こっくり清音さて、古来より怪談話は多々あれど獣(けもの)憑きの話ほど怖いものはありません。
私の実家でもあなた、蛇憑き、狐憑きなんぞ実際にあった話でございます。
なんで、この師走の寒い時期にそんな季節はずれの怪談話をするかってぇとですね。
それにはまず最初から話さないといけませんや。
なんともおっかねぇ話だったなぁ。おっと、この手の話がダメな人はきかないほうがよござんすよ。
夜にトイレにいけねぇよと言われたってあたしゃ責任持てませんからね。
あれは一週間ほど前のことになりますか。
半年ほど前に失踪した狐大好き娘の霧島の清音が甲府両替前にいたんですよ。
何やら狐の面をかぶって、ぼーっと佇んでいたわけです。
あたしゃ、おやひさしぶりと思って声をかけると、こっちを向いたかと思うと「こーーん!」とひと鳴きして走り出したんです。
どうしたのかと、あたしもあわてて後を追っかけたんですが、神社の手前で見失っちまいました。
それにしてもあたしに挨拶もなしで逃げるとはふとい奴だ。リアルはヤセギスだそうですけどね。
まぁそれはともかく、見つけてとっちめてやろうと思った次第ですよ。
しかし、その後も方々探しましたが見当たらない。まるで神隠しですな。
はて、不思議なこともあるもんだと思って、知人欄を確認したんですがランプは点いてない。
即落ちしたんでしょうか。それとも見間違いだったのか。わけがわかりませんや。
で、その後にかずはからちょいと小耳にはさんだんですが、2~3日前に甲府に帰ってきてるそうでして。
なんでも半年ぶりでPCが壊れててインもできずだったということですが、リアルでいい人でもできたんでしょう。
いやはや、あたしも歳をとるわけです。みんな端から片付いていっちまう。いや、めでたいことではあるんですがね。
とにかくこれは清音の友人に聞いてみるのが一番だと思ったわけです。
あの様子は尋常じゃありませんからね。
清音の友人といえば、長年いつも一緒に行動していた葵雪月花ことコロッケなわけですが、そのコロッケに清音のことを聞いてみたわけですよ。
ええ、よく3人でも遊んだものです。コロッケも清音がいなくなって一時期寂しそうにしてました。
で、聞いた見たわけです。清音が帰ってきてるそうだな。会ったのか?そうか。元気そうだったかとか、何してたんだとかね。
しかし何やら歯切れが悪いんですなこれが。
しまいには何を聞いても
「ぬるぽ」とか「ぽちょむきん」とか舐めた返事しか帰ってこねぇんです。
いい加減あたしもあったまきちまいましてね。壁に立てかけてあった檜の棒で頭をおもいっきりひっぱたいてやったんです。
そしたら
「ぎゃふん><」とうなり声をあげてのびてしまいました。へっ、いい気味ってもんでさぁ。
コロッケをほかして、とにかく清音をなんとかとっつかまえようと甲府中を探しまわったんです。
そりゃもう、竃の裏から鍋の蓋まで開けて。
でも見つからない。一体どうしちまったんだこりゃぁとさすがに途方に暮れてたわけですよ。
甲府の茶屋で一息つくかと思って、一服しようと長椅子に腰掛けたところ、
なんと目の前の席で清音の奴が団子を食ってるわけです。
あたしゃ思わず叫びましたね。
「こりゃ!清音!!」
「はっ!突さんだー」
おや、いつもの清音だ、おかしいな。
「おい、清音。この前は声かけたのに逃げる事はねえじゃねぇか」
「むぅ?わたし今初めて突さんにあったんだけどー」
「あ?じゃぁありゃあお前じゃなかったのか」
「歳だなぅ。アルツはいってますね。わかります」
「うるせーころすぞ」
と、まぁいつもの調子で話こんだわけで、やはりあれはあたしの見間違いだったのかと思ったわけです。
清音は別にこれといって変わりもなく。
しかし、コロッケの様子がおかしかったのは合点がいかないとこですが、特に気にする事もないだろうとほっとしましたね。
「そういやお前ここ半年何してたんだ」
「 (○'ω'○)ん?お仕事ー」
「ふむ。忙しいか」
「忙しいしPC壊れたのでインもできなかった(´・ω・`)」
「ほう。じゃあ新しいPC買ったわけだな」
「(=゚ω゚)ノイェイ!」
日も暮れたので世間話を切り上げて別れたが、特におかしいとこはない。
しかしなんだろうなぁ、この違和感は。
それに、あの狐面の女侍は確かに「霧島清音」とネームがついていたはずだが。
清音の狂言かな?いやあいつの天然オツムでそんなめんどくせえ事をするはずがありやせん。
第一、何のメリットもねぇし意味がねぇ。
う~~む。
帰りすがら、そんなことを考えながら甲府神社を通り抜けようとしてみると、何やら鳥居の方面に灯りが2つ点いていやした。
はて?あれはなんぞと思って石畳の手前からそっと覗いてみると、藤井さんが神主の格好をして祝詞唱えてましてね。
ありゃ、何かの祭事かなと思って見ていると、何やらその横に大きな絵が描かれた板が立ってました。
描かれた絵ってのはこれです。
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またそれかい。
あたしゃ呆れはてて、もう声もかけずに長屋に帰ると何やら一通の文が届いてました。
差出人はコロッケでした。開いて読んでみると
「ヤヴィ。清音ヤヴィ。まじでヤヴィよまじヤヴィ。清音ヤヴィ」
宇宙ヤヴィのガイドラインじゃねぇか。それはともかく清音がヤヴィ?とは何の事だ。
そう思ってコロッケの屋敷に向かったわけです。
屋敷に飛び込んで、コロッケを探しました。
「おーい!コロッケー!どこにいるー!」
すると、奥の座敷のほうからうめき声がしてくるじゃあありませんか。
「た、たす…け…て…」
コロッケの声です。それもまるで喉を締め付けられているような絞り出す枯れた声。
「コロッケー!!」と叫んで座敷の襖をひっかくように開けました。
するとそこには、狐の面をつけたあの清音が立っていたんですよおかみさん。
コロッケは虫の息で、息も絶え絶えです。
「に、にげろ…突さん。これ…は清音じゃ…ない」
偽清音の右手には、蝋燭が握られ、コロッケがケツを押さえて呻いていました。
アーーーーーーーーーーッ!
∩___∩
| ノ u ヽ
/ ● ● | 「現場に駆けつけた捜査一課の面々も驚きを
| u ( _●_) ミ 隠せない様子だ。」
彡、 |∪| 、`\
/ __ ヽノ /´> ) クッ…クマッ……
(___) / (_/
| /
| /\ \
| / ) )
∪ ( \
\_)
そこへいきなりもう一人の清音が現れました。
清音は青い顔をしながらこっちを見て微笑んでいます。
どうなっちまってるんだこれは。清音の偽者がコロッケを掘った?
そして今現れたのは本物の清音?
もう何が何やらわかりません。
コロッケが
「こ、こっくりさんさ。狐の呪いなんだ…」
「なに?こっくりさん?」
「二人でこっくりさんをやってたんだ。清音も復帰したばかりだし、やることもないしあまりにも暇すぎて…。そしたらやり方を間違えて男色の悪霊を呼び寄せてしまったんだよ」
「バカヤロウー!余分なことすんじゃねーよ;」
「僕はもう戻れない。青春を失いました」
本物の清音はただ立って青白い顔で微笑んでるだけです。
その様相はまるで青白い妖鬼です。明らかに怨霊に操られています。
あれは、あの日見た清音はゲイの怨霊だったのか。全て謎は解けました。
いや解けたからって意味ないんですけどね。
偽清音が蝋燭をあたしに向けて近寄ってきます。
「ま、まて!俺はバックは童貞なんだ。後生だから助けてくれっ」
「知らぬ」
「ま、まて。それならいい奴を紹介してやる。三浦という奴だ。あいつならゲイだから問題ない」
「それはどうかな。ふふふ(○'ω'○)」
「い、いやだ…。煎れるのはいいけど入れられるのは大嫌いなんだー!助けてくれー;」
「大丈夫。痛いのははじめだけでゲソ」
「意味わかんねーんだよ。嫌だ;このままじゃホリエモンならぬホラレモンになっちまう;」
偽清音がいよいよあたしの目の前まで近づいてきて、もうダメだと思いましたよ。
まさに生きた心地がしませんでした。
蝋燭があたしのケツに刺さると思った瞬間、ドカーンと大きな物音がして屋敷全体が揺れる衝撃が起こりました。
「あんぎゃぁぁああ!!」
4人とも悲鳴をあげて畳の上にひっくり返り、この世の終わりかと思いました。
顔を上げてみるとそこには涼しい顔をした藤井さんが立っていましてね。
「突さん。定刻(ルーティン)を外すとラングレーのコマドリがピーピー泣くぜw」
「藤井さん…。助けにきてくれたのか!」
「神社に来てたの知ってたよ。声もかけずに立ち去るなんざ水くさいじゃない。さぁ、男祭りがはじまるおw」
「それどこじゃねー」
「突さんを驚かそうとして爆裂弾を投げこんだら威力強すぎてワラタw」
「まぁ、今回はファインプレイだぜ藤井さん」
辺りを見ると、コロッケと清音が倒れていて怨霊の偽清音は見当たりません。
ころがった燭台の横にこっくりさんをやるときのあの白い紙がありました。
びりびりにやぶれて四方に切れ端が散らばっていました。
その紙片を見るとにきれた部分にゲイとカタカナで書かれています。
おそらく武芸である清音がブゲイとカタカナで書いてしまったのでしょう。
こっくりさんはそこに感応したものだと思われます。
しかし清音は常々「武芸じゃないょ!双剣士だょ!!」と言ってなかったか?
今となっちゃどうでもいいが…。
「そしてゲイの怨霊に清音の持っている狐の気が融合したのか。まったく人騒がせな…」
あたしは頭を掻きながら、そうだ!二人は、と思い出すと、コロッケと清音も意識が戻ったようで、特に怪我無い無いようです。二人でアホ顔を見合わせてボーッとしています。
「ホケーッ」
まったくこいつらときたら…。
しかし、ま、一件落着ということで。
藤井さんがあたしを呼んでいます。
「突さん、祭りはこれからやでぇ」
あたしはまた新たな恐怖に立ち向かうのでありました。
とまあ、ながなが語りましたがそういうことでございます。
男ってぇのは、入れるは安し。いれられるは難しということで。
ああ、おっかない。
え?全然怖くないって?それはあなた様が女人だからでございましょう。
男性のノンケなら震え上がる話でございます。
清音の狐憑き。お粗末様でございます。
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