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戦国女傑物語【伍の弐】 むらむすめ

師走のせわしない喧騒もこの時期の風物詩といってもよい。
ゆきかう人々の顔はどこかうきうきとはずんでいるようにも見える。

さて、忙しくものどかな市井をよそに雑賀の城で大問題がもちあがっていた。

家老の地獄突が青い顔をして城内を走り回って大声で叫んでいる。


「え、えらいこっちゃー!」


城内の北側に位置する宝物殿。他国からの貢ぎ物やら、代々から伝わる宝が収められて蔵である。

そこに昨晩、賊が侵入し宝具のひとつを盗み去ったらしい。
それに気がついたのは朝方で、宝物殿の鍵が破壊されていたのを見張りをしていた家臣が発見した。

それから上を下をの大騒ぎである。雑賀孫一を頭領とする戦国屈指の傭兵部隊である雑賀衆だが、外敵に対してこのような屈辱を受けるのは初めてだった。

現在、雑賀衆は本願寺の要請を受けて援軍として織田家と戦闘を行っていて、雑賀孫一は不在だった。

やすやすと賊の侵入をゆるし、あまつさえ伝来の宝具を盗まれたことが世間の噂にでもなったら、孫一は烈火の如く怒るだろう。家老全員切腹ともなりかねない。

何としても早急に宝具を取り戻さなければ。

家老の地獄突は、草を探していた。いわゆる忍である。
本来なら腕の立つ根来忍軍を使いたいとこだが、彼らは織田に組みしているものが多く、同じ雑賀衆とは言え対立関係にあるので使えない。

賊の目的はわからない。ただの金品目当てだったら、他にも値打ちものは山ほどあるだろう。
なんでよりによって、先の演武会で使われるあの宝具だけをかっぱらっていったのか。

「ええい。そんなことより今は草だ。蛇の道は蛇というからな」

地獄突はいら立ちながら、屋敷の天井裏に向かって叫んだ。

「おい、だれか!だれかいるか?」

すると天井の隙間より怪しげな笑い声が縄のように地獄突に絡みついてきた。


「ふふふ。いるか?名残雪か、馬鹿め」

「むぅ、その傲岸な物言いはふぇいか!」

「あたしに何か八日」

「九日十日」


これは確認の暗号のようである。草は顔どころか正体を見せない。声だけである。
ふぇいはクノイチのようだったが、実際のところ姿を見てはいないので本当に女人であるかはわからなかった。
忍者の中には、身体まで女人に変化するものもいるという。
地獄突はふぇいがおっさんかもしれないとは思ったが、よく考えてみればおっさんは俺だと思い直した。


「で?今騒いでるのは例の宝物の話かい」

「うむ。孫一様が帰還されるまでに何としても取り戻さなければワシらはやべぇ。超やべぇ」

「しかし雑賀の砦に忍び込むなんざ、並の手練じゃないねぇ。相当やる奴だよ」

「そんなことは百も承知だ!だからお前に頼みたいんだっちゅうの!」


地獄突は無駄な会話と言わんばかりにイライラしながら小便を我慢しているような顔で怒鳴った。


「せっかちな男だねぇ。それじゃ女にゃもてないよ(笑」

ふぇいの高い声は冷たく空気を揺らすように響く。笑いながらからかう口調も普通に聞いていれば幽鬼の如くだ。


「やかましい。大きなお世話だもんね!ばーかばーか」

「子どもかこいつは…」

「おほん…。と、とにかく早急に賊を見つけ出し宝具を奪い返してくれ。首尾よくやれば褒美はなんでもやる」

少し間をおいてふぇいがクックッと笑いながら答えた。


「なんでも…かい。ふふ、それじゃあ100万貫ぐらいもらわないとねえ」

「100万!?たけぇよいくらなんでも!ビックリマンのチョコがいくら買えると思ってるんだ!!」

「もう売ってねーよ。だから買えないし(笑」

「まじかよ!もう売ってねーのかよ。ロッテほんとっぱねえな!」

「何時代に生きてるんだこのおっさんは…ゼウスカードとかまだ持ってるんじゃないだろね」

「いいから早く探しにいけよ貧乳。取り戻したら100万払ってやる。それでよろしゅうございますな!(奥村調」

「この仕事終わったらあんたのピー!を切り落とすからねっ!」

そう言ってふぇいの声は天井全体を震わせながら消えていった。


「ふん。下賤もののくせに生意気なことだ」

いまいましげにそう言うと今度は鉄砲衆のところに向かった。

裏鉄砲衆の家老、衣櫻に会うためである。ふぇいが首尾よく事を成しても、どのみちこのような失態の種は誰かの口伝で広がる可能性がある。その禍根を立つには口は封じなければならない。
使い番の忍びの末路はみなそうしたものである。

衣櫻はそんな裏部隊を束ねる雑賀暗殺部隊の一人である。家老でもあるのだが表の実動部隊として手腕もふるう。白黒混濁の男であった。

衣櫻は郷の南に位置する高台の武家屋敷に住んでいた。。
屋敷にずけずけと上がり込むと何やらひっそりしている。人の気配がない。

「衣櫻殿。衣櫻殿はおらぬか!」

「はて?留守かな」


そう思って奥座敷を開けてみると、書台に紙に書かれた書き記しがあった。

【ごめんなさい。雑賀を出ます。歌手になりたいです】

なんと衣櫻は、この騒動が起こった時にいち早く騒動に巻き込まれてはと、さっさとケツを巻くってばっくれていた。危機回避能力に長けているのは戦乱の世では必須である。


「あやつううううう!!!おのれ出奔しおったぁ!しかも意味わかんねええ」

突は舌打ちをして後を追わせるかと思ったが、今はそんなことをやってる場合でもない。その時頭にひらめいたものがあった。

「そうだ!藤井さんだ。藤井さんを使おう」

そう言いながら、地獄突は足早に本丸へ向かっていった。


冬の冷たい風は、笑うように雑賀の郷を吹き抜けて行く。
師走の25日も過ぎ、いよいよ新年も近い。


城がそのような大騒ぎになっているとは、むらむすめ達は夢にも思わない。

相変わらずの日々がのんびり続いていた。
老人も養生の甲斐もあり起き上がって風呂の蒔などを割っている。


「おじさん。お茶が入りましたよ」

「おぅ。これはありがたい」

てぬぐいで汗を軽くぬぐうと、出された茶をがぶりと飲んで、横の切り株に腰掛けた。

「ねぇ、おじさん」

「んー?なんじゃい」

「そういえば、まだおじさんの名前を聞いてないんだけど、本名はなんて言うの?」

「んー、ワシの名か。ワシの名はな…」


むらむすめは目を丸くして老人を見つめた。
老人もむらむすめを見たが、その目は今までの優しい目ではなく獣性を帯びた凶暴なものに映った。


「みやもと…むさし」


そう言った瞬間に強大な鬼気が老人から発せられむらむすめは思わず後ずさっていた。
周囲の空気が急激に固く張りつめていくのがわかる。膨れ上がっていく気を抑えつけるような老人の形相は、鬼そのものだった。


「…みやもと…むさし!?」


宮本武蔵と言えば、剣聖とも言われた伝説の剣豪である。こんな老人がまさか…と思ったが、確かに今の剣気は常人のものではない。仮にも僧兵である自分にもそれがどれほどのものかは理解できる。

しかしそれは刹那なことで老人はいつもの様子に戻っていた。

顔を天に向けて高笑いをしながら、にやりと笑い


「はっはっはっ。なーんちゃってな。冗談じゃよ冗談。なわけねえだろうが。ワシは真田広之というんじゃ。ヒロくんとでも呼んでおくれ(笑」


「なんですかそれ、まったくもう…」


むらむすめも苦笑いで返したが、老人が見せたあの鬼気は油断がならないものだった。
この人はただの老人ではない。何者だろう。

あの棍棒と言い、この老人といい、どうにも今までの平穏な日常が少しずつ亀裂が入ってきてるような気がする。


「ああ、そうそう。むらさんや」

「はいっ?」

心を読まれたのではと思い、むらむすめはびくっとなった。

老人は気にした風もなくのどかに笑っている。

「あとで、あの拾ってきた棍棒をみせてくれんかのう。わしゃこう見えても棍棒には目がないんじゃ」

「あ、ええ、、まぁいいんですけど…」

老人が割った蒔を紐で括りながら、しどろもどろに返事をした。


そういえばあの棍棒…、形が妙になめらかに加工されていたっけ。素材はアイダモだったような。
まるで見た事のない形だけどまるで宝石のように美しかった。

胸がざわつく…。何も起こらなければいいのだけど。
そう思いながら、むらむすめは冬のつるべに赤く染まっていく雑賀の郷の家々を肌寒い風を受けながら見渡していた。

【続く】


あ、やべぇ終わらんぞこれ。
助けて藤井さん!






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No title

>あや
明けおめす
今年はたぶんなかなかインできないだろうなあ

>ギンちゃん
明けおめー
俺もほとんどインしてないんだけど縁と命があればまた今度w

とつさんへ

信やめてから全然あれですが
良いお年をー

また何か機会があったらあそんでね(ノ´∀`*)

No title

突さんと挨拶するまもなく新年を迎えそうだから。
よいお年を~(´∀`)

No title

>むらさん
残念ながら現実はもっと過酷なものになります!
藤井さんのコメントは俺にも解読不能な時がありますが気にしないようにw
というかこれえらい長くなりそうな予感が…

久しぶりに拝見しましたら壮大な物語にして戴いてて恐縮です(・ω・;)

最後は家老凸様との結納でめでたし愛でたし♪

〉藤井さま

いつもコメント拝見してます。
たまに理解が及ばずな事がありますが…
ふぇいさんには大変お世話になりました関係なので姉上のように慕ってます

No title

>カニッちゃん
衣櫻さんの浅井篇もあるかもよw
しかしこれは多分年をまたぐね(´∀`)

>藤井さん
いじめられてはないだろうwこれはふぇいに浣腸されるな藤井さん
軌道修正はとりあえずこれを完結させてからw

No title

むらむすめの人ってふぇいふぇい様にいじめられた人だっけ?w
追い込みかけられたとか噂を耳にした!

元旦で軌道修正だ凸さん!
特集は新年対談○○

No title

長くなりそうですねw
衣さんの番外編もあるの?(´∀`)
プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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