スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

不可解

vbgrjnmtru,myt


1パチの高連チャン率と4パチの単発の多さ

電車のシルバーシートががら空きなのに、周囲を見渡してわざわざ詰まってる普通の席に座る老人

レジで数点の買物なのに金額が出るまで財布から金をださないおばちゃん

自転車乗りながらアニメソング歌ってる奴

ダイヤのエースが2週連続で総集編をやってる件

忙しい時に仕事は重なり、暇なときには凪状態

藤浪投手と魚くんの因果関係

人気漫画、アニメの実写化 ちはやふるとか意味不明

電車の中で部下に説教しているおっさん

電車の中で弁当食ってるおばちゃん

早足で腕を振り子にしながら競歩している女

ソフバンショップで千葉から都内にきたばっかのやたらとフレンドリーな兄ちゃん

探すとないし、気にしないと発見する書類


色々あるさね色々と。
人生色々曲がり角。
あたしゃ入れ歯で歯がたたないってね。

さてやっと週末だ。
明日は渋谷で雀の会。
明日勝つぞきっと勝つ。
願いになれいつの日か。

じゃ、良き週末を。

スポンサーサイト

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

ペーパーレスか 短編習作





cvbfdgmtd,mf

夜の闇を覆う目がくらむ程のイルミネーションカラー。
マソ・バスキアンの視線の彼方にそれは存在する。

多重構造居住施設ハイ・タワー。
ゲットーエリアからビル群を従えるように煌びやかにそびえたつテクノポリス。
マソ・バスキアンは指の隙間から漏れるカクテル光線を小さく遮りながらトリミングする。
人差し指と親指の長方形は黄金分割された適度なレイアウトでマソの目を楽しませる。
スランプ時の気分転換である。

東ゲットー地区1145-B。
半壊しそうなアパートの窓から見えるタワーの光は、皮肉にも灯りの乏しいゲットーエリアを煌煌と照らす。

ベッドに寝そべりながら、非合法の"セックス・プラック"を吸い始める。
暗く狭い部屋に白い滑らかなウェーブの輪。
甘い柑橘系の匂いが充満する。大昔はこれは"シガレット"と呼ばれていたらしい。
もっともそんな呼称などどうでもいい。
無造作にキャビンに置かれたファイバーコントロラーを手にとって電源をいれると旧式の40インチ・プラズマモニターにノイズまじりの映像が映る。

リアスクリーンには禿げ上がったスーツ姿の男が若いカップルに街頭インタビューをしている。
内容は国防関係の防衛費の増減がどうたらこうたら。
マソにとっては毛程にも興味がないもので、カテゴリーを変えると、今度は銀髪の細身の男が何やら意味のわからない絵の前で熱弁をふるっている。
絵は何も変哲もないバナナのイラストで、黒のシルエットに黄色のペイントが施されている。
マソにはこれが何の意味を持つのかは皆目わからなかったが、少なくとも男の身なりはマソの1カ月分の生活費より高いものだろうということはわかる。

そろそろ、〆切が近いなとマソは憂鬱になった。

乱雑なワーキングデスクの中央に置かれたタブレットに、カーソルの点滅がリズムを刻み、その先にヘルヴェチカのタイプフェイスで見出しがつけられている。

わざわざキーボードを使わなくても、音声感応デヴァイスによるテクスト生成で、完璧なプロポーショナルフォントがスクリーンに投影されるのだが、マソはあえてキーボードを使っている。
何よりテクストを自動で抑揚のないテンプレートに補間されるのが嫌だった。

Corrupt...

腐敗した

腐敗した…。その後のワードが続かない。
先週のルポの見出しをつけるのに悩んでもう2日。

そもそも腐敗したという見出しもどうかと考える。

民主派の上院議員カールソン・クーパーの醜聞をあげてこいとデスクからオーダーが入った。
何のことはない贈収賄と愛人問題をリークして、他社よりも先にすっぱ抜く。
それだけのことで、トピックスの閲覧は跳ね上がりストックは急上昇する。
広告クライアントの集客律もアップして収益も増える。俺のギャラ増えるってわけだ。
しかし政治家などはいつの世もよかれ悪かれ皆同じ。
清廉潔白でいたい人間が政治家などになるわけもない。

つまり奴らは哀しいまでに人間らしい人間ではないのかとマソは思う。
欲望をスーツケースに隠して、賄賂を受け取り女を抱く。
それはごく当たり前のことで、地位あるべきことが枷となり挙げ句に咎人に堕ちる滑稽さが哀れだ。
それに乗っかって蠅のように餌を求めている俺達もまた哀しいほどに人間だと自嘲した。。

ルーティーン(定時連絡)を2回ぶっちぎってるので、デスクもそろそろ、雀の雛のようにピーピー喚きだすだろう。

マソはルポライターとして、Scoop Delivery 社と契約している。
Scoop Delivery 社はここ数年で業績が落ち込み、ランキングを20位にまで落としていた。

Scoop Delivery 社の創業者ウォルター・ダンはパーソナルな表現手段としての紙媒体に最後までこだわった1人である。
頑なに輪転機を駆使してペーパーバックを制作していたが、環境資源政策によって徹底的な紙の統制がなされ、あえなく印刷物事業を撤廃。
紙の値段は高騰し、大昔にウォーター・プライスの先達が言及したように、国家総ペーパーレス時代となった。

人びとの手からは紙の新聞、文庫、雑誌などが消えた。
トイレットペーパーも消えて代わりに洗浄機の技術が発達した。
紙を使ったほとんどのメディアが電子化されたパネルになりデータに変わってから既に100年以上も経つ。
開発者の故ニック・シェリドンの長年の夢が叶ったとハイテク推進論者たちは歓喜した。
絵画やコミックなども全て電子化され、肉筆で筆を取って紙に描くのは一握りの国宝級の画家だけである。
キャンパスも絵の具も全てが庶民ではとても手に入らない高価なものとなった。

紙を使うことは究極の贅沢となり、地下で「闇紙」が取引されるようになる。
材質は劣悪のゴートパルプで生成されたフェイクペーパー通称FPと呼ばれた。
印刷は滲むしコシはなくざらっとした手触り。だが、FPによって紙と言う確かな媒体に文字や絵を投射できる喜びをクリエイターは感じていた。非公認のFPによる平綴じの簡易本まで出回るようになった。
しかし保管状態に難があり、外気にふれていると三日で紙が風化してしまう。脆弱すぎる本もどきであった。ユーザーはますます「本物」をほしがり市場は高騰する。

もちろん電子媒体での国営図書館のコンテンツは充実しているのだが、有害図書と認定された書籍は全て閲覧は不可とされている。更に電子メディアの利便性に相まって、個人でのサーバー閲覧はス防衛手段が希薄で絶えずスロッパーの危険が伴う。セキュリティ防壁を最高ランクにあげて、高度なセキュリティ・アナライザを設置しても、その障壁を破って全ての情報を丸裸にしてしまうゴーストハッカー集団が存在するのだ。
個人レベルでの書籍閲覧は、オンラインで繋がるかぎり閲覧履歴はもちろん、閲覧者の全ての情報が抽出される恐怖に晒されている。要は娯楽で気軽に書籍の閲覧はできず、閲覧制限も厳しい。

その点、紙であれば履歴は指紋ぐらいである。
それに本には「ページをめくる」といったダイナミックな指の連動がある。
次のシーンを自分の手で自分のタイミングで読めるその先の創造。

16歳の夏。マソはアカデミア在籍時に国立図書館研修でペーパーバックなるものに触れたことがある。
紙とインクの匂いが溶合った何とも言えない歴史の香り。

サンプルのペーパーバックは成績優秀者の順に触れる権利を与えられ、生徒は古き良き時代のローテクの感触を確かめていた。ようやくマソの番になりページをめくってみる。ざらついた表質のテクスチュアが指に吸い付いてくる。
印刷されたテクストは、Baskervilleのオールド書体が品よくレイアウトされ、パラグラフのスペースにも意志が感じられる。タイトルは「親和力」と記してあった。
マソは夢中になりすぎて、後ろで順番を待っているクリスティーンにつつかれるまで本を離さなかった。

それは運命の分岐だった。
紙に書かれた文字を本にして書く。
それがマソの夢となり希望となった。

卒業後のメディアトレード編集会社でもらった初任給で、薄い40ページほどのペーパーバックを買った。
古びて外装はボロボロだったが、それでも給料のほとんどがすっとんで、残りの数週間は昼飯抜きの晩飯はインスタントヌードルというサバイバルを経験した。
それでもマソは手に入れた「目標」を眺めながら、輝かしい明日がくることを信じていた。

全てが輝いて見えたあの頃。全てが…。


うとうととまどろむ、宝石のような瞬間をいきなり切り裂かれた。

玄関からドンドンとドアを叩く音がする。
ブザーを鳴らせくそったれ!と一瞬激昂しかけたが、そういえば、夜は節電のために切っていたのを忘れていたらしい。

マソは起き上がってスカウターを起動させながら玄関へ向かった。
夜の11時前。ここいらで人が訪ねてくるには遅すぎる時間だ。
壁に設置されたセキュリティボックスのシグナルを確認して、ドアスコープ から訪問者を確認する。
ゲットーは一瞬の油断もできやしできない。
ここでは一切れのパンやビスケットでも人が死ぬ。

スコープの向こうでぐるりと湾曲した男の姿が映っている。
黒い外套に短く刈り込んだ金色の髪。
友人のタツヲだ。

軽い安堵感に緊張が解ける。
ロックを外してドアを開けた。

「よぅ」

右手を上げながら挨拶したタツヲは、長身を屈めて部屋に滑り込んで来た。

「コールぐらいしろよメガネ」

マソが指を指してなじると、タツヲは家主の同意も得ずに冷蔵庫のエール缶を取り出しながら首を振る。

「履歴を見ろよ」

タツヲは円形のウェラブルデヴァイスから覗く目で心外だとばかりに抗議している。
椅子に座ると、デポットを指差しながらエールをグビグビと半分以上飲んだ。

長年のつきあいで情報享受をしながらの持ちつ持たれつの関係だ。
とにかくここでは情報が一番高値で取引される。
夜中にこいつが訪ねてくるってことは何らかのトラブル情報なのだろう。
嫌な予感しかしない。

マソは憮然としながらデポットのコール履歴を調べる。
受信欄から外れたカテゴリにールサインのアイコンシグナルが点滅していた。

「あ、来てた」

「あったりまえだ。3回はコールしたぜ」

「すまん。ナンバーがイリーガルコールになってた」

「おい。何の冗談だよそりゃあ」

「おっかしいな」

「知るかよ。どうせ無自覚の回路封鎖だろが」


マソは首を傾げながら、またセックス・プラックに火を点けた。
にしても、こんな時間になんの用だと言おうとした瞬間に、信号で急停止したエアモービルの如くマソの質問はストップした。


「マソやべえぞ」

タツヲはいつになく深刻な顔でマソを睨んだ。

「ん?」

「お前の書いた記事だよ」

「記事?」

「先月お前が書いた記事さ。それを読んでサイファーの奴が怒り狂ってる」

サイファー。
東ゲットー一帯を仕切るマフィア「リリース(解放者)」のナンバー2。
残忍でオタク。ジャパニメーション好きの享楽主義者だ。
気に入らない奴は3秒で殺すイカれた男だ。

先月は東洋のオタク文化を探るため、ルート77にあるオタクが集まるANIMAXへの潜入ルポを記事にした。
しかし、どう思い起してもサイファーが怒り狂うような文言を書いた記憶はない。

マソは頭を抱えてため息をついた。

「なんだってんだ…」

「詳しくはわからんが、とにかく何とか対処すべきだろうよ。奴は半端じゃねえ気違いだからな」

タツヲは残りのエールを流し込むと片手で缶を潰してマソに渡す。
何気ない仕草が所詮他人事という暢気さを醸し出している。
マソは苛つきながらくの字に曲がった缶を受け取るとシューターに投げ入れた。

「ま、俺にとってはサイファーが文字を読めるってのが大事件だけどな」

自分でも冴えてると思ったのか、タツヲは自分のジョークに笑い出した。
いつもなら違いないと一緒に笑い飛ばすところだが、サイファーに目をつけられてと知ったらさすがに笑えない。
冗談もTPOをわきまえないと命に関わるぞと怒鳴る気力すらなかった。

まさか…Dアニメストアを揶揄するような表現をした下りが気に入らなかったのか?
それとも、あのサイリウムを振って涙を流しているフリークス達を総称して「萌える覚醒者達」と見出しをつけたことか?

どっちにしろ、迅速に対応して誤解を解かなければ。

〆切は迫る。サイファーからは狙われる。
目の前のメガネ野郎は勝手に冷蔵庫を漁ってエールを飲んでいる。
そして明日履く靴下も洗っていない。

問題は山積みだった。

まずはできることからやる。
それしかない。

靴下を洗濯槽にぶち込んでセックス・プラックを一服しよう。
まずはそれからだ。

危急のときこそ、できることのプライオリティを決めて確実にこなすことだ。
そうすれば事態は好転の兆しも出てくるだろう。

だが、まずは…

数分後、タツヲを部屋から追い出すとクリーニングカプセルに靴下を4足放り込んでシグマ洗剤を注入した。

なんて夜だ。

明日は必ず原稿を仕上げよう。
そしてサイファーだ。
一番の問題はそれだ。

セックス・プラックを吸いながら胸の奥が鉛のように重くなるのを感じる。
まったくなんて夜なんだとぼやきながら、マソは吸い止しをアッシュトレイに投げ捨てる。

ふと、壁に貼った光学ステュートパネルに浮かびあがる絵のキャラクターが静かにこちらを見つめている。
マソはその絵をなんとなくタツヲに似てるなと思った。

【どこかに続く かもね】

fbnfgt,fmdnsbgafm,guf


んじゃ良き週末を!

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

ジョブ・ヘンドリクス─イントロダクション (構想中)

fzdbrdmdt

■Intro

生まれてこのかた、神と宣(のたま)う姿の見えない創造主などに祈ったことはない。
創造主が常に慈悲深く、人類を愛しているという証明がきっちりなされているなら、
街でウイルスのように巻き散らされる神のメッセージもありがたく傾聴しただろう。
神が実際におわすなら、この糞ったれな世界で溺れて足掻く哀れで無力な子羊に救いの手を差し伸べてくれてもいいはずだ。
神より飯だ。もう2週間パンも肉を食ってない。
フェイクポテトとインスタントの炭水化物、そして合成ミルクばかりの毎日じゃ
人生は胃袋の牢獄だ。
酒も女もギャンブルも飯が腹一杯食えてこそ楽しめる。

"人間が幸福であるために避けることのできない条件は勤労である"とは誰の言葉だったか。

そんな偉人の格言が陳腐に思えてくる。
1000の言葉より一切れのパンだ。

休憩時間を幾分かすぎた午後。
ジャイロストーンの青をしたためて建造されたメゾンの1階。
藤井・ヘンドリクスはチャイに安物のドープパウダーを溶かしながら、
プラズマ・ナイロンのスプーンでかき混ぜて作った小さな渦を眺めた。
目の前の空間パネルに表示された金額を確認しながら、テーブル中央のコンソール型の窪みにカードデバイスを置いて料金を支払う。

スクリーンに表示された残高を確認しながら舌打ちをした。

「また値上がりしてやがる…」

口の形を歪めながらため息をついた。
一か月前は30palだったはずだ。
10palも値上げしやがった。
エルダー通りの「パルディオ」が値上がりしたのと同時だ。
さすがに確認もせずにセットを注文したのは失敗だった。
嗚呼「プレジャー」よ、お前もか。
今月の支給日まであと10日。
残高を計算すると、晩飯はまたあの味のしないどろどろの豆スープに世話になるのか。
そう考えると藤井は泣きそうな気分になった。
先月の家政婦のオートマターの故障が痛かった。
あれで目玉が飛び出る程の修理費を支払って懐はオケラ寸前である。
考えるだけでチャイの酸味が荒れた胃に軽い痛みとなってしくしくと突き刺してくる。

いまいましげに、3階のリザーブ席で談笑しているグループを遠目に見る。
優雅に着飾った上等のサテンスーツを身にまとってリラックスしている4人の若い男女。
さながら、流行のマガジンのスポットを飾るモデル達のようだ。
端正な顔立ちとすらっとしたスタイル。そして品を備えた優雅な身のこなし。
円形のテーブルに陣取って高級カッファを飲み、俺たちを見下ろして嘲っていやがる。
白いプラチナカップに光輝くソーサー。
テーブルには見ているだけで喉がなるストリームチキンとオレンジスープの皿。
見ているだけで腹がなるなり何とやらだ。胃がきしむほどにむかついてくる。

あれは上級カーストに位置する「ヴァルナ」のガキどもだろう。
親が貴族の特権階級を持つエリート様だ。

絶対王政が支配するこの王都では、身分は絶対であり全てだ。
砂を噛む思いで食う飯の味を想像したことは?



王都直轄のあらゆる技術生産ラインが集結する「セクター」。
1,000を超える生産工場が、この巨大な球形の集合体を形どっている。
「セクター」では、実に1,500万人を超える人間が働き生活をしていた。
いわば、一つの都市であり国だった。

その中にメゾンはある。この巨大なボールの中には積層型のストリートがあり、
交差する各起点にメゾンは設置されている。
労働者はそれぞれの働くエリアから勝手に移動はできず、移動の権利を与えられているのは
特権階級の王族と貴族、そして「S」クラスの等級を持つアジテーターだけだ。

dfgbnftu,ugkutyfdr


藤井・ヘンドリクスは、セクターの最下部エリアの半導体のウェハー製造ラインで働いている。
この製造ラインにしても300名以上の工員が働いている。
藤井の労働等級は「C」。

「C」は給料はそこそこで待遇も普通。
「D」は給料も安く待遇は低い。それでも「E」の見習いよりはましといった程度だ。
「E」は未成年の見習いで勤務時間も短い。

「A」の労働等級を持つものはライン・マスターである女性のジェノ・ドルバ1人だ。
あとはチーフである「B」が10人ほどで、「C」が100人ほど。
等級があがるほどに、上流行程をまかされて部下もでき給料もあがる。

ジェノ・ドルバは、28歳の若さでラインマスター、つまりこの生産ラインのトップになった。
女性でしかも二十代では異例の出世である。
アップでまとめた輝く金髪にブルーの瞳。真っ白の胸元を大きくあけたサテンスーツに見事なプロポーション。
左目は義眼でニューロン・インタフェース・デバイスの最新型。
これで瞬時に製造ラインの進捗を把握して一元的に管理をしている。
彼女は就任して間もないが、他の生産ラインよりも確実に成果をあげている。
さらに独身でこれだけの美人が浮いた噂を聞かないというのもまた好ましい。
生産技術上層部からの評価も高く、そのうちに特権階級の「S」ランクへ昇格するだろうという噂されていた。
彼女自身もまたそれを強く望んでいるとの事だった。

:;lkjhgfdsa


工場に戻った藤井は、工程管理主任と打ち合わせをしているジェノをチラ見しながら横をすり抜ける。
相変わらず颯爽としていて隙がない。
それでいて嫌みがなく工員からの信望も厚い。
ジェノは工員の誰とでもわけへだてなく接し、意見をしっかり聞くし労いもする。
トラブル時には誰よりも早く出社し誰よりも遅く残業をする。
派手な見かけによらない堅実で謙虚で完璧なマスターだった。

まったくいけすかない。
藤井はまったくのところ、このスーパーウーマンをとことん嫌っている。
我ながら矮小で偏頗な性だと自覚はしている。
だが気に入らないものは気に入らない。

藤井は前任のマスターであったラルゴ・アランに拾われた縁でここで働くことができるようになった。
大勢いる工員の中で、藤井には何かと目をかけてくれた。ラルゴに感謝もしていたし、家族のような親しみを感じていた。家に招かれて夕食を御馳走になったことも度々ある。歳は親と息子ほどに離れていたが、ラルゴは親友であり兄であった。

そのアルゴが1年前に癌で死んだ。
本人も自覚していたらしく、飲むとことあるごとに藤井に俺が死ぬまでに「B」に昇格して「A」を目指して後を継いでくれと言っていた。
藤井はそれを真に受けなかったが、死ぬ三日前に見舞いに行ったICR医療カプセルで「頑張れよ」と小さな声で
ラルゴは言った。優しい目でにっこりと笑顔を向けてエールを送っていた。
藤井はその時初めて後悔した。
資材運搬用のエリア4の道端で行き倒れていた時に、ラルゴに助けられてから数えて5年。
あれから何一つ成長していなかった自分を悔いた。

ラルゴの死後、死に物狂いになって仕事をして昇進試験も合格した。
EからDに等級はあがり、Cに上がるまでは1年かかった。
それでも以前の藤井からしてみると、長足の進歩である。

その死に物狂いの凡夫をタキオン粒子のごとく追い抜いていったジェノに燃え滾らんばかりの嫉妬をしていた。
さらにアルゴより優秀なのではという周囲の評価も気に入らない。
藤井は自分がこれほどまでに吝嗇家だということに驚いてもいた。
何より自分より歳下、しかも女に負けている事実がなんとも悔しくて情けない。

しかしこれが現実である。
AどころかBに昇格するにもため息のでるほどの障壁があるわけで。
認めざるを得ないものを認める勇気が、今の藤井にはなかった。

不機嫌な顔をぶらさげてドームデスクの備え付けのスツールに腰を降ろす。
すっと一差し指をD(ディメンション)モニタのカウンターに合わせて表示された在庫と出荷の数字を手で弾いた。
Cの等級になると現場作業ではなく管理側に業務がシフトされる。
納期の遵守が義務づけられ、品質の安定を保つためのチェックとQC。そして工員の勤怠管理。
藤井には退屈な仕事だったが、給料は悪くはない。
しかし今月はやばい。やばすぎる。ピンチなのだ。
やはり、修理は来月にしとけばよかった。
そもそも、あのポンコツに5000pal出す価値もあったのかと慚愧の念が増してくる。
パンみたいな高級品を食えるぐらいには「C」の実入りは多くはない。
あくまでも「普通に生活する」ぐらいに給料が出るくらいである。

「ずいぶんと青い顔してるけど、拾い食いでもしたの」

隣のドームから同僚のナナ・イスルギが声をかけてきた。
黒い髪にくりくりとよく動くおおきな瞳。先祖が倭人だと言っていたが、少年のようなきりっとした顔立ちしている。まだ二十歳になったばかりの匂い立つような華やいだ空気を纏っていた。
桃色に彩られた頬が健康的な色気を放っている。

ナナはことあるごとにシニカルな冗談を藤井に投げかけてくる。
彼氏はいないらしく、何故か10近くも歳の離れた藤井に興味があるようだった。

「ほっとけ。午後のルーティーンは?」

「概(おおむ)ね順調よ。世は太平こともなし、ね」

ふん、そうだろうよ。何事も起きるわけがない。
だいたいにおいて、管理制御の9割以上はメインフレームの「アヴァロン」に依存している。
つまりは何かのエラーや障害でもおきない限りトラブルにはならない。
一日中、管理モニターの数字を追いながら過ぎてゆく日々。
苦労するのは、半年に一回ほどの大規模なメンテナンスでデータ通信時のボトルネックが生じる時ぐらいだ。

だからおおいに退屈だ。
かといって「D」の組み立て作業に戻る気もない。

「C」に属する管理グループは30歳を超えたシニアが多い。
ナナのようなフレッシュと呼ばれる若手は少なく、60歳を超える管理者もいる。
勤務中は私語は禁止されているので、このセクションはほとんど同僚との交流はなく、共同作業もない。
ナナのように気軽に話しけてくる同僚は「C」に昇格してからは皆無だった。

定時になると一斉にラインが止まり、現場で作業しているDとEの連中が帰り支度をする。
ライン作業場を四方から囲む監視モニタに映る人びと。
そこには一仕事を終えた充実した労働者の笑顔がみてとれる。
1年前は俺もあそこにいたのだなと藤井は苦笑した。
生産ラインの仕事は特に面白いということはなかったが、少なくとも他人との共同作業はあったし、達成感は存在した。仲がいい友人もいたし彼女もいた。生活は今よりカツカツだったが、仕事帰りには安いエールを飲んで仲間とよっぴいて騒いだものだった。

今ではその仲間もいない。
別のエリアに回されたり、昇格して別階層に行ったり、病死した者もいる。
つきあっていた彼女は、藤井が昇格する前に別の男と浮気をして別れた。
別れ際の彼女の捨て台詞が「どうせDのあたしなんか捨てるくせに」と開きなおられたのだ。
なにもかもめんどくさくなった藤井は、「ああ。だろうな」とひと言いって終わった。
その彼女も今は別階層のエリアに移動して結婚したらしいとの噂を聞いた。

人生で輝く時を過ごせるのは、良き友人達とその時間を享受できたときだろう。
藤井は昇格してからは人づきあいが億劫になった。
業務は徹底的なスタンドアローン。
藤井の周りには静寂が訪れたが逆にそれが心地よかった。
自分のことだけを考え自分のためだけに生きることが楽だった。

追憶するようにカメラの映像をぼぅと観ていると、いきなり背中をバンっと叩かれた。

「っつ!!」

「なに浸ってんのよ。定時よ定時」

振り向くとナナがうんざりした表情を浮かべている。

CVBNM,MNBVCXCVBN


「ってぇな、このガキ!何すんだ」

「ふんだ。しみったれたおっさんが思い出に浸っても美しくないわよ。ホラぁ、さっさと帰るわよ」

「ああ…。わかってる」


ドームデスクからカートリッジを引き抜いて立ち上がった。
するとナナが腕にぶらさがるように体を密着させてきた。

「ネネ!藤井!明日は休みでしょ。パビリオンズでスペースレイトショーやってるのよ。連れてってよ」

「は?なんで俺が…。あとなぁ、藤井さん、だろ」

「うそっ!わたしの年収低すぎっ!!」

ナナはデバイスに表示された月例サラリーランキングを見ながら目を丸くして驚いている。
藤井の話はまったく耳に入っていない。

「お前ほんと人の話きいてねーな」

「まぁ、細かいこと言わないでよ。こーんな可愛い女の娘とあんたみたいなおっさんの猿人がデートできるのよ。光栄に思いなさい」

ナナの毒舌は今に始まったことではない。初対面から歳上の俺を呼び捨てどころか、猿呼ばわりをしている。
その方面のフェチにはご褒美だろうが、あいにく俺はこんなガキに舐められてへらへらと笑っていられるほど人間できちゃいない。
しかし、そのガキと同じレベルで言いあっているのだから、藤井の精神状態も知れたものだとは客観的かつ冷静には考える余裕はなかった。

「やなこった。んなもん一人でいけ一人で」

藤井は腕をナナから振り払ってネクタイを直した。

「へぇ?何よ!こんな美女のお誘いを断るって言うの?あんた馬鹿ぁ?それとも兄貴ぃ?」

「馬鹿はオメーだ。どこに美女がいるどこに」

「あんた顔も悪いけど目も悪いのね。ついでに頭も悪いわ」

「オメーに言われたくねえよ。それに図工は5だよ」

まったく調子が狂う。こいつと話してるとさっきまでの陰鬱とした気分がアホらしくなってくる。
昔の彼女にだってここまで罵声を浴びせられた事はない。
確かに可愛いが生意気で気に入らない。
それになんだって俺に構うんだ。こいつの容姿ならいくらでも男が寄ってくるだろうに。

ナナは少し寂しそうにうつむいていたが、つーんといそっぽを向いて歩き出した。
そして、ちらと藤井を見ながら思わせぶりにつぶやいた。

「ふーんだ。いいもん。じゃあ、いいこと教えてあげようかと思ったけどやーめた」

その言葉にぴくっと動きを止めて聞いた。

「なんだ、いいことって」

ナナは食いついたとばかりに目を輝かせて詰め寄ってくる。

「聞きたい?」

おねだりするような猫の瞳で首を傾げる。
あざとすぎるその仕草にどれほどの馬鹿男が騙されたんだか。


「いや、やっぱいいや」

「えっ!?」

興味なさげに、くるりと体を回転させてスタスタと歩き出すと、思惑が外れたとナナはあわてて藤井の背中を追いかけた。

「ちょ、ちょっとぉ!待ちなさいよ、この猿!!あんたが大嫌いなジェノのことだってーの」

「何だと?」

硬直したように動きを止めてナナを見ると、してやったりの顔をしている。
ナナはゆっくり近寄って藤井のネクタイをちょんとつついた。

「レイトショーのチケットよろしく、ね!」

悪魔の笑顔に藤井は思わず天を仰いでいた。


【続きはどこかで】

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

桜の木の下には…



生命が芽吹き躍動を始める春。
手も足も冬の冷えた鎖から解放されて、心身も胎動を始める春。
春を愛する人は 心清き人。
心清きかどうかは知らないが、藤井駿河守は春が好きである。
下ネタも好きだが桜も好き。それが藤井駿河守という男であった。


並木通りに桜が咲いている。
藤井はそれを横目で眺めながらスマホの2chの実況版スレッドを眺めていた。
首をかしげながら歩く様はまるで鳩のようで傍から見ていると非常に滑稽だ。
最近では事故も多発して社会現象ともなっている。
さすがにそろそろ首がくたびれたらしくスマホをポケットにしまった。

ちょっとの散歩のつもりだったが、思いのほか遠くに来てしまったと藤井は苦笑いをする。
ぽかぽか陽気に春の風。
春は何もなくてもウキウキと気分が高揚してくる。
だからちょっとのつもりで散歩にでた。
出立ちは上掛けのジャージに半ズボンに草履といった軽装だ。

見てくれはどう見ても怪しいおっさんで、こんな格好で子どもに声をかけたら一発で通報されるレベルだろう。
「ぶひぶひ。おじちゃんと遊ばない?」
こんな輩も沸いて出てくる春うらら。
しかし、そんなことすら気にならないほどの長閑な陽気。
それに春はちょっとおかしい人も出てくるので問題ないのだろう(問題だよ)

柔らかく靡く風に桜の花びらが散っていく。
来週にはもうあらかた散っていくのだろう。

圧倒的に咲き誇る桜の回廊まっただ中にいるこの景観。
舞えよ桜よ一睡の夢。
藤井はまるで御伽草子の中に迷い込んだような錯覚の中にいた。

それほどこの桜陣は素晴らしく美しい。
観るものの心を不安にさせるほどに色艶やかだ。

見渡すと、そこかしこでシートを広げて酒宴をしている人びとがいる。

すると、前方よりこちらに向かってくる人影がある。

友人の凸であった。右手に一升瓶を持って左手に紙コップを持っている。

「よう藤井さん。今日は艦コレやってないのかい」

そう言って一升瓶を持ち上げて「やるかい?」と笑った。

「今日はここの桜は満開だからね。艦コレよりも風情だよ」

藤井は、そう言って一番枝振りのよさげな桜の木の下へ行こうと促す。

「違いねえ。桜を愛でるのは生きてる実感を味わうことさ。酒もまたしかり」

凸は紙コップになみなみと酒を注いで藤井さんに渡す。
続いて自分の分もなみなみと注いで作る。

「乾杯!」

紙コップを合わせてぐっと喉に流し込む。

「つまみを持ってくりゃよかったな」

凸がそう言うと、藤井はにやりと笑って舌を出す。

「へへぇ。そこはぬかりはないよ。もうすぐ来るころだ」

「ほ?誰か来るのかい」

「マソだよ。あいつにいつもLINEでエロ画像を送ってくるだけだから、たまにはつまみでも持って花見に来いと言っておいたんだ」

「LINEでエロ画像か。マソらしいな。そういえば痔瘻の手術はしたのかね」

「さぁて…。とにかくあいつは彼女ができたそうだから、毎晩オッタチーノで励んでいるみたいだよ」

「そりゃまた。若いっていいねぇ。性春だねぇ。赤玉出るまで頑張りそうだな」

「彼女の体が持てばいいけどね。何せマソの体力はFF8のオメガウェポンクラスだからね」

「あれ相当体力あるだろう…。女は干涸びちまうんじゃねえかそれ」

「一晩中あの大筒に突かれまくったら、たまらんだろうねえ」

「そういえば…マソの奴、以前にSEXはリズムだとか吹聴していたっけな」

「リズム?」

「うむ。奴はSEXする時には必ずある歌を脳内演奏しながら事を成すといっていたんだ」

「へぇ、そりゃまた酔狂な。どんな歌だろう」

「たしか…お猿のカゴヤとか言ってたな」

「お猿の?エッサ エッサ エッサホイ サッサお猿のかごやだ ホイサッサー って言うあれ?」

「おぅそれよ。そのリズムが一番のれるんだそうだ」

「 最後のホイサッサーで「いく!」とかたまんないなそれ」

「俺はジョジョの「オラオラオラオラ」とかにしとけとアドバイスしといたんだ」

「途中で女に「やれやれだぜ」とか言われたらチンコ萎えるねそれ」

「想像したら吹いたwww」

「まったくだwwwwww」


藤井と凸は大声を挙げて笑い出した。

桜の花は今が華よと一斉に咲き誇っている。
どこかで遠く嫋々と笛の音が聴こえる。

酒にひとひらの花びらが落ちた。
構わずにそれを一緒に飲む。
桃色の雪がうねるように周囲に降り注ぐさまは、まるで桃花源記に記された彼の地に思える。

顔を赤くした凸の後ろに立つ人影があった。

「ちぃーっす。凸しゃあん、出来上がってるっすねえ」

「おぅマソか。元気そうだな」

「元気元気ぃ〜。精力体力てぃんぽまるだしげんきっしゅ〜しゅっぽんしゅっぽん!」

「相変わらずだな…マソ。ところで、つまみは?」

藤井がそう聞くと、マソは片手にさげた買物袋を前に差し出した。

「酒のつまみと言えばこれ!北陸金沢、北珍、のどぐろの浜焼、どじょうの蒲焼!」

マソのつまみはどれも金沢の一級珍味である。
思わぬ御馳走に藤井と凸はおおいに喜んでマソを上座に座らせた。


「ま、飲みねぇ」

そう言って凸は紙コップに酒を注いでマソに渡した。

マソは酒をちろっと舌でなめてから一気にあおった。

「うみゃあ!」注:うめぇ

「マソ、お前それ静岡方面の方言だぞ」

「そう言えば藤井さんと凸さんは静岡出身ですよねん」

「ああ。といっても、俺の出自は高千穂だけどな」

「高千穂遙!クラッシャージョー!っすか」

「俺は運び屋サムシリーズが一番好きだったな」

そんな他愛ない掛け合いで酒はすすむ。

1時間ほどすると、少し雲が出てきて空模様が怪しい。
風も少し冷たくなってきている。

「ありゃ?こりゃ降るかな」

空を見上げながら赤ら顔の藤井は掌を出して天から雫が落ちてこないかを確かめる。

「秋の空と同様に春の天気も頼りねえなぁ。いいところで水を差しやがって」

凸が悪態をつくとマソも続いてさえずり始めた。

「まったくっすねぇ。雨が降っちゃあせっかくの花見も台無し玉なしパチンカスっすねえ」

マソがお得意のラップのような歌詞の韻を踏む。
マソは一時期はバンドをやっていて、金沢のDアッシュと呼ばれていたとかいないとか。

突然、木の根元を差して凸が言う。

「知ってるか?桜の木の下には死体が埋まっているんだ」

「梶井っすね。檸檬とかしゅきっす」

「読んだことないなあ俺」

「なーんか怪しい雲行きだよなあ。まるでこのあたりだけ結界が張られたようだぞ」

「そういや何か変っすねえ。さっきまでの花見客もいないっす」

「化かされたか?妖怪とかに」

「まさか…ねえ」

確かにさっきまでの景観とはうって変わって花びらは舞っていないし、まだ午後の2時だというのに
なにやら辺りは薄暗い。

3人が訝しんでいると、そこへ声をかけてきたものがある。


「もし…」


二人連れの女だ。

一方は背が高く、一方は幼女のように背が低い。
しかしどちらもどえらい別嬪であった。

人か?

そう藤井は思ったが、美人に人種は関係ない。
こんなペッピンならご飯3杯は軽い。
しかもそれが爆乳ならなおさらだ。

背の高い方はうりざね顔で目元は涼しく、後ろにまとめた黒髪がたおやかになびいて美しい。
スタイルはこれまたボッキュッボンのごっくんボディ(死語)。
桜花月水─佇まいはまるで人とは思えぬような妖しさがある。

小さいほうは、丸顔の童顔だが目は多少きつく、亜麻色の髪を片方で縛って肩に流している。
小柄だが出るとこは出て何とも言えない色気を漂わせている。

二人はそれぞれ色の違う有栖川錦の文様の着物を纏っている。
小さい方の女は両手に傘を数本持って口を一文字につぐんでいた。
何やら怒っている表情にも見てとれる。

そんなことは仔細構わず、3人はためいきともとれる「ほぅ」と感嘆の声をあげた。
そりゃこんな美人二人が目の前にいたら男なら誰でもそうなるだろう。
マソは飛びかからんばかりに喜んで二人の前に進み出た。

「まじうけるぅー!超傘なんすけどぉー」

覗きこむように傘を見ながらはしゃぐマソだったが、女の怯えた目に気がつくと頭を掻きながら「ちょりーっす」
と頭を下げた。

「てかマソ、超傘ってなんやねん。傘超えとるやんけ」

すかさず藤井が関西弁でつっこみを入れると、マソは照れたように鼻の頭を擦った。

凸が背の高いほうに声をかけた。

「なんだい、傘売りかい姉さんたちは」

背の高い女は静かにこくりと頷いた。

「はい。そろそろ入り用かと思いこうして傘を売っております」

どえらい色っぽい女だなと凸は思った。
つーかやりてぇ。
素直にそう思った。
さすがに親父は欲望をオブラートに包まない。
歳をとるということは、ひとつひとつ純粋さを蝕んでいく。
それがおっさんという生き物だ。

「こんなところで傘売りとは酔狂だなあ。でも、こんな美人さんが売ってる傘なら1000円でも買っちゃうよ俺」

藤井はそう言いながら、小さいほうの女に笑いかけた。

小さい方の女は表情を変えずに掌を広げて5本の指をだした。

「こみこみで5万円」

「ぶほぉっ!!」

藤井は思わず飲みかけの酒を吹き出してむせた。

転がるような鈴のような声と相まってどえらいぼったくり値段が飛び出した。


「ごっ、ごまん〜〜!?」

3人は腰を抜かす程にたまげた。

「傘に5万とかPS4が変えちまう値段だぞ」

凸は馬鹿馬鹿しいといった風にかぶりを振った。
マソが何かを理解したように手を打った。

「なるほどっしゅ!傘を買ったらこのネーサン達もついてくるという新手の風俗っしゅね!」

それを聞いた背の高い女の顔にわずかな歪みが生じた。

「おだまりなさいチンカス野郎。我らを愚弄すると祖チンを切り落として犬に食わせますよ」

女は、変わらないにこやかな顔とやわらかい口調で、斬りつけるような毒を吐き出した。
さすがのマソもこれには絶句して青ざめた。
笑いながら人を斬るとはまさにこれ。
憤怒を表に出し烈火の如く怒るより、氷のような冷徹な刃のほうが時には底知れぬ恐ろしさがある。

金玉が縮み上がったマソはすっかり萎縮してしまった。
藤井は女の啖呵に口をあんぐりとあけてぽかーんとしていた。

「こみこみで5万。如何ですかこの傘」

女は小さい女から傘を一本取り上げると、広げて肩に乗せながらくるくると柄を回した。
傘は貝遊びの柄で美しいからかさだった。
傘を回しながらくるっと回ってしなを作ったその姿別世界。
まさに天女の所為である。
傘も確かに1000円やそこらで買えるような代物ではなく相当な逸品に見えた。

「おいおい。おっかねえ姉さんだな。いいものだろうけど、とにかくたけぇしいらねえよ。降り始めるにはまだ少し間があるだろうしな」

それでも、凸が払いのけるような仕草で断ると、女は哀しげな表情で凸にすり寄ってきた。

「そこを何とか…。一本でいいんですけど」

凸は吐息がかかるくらいに近い女の表情に情欲がたぎりそうだった。
唇がほんのり桃色に光っている。
豊かな胸のふくらみが腕にあたる。
うわっ、まじで押し倒してぇ。しかし金は…ない。
ない袖はふれないのが貧乏人である。凸は神保町界隈で空き缶拾いで生計を立てている乞食同然の暮らしをしていた。
金がないときは知人にたかる。そんな社会のくずである。
しかし、くずでもプライドはあった。やり逃げとかは己のポリシーが許さない。

「い、いや、持ち合わせもねえし。それに傘に5万出すなら川崎で2輪車やったほうがましだぜ」

「お願いします。一本だけ…」

「ああ?買わねえよー。ってかあめーんだよ!そんなたけぇー傘買えっかよふつー」

「どうしてもダメですか」

「やだよ!甘いよ!!(ぷげら)」

凸はおどけながら舌を出して断った。

「どうしても?」

「あ〜もういい加減しつけぇな。買えねぇったら買えねえんだよ」

さすがにうんざりしてきたので凸は立ち上がってもうお開きにしようと藤井とマソに促した。

すると─

女は口をつり上げて恐ろしい形相になった。

「よくも恥をかかせてくれましたね。呪ってやる!はぁっ!」

女は鋭い呼気を吐くと凸の顔に掌を当てて白い光を放った。

「ぐぇっ」

凸が声をあげると同時に姿が掻き消えていた。
女達の姿も消えて、淀んでいた天気も元の陽気に戻っている。
藤井とマソは狐につままれたように桜の木の下で一時ほど呆然としていた。

桜の木の幹に2匹の蜘蛛がいた。
大きいのと小さいのが2匹。
よりそうように亡骸となって死んでいた。

「なんだったんだあれ」

「さぁあー?ところで凸しゃんはどこへ消えたんすかね」

「凸さん…まさか」


マソと藤井が辺りを探すと、一枚のカードが落ちていた。

「なんだこれ…」

マソはそれを拾いあげると、体を震わせながらぶぎゃあああと悲鳴をあげだした。

「こっ、これは!!」


dfsbtdnyrmyrsne5

カード化されてしまっていた。

藤井は空を見上げながらぼそりと言った。

「さ~て…帰るか」

「う〜す…」


帰りすがらに二人は居酒屋でまた飲んだ。

もちろん

カード化された凸のことなんざすっかり忘れていたのは言うまでもない。


【おしまい】

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

カレンダー
03 | 2015/04 | 05
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
リンク
最新コメント
ブログ内検索
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。