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永遠の謎

戦国レシピ #6

bar06


私は甲府でバー「SENGOKU」を営業しているマスター凸。
今日も今日とて、信onに取り憑かれたノブラー達は抱いて抱かれて蝶となる


AM:1:00

客は全員引けて店内には私一人だ。
カットグラスに砕いた氷を放りこんでバーボンを流し込む。

ボトルからドクッドクッとコクのある音が染み込むように響くと、ようやく落ち着いた気分になった。

berbon


ふう…。今日は疲れた日だった。


この商売をやっていると当然色んなトラブルが起こる。

中でも一番困るのは暴力沙汰だが、幸いなことにお上の手を煩わせるような大事になるようなことはまだない。

2番目に困るのは、お決まりの男女間の問題、痴話喧嘩である。
第三者として傍観するぶんには関係ないのだが、店内でやられるとさすがにきつい。

その痴話喧嘩が本日この場であったのだ。
絵に書いたような三角関係で、一昔前のトレンディードラマをヘタクソな役者が演じているような。
そんな三文芝居を見せられた間抜けな視聴者が私である。

今夜は悪い夢を見てしまいそうだ。

女絡みになると本当にめんどくさいことが多い。
これを読んでいる貴兄らも十分注意されたし。


そのカップルは7時頃に入ってきた。
客足は遅く客はまだいなかった。
男女ともここいらでは馴染みのない顔だ。

カップルはカウンタの左端─入口に近いほうに座った。
この時点で彼らがバーテンとおしゃべりを楽しむ気はないとわかる。

男は大柄な侍で装備をみるところ武士のようだ。遊び慣れている風もあり鎧をきくずしている。
女はというと、男には不釣り合いな清楚なイメージの小柄な巫女である。

武士の男はカウンタに肘をつきながら、指を鳴らして私を呼んだ。

なんだこいつ…。
いまどき指を鳴らして人を呼ぶ馬鹿がまだいたのか。
顔馴染みならいざ知らず、一見のBARでこんな舐めた真似をする小僧とか親はどんな育て方をしたのか。

客とは言え、こんな礼儀知らずの小僧に愛想よくできるほど私は人間はできてはいない。
少なからず店主と客は、お互いが敬意を払える立ち位置であるべきだ。

私は大人げなくもそれを無視した。

そうすると、その武士はむきになって指をぱちんぱちんと慣らしはじめて
終いには両手の指を使って私を呼んでいる。武士は顔を真っ赤にして訴えている。
女の手前ひっこみがつかなくなっているのだろう。
アホや。


私はさすがに吹いた。
お前はダンディ坂野かよとつっこみたくなった。

私のささくれた気分も、この必死なパーフォーマンスでいくらか緩んだ。
真剣な馬鹿はユーモラスで憎めないこともある。


しかし武士は私が注文をとりに行くと、すかさず「ゲッツ!」と両手を親指をつきだしておどけている。
前言撤回。やはり馬鹿は死ななきゃ直らない。自分でやって自分で受けてやがる。
装備の魅力付与は相当なものだが、知力付与もやっとけと言いたくなる。
常連の客がやったらひっぱたいてるところだ。

それを見て、横の巫女がクスッと笑った。
口に手をあてて控えめに笑う横顔はどこかのお嬢様のように見える。

世の中わからんものだ。
なんでこんな男にという組み合わせが多すぎる。
世の中はまったくもって不条理だ。
まぁ、これ以上はおっさんのやっかみと言われるのでやめておこう。

武士はグレイハウンド、巫女のほうはジン・トニックを注文した。

グレイハウンドはソルティードッグの塩無しである。
スノースタイルがないソルティードッグというわけだ。
かっこいい名前がついているが、ようはウォッカのジュース割りだ。

ウォッカ - 20 ml
グレープフルーツ・ジュース - 40 ml
TTTTT


ジン・トニックは、とりあえずビールというくらいポピュラーなドリンクで女性にも人気がある。
アンゴラビターを垂らすとヘミングウェイ・バージョンになると言う。
ジントニック
ドライ・ジン - 適量
トニックウォーター - 適量
ライムカット又はスライス

二人は互いのグラスあわせて乾杯をした。

しかし巫女のほうは身体を固くして下を向いたままだ。


「そろそろ返事をきかせてよ。桜子ちゃん」

「……」

「俺、真剣なんだ。本気で君だけの一所懸命・改をやりたいんだ」

「江頭さん……」



このやりとりは私の腹筋をかなり鍛えた。
腹いてぇ。まさにこの言葉しか出て来ない。

真剣な故のユーモラス。これは究極の漫才だろう。

巫女の手を握りながら、尚も江頭と呼ばれた武士の熱弁は続く。

「桜子ちゃんが嫌っていうなら、城友なんて全部きるよ!親密度500以上の奴もみんな絶好いれる。頼むよ!俺に桜子ちゃんだけの要人守護侍にしてくれよ」

「で、でも……、一門の人達がなんて言うか…」

「そんなの気にするなよ。いまは二人の気持ちが大事だろう」

「それに……江頭さんには、セイラさんって言う婚約者が…」

「そんなことは問題じゃない!」


大問題だよ。バカヤロウ


この江頭と言う武士は、早い話が二股野郎だということか。
うらやまけしからん奴だ。

「わたし…江頭さんが好きです。でも一門の人達もみんな優しくて楽しくて…。この場所を侍の生産する篭手のように簡単に壊したくないんです!」

「桜子ちゃん…」



こいつら絶対自分に酔ってるだろこれ。
さすがに辟易してきたところに、カランとドア鈴がなり客が入ってきた。

すらっとした女陰陽だ。顔はきついがなかなかの美人だ。
しかし目には憎悪の焔が燃え盛っている。

女陰陽は入ってくるなりカップルのほうへ向かった。
熱っぽく語りかけている武士が、背後からのただならぬ威容を感じて振り向いた瞬間─


「わ、わぁっ!!セ、セ、セイラ!」

「へぇ……。私の関クエの誘いを断っておいて、桜子ちゃんとこんなところでデート?なるほどねぇ…」

「あ…、い、いやこれはその…、勘違いだよ、うん、勘違い」

「どう勘違いでもいいわ。どいてちょうだい、私は桜子ちゃんに話があるのよ」

「えっ…。お、おいちょっと!セイラ…」



三角関係の修羅場か…。ま、自業自得だ。
そういや昔さよなら三角って漫画があったっけな。

ま、とにかくあまりエスカレートするようなら追い出そう。
店内でのもめ事はお断りだ。

セイラと呼ばれた陰陽は、武士を振り払って巫女の桜子ちゃんに詰め寄っていった。
武士はおろおろしているだけで何もできずだ。圧倒的無力。
江頭なさけねー。つかえねー。それでも武士かよお前はと胸ぐらをつかんでやりたくなる。

この結末はどうあれ二度とこいつの来店はお断りだな。


「桜子ちゃん…、あなたどーいうつもり?彼が私の婚約者だってことは知ってるはずよね?」

「はい…」


桜子ちゃんは小柄な身体を千早ごと震わせている。

「いい加減に彼に銀蝿のようにまとわりつかないでちょうだい。不愉快だわ」

「わ、わたしは銀蝿じゃありませんっ!何故なら江頭さんはウンコじゃないからです」



パシィイイィィン!

「屁理屈を言うんじゃないわよっ!」

セイラの平手打ちが桜子ちゃんの頬を叩いた。
短く乾いた音が店内に響く。

今の桜子ちゃんの台詞に誰もつっこまないのが、逆に可笑しかった。


桜子ちゃんは頬を抑えながら、セイラを見据えている。

「…好きになった人に…たまたま婚約者がいただけのこと…。そうでしょう。そう思ってました…」

下を向きながら涙声で言葉をこぼす。

「聞いた風なことを…」

セイラそう言いかけると桜子ちゃんは更に続けた。

「でもっ!…ダメッ;やっぱりわたしそんなに強くない…」
「ごめんなさいっ;江頭さんさようなら」

そう言うと桜子ちゃんは涙も拭かずに駆け出して出て行ってしまった。

「ちょっとぉ…何よあれ。これじゃわたしが悪者みたいじゃない…」

「は…ははは…。ま、まぁ落ち着いて一杯どうだいセイラ。驕るよ」

「結構よ!このチンポ侍」


すごい捨て台詞を投げつけてセイラも出て行った。

呆然として一人残された江頭は、自嘲気味に笑顔を私に向けてこう言った。

「だめだこりゃ(笑)」


お前だよ



江頭もそそくさと逃げ帰るように店を出て行った。

彼らがその後どうなろうが知った事ではないが…、トラブルの千客万来は勘弁願いたい。

その後は3~4名客が来たくらいで比較的暇だったが、
この質の悪い3文ドラマの毒気にあてられたのか気が乗らなかった。

そして客もいなくなり、一人カウンターでバーボンをやっていると言うわけだ。
さて…そろそろ看板にするか。

そう思っていると、ドア鈴が申し訳程度に小さく鳴った。


「凸さん、まだやってる?」

ドアの隙間から顔を覗かせたのは、馴染みの雅という薬師だった。
私は彼をミヤビンと呼んでいる。

「ああ…。もうしばらくしたら看板はしまうけどね」

「それじゃ一杯だけ頼むよ。たまたまそこで会ってさ」

ミヤビンの後ろから現れたのは、これまた昔馴染みの霧島清音という女武芸だった。

「なんだ清音か。ひさしぶりだな」

「凸さん、はろぅ~~!」

「なんだよ。相変わらず武芸やってるのか」

「武芸じゃないよ双剣士だょ!」


ミヤビンはバドワイザーで、清音はスクリュー・ドライバーを注文した。

俺は二人に最後の来店サービスとして今日の事件と顛末を話してやった。
あまり趣味がいいとは言えないが、このくらいのささやかな仕返しぐらいお目こぼしを頂けるはずだ。


「うらやまけしからんなぁ。俺も二股とかやってみたいぜ」とミヤビン。

「女はわからんね。まったく」

私もそう答えてためいきをつく。
男より女がわからん。あんな男のどこに惚れたのか。
ま、男女のことは当人同士しかわからんものか。

理屈じゃないよな。恋愛ってのは。


「男ってバカでうぬぼれ屋さんとばっちゃんが言ってたょ!」

抱え込むようにしてスクリュードライバーを啜っていた清音が思いついたように言った。
こいつは普段とぼけているくせにたまに絶妙に核心をつく。

私は苦笑しながら、本当にそうだと思った。


男は馬鹿で自惚れ屋。

そして女は…

永遠に謎 か。



BGM : ダイナー・ショア:バイバイブルース



私は甲府でBAR【SENGOKU】を営むマスター凸。

今日も仕事なわけだが。念のため。
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No title

>油揚げさん
清音の天然ぶりには手を焼かされたw

>マソ君
俺も早く復帰したいとこだw

No title

昨晩、めずらしくふぇいたんから対話がきましたが何をしゃべったかぉぼえていまちんk(>_<)

双剣士さんは裏表の無い素敵な人ですよ
テヘペロ(・ω<)彡☆
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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