
男性機能不全により、南蛮街の教会へ相談に来た真紅の種馬、池田源十朗。
しかし、意を決して悩みを打ち明けた途端、神父に一笑にふされてしまう。
「神父さん…。笑いごっちゃないんすけど」
「い、いや笑ってません。ごほっ…。ちょっと、昼食を食べ過ぎてむせただけですので」
肩が震えている。必死でこらえてるのは一目瞭然だ。
源がこの胡散臭い神父に対して、猜疑心を持ったとしても責められる事ではない。
というか、神父=地獄突とは知らずに相談している時点で乙であった。
「……まぁ、いいんすけど、とにかくインポテンツになっちまったんです。医者も薬もまったく効果なし。どうすりゃいいんすかね」
「ふぅむ…」
神父はようやく笑いをおさまったようで、一息ついて考え込むフリをしている。
<大丈夫かよこいつ>
源はそう思ったが、ここまで来たらとりあえずは一通りアドバイスというものを受けてみるしかなかった。
どうせ、誰にも言えない悩みである。
「よくありますね。そのような相談は」
神父=地獄突は、落ち着いた声でそう言った。
源は身を乗り出してカウンターにひっつかんばかりに詰め寄る。
「え!まじすか!!まじ山まじ男っすか!」
「まじ山まじ男です。なんですかねえ。これも現代病とでもいうんでしょうか…。おっきしないという相談は結構あります」
まじかよ…。俺だけじゃないんだ、この悩みを抱えている人は…。
源は少し気が楽になった。
「同じ悩みを抱えた人同士で一門を立ち上げるような事も言ってましたねえ」
「へぇ…。どんな名前の一門なんだろう」
「え〜と確か…あぁ、思い出しました」
「なんて一門名です?」
「流星人間チンポとか言ってましたよ」
「……名前からしてダメだろうそれ…」
源は聞いた俺が馬鹿だったと後悔した。後悔先に立たず。
出てくるボキャも立たないとかの語彙が増えてきた。
このままでは本当にやばい。
「あの〜、それで何かいいアドバイスはないんすか?」
「う〜ん。医者も薬もダメなら、温泉とかどうでしょう」
「ふむ、温泉かぁ…」
「機能不全に利く温泉の混浴とか入れば、眠っていた息子も起き上がるかもしれませんよ」
「どこかいい温泉を知ってます?」
「そうですねえ…。しごき温泉とか言うところがあるそうですが…」
「しごき温泉!?名前からしてハードそうだけど…」
「あまりお奨めはできませんね。そこは男性限定で女人はいませんので。治ったとしても。ほとんどゲイかホモになって帰ってくるそうですし」
「嫌すぎる;別なリビドーに目覚めそうだ;;」
「ふんどし締めて、こいよ!とか言われるそうですよ」
「こぇええ;ダメだな。俺には無理無理」
「ふぅむ、となると…」
地獄突は、何やらごそごそと袋から取り出している。
編み目のカウンター越しに、コトリと音を立ててあるアイテムを目の前に置いた。
「これは?」
源がそう聞くと、ローブから見える地獄突の口元が下品に歪んだ。
「これは、あなたのような人に対しての救済アイテムですよ。ご覧なさい…」
地獄突はアイテムを手にとり、何やらスイッチを入れた。
そのアイテムは、透明な男性器の形を取り、その表面にはラバー上の丸い突起が無数にしつらえてある。
ウィン、ウィンと唸りながら、不規則な回転をループさせている。
「これ電動バイブっすか…」
源はもうつっこむのも嫌になっていた。
「手が切られれば足で這い、足を切られれば腹で這う。まさに背水の陣で挑むあなたには最適のアイテムでしょう」
地獄突は至極真面目に訴えている。
「かっこいいけど、かっこ悪い;しかもバイブで侍魂を唱えられてもなぁ」
源はバイブを手に取り、まじまじと眺めた。
「ん?なんだこれ…」
バイブの取っ手の部分に墨文字で何か書いてあった。
「ふ…じ…い。おい!これ名前が書いてあるぞ」
「はっはっはっ。ブランドですよ。そのバイブは世界最高のブランド、FUJIIで作られたものなのですよ。ワイルドだろぅ〜?」
「ワイルドじゃねえ。なにがFUJIIだ。誰かのお下がりだろうこれ!」
「まぁまぁ…落ち着いて。私の師匠が言いました。あら?インポになったら道具を使えばいいじゃない。とね。落ち込む事はありません。我々には知恵と知識と経験があります。あなたの粗チンより、このFUJIIのほうが、何倍もいい仕事をしてくれるはずですよ」
「言いたい事をずけずけとまぁ……。どうにもおかしいぞ。お前誰だ!一体何者だよ」
「あなたの隣人であり、友ですよ。まぁ、そんな騰がらず、お座りなさい」
突はあくまでも正体を明かさない。
まったく内心笑いをこらえきれない。からかっているのだ。
そもそも、地獄突がなんでこのようなことをしているのかというと、知人の神父が旅行にいくので一週間ばかり代役を頼まれたのである。
突はかずはにはこのことを教えておいたが、さすがにそんなことを源は知るよしもなく。
源には教えておこうと思ったのだが、とりあえず内緒にしておいたほうが面白いと思ったのであった。
源はムスッとしながら椅子に座った。
不審な目を神父突に向けると、乱暴な口調でつっかかる。
「真面目にやってくれ。真面目に。こちとら真剣なんだ。恋にやぶれてトラウマ背負い、勃たたなくなってもう三月。どうする、どうなの、どうなんだい!このまま俺は女とやれない人生か。何とかしてくれよ神父さん;おらやだ、もうやだ;;」
悲痛な叫びである。命がけの問いでもあった。
突もさすがに気の毒になってきた。そりゃオナニーもできない身体になったらそりゃ辛い。
辛いデービス.Jrだろう。コーンコンスキャコーンとか言ってる場合ではない。
マソが生前言ってたっけなぁ。性戯に果てあれどオナニーに果ては無しと。
至言だな。
突は、真剣に源のために人肌脱ぐ気になった。
静かな声で諭すように源に話しかけた。
「わかりました…。真面目にやりましょう。まずは原因を探ることにしてみましょう。内的外傷は深層心理の奥深くに根ざしているものです。そこを究明できればあるいは…」
もっともらしいことを、とりあえず言ってみる。
源はそれを聞いて、落ち着きを取り戻した。
「…よろしくお願いします」
「まず、考えられる原因を話してください」
「う〜〜ンと…。やっぱ失恋したことだろうなぁ」
「ほぅ。それは相当まじだったのですか」
「ええまぁ…。まじです。大まじでした」
「振られたことが相当ショックだったようですね」
「かなり…」
「なるほど…。失恋ですか…」
源はまたあの悪夢を思い出していた。
毎晩寝る度に、三浦の顔を「ふひひ」と笑った声が耳にこびりついている。
ウンコをして仕返しをしたつもりだったが、逆に自分自身がみじめになっている。
「それなら処方は簡単です。新しい恋を見つけることですね」
「恋?いやいやいや…そう簡単にふっきれないから困ってるんだけど…」
「人の思いは歳月を重ねるごとに、風化していくものです。知ってましたか?人間は忘れることで己の理性を保っているのです。いいことも悪いことも雨のように流れて消えていく。それが人の人生です」
「………」
「一歩を踏み出すのです。今こそ部屋から出てハロワに行きましょう!そこであなたの人生は変わります」
「…ちょっと待て。俺は別に引きこもりのニートじゃねえよ」
「あ…。これは失礼。ちょっと脱線しました(テヘ。とにかく恋です恋。恋をしなさい」
「恋ねぇ…。俺にまた、あんな想いができる恋なんざできるのだろうか…」
「マジで恋する5秒前という唄があるじゃないですか!ようはやる気です根性です。そしてファムファタルを見つけるのです!」
「そうか…。そうかもしれないな。恋をしたら俺のインポも治るのかもしれないな」
「間違いありません。さぁ、行くのです。新たな恋、素敵なサムシングを見つける旅に!」
「わかったよ神父さん!礼を言うぜ。早速、秘蔵のリア美ちゃんリストで対話をいれまくってみよう」
「幸運を」
源は意気揚々と教会を出ていった。
そのうちインポも治り、もとの生活に戻るだろう。
失恋の痛手は、新たなる恋でしか癒せない。
突は源の後ろ姿を見送りながら、うんうんと頷いていた。
突はこのやりとりを速攻で2chで晒していたが、特に話題もならずスルーされたという。
最高だろ?この話と書いたら、しかしお前が最低とレスを返され顔を真っ赤にしてふぁびよった。
それ以来、突の姿を見たものはいない。
三ヶ月後─。
不動かずはは、甲府の町を草餅を食べながら散策していた。
するとまた神社のベンチに座っている源をみかけた。
ぐったりしてうなだれている。
憔悴しきった、その顔は生気を抜かれた碇シンジのようだった。
「あらん、源たん。おひさしぃ」
「ああ、かずはちゃん。おひさ…」
「どったのぉ?またまた元気ないじゃない。まぁだ悩んでるならお姉さんに話してみんさい!」
「いや、前の悩みは治ったんで解消されたんだが…」
「あら、新しい悩みかえ?」
「いや…実は」
源は、あれから新しい彼女をゲットしていた。しかも真紅一のリア美ちゃんと誉れの娘である。
普通ならうきうきうはうはで毎日がびっくりするほどユートピアなはずだ。
しかし、ひとつ問題があった。
リア美ちゃんの一人がアフリカ系のハーフで夜の生活に不満を洩らしている。
インポは解消されたが、パワー不足ということだ。
例えるなら源の息子は、国産のシビックの直列4気筒。彼女はフォード・マスタングのV8エンジンだ。
これでは、並走もできず不満がでるのも当然である。
そこで、源は荒っぽい方法に踏み切るしか無かった。
日の本の国。侍男児が馬鹿にされては、日本の恥である。
そこで源が取った手段とは…
「俺…真珠いれたんだ。そして彼女と夜のタイトルマッチさ。フルスロットルで燃え尽きたぜ…真っ白になぁ」
かずはは真珠の意味がわからなかったが、疲弊しながらも満足そうな表情を浮かべる源に「よかったね♡」と言った。
この後に、源は真珠郎と呼ばれることになるのだが…それはまだかなり先のことであった。
【完】
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