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俺デュエリスト

俺の職業は「デュエリスト」だ。

最強のデッキで今日も己の腕を磨く。
そしていつの日か、世界の頂点に君臨するのだ。

闘わなければ男じゃない。人生のリミットブレイクまで、轟け俺のソウルスティンガー。
たぎってくるぜ。今日も快調だ。


「おい!バイトー。そこ終わったら次は会議室な!ぐずってんなよ」


ふっ…闘う男に休息はないな。

今は一時しのぎの清掃のバイトで耐え難きを耐え、忍びがたきを忍ぶ毎日だ。

デッキはデッキでもデッキブラシで床を擦りながら、いつの日にか飛翔する自分を夢を見ている。

廊下の奥で下品な大声を上げて指示をしている男。
俺より20歳も上の上司だ。ほんじゃまかの石塚をつり目にしたような風貌のオヤジである。
カードにしてみりゃ最低のFランク。屑である。
趣味は釣りと週末のパチンコという。くだらん。
俗世まみれの何のとりえもない男だ。

何故、神はあのような虫けらに生を与えたもうたのか。
天の戯れとしか思えない。

およそ、カードファイトなどの知性をぶつけあう闘いに参加できる資格もない男だ。

口癖は「俺も昔は…」だ。

飲むと必ず常套句のように出てくる。
このような懐古主義的自己満足型のおっさんは、そろそろ社会的に排斥されるべきだろう。
時代は既に情報管理主義社会へと変貌を遂げている。

いまだにウェブの意味すら理解していない、化石のようなおっさんに未来は無い。

しかし、あんな屑でも結婚して子どももいるらしい。
嫁と子どもの顔を見てみたいものだが、あの風体から想像しても容姿は残念なことに間違いない。

「おい、新田。昼飯にすっぞ」
デブ上司が横柄に声をかけた。

俺は27歳デュエリスト。高潔なる戦士。煌めく叡智と強靭かつタフな精神力を持っている。
そんな戦士でも腹は減る。

大手証券会社のビル清掃で困るのは、オフィス街で清掃員の制服だと周囲から浮きまくるということだ。
もちろん業者として社内食堂なども使えるのだが、パリッとしたスーツの男女が集う会社の食堂の端っこで飯を食う汚辱に耐えられるわけもない。
奴らに睥睨するような視線が身体中に突き刺さるようで、飯を食ってても味がしない。
それ以前に、この俺が、誇り高き戦士のこの俺が、たかが会社の隷属する一般人に見下されるのは許せん。
プライドを失ったら戦士は終わりである。

俺は近くにコンビニで飯を買って休憩室の詰所で飯を食う。
四角い折りたたみ式のテーブルにサンドイッチと野菜ジュースを置く。

向かいには、30過ぎの男と女が持参した弁当を広げている。

同じ清掃班のメンバーである。
デブ上司は外に出ていったようだ。

テーブルで昼飯を食べながらスマホをいじくっている男。32歳の独身の藤井という男である。デブ上司からはフジという愛称で呼ばれている。二人は10年来のつきあいらしい。
まぁデブ上司に比べれば、こいつはまだランクは上だ。顔が初代ウルトラマンにちょっと似ている。
もカードレベルで言えばDランク程度だが、排斥するまでには至らない。

しかし、こいつは生粋のネラーだ。ことあるごとに「おkwwwwwww」とか使って俺をいらつかせる。
あまつさえ、この前は俺のことを2chでネタにして晒しやがった。

「新田君ごめんwちょっと晒しちゃったwww」

俺のプライベートはほとんど話してないので、どうせ他愛もないことでネタにしてるんだろうが、人格は確実に破綻している。ネラーにあらずば人にあらずと心底本気で思っているらしい。あほか。
あとSKEの追っかけで、課金ゲーに入れこんでグリーに上納しているバカヤロウである。この前、行きつけのスナックのいれ込んでいた姉ちゃんが結婚すると聞いて落ち込んでいた。

「男らしく祝福してやろうと思うんだ」

フジはそう言って、三日徹夜して制作した手作りの千羽鶴を、いらないという彼女の断りにも関らず、しつこく自宅に届けたら、彼女は恐怖を感じて警察に訴えた。その後ストーカー認定されたらしい。そりゃそうだ。

現在は、ネラーの同士をネットで募ってSNSの「ネラリオン」という集団を結成し活動しているらしい。
スローガンは「2chは日本を救う」とのことで、俺も誘われたがもちろん断った。


もう一人は女だ。バツイチの38歳で高校生の娘がいる。
通称、麗香さん。

若い頃はかなりやんちゃしたそうで、今でもその名残のある風貌をしている。
よく見るとそこそこ美人でグラマーだが、困ったことに俺にちょっかいをいつもかけてくる。
学生の頃は、レスリングをやっていて国体にも出たらしい。
体格もいいので、そこらの男だったら締め落とされるレベル。旦那もアレの時に度々落とされそうになって恐怖を感じて離婚したらしいという噂だ。性格もさばさばしているので、行く先々の会社の男性からは、ちょっとした人気があるようだ。カードにしたら、まぁBランクぐらいにはしてやろうと思える人だ。

「新田ちゃん〜。抜きたいときはいつでも言ってねぇ。ちょんの間でもおk」

しかし、さすがにこうも恥じらいもなくあけすけだと、冗談にしか聞こえない。
冗談でなくとも、戦士の俺でも多少引く。サキュバスのように生気を根こそぎ吸い取られる気がするのだ。

それに俺には心に決めた女性がいる。

ユリアである。
いや二次元のユリアではない。れっきとした3次元の女性だ。

ユリアの本名は、高橋百合。
俺のアパート近くにある花屋で働くスウィートで可憐な女性だ。
北斗の拳のユリアのように慈母のように優しく美しい。

俺が花屋でユリアをみかけたのは、雨の日だった。

いきなり降られた雨に、俺はいっとき雨をしのごうと思い、空いているテナントの庇(ひさし)に身を置いた。
そのはす向かいにある花屋にユリアはいた。

何やら男と言い合っている。
男は背が高く、細身のなかなかのイケメンなようが、恰好が何やらちゃらい。
金髪のロンゲで今風の腰パンを履き、シャツはチェックのフランネル。


男は何かを説得しているように見えた。
金の無心をしているようだ。よくある光景である。

ユリアは悲しい顔をしながら「無職 軽蔑する」と突き放して言う。

渋る男に数枚の紙幣を渡して、男を追い払ったように見えた。
その場にしゃがみこんで、震えて泣いている。

俺は何かのドラマの1シーンを見ているようだった。

すると彼女は立ち上がって俺に気がついた。
目が合った。それは刹那なようにも永遠のようにも感じた。

雨に濡れたユリアの髪にこぼれた雨の雫が、宝石のように光って綺麗だった。
流れた涙も哀しみに沈む瞳も綺麗だった。

ユリアは、うつむきながら店の奥に入っていった。

俺はボーッとしながらそれを目で見送っていると、雨が少し小振りになってきた。

走って帰るかと意を決して走ろうとしたら、店の奥からユリアが出てきた。


紅い傘を持っている。

にっこり笑いながら俺に近づいてきて、考えられないことを言った。

「これ…使ってください。雨の日は紅い傘が幸運を呼ぶそうですよ」

その瞬間、俺の心臓からはズギュウウゥゥゥンン!!という擬音が発せられた。


俺は戸惑いながらも、何か言わなきゃと思った。

何か…何か…。

俺は傘を受け取って言った。

「だけどこの雨…少し泣いてます」


ユリアは、俺の言葉を聞いて一瞬怪訝な顔をした。

次の瞬間─


「ブホッ!!」


大きく吹き出して腰を折って笑い出した。

ふっ…引いちまったな。心のクリティカルトリガーを。
さすが俺だ。
まるでイーフリートのような恋をしようぜベイベェと追い打ちをかけそうになったが、さすがにきめぇのでやめた。

以来、俺はユリアを心底愛するようになった。
ユリアのためなら死ねる。

それまで無職だった俺は、速攻でハロワに向かった。
そして今ではデュエリストの称号を冠し、日銭のアルバイトで夢を掘るガリンペイロだ。

俺はデュエリスト。高潔なるカードファイター。
いつかユリアを迎えにいける日を夢見る戦士。

今日の夕食は一平ちゃんにしようと思っている。

しかしなんちゅう実の無いSSだろう。
さて、今週も頑張るか。

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テーマ : 雑記
ジャンル : ゲーム

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No title

>藤井さん
俺はデュエリストと呼ばれるファイターになりたいんだ!
通称プー

No title

恐怖の秘密結社ネラリオンを暴露してしまうとは!
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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