獄が待っているのもわかっていたが、欲望の開放に目覚めた林檎はもう止まらない。


その様子を見ながら、突という売り子はやれやれといった感じで藤井に話しかけた。

「ばかまるだしですねぇ」

「…馬鹿だからねぇ。今の若い者なんてあんなもんさ。ここは食う以外の娯楽が乏しい分、その誘惑は強烈。奴は食い終わったら猛省してこう考えるはずさ」

藤井の目は冷たく光りながら、林檎を眺めている。

「明日から頑張ろう、とな」

「明日じゃない、今日さ。今日だけ頑張るんだ」

「今日を頑張ったもののみに明日が訪れるんだよ。ちょっと一杯ってのが甘汁三色一盃口ドラ3で積もられる人生になる」

藤井はまるで自分に言い聞かせるように、噛み締めながら言葉を吐く。
できれば…俺も娑婆で気づきたかったがな。糞っ。

「これでまた一人確保ってことっすね」

「ああ。そうだな」

地の底ですら、悪魔は微笑む。


これは、現在の林檎(シモヘイへ)が信オンに復帰する3年前の話である。

わけはなかった。



さ、今日だけ頑張ろう。
それでは良き週末を。

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テーマ : 雑記
ジャンル : ゲーム

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No title

>藤井さん
まぁ普通そうだわねえ

>マソ君
マソコってキャラだとNGね!

>林檎ちゃん
溜めるとよくないのでレッツ吉原!

No title

やっぱ何事も我慢はいけませんねー我慢は
先日危うく無精しそうになった;w;

No title

チンコまんこ!

No title

保証人は親兄弟でもなっちゃだめ;w;
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凸

Author:凸
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生息地:都内在住
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