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最終兵器 顔

戦国レシピ #7

BAR07


その陰陽師はマッカランの30年ものを、水のようにスルッと飲み干して出て行った。

「…じゃまた」

ニコリともせず去っていくその姿がなんとも憎々しい。


makkaran


私はその背中を眺めながら、怒りと己の不甲斐なさに打ち震えた。
そして奴が飲み干したばかりのショットグラスを私は床に叩きつけた。

バリン!

おそらく今の私の顔は真っ赤だろう。
2chでの自演をソッコーで看破されたときのような恥辱に満ちていた。


「あの野郎…まさかとは思ったがやっぱりプロだったか…」


その陰陽師が現れたのは1週間前だった。

例によってその日は暇だった。8時頃まで客はまったくこない。

電話が1件あったが、例によって藤井さんからだった。
「心頭滅却すれば屁もまた藤井」とかわけのわからないこと言っていたので、
「またおまえか」と言って切った。
最近は一日一回藤井さんだ。まったく。


ため息をついてタバコをふかしていると、ドア鈴が鳴った。
やっと本日の第一号がやってきたと安堵して「いらっしゃいませ」と挨拶をした。
その客は二人連れだった。カップルではない。
何やらいでたちが不気味な二人組である。

一人はスラッとした男の陰陽師だ。

もう一人は…

なにやら四角い紙袋を頭にかぶせて、片目の部分だけ穴が開いている。
エレファントマンかこいつは。妖しすぎるだろJK。

陰陽師は音もなく近づいてきてカウンターテーブルに名刺をスッと置いた。

「武田の仙論の木乃と申します。以後、お見知りおきを…」

新手の宗教勧誘か?と私は思わず構えた。

陰陽師は口元に笑みを作っているが笑ってはいないのがわかる。
丁寧で慇懃な挨拶だが胡散臭い。
目は切れ長で秀麗な顔立ちをしているが氷のような冷たい目をしていた。

紙袋を被った男は木乃と同じぐらいの身長だったが、厚みのある体躯をして無言で立っている。
いよいよ不気味である。

私も簡単な挨拶を返してとりあえず注文を聞く。

しかし木乃と名乗る男はそれには答えずに横の紙袋の男を見ながら、意味不明な事を言い出した。


「マスター。勝負をしませんか?」

「勝負─?」

「はい。勝負をしましょう」

「勝負って…博打をしたいなら賭場にいったらどうだい。うちは飲み屋だよ」

たまにいるのだ、こんな手合いが。
意味のわからない詐欺まがいの勝負を仕掛けて飲み代を踏み倒していく奴が。


私がそう言うと木乃はククッと笑って首を左右に振って答えた。


「マスター…。これは博打ではありません。ゲームですよゲーム。それも単純な」

「ゲーム?一体なんのゲームなんだね」

「そうですねぇ…。一言で言えば自制心と忍耐力を試すゲームですよ」

「自制心?しかし…自制心は弱体されたし装備も中途半端だしなぁ。忍耐力もあまり自信が…」

「まぁ受けずとも構いませんけどね。見た所、マスターは軍学侍のようですが、最近は徒党枠も厳しくくたびれているでしょうし」


木乃はそう言ってあからさまに私を挑発している。

さすがにそこまで言われて引き下がるようなら侍をやってはいない。
私は地獄の黙示録のカーツ大佐のようにカーッとなった。

「いいだろう。その挑戦うけてやる」

「さすがに軍学様ですね。ではルールを簡単に説明します」


木乃は紙袋の男をちらっと見ながら説明をし始めた。

「ルールはさっきも言ったように単純です。まず水を口に含んでもらいます。私の横にいるの顔を見て、1分こらえきれたらマスターの勝ち。笑って水を吐き出したら負け。マスターが勝てば飲み代は倍額。私が勝てば幾ら飲もうがチャラってことでどうです」

「ちょっと待て。それならあんたが負けても何も注文しなけりゃ倍額払う必要もないだろう」

「はは。ご心配なく。そんな野暮な真似はしませんよ。ちゃんと3杯以上注文します」

「…それならいい。要は1分間笑わなければいいんだな?」

「そうです」

「よし、バッチこい」

「では始めましょう」


水を口に含んで勝負スタートだ。

舐めるなよ小僧。こう見えてもにらめっこは得意なんだ私は。
私は勝利を確信して余裕の笑みを浮かべた。

木乃はすっと紙袋を取ってその男の顔を晒した。

watanabett


ふっ…この程度か。
大したことはない。
たかだか眉毛が一本繋がっているだけので渡辺謙似の渋見がきいた入道じゃあないか。

無表情でその男の顔を見ていると、木乃は入道の左頬を指差した。

sddergertheh


ん?と思ってよく見ると、なんと、ほくろから毛が一本飛び出している。
木乃は私を見て「実は眉毛は油性で描きました」と言った。

その瞬間、私は口から水を吐き出して思いっきり吹き出していた。


「~~~~~~~~~~~~~~w;;」

木乃は入道の肩を軽く叩いてうなずいた。

「僕の勝ちですね」

満面の笑みでそう言ったが私は納得できない。

「き、きさま汚いぞ!あんなことやられりゃ誰だって吹き出すわ」

「おや?僕はただ指をさして独り言を言っただけですよ?そもそもしゃべってはいけないとは一言も言ってませんし」

「くっ;」

「では、本日はご挨拶程度ということで、マッカランの30年をダブルで頂きましょうか」

「なっ…あれは一杯7,000で出してるんだぞっ!」

「勝負は勝負ですからねぇ。それとも武士に二言があるのですか?」

「む…ぅ;」


木乃と入道は遠慮もせずにマッカランをそれぞれつるっと3杯飲み干した。
途中で入道は描かれた眉毛が油性マジックで落ちないので、ハロワの面接に行けないと嘆いていた。
アホだろこいつ。


そしてまた今日だ。
まったく同じ勝負をやってまた負けた。
今回はこっちも奴と同じようにを用意した。

鍛冶屋ゴメスというやはり昔馴染みである。
しかしゴメスは顔が面白いのではなく行動とセクハラまがいの言動が面白いのであって、
顔そのもので笑わせる力はなかった。

1分間たって水を吐き出すと、しらっとした顔で木乃は言った。

「あ~あ、僕もなめられたものですねぇ。こんな顔程度で僕に勝とうなんて。僕は毎日5時に起きて探しているんですよ。いいを」

そして木乃のターンだ。木乃が連れてきたのは、
今度は女性でパーマが失敗しておばさんパーマになった、不動かずはだった。
これは卑怯すぎる。

私は思いっきり吹き出して涙を流しながら笑い転げた。
多分、かずはでなかったらここまでツボらなかっただろうが…。
事前に俺とかずはが知人であることも、木乃は調査済みだったってことか。

しかも今日は二人でフルーツの盛り合わせまでただ食いしていきやがった;。


奴はプロだ。それも一流の。
ハンター×ハンターでいうところの旅団クラスの使い手だ。
具現化系と放出系の能力をバランスよく操っている。

このままやりあっていては店は潰れてしまう。
奴に勝つにはこっちも相応の顔面ウェポンを用意する必要がある。
生半可な顔じゃ無理だ。

しかし、それほどのいい顔が簡単にみつけられるのだろうか…。


私は、ひさびさに顔を見せた立花亜沙美という古参の鎧鍛冶に相談してみることにした。

「う~~~ん。面白い顔の人かぁ」

「誰かいないかな。インパクトがあって思わず吹き出してしまうような人って」

「悪いけど心当たりないねえ…。化粧をしてるキモイ顔ならたまに見るけど(笑)…」

「亜沙美さんはよく野良にも出てるからもしかしたらとは思ったんだがなぁ」

「面白い名前の人はよく見るけど、割と真面目だしねえそーいう人」

「ま、名前で思わず吹いちゃうとかもありなんだがな…」


そうなのだ。要は笑わせれば勝ちである。何かないか…何か…。

どうしたものかなと思案していると、カウンターの端で盛り上がっている忍者と侍の話が聞こえてきた。

「やっぱ犬より猫だよな~」

「猫だな。犬もいいけどやっぱり猫のグラは可愛い」


屋敷のペットか…。そういやペットなんざ飼ってなかったな。
そう思った瞬間、パッと何かがひらめいた。

私は亜沙美さんに相談のお礼だと言ってブルー・サファイヤ極改を一杯奢った。

bbbssesb


ピーチブランデー・・・・・1oz
ブルーキュラソー・・・・・1oz
ココナッツラム・・・・・・0.5oz
ライムスクイーズ・・・・・0.25oz

コリンズミキサーでグラスを満たしてレモンスライスを添えて出来上がり。
日頃クールな亜沙美さんにはぴったりなカクテルだろう。

「美味しいね」と亜沙美さんが言ってくれたので「ナイスチャッキー」と答えた。


「意味がわからない;」

「実は俺もだ(笑)」

亜沙美さんも明日は新クエの手伝いがあるからと、奢りの一杯を飲み干して帰って行った。
私は店を閉めたあとにゲイと噂のある三浦和貴に連絡をとった。

明日は奴が来る日だ。
3度目の決戦である。
これで負けたらもう身延山に入って若き日の大山マスタツのように修行に篭って眉毛を剃るしかない。

数回携帯を鳴らすと三浦が出た。

「三浦、折り入って頼みがあるんだ」

「ケツは貸さねえぞ」



次の日、開店前に三浦に頼んでおいた例のものを持ってきてもらった。


「負けるなよ」

そう言って三浦は中指を突き出して去っていった。

…それファックユーって合図なんだが。相変わらず三浦はアホだった。


そろそろ来るな。時計をみるともうすぐPM:5:00だ。

ドア鈴が軽くリンとなる。

時間とおりに木乃と奴のウェポンがやってきた。

「こんにちは。おや、今日はお一人で?」

「一人じゃないさ。とにかく早速はじめようぜ」

「ん?…ま、いいでしょう。どっちにしろ僕が勝つわけですからね」


まず奴の先行だ。

私は水を口に含んで戦闘態勢をとった。


木乃が連れてきたウェポンの紙袋をとる。

MUSUKA

ムスカじゃねえか。
そう思ってみると頭のてっぺんが妖怪人間ベムのベロのように尖っている。

するとムスカ野郎は「毛がぁ~;毛がぁ~:」とかいって頭を押さえ出した。
抑えてもピコンと元に戻ってアンテナのようだ。

「ぐっ;;」と口を抑えてかがみこんだ。

こ、こいつは強烈だ;
なまじ、真面目な顔をしているだけに相当なインパクトがある。
ムスカだけに耐えるのはムスカしいと寒いオヤジギャグまで浮かんできた。


「どうです?こんな人と真面目にお話ができますか?」

木乃が追い打ちをかける。ムスカ野郎は唄まで唄い出しやがった。
しかも唄ってるのは「トトロ」だった。こ、これはまずい;

私は手元にあったアイスピックで手の甲をつついて、何とか耐えた。


「はぁ;はぁ;…」

何とか1分耐えきった。これで私の勝ちは決まったのだが、まだだまだ終わらんよ。
こいつは完膚なきまでに倒さないと気が済まない。

木乃は肩をすくめて悔しそうに負け惜しみを言う。

「…やりましたね。僕の負けですよ」

そう言いながらムスカ野郎に「このカスが!」と罵声を浴びせている。

「でもまぁ、元は十分とってますし問題はありませんがね」

青く冷たく見えた顔が紅葉してきている。相当悔しいのだろう。
ざまぁああああwwwwww

私はひそかに心の中で叫んだ。
ここは一気に攻めるしかない。

「まだだぜ。今度はこっちの最終兵器を見てもらおうか。もし、笑ったらむこう一ヶ月ここでただ働きをしてもらう」

私がそう言い終わると木乃は急に口調をかえ、秀麗だった面立ちは醜くひきつった。

「…舐めるなよおっさん!俺はディフェンスも一流だ!!そっちが負けたら今日の飲み代はタダ&一週間は飲み放題にしてもらうぜ」

口調がそこらのチンピラになっている。これがこいつの本性か。

勝負だ。

木乃は水を含んで能面のように表情を変えない。

私は紙袋の中にいるそれを木乃の前に突き出した。

NYAAAAAAA

三浦から借りてきた屋敷の猫 凸だった。

無表情だった木乃の顔が歪む。
これは効いている。
それに顔という決まりはあっても人間限定というルールはない。

私は猫を抱えて

「コンドー君、ほら挨拶して」と言った。

猫は短く
「ニャア♪」
と鳴いた。

その瞬間、木乃の高らかな笑い声は甲府の夜に響き渡った。

その後【SENGOKU】で一ヶ月ほど皿洗いをする木乃の姿があったという。


私は甲府でBAR【SENGOKU】を営むマスター凸。

軍学の新技能が気になるぞ。念のため。







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No title

>かずは
あるある

No title

>マソ君
稲中のネタって秀逸だよねえw

>三浦
というかインできねーしw

>佐渡さん
シングルモルトはグレン・フェディックが好きです!
佐渡さんにもご登場願いましょうw

おにょれ~~~

フルーツの盛り合わせダブルで!!!

No title

夜中に独りで爆笑しちゃいました。

お酒のセンスもいいですねぇ。
ブラッディー・マリーに加えて、モルト・ウィスキーまで登場とは!
クラマト使ったブラッディー・シーザーを一杯ください。

ああ、是非、【SENGOKU】行きたいなぁ。

No title

家臣育てるのに忙しいんで
変わりにトツに餌あげといて。

No title

休憩時間に思わずコーシー吹いた;;w
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凸

Author:凸
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生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
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