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佐渡先生のオンライン日記

佐渡先生は医者である。

しかし貧乏だ。

貧乏なのでいつも腹の虫を慣らして飢えている。

もう丸二日水だけしか飲んでいない。

「はら…腹…減ったなぁ」

先月稼いだ金をそっくり、博打ですってしまった。
胴元のやらせで最初はいきおいよく稼いでいたが、徐々に旗色が悪くなり夢中になった。
気づいた時には、オケラである。

以来、少しばかりの米と漬け物でしのいできたが、いよいよそれも尽きてしまった。

金がなければ寝るしかない。客もこないしどうにもならない。
鉄腕アコムやアイフルも使えない。

佐渡先生は畳の上に寝転がって思案にくれた。

装備を売っぱらうしかないか。しかし、装備といっても旧式のものしかないぞ。
日銭にしかならんな。

途方に暮れて頭を抱えるが、いい案は浮かんでこない。
その姿を笑うように腹の虫はぐぅと鳴る。

「こうなったら…あれしかない!」


佐渡先生は、起き上がると土間から釣り竿と魚篭を取って外に出た。


佐渡先生の住んでいるのは長者長屋といって、住人は一般の町人である。
家族ものも多く、佐渡先生はこの界隈では、貧乏医者だが腕は確かと評判だった。

「あら、先生!これから釣りですか」

声をかけてきたのは、隣に住む大工の女房のかずはである。

「ええまぁ。ちょっと気まぎれにね…」

佐渡先生は力なく笑うと、そそくさとかずはをいなして、堀池のほうへ向かった。

「あんなんにかまってる場合じゃない。こちとらもう命がけなんだ…」


ははーん。どうやら佐渡先生は、自給自足をするつもりらしい。
川魚を取ってなんとか食いつなごうという算段だ。


堀池に着くと、絶好のポイントに先客がいた。


見ると、藤井と言う細工師だった。

藤井は佐渡先生に気がつくと、鷹揚な笑顔で笑いかけた。

「おや、佐渡さん。あんたも釣りですか」


屈託のない笑顔は当たり前。
藤井の魚篭には釣ったばかりの魚がピチピチと飛び出さんばかりに跳ねている。

これだけ釣れりゃあ楽しいだろう。

この野郎…自分さえよけりゃいいのかい。

佐渡先生はひきつった笑顔で軽く会釈をした。
内心は腸が煮えくり返っている。

人の心理は余裕がないとすべからく皆こうなる。

パチンコなどで、自分が嵌っているのに隣が連荘しまくるといい気分はしない。
しかし、隣が出ようが出まいが、本当はまったく関係がない。
自分が当たって連荘しなければ、他人である隣の人がいくら負けようがまったく関係がないのだ。
しかし、隣と揃って連ちゃんしまくっていると妙な連帯感などが出てくる不思議。
当たった瞬間に目が合って軽く会釈なんぞしたりする。

余裕っていいね。大事だね。
正しい社会の構図だね。

しかし、その時の佐渡先生にはまったく精神的な余裕はなかった。

ひもじいのである。飯が食いたいのである。
いっそ、後ろから藤井を殴り倒して魚を奪ってやろうかとも考える始末。

しかしさすがにそのような非道はできるはずもない。
佐渡先生は甲府の町では貧乏ながらも人格者で通っている。
でもオナニーぐらいはするけどね。

とにかく、自らの沽券を貶めるような真似はできようはずもなかった。

佐渡先生は藤井の座っているポイントから三間ほど離れて座り、川へ釣り糸を垂らした。

自分にわずかでも運が残っているのなら…と考える。
天網恢々粗にして洩らさず。
清廉潔白で生きてきた自分を天は見放すはずはない。

佐渡先生はそう信じていた。

藤井はそうとも知らず、i-Podで音楽を聴きながら鼻歌を唄っている。
聞こえてくる鼻歌の歌詞からすると、尾崎清彦あたりだろうか。

佐渡先生も音楽を聴きたくなった。

しまったな…。わたしもi-Podを持参しておけばよかった。
佐渡先生のお気に入りのアーティストはコクトー・ツインズ、ザ・キュアー、Bアンダーグラウンドやスミスである。

暗く陰鬱な音楽が今の気分にはぴったりだ。クラウス・ノミやローリー・アンダーソンでもいい。
風が少し出てきた。川面に波状の波紋が広がる。

まだ陽は高く日中の温度も4月にしては高いのだが、風は冷たく感じられた。

一刻ほど釣り糸を垂らしては見るが、まったくアタリがこない。

「むぎぎぎぎぎ…こめめめめめ…」

佐渡先生は、いい加減発狂しそうになって唸った。

魚にすら舐められている気がした。ツキがないときは何をやってもつかないものである。
藤井を見ると握り飯を食べていた。
真っ黒な海苔に包んだ塩の握り飯。

魚篭にははちきれんばかりの釣果。

佐渡先生の空腹は天をつんざくほどにまで頂点に達している。

腹が減って気を失いかけるかと思った時、目の前に何かが現れた。


「ほら、佐渡先生もおひとつどうかね?」

藤井が握り飯を差し出していたのである。

「あ……」


藤井はニコニコしながら、握り飯と漬け物を差し出していた。

佐渡先生は、口をあんぐりと開けて藤井の顔を見た。

「いやぁ、佐渡さんにはうちのガキ寝込んだ時に世話をかけってからなぁ。ま、よかったらひとつ」

佐渡先生はそう言われてハッと気がついた。

藤井とは、普段は顔をあわせても軽く会釈するだけの顔馴染みでしかない。

というより、あまり顔をあわせることがないのだが、数年前に藤井の長男坊が肺炎をおこしかけているのを診察したことがあった。

そのときのことを藤井は覚えていたのである。


「あ、ああ…。ありがたく…頂きます」

佐渡先生は、震える手で握り飯を受け取ると、半べそになってさきほどまでの矮小な思考を猛省した。
なんていい人なんだ。

本当に藤井はいい人だった。眉毛ふてぇけど。

握り飯は塩加減が絶妙で美味かった。
漬け物も美味かった。

2日ぶりに味わう米の味は。どんな食材にも代え難いものに思えた。
佐渡先生は涙を流しながら食べた。

藤井は、その様子を満足そうに眺めると、それじゃわたしは今日はこのへんでといって道具を片付け始めた。

そして、釣果のお裾分けだと言って5〜6匹ほど佐渡先生に分けて帰っていった。

人の情けが身に沁みた。

佐渡先生も釣果の無い釣りはあきらめて帰る事にした。

先ほどの握り飯でとりあえず多少腹はふくれた。
それにありがたいお裾分けもある。

塩と味噌はまだあったはずだ。
あとは、屑野菜と多少の米を借りれば何とかなるだろう。
博打はもうやめよう。
心底そう思った。

ラピュタのシータも言っている。

ゴンドアの谷の歌にあるもの。
晒しに根を下ろし廚と共に生きよう
中華と共にアップデートを越え業者と共に転売をしよう
どんなに面倒なクエをこなしても
沢山の、かわいそうな僧兵を操っても
炭掘りから離れては生きられないのよ


いや意味わかんねーしこれ。

釣り竿と魚篭を持って帰り支度をしていると、土手に女が立っていた。まだ二十歳も出ていない若い娘だ。

見たことの無い顔である。
こちらをじっと見ている。

なんだあの娘は…。

訝しく思ったが、一瞥しただけで気にもかけない風を装う。

よく見ると美人とは言えないまでも尋常な顔立ちで着ている着物も上等である。
物腰に育ちの良さが見られ、どこかの商家の娘かと思われた。


娘は土手を下って佐渡先生の真後ろに立った。

おーーーい。なんで俺の後ろにたつ!?
気まずいんだけど。非常に。

オラもう帰るんだよ。やめてくれ。

口に出したかったが、なぜかはばかられた。
この娘、妖しの類いか何かか。それともカワウソが化けているのか。


「人はどこから来てどこへいくのでしょう…」


は?何いってんだ。この女。

わたしに聞いてるのかこれ。いや、独り言だろう。
うっかり答えてスルーされたら超絶恥ずかしい。
恥ずかしすぎて泣いちゃうよ俺。いいの?

いや、しかし…この場には俺とこの娘しかいない。
しかも、わざわざ後ろに立ってつぶやくとか明らかに問答を求めているのではないだろうか。

ははーん。トンチかこれ。

いいだろう。俺も甲府の一休さんと呼ばれた男だ。
母上様お元気ですかってなもんだな。

よぉし…気の聞いた返しを言わなければ…何か…何か…。


「き、きんたま!」


思わず口からでた言葉だった。

し、しまったぁ〜〜〜〜!!あまりに緊張が昂って意味不明な言葉をおををををを!!!
頭を抱えて後悔するが覆水盆に返らず。

これじゃあギャグにもなってないただのセクハラだ。

佐渡先生はやっちまった感一杯で、後ろを振り返った。

娘は無表情で佐渡先生を見ていたが、ニヤリと笑うといきなり一差し指で佐渡先生の額を突いた。

「あうとぉ〜〜!!」

娘が大声で叫んだ。
その瞬間、電流のような衝撃が全身を走り抜けて佐渡先生は気を失った。

どれだけ、気を失っていたのか、気がついたときはもう夕暮れだった。
藤井にわけてもらった魚篭の魚は一匹も見当たらなかった。


佐渡先生の額には「(´・ω・`;)」の絵文字の痕がつけられていて生涯消える事がなかったという。


【おしまい】
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テーマ : どうでもいい雑記
ジャンル : その他

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No title

うぃ~^^v

No title

>佐渡さん
笑えば…いいと思うよw
さぁ、GWはもうすぐだよ!

No title

わ、笑えん^^;

ゲームする暇が欲しいなぁ。。。

No title

>藤井さん
北斗はオスイチ2回あるねえ。カイオウバトルも3回ほど。
しかしトキはだめだわ連荘しねえwあいつラオウにぶっとばされてばっかw

>マソ君
藤井さんの昔のミクシー日記が鬼畜すぎて面白かったw

No title

本文読む前に、藤井さんのコメントみてしまった
チャラおwわろた

No title

先週、三台並びの北斗の真ん中の台に座って打っていたら
左側にチャラチャラした髪の毛いじくるホモみたいな男が打ち出し
俺が拳王モードを三回くらい繰り返して当たらなかったけど我慢して
打っていたらチャラ男が俺の右側に座ってまた打ち出していたが
変な女が左に座って千円もしないうちに拳王モードから連荘してた。
そのとき同時に俺も拳王偵察のユリア漫画カットが入って連荘
チャラ男は泣きそうな顔をしていた。
女は拳王を選んで3連荘
トキの俺は7連荘

言いたいことはトキは正義
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
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