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戦国女傑物語【伍の拾】 むらむすめ ~DOAじゃあるまいし~

沙羅はしばらく警戒を解かず沈黙を守っていたが、日置の熱心で頓狂な語りかけによって少しずつ口を開くようになった。

「そなた名は何と言う」

「…沙羅」

「沙羅か。良い名だな」

日置がそう言って屈託のない笑顔を向けると、沙羅は「ふんっ」と言うと頬を染めてぷいっと顔をそむけた。
そむけた瞬間に長く黒い髪がふわっとなびいた。

二人とも先ほどの大笑いの後、仰向けになって並んで寝転んだ格好になっている。

沙羅を見ると血はもう止まってはいるが、額に切り傷がついている。そこに血が固まって斑点のように広がっていた。

まだまだ未熟。面だけ斬ったつもりだったが数寸奥にぶれたらしい。
日置はそう自省しながら起き上がって、自分の左袖を半身にちぎった。
ちぎった布を持って、まだ仰向けになっている沙羅の顔に押し投げた。

油断していたところに布を被せられ、沙羅は蜥蜴のごとく飛び退いた。

「なっ、何をする!」

「まず、顔を拭け。血だらけ泥だらけではせっかくの別嬪が台無しだぞ」

「なっ…!?」

はずかしがる様は、やはり年頃の娘である。その反応のひとつひとつが可憐に見えた。それはこの年頃にしか持てない特権であろう。
日置は笑いながら自分はこの年頃には何をしていたかなと、せんないことを思ったりもした。

沙羅は別嬪と言われたのがよほど恥ずかしかったのか、背を向けて泥に汚れた顔を一心に拭いている。
普通、草のものであるならば他人に背を許すなどありえないことだ。
しかも、女人ならば男の扱いも既に鍛練されて逆にそれを武器として反撃してくるであろう。
沙羅は体術など相当に訓練されてはいるが、草などではない。

ようやく拭き終わると、泥のついた布を投げ返してきた。
こちらをじっと見据えて睨んでいる。また泣き出すのではないかと日置は思った。

「私の…負けだ。どうとなりとするがよい」

忍装束に身を包んでいるがすらりと立つ姿は凛として屹立している。
このような装束を纏っているのは女とわからぬようにするためだろう。
年頃の娘の着物など着せればさぞやと惜しい気持ちもした。

「どうもせんよ。ワシはただお主の頭領に会って話がしたい。それだけだよ」

「お頭に会って何を話すのだ」

「う~ん。娘を攫う理由かのぉ。あとはワシは弓のいい材料がここにあるというのでな。それだけじゃ。ヌシらはどうやら山賊ではなさそうだしのぉ。ま、ちょいとした好奇心もあるかな」

そういって日置はにやりと笑った。
魅力的な男の笑顔だった。この笑顔で頼むよと言われたら、男でも女でも抗えない気がする。
引き込まれてしまうような笑顔だった。


「…ついてこい」

沙羅はくるりと踵を返して森の奥へと歩き出した。

沙羅のあとを追うように奥を進んで行くと、何やら不可思議な光景が目につく。
木々がぐねりと曲がっているもんが多く、それもかなりに年数がたっているものばかりだ。
そこらかしこで何やら蠢くものも感じられる。

まるであやかしの森である。道は既に獣道となりはぐれたら迷ってしまうほどに暗い。
これは天然の要塞だな。これでは外からの侵入は至極困難ははずだ。
あえて門番など必要ないだろうに。

沙羅の歩みはことさらに早い。何より身軽なのだ。そう考えて気をとられていると置いてけぼりをくらう羽目になるだろう。
先ほどの峠のような山道を超え、今度は山肌沿いの急勾配の傾斜を下へ下へと降りて行く。岩場が多くなってきていた。これは骨が折れるな。妙な事に首をつっこんだものだ。
そう思ったとき、足先の岩が崩れ身を崩した。
「むぅ」とうなり声をあげて何かにしがみつこうとしたが、傾斜の一角が岩ともに崩れて、そのまま一気にずるずると転げ落ちてしまった。

沙羅が何かを叫んで手を伸ばしていたが、それは聞こえなかった。

まるで冥府まで転がり落ちていくような

どれだけ時が経ったのか。

「う、うむ…」

頭と背中をしたたかに打ってはいたが、どうやらどこも折れてはないようだ。
茂った木々がある程度衝撃を緩めてくれたのだろう。
水の音が聞こえる。
背中を押さえながら立ち上がると目の前には大きな岩があり、小さな瀧のようになっている。

これはありがたいと水を両手で掬って飲むと、冷えてて実に美味い水であった。
よく見ると瀧の水が流れ落ちて小さな沢になっており、さらに下へと流れていた。

さて、沙羅はどうしたろう。そう思って転げ落ちた場所に戻ろうかとも思った。
しかし転げ落ちてきた場所は遥か上方に感じられる。今からあそこまで戻るのも随分体力と時間がかかる。

沢の岸にある重なった平べったい岩がちょうどよい腰掛けとなっている。
そこに腰掛けて少し思案することにした。

沙羅が探しに来てもよさそうなものだが、いっこうに気配がない。
もしや、たばかられたか。あれは罠であったかもしれんと疑惑に揺れた。
しかし…。あの沙羅を見てそのように狡猾な性根の娘には到底見えない。

しばらく思案をしていると、沢を挟んだ向こう岸から、何かが近づいて来る音がする。
日置は油断せずに半身に腰を落としてそなえた。

茂った草木の間をかきわけて姿が現したのは沙羅だった。

ほっと安堵して、おおぃ沙羅殿と声をかけると、いきなり沙羅は小太刀を抜いて斬り掛かってきた。
それを間一髪でかわしながら構えた。

「お、おい、何をする」

「怪しい奴!ここで何をしている!!」

「な、なに??」


先ほどの可憐な姿は消え失せて、妖しいまでの殺気である。しかも何やら妙に艶かしい。
よく見ると衣裳も先ほどとは違っている。帷子を仕込んだ胸の部分も大きくはだけて、足も剥き出しの格好だ。

まさか妖しの術でも使っているのか。それとも狸にでも化かされているのか。


「ま、まてっ!ちょっとまて沙羅殿。どうしたというのだ一体…」

「…なんで貴様沙羅を知っている。まさか沙羅を…」

「あ?そのほうは沙羅殿ではないのか?」

「痴れ者が。沙羅は私の妹だ!沙羅をどうした!?」

「いやいや、まてまて。何もしておらんよ、いや、したと言えばしたかもしれんが…ああ、違うちがう」

「おのれぇぇ!!!この外道!」


沙羅の顔をした娘は、言うが早いか飛びかかっていった。

日置もしかたなくそれを受けるが、太刀筋は先ほどの沙羅よりすさまじく鋭い。
余裕を持って受けるなどとんでもなく、あらゆる方向から切っ先が伸びて来る。


「しばし話を聞かれよ。沙羅殿の姐上」

「問答無用!」

一瞬、目の前から姿が消えたかと思うと、頭上にたかだかと舞い上がり身体を回転させながら向かって来た。
小太刀の刃が幾重にも重なって見える。

日置は脇差しを抜き、目の前で太刀を重ねてこれを受けた。
娘の攻撃を受けきると、左腕を脇に抱えて身体ごとなぎ払った。

「ぐっ」と声をあげてこの凶悪な麗人は日置に押さえ込まれた。
もがいたが、組みしかれれば男の力には適わない。喉元に刃を押し当てられ、抗う事をあきらめた。
静かに瞼を閉じて殺せとだけ言った。


日置は呆れた。
生涯数ある闘いの中で女人と戦う羽目になったのも初めてだが、日に2回も同じことを言われるのも初めてだ。
しかも見目麗しい年頃の娘である。その歳にして死を覚悟して生きるなど、そこらの武芸者でもそうはいない。

そのような生き方を哀れとも思い、同時に腹も立って来た。
日置は太刀をおさめて、娘から静かに離れた。

娘は起き上がって怪訝な顔で日置を見た。


「何故殺さない」

「やれやれ…。沙羅殿といいそなたといい…。なんでそう死を急ぐのだ」

「敵に破れたら死だ。当然だろう」

「ワシは敵ではない。ただ、お主らの頭と話がしたいだけだ」

「お頭様に会ってなんとする」

「はっはっはっ。兄弟そろって同じ事を聞く。好奇心だよ、ただのな」

「好奇心?それだけのためにここに来たと言うのか」

「まぁあとは木がほしくてな」

「木?」

「弓の材料さ。こう見えてもワシは弓にはちと覚えがあっての」

弓をひく真似をしておどけて見せると、娘は意外なほどに無邪気な顔を見せた。

「おかしな人…」

物言いが、普通の娘のそれに変わりクスッと笑った。それは沙羅と同じく可憐な笑顔だった。

娘の名は双樹と言い、沙羅とは双子であるという。
沙羅は北西、双樹は東南を守る番をしているのだと言う。

事情を説明すると、沙羅が案内していたのは砦までは最短だが険しく困難な道だそうだ。
加えて沙羅はまだ未熟で自身が迷ってしまうこともしばしばあるという。

なるほど。沙羅殿もワシを探して迷ったのかもしれんなと何やらすまない気持ちになってくる。
姐の双樹はそんな妹をいつも気にかけ心配しているのだが、沙羅は意地をはって助けを求めないと言う。

「不器用なのですよ。沙羅は」

そう言いつつも沙羅を思う姐の優しさは見てとれる。
なるほど。いい姉妹なのだなと感心した。

沙羅とは違い、姐の双樹は日置が答えに窮するほどに饒舌だった。
しかもことあるごとに身体を寄せてあれこれ聞いて来る。

どこからきたのか、歳はいくつなのか、良人はいるのかとそれこそ質問攻めである。
若い娘が饒舌なのは仕方のないことにしても、格好を何とかしてもらいたいものだと思った。
まだ老いるには早い自分にとっては、肌もあらわな装束は刺激が強すぎる。
答えを色々はぐらかしながら、当初の目的を切り出した。


「あの、双樹殿、ともかく頭のとこに案内してくれんかの」

「双樹と呼んでくださいまし。わたしは日置様に命をとられたもの。この命お預けいたします。それに、あの剣技お見事でございました」

そう言って腕をとってしがみついて来る。先ほどの殺気をぶつけてきた娘と同一人物とは思えない。
日置もこの歳で女を知らぬわけではないが、さりとて経験が多いわけでもなかった。
しかも見目麗しき美少女だ。まっすぐに見つめてくる目を見ていると、吸い込まれそうになるのを堪えた。

「そ、そ、そういえば沙羅殿も探さねばならんだろう」

「沙羅も心配ですが…まぁ、あの子は大丈夫でしょう。いつもふらっと帰ってきますから」

「ここいらは日が暮れるとまずいのだろうな」

「あっ、いけない。ここらあたりは暮れるともう道が見えない」

双樹はお頭のとこへご案内しますと日置に言った。
沙羅のことは心配ありませんよと笑った。


「では急ごう」

「急ぎましょう」

日置は双樹に伴って対岸の樹海へと消えた。
沙羅のことが気にかかってはいたが、握っている双樹の手がいくらか不安をやわらげてくれていた。

【続く】



や・ば・い
これはもう藤井さんに繋げられん
藤井さん助けて!
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No title

>藤井さん
藤井さんが美少女とコスプレダンスを踊るエピソードを書きたい!

No title

藤枝梅安・鬼平犯科帳・剣客商売いいよー

沙羅だけあって血がさらさら

これは未知の文明が核爆弾を落とすと言ふシナリオで!

No title

>レッズ
正太郎はあまり読込んでないからわからんな
池波なら藤井さんのが詳しいはず!

No title

池波先生ですか?
レッズ万歳
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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