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【偽りの救世主】信On 失恋レストラン14【かずは】

甲府の甘味屋。

不動かずはは、あんみつパフェを食している。
周囲の客が引くほどに羽化登仙の境に入った満面の笑みを浮かべていた。

「美味しいな♡美味しいな♡」

古来より、女性が幸せな顔をして舌鼓を打っている姿を見て、気分が悪くなる男はまずいないだろう。
小動物が餌を食べるように一心不乱に食べる女は総じて愛らしく可愛いものだ。
いい女の条件はよく食べる。これは九州地方の常識である。

しかし、兄貴分の地獄突からは普段よく言われていることがあった。

「油断してると夏のが太るぞ」

女性にとって甘いものは別腹なのだろうが、夏のアイス太りはよくあること。
しかし、今のかずはには馬耳東風だ。

「美味しいものを我慢するのは人生の罪!」

そう言って耳も貸さずに食いまくっている。
都合の悪い事は耳にいれない主義なのだ。

いきなり携帯が鳴る。

「む!なんだぁ」

せっかくの至福のときを邪魔されたのが気に入らないとばかりに、手を休めてしぶしぶ携帯の着信表示を見る。

「あっ、三浦兄さんからだ」

通話ボタンを押すと、落ち着いた抑揚のない声が響いて来る。

「かずはさん、こんにちは。ふぇいふぇいが例の教団に捕まったらしい。これより作戦Cに移行するってさ」

「三浦兄さんこんにちわん♪そっか〜、ふぇいさんやっぱ拉致られたのねん。了解っ!じゃぁあたしも行動開始するねん」

「了解。よろしく頼みます」


通話を切ると、半分以上残っているあんみつパフェを眺めながら、名残惜しそうに席を立った。

「またの機会ってとこねぇ。残念」

勘定を置いて席を立つと、甲府の両替方面に向かって足早に駆けていった。



ここがどこか正確な位置はわからない。
あれから、いくつかの質問を投げては見たが、はぐらかされてばかりだ。

ふぇいは、アップル教団の内部にいる。
捕らえられた形にはなってはいるが、危害を加えようというわけではないらしい。

ふぇいはあれから、沐浴をさせられて白い作務衣を着せられている。
Tシャツよりはなんぼかましではあったが、やはりいつもの束帯でないと落ち着かない。

食事をご一緒にとさきほどの男に誘われて、食堂の席についている。

食堂といっても、豪奢な造りで至る所に金箔が鏤められたモダンなものである。
ヨーロッパの王朝貴族が食事をとるように長いテーブル。ふぇいと男の傍らにはメイド姿の若い娘が立っている。
料理も満漢全席もかくやと言わんばかりの豪華な料理である。

このご時勢に非常に贅沢なものだ。
しかも、以前に偽マソが市の相場を散々荒し回ってデフレスパイラルを巻き起こしている。
潤沢に財政が潤っているところなど一部の商人か、古参の大名ぐらいであった。
あるところにはあるというが、結局、民の財布の紐が固ければ流通は滞るし生産も低下する。
が、ある一部の組織は金を吸い上げながら逆に太っていく。

思想集団とは言うが、この教団の資金源はどこから出ているのか。

ふぇいは、目の前に出された、熊の手の食しながら思惑をめぐらせていた。

「どうです、ふぇいさん。熊の手のお味は?」

「まぁ…全然臭みがなくて美味しいですけど…これ相当な値段がするものですよね」

「ははは。値段はともかく、右手で蜂蜜をたっぷりつけて舐めていた熊ですから味は最高級ですよ」


ローブの男は、顔をほころばせながら自慢げに説明をした。
既にローブで隠すこともなく、しっかりと顔が見える。
黒髪を後ろで結い上げて、30歳手前に見える。眼は細く常時うっすら笑っている。

この男は実質的に教団ではナンバー2の存在であるという。
現在、リーダーに謁見することができるのはこの男だけらしい。

「私の名は教団の副団長を任されておりますカロッェリアと申します。以後お見知りおきを」

先ほどそう自己紹介されたが、これが本名とは思えなかった。

マソはあれからどこかに消えていた。おそらく教団内部での仕事の役割があるのだろう。
ふぇいとリーダは、長いテーブルの端と端に座りながら、対峙する格好で向き合っている。

「ワインはどうです?ふぇいさん。モンラシュの上物が入りましたのでね」

「できればグラーブの白をお願い。ボルドーにはボルドーってのがあたしの主義でね」

「お詳しいのですね…それは結構」

カロッェリアは、感歎の賛辞を送るが如く両手をパン!と打ってメイドに指示をした。


ふぇいは、悪びれもせず己の自己主張を肯定するかの如く、刺を投げた。


「こんな偉そうな女より、ジンジャーエールを頼むような可愛い女のほうが、一緒に食事をする殿方には楽しいんじゃない?」

「ははは。とんでもない。まぁ、ずけずけとおっしゃる物言いと、その振舞いに感動すら覚えますよ。楽しくてたまりませんね」

「へぇ、さすがでかい組織のナンバー2ともなると寛大でいらっしゃること」

「まったく、飽きない人ですねふぇいさんは」

カロッェリアは、おかしくてしょうがないといった風で口を抑えながら笑っている。
ふぇいはその様子に気にもかけず、メイドが運んで来たグラーブの白を軽くテイストして「うん」とうなずいた。


「で…あたしを攫って来た目的は?」

ふぇいがいきなり核心をつく話を切り出した。


するとカロッェリアはおだやかな表情から、一変して剣呑な面持ちで両肘をテーブルの前で交差させ下を向いた。
肩が震えているのがわかる。

そして蚊の鳴くような声でボソボソとつぶやいた。

「…しえな…い」


「え?」

よく聞こえなかった。ふぇいが聞き返すと男はいきなり立ち上がって両手でテーブルを支えるようにバンッ!と叩いた。

「…しえない」

「は?」

カロッェリアは顔を歪ませて笑いながら狂人のように叫び出した。

「おしえなーいっ!おしえないおしえないおっしえなーーいっ!ふぇいたんにはおっしえなーいぃ!」

「……!?」

あまりの豹変ぶりにさすがのふぇいも絶句した。
なんだこいつ…。こわっ!
こいつ誰かに似ている。そうあれは確か…。

叫び終わるとカロッェリアは、くるっと表情を変えてまたもとの柔和な顔に戻っていた。
はぁはぁと息を弾ませて、メイドに背中を擦ってもらっていた。

ようやく落ち着いたのか、ゆっくりと席に座ると、ふぅと息を吐いてふぇいに恥ずかしそうに顔を向けた。

「…失礼。私は少し疾患がありまして緊張が高まるとこうやって大声を上げて発散してしまうのです」

「…あらぁ。大変そうね」

「定期的カイジ症候群というものなのです」

「ああ…カイジの顔が歪む台詞のあれね」

やっぱりあれかとふぇいは納得した。あれは見ているほうも疲れる。

「お見苦しい姿をお見せしました。で、目的とおっしゃいましたね」

「ええまあ」

「単純です。ふぇいさんには我が教団に入って頂きたい」

「だからなんで私なのさ」

カロッェリアは一瞬押し黙ると言いにくそうに言葉をちぎった。


「…あなたが超能力因子を持つ者、だからですよ」


「は?超能力因子!?なにそれ」


何の事だかさっぱりだというふぇいに、カロッェリアはワインを勧めた。
まずは落ち着いて話を聞いてもらおうという事だろう。

「核心については食事が終わってからということで。まず1から簡単に説明していきましょうか」

ふぇいはワインを飲みながら、適当な理屈を作って信者勧誘をする手法かと胡散臭そうにカロッェリアを睨む。


「ふぇいさん。まずは今のこの世界をどう思いますか?」

「どうって…。別に可もなく不可もなくかな」

「プレイヤーはこの世界に立ち降りて、初心者と呼ばれる。しかし、いつしかそんな初心者も歳を重ねていけばベテランと呼ばれるでしょう。必ずね。しかしね…大人のプレイヤーになるのはいつなんでしょう?わかりますかふぇいさん」

「大人のプレイヤー?定義が色々ありすぎてわからないけど」

「おかしいと思いませんか?当時学生だったプレイヤーも社会人となり、家庭を持ち、おっさんおばさんになっていく…。10年も続いたコンテンツなのだから当然なのですが、そのプレイヤー達はいつ大人になったのでしょう?ネトゲにロマンを求めなくなったときですか?それとも、オフに出てみて恋慕していた隣人がネカマのおっさんだったときですか」

「色々自覚したときからじゃねーの。そんなん」

「そうです。プレイヤーは自覚するタイミングが必要なのです。だから我々の教団は、自由に対する自覚を啓発して、ネトゲに大人のプレイヤーを確立させていく!大人であれば些末な問題など意にも介しません。仮想現実という第二の空間でリアルとは違う自分を思う存分楽しむ。子どものプレイヤーにこれができない。仮想現実をリアルと混同してしまいますからね。真に開放された遊びをともに興じることができる大人のプレイヤーを真紅に!これが第一のスローガンなのですよ」


「…ちょっと言ってることがよくわかりません」


「ふぇいさん。あなたがたは一度、倫理懲罰委員会の輩に稲葉で会ったはずですね。彼らはこの世界の負の要素を全て排除しようと画策しています。とんでもないことです。オンラインゲームは義務教育の学校ではないんです。混濁した世界だからこそ面白い。それこそが大人であるプレイヤーが互いに共存していける世界なのですよ。この世界に警察も教師もいりません。我々は自由なのですから!」


高説をドヤ顔で能弁に語るカロッェリアの顔は興奮しているのか、頬が上気している。
さきほどまでの冷静で氷のように見えた男とは思えない。

ふぇいは、聞き終わると鼻で笑って問い返した。


「ふ〜ん。でも、その自由な大人の世界を作ろうとするご立派な組織が、何故市場を荒し回って格差をつけた社会を構築しようとするのかねぇ」

「…お気づきでしたか。さすがふぇいさんだ。しかししかたのないことでしょう。民衆の中からの改革より、上からの改革を起こさねば何も変わらない。負の行動や結果があったとしてもそれはそれで大いなる犠牲と未来への糧です。改革にはやはり資金が必要です。肥え太った豚どもから摂取するのは悪でもありません。これは改革に必要な仕掛けでもあるのですよ」


ふぇいは、うんざりした。
所詮、こいつらも己の利潤と手前勝手な言い訳を押し付けようとしてるだけのカルトじゃないか。

ふぇいはかぶりを振って席を立った。

「…はいはい。勝手にやればいいさ。あたしはそろそろ観たいテレビがあるから帰るよ。御馳走様」


カロッェリアは両手を組んで額に押し付けながらためいきをつく。

「残念ですね…。ふぇいさんなら良き仲間になってもらえると思ったのに…。しかし超能力因子を有するあなたをこのまま帰すわけにもいきません」

「だからその超能力因子って何だってのよ!」

「いまはまだ知る必要はありません。いまはまだね…」


そう言うと、席を立ってくるりと背中を向けた。

「いい夢を。特攻のふぇいさん」

ふぇいは、退出するカロッェリアの背中をみた瞬間、強烈なめまいに襲われた。

「ぐっ!?」

まさか、これは…さっきのワインの中に何か…!?

気が遠くなる。畜生…。またやられた…。
霞んでいくカロッェリアの背中に向かってふぇいは叫んだ。

「特攻…一番槍のふぇいだよ。馬鹿野郎…


眠りに堕ちたふぇいの傍らには誰かがいて、何やらしきりに叱咤している。

「ふぇい! オイ、ふぇい!! あんな負け方はないだろう。オイ、ふぇい!」

よく見るとアニマル浜口だった。

【続く】
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テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

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No title

>浅井民さん
そういや語呂が似てるwしかし意図的ではない!

>ふぇい
最近はチリワインがいい。安ワインはほんと悪酔いするわ

>かずは
食い過ぎだっつの!

>林檎ちゃん
特攻の拓って懐かしいなぁw

>アキヤマン
まー、監督がリドリーだからしょうがないw
アキヤマンは焼酎お湯割りにしとけ

人類起源

不凍液入りワインは悪酔いするぞ~
後「プロメテウス」は今日観に行ったがあれは人類起源の映画でなくエイリアン起源の映画やんけ。

No title

特攻と書いてぶっこみと読むアレですねΣ(゚艸゚;)

えー。

あんみつパフェお持ち帰りで!

あっ!マロンパイも追加ねっ♪

No title

安いワインは悪酔いの素なんだよねぇ

カロシエ乙!
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凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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