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櫻通信

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本日の靖国神社より

桜が満開なので藤井駿河守は花見をしようと思った。
桜と言えば、以前に読んだ梶井基次郎の「櫻の樹の下には」を思い起こす。

櫻の木の下には屍体が埋まっている。
藤井はそう考えると楽しくなってきた。

ゲームの世界とは言え、櫻の木の下に屍体が埋まっていることを考えただけでも胸が躍る。
願わくば、その屍が酒宴の列に加わってくれることを願ってやまない。

日常という枷を解き放ち切り離した残酷な現実は美しい。

そんな宴が開けたらどんなに素晴らしいだろう。
生命を分つ水晶の甘露。
水の吐息。地の呼吸。

すべてがひとつに融合されたホライゾン。
宝物殿の宝玉にも劣らない甘美な誘惑。

心は宇宙へと飛翔し無限の星々の煌めきを掬いたいのだ。

藤井はいてもたってもいられなくなり、知り合いに電話をして連絡を取ることにした。


最初は友人の地獄突。

2度鳴らして地獄突が出た。


「もしもし凸さん。花見をやりませんか」

「やぁ藤井さん。いやです」

ツーツー…。

けんもほろろに断られて、藤井は困惑してしまった。

「およよ?はて…何かきにさわることをしたかにゃ?」



鬱になっているとすぐさま地獄突から電話がかかってきた。

「冗談だよ。アメリカンジョークさ。やろうよ花見。気が済むまでさ」

「凸さん…」

藤井は小躍りして喜ぶと、回った拍子に柱の角に足の小指をぶつけて泣いた。


誰もいない野原にぽつんとそびえる老齢櫻。

木の下には、二人の男が座して対峙している。
結局、集まったのは地獄突1人だけだった。

「藤井さん、約束の花見だ。存分に楽しんでくれ」

「ありがとう凸さん。いや、だがしかし…」

「どうした。花見で酒だぜ。それも極上の吟醸だ。ぐっとやんない」

「これ…ワンカップ大関なんだけど…」

「こまけえことはいいんだよ。さっ、やんない」

「う、うん。じゃ…」


ワンカップ大関から赤い杯に満たされた液体をぐっと喉の奥に流し込む。

これは土方のおっさんか、赤羽あたりの飲んべえが飲む酒だ。
しかもメチルアルコールを混合しているような目がつぶれる臭気だ。
これはひどい。
贅沢は言わないが剣菱くらいにできなかったのか。

しかも酒のつまみはスルメイカ。
これも贅沢は言わないが、ヒラメの刺身ぐらいにはならなかったのか。
せめて奴と焼き魚、焼き鳥に焼きそば、イカ焼き、たらの芽、ウド…。
それぐらいは用意してもらいたいのだが、よくよく考えてみれば藤井が唯一用意したものは「きのこの山」だけなので文句は言えない。

まぁ、しかし…そんなことはどうでもいい。
満開の櫻の花びらが匂い立つほどに美しいのである。

藤井は生きている間に何度この光景をみることができるのだろう。
泡立つような生命の息吹があたりに渦巻いている。

地獄突は静かに笑っている。
藤井も笑っている。
いのきさんもどこかで笑っている(なんでや)。

「いい櫻だ」

「うん、いい櫻だな」


藤井が夢うつつに浸っていると風が出て来た。
日も陰りぽつぽつと雨も降ってくる。

そうこうしているうちに、雷雨に変わり暴風雨になった。
藤井と地獄突は逃げ出すようにその場を去った。

「すわ!退散」

しかし家路に着くと二人とも完全な濡れネズミだ。
このあと二人とも思いっきり風邪を引き三日間寝込んだ。

後日、藤井がかずはにその話をすると

「バッカみたい」と一蹴された。

みさおには

「あんたたち、そっち系?キモッ」とまで言われた。


(´・ω・`)ちょっと涙がでた。
櫻の木の下には木下若菜(AV女優)が埋まっていると言う。

わかるかな?わっかんねえだろうなぁ。

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テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

藤井さんはCOMPLEX



藤井「久しぶりに凸さんをラーメン屋に誘ったんだけど遅いなー。一風堂って言ってあるんだけどなー。」
凸「おーい!」
藤井「あ、凸さんだ!こっちこっち!どうしたの?遅かったじゃん。」

凸「ごめんなー、吉川晃司に似てなくて・・・。」
藤井「いやいや、そこまでは気にしなくて、って意味わかんねーよ!」

店内
凸「こういう店はマソの中の人とよく来るのか?」
藤井「そんなマソの中の人なんていないよー。」
凸「いいよ、隠さなくて。いるんだろ?」
藤井「う、うん。いるよ。」
凸「出て来いよー!」
藤井「ここにはいねーよ!」
凸「いいなー、30代後半。青春だよなー。」
藤井「そう?」
凸「ああ、いいとも。みそじと書いておっさん。」
藤井「それは中年だろ!何言ってんだよ。とりあえずなんか頼もうよ。」
凸「よし、頼もう。ウエイトレスさーん!連帯保証人になってくださいませんか?」
藤井「何を頼んでんだよ!メニューだろ!じゃあ僕は、普通のラーメン。」
凸「じゃあ俺は普通のカップラーメン。」
藤井「あるわけないだろ!」
ウエイトレス「かしこまりました。」
藤井「あるのかよ!」
凸「あ、すいません、ここビールありますか?」
ウエイトレス「ありますよ。」
凸「じゃあいいや。」
藤井「何のために聞いたんだよ!」
ウエイトレス「かしこまりました。」
藤井「かしこまるなよ!ちょっとは疑問に思えよ!」
凸「でも、珍しいなー。お前から誘うなんて。」
藤井「ああ、大事な話があるんだ。」
凸「ま、まさか・・・、三浦は本当はゲイじゃないとか!?」
藤井「意味わかんねーよ!違うよ、将来の事だよ。僕さー・・・。」

プルルル・・・、プルルル・・・

凸「ちょっと待て!会社から電話だ。はい、もしもし一風堂です。」
藤井「あんた店員じゃないだろ!」
凸「もしもし、なんだお前かー!今食事中だよ!見てわかんねーのか!」
藤井「電話じゃわかんねーよ!」
凸「ごめん、ごめん。それで話ってなんだ?」
藤井「ああ、僕、信オンやめようかと思って・・・。」
凸「なに?聞こえなかったよ。もう2回言ってくれ。」
藤井「せめて次で聞く努力しろよ!だからー、信をやめたいの!もう長年やってきたわけだし。」
凸「そうかそうか、俺は賛成だ!ただし凸さんが何て言うか・・・。」
藤井「お前は誰だよ!」
凸「どうせならピッグになって帰って来い。」
藤井「豚にはなんねーよ。」
凸「あー、ウエイトレスさん。これをあちらのお客さんに。」
藤井「え?なになに?なにをやるの?」
凸「伝票。」
藤井「伝票渡すなよ!」
ウエイトレス「かしこまりました。」
藤井「またかしこまっちゃったよ。」
凸「と言うのは冗談で、今日は俺のワリカンだ。」
藤井「ワリカンかよ!オゴリだろ!」
父「そうそうフグリ。間違えちゃったよ。」
藤井「わるいね。こっちから誘っといて。」
凸「いいさ、気にするな。どうせ汚い金だ。」
藤井「何やってんだよ!」
凸「よーし、狩りにいこうか。ところで俺は軍学でいいのか?」
藤井「あんたとはやんないよ!」


春ですねぇ。
いい花見日和だ。
では諸君、良き週末を!

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

藤井さんちのオンライン狂想曲(ラプソディ)



藤井さんは、ちんぽも長いしオンライン歴も長い。
長いものには巻かれろとよく言われるが、藤井さんに巻かれるのはごめんだ。

今日も今日とて藤井さん。

元気に信長の野望オンラインにインをする。
ログイン画面が出た時に、「いんさぁあぁとおぉう!」と口走るのは歳も歳なのでさすがにやめたらしい。

武田に所属する藤井さんは、合戦が起こると複垢で徒党を組んでソロ狩りをする。
徒党でソロ狩りは、やられるほうは非常に不快だろうが、哀しいけどこれ藤井さんなのよね。

女にしても据え膳食わぬ末代の恥とばかりにペロッと平らげる。
処女だった場合は、事後に「初めてだったのかい…」とわざと深刻ぶるが、2回戦ではアナルを責める。
恐ろしい色事師なのだ。

そんな侍の中のもののふの藤井さんは、モモクロのことを最近まで桃黒だと勘違いしていた。
ケツが黒い娘達だと思っていたのである。勘違いにしてもひどすぎるが、やっぱり藤井さんだなと許せてしまうこれ不思議。
だからソロ狩りで藤井さんに狩られた人は、逆に運機があがる。
これほんと。

藤井さんは合戦も狩りも飽きたので、両替前で一休みをしていると、織田の藤川みさおから対話が来る。

「藤井さん、こんばんわ!」

「ボナセーラ!」

「何語?」

「僕ラテン系だし」

「だから何語なのそれ」

「イタリー」

「イタリア語なのね。じゃ沖縄だと?」

「はいさい」

「じゃ、フィリピンは?」

「フジャムボー」

「へぇ、藤井さんって語学堪能なのねえ」

「ラテンだからねラテン」

「ラテンというより…フーテンって感じだけど(汗」

「僕は寅さんじゃないよ。ちゃんと正業に就いてるし(泣」


そんなやりとりをしていると、タッチャマソから対話だ。

「藤井さん、ちんぽぽす!!」

「何語それw」

「マソゴ」

「阿呆だろww」


藤井さんがマソと対話をしていると、みさおからまた対話だ。

「藤井さん、ちょっと相談に乗ってもらいたいんだけど」

マソとの対話を打ち切って、みさおの話に耳を傾ける藤井さん。


「相談?」

「うん。実は…変なのにまとわりつかれて困ってるのよ」

「ストーカー?」

「そんな感じ」


オンラインではよくある話だ。
中身が女性プレイヤーと知ると、しつこく対話をしてつきまとうプレイヤー。

だが恋愛なんて、すべからくみんなストーカーみたいなもので、大きな違いは相手の事を思いやれるかやれないかの違いではないのか。
藤井さんもネットで会った女は5人食ったが後腐れもない関係で終わっている。
事後処理を間違えると命に関わるから慎重だ。
藤井さんは、ああ見えてかなり繊細に女性を扱うので恨みをかわない。
天然ジゴロなのだ。

「でね…。お約束だけど今度リアルでえ会おうとか言ってくるのよ」

「そいつ川口浩より勇気があるなぁ」

「ちょっと!それ、どーいう意味?真面目に悩んでるんだけど」

「会って酒を一緒に飲めば、みさおさんの恐ろしさがわかるんじゃないの。思い知らせてやれ」

「こう見えても可憐な乙女なのよ!」

「見当たらんな。キョロキョロ」

「死ね!師ねじゃなくて死ね!藤井さんのばぁ〜〜か!」

「かぁ〜〜ば」


みさおに言いよって来ているストーカー君は、狩りで一緒になった無印だそうである。
徒党の雰囲気もよく、特にみさおをと無印君はよくしゃべって仲良くなった。
一門にも属しておらず一匹狼を気取っていた彼は、知人も少ないようで野良で会ったみさおに一目惚れしたようである。

かなり無理がある設定だとは思うが、マジで恋する5秒前で恋に落ちる時ってそんなもんである。

以来、ことあるごとに対話がきて、リアルのことをしつこく聞いてくるようになり、
近県に住んでることを教えると、急に馴れ馴れしくなっていった。

始めは「藤川さん^^」と呼んでいたのが、最近では、「みさにゃん^^」になっている。
しかも、徒党で一緒になってもそんな呼び方をするものだから恥ずかしくてしょうがない。

みさおは次第に疎ましくなっていったが、無印君の猛烈なアタックは止むことがなかった。
そして、遂に「リアルで会おう」である。
まじひくわー。

しかし、どのオンラインゲームでも絶対この手の話はあるわけで、男と女がいるんだもの。そりゃそうですよねと藤井さんはため息をつく。

「とにかく、上手に疎遠になる方法を教えて!」

みさおはかなり真剣である。
真剣と書いてまじと読む。

ゴメン、どうでもいいことだった。


「う〜〜〜ん…。下手にあしらうと逆恨みするタイプだなぁそれ。しかも無印なだけに始末が悪いし」

「でしょう?最近そーいう事件も多いし…。どうしていいのか」

「う〜むぅ。しかたない。あの手でいくか」

「え?何か良い手があるの?」

「まぁ僕にまかせなさい。まずそいつの名前を教えて」


義を見てせざるば何とやら。
ワインはレゼルヴァ、カンツォーネ。

藤井さんが友人のために立ち上がった。
勃起したわけではないので念のため。


それから3日ほど経ったある日、みさおから対話が来た。

「藤井さん、ストーカー君、引退するって対話きた」

「へぇ、よかったじゃない。これで一安心」

「いや…、というか藤井さん、彼に何かしたの?」

「別に。ただちょっと対話をいれただけ」

「泣きながら、友達がいなくて淋しかったのでしつこくしてしまった。ごめんなさいと言われたよ」

「根っから悪い奴ではなかったと言うことだね」

「何か…可哀想になっちゃって。一回ぐらいリアルで飲むぐらいはよかったかなぁって…」

「甘い!つけこまれる隙を与えるとああいうタイプはやばいよ」

「そうかしらねぇ…。ところで彼に何を言ったの?」

「うん?ああ…。俺は藤川みさおの恋人でホモですと」

「なにそれ!それで?」

「そして、みさおにはついてるよ!ぶっといのが、とね。そしたら彼、無言で落ちちゃった」

「……最低!!」


藤井さんは人の夢を壊すのが好きだ。
そして容赦がない。

しかし考えてもみてくれたまえ。
いつの世も汚れ役は必要なのだ。

藤井さんの好感度はだだ下がったが、結果的にみさおも彼も救われたのだ。

恋にケチャップ、いや決着をつけるのは自分自身でしかないが、その幻想をぶち壊すことによって救われる魂もあるのだ。
況やオンラインの恋愛は成就するまでの過程が艱難辛苦を伴うことが多い茨の道。
ひゃり〜こひゃれろ、笛吹き童子。
呼べば答える山の谺の嬉しさよってなもんだ。

みさおに殴られて奥歯がかけたが、気にしない。
甲府の門前にたたずんで、真っ赤なつるべを見送る藤井さんの目はどこまでも優しい。

明日はどっちの風が吹くだろう。風は何でも知っている。
でも藤井さんの水底に住まう水魚のような心意を誰が知ろう。



まあ

知らなくても、どーでもいいことなんですけどね(笑。

【終】














テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

SEX-FILE的な




「モルダー、あなた疲れてるのよ」

振り向いた瞬間に藤井はギョッ!となった。
藤井は魚眼のような目を剥き出して驚く。

その女はX-Fileのスカリーに似ていた。
藤井は今、雀荘「フリテン」で卓を囲んでいる。

モルダー?誰それ。この雀荘にそんな名前の奴はいない。
誰に言ったのかはわからないが、後からこの卓の藤井の闘牌を眺めている。

<あたしに言ってるのかしら…。まぁどーでもいいけど。あ、これかぶりだわ…>



「ロン!それだ」

下家が対面に3900の放銃。
これで対面はトップ目だ。

<びっくりした。あたしが振り込んだのかと思ったわ>

藤井はドキドキした。


南2局で藤井とトップの点差は8000弱。
十分に追いつける点差だ。

しかし、後からじっと女に見られているのでどうにもケツの座りが悪い。
背中に緩やかなプレッシャーがかかっているようで、集中力が乱れる。


親番だ。

藤井はここらでは「グリーン」と呼ばれる雀ゴロ、通称クマである。
グリーンと呼ばれている理由は、映画「フィフス・エレメント」のクリス・タッカー演じるルービー・ロッドのように、大きな手を上がると必ず「グリーン!」と連呼するからである。

しかし、地回りの与太ものと卓を囲んだ時に、いつもの調子で「グリーン!」と連呼していたら、さすがに与太もんがぶち切れて光り物を鼻っ柱につきつけられる。

「きゃんきゃんとうるせぇアホだな。どうだ?これでもグリーンか?あ?このブタお釜がよ」

ドスをつきつけられて、冷や汗を垂らしながら「グ、グ…リ〜〜〜ン…」とカエルのような鳴声を絞りだす。
その様子があまりにも滑稽だったのか、与太ものも思わず吹き出した。
その夜、一緒に飲みに行き与太者とダチになった。

それ以来、地回りにも顔が利くようになり、ここらの賭場ではいい稼ぎができるようになった。
今夜は軽く小遣いを稼いでソープで3輪車の予定だった。


さすがに藤井はどうにも我慢しきれなくなり、後の女にあやをつけだした。


「ちょっとぉあんた!さっきから、な〜にジロジロ人の手牌を覗き込んでのよ!集中できないじゃない。こんなんじゃグリーンになれないわまったくもぅ!!」

藤井はバイセクシュアルである。ドスの利いたかん高い声におねぇ言葉。
そして体格はトドのような迫力。

常人であれば、大概逃げ出す。だが女はまるで聞こえなかったように煙草をふかしだした。


「モルダー。あなた疲れマラなのよ」

囁くようにつぶやいた。
藤井を見つめながら、無表情であわてる風もない。
明らかにからかわれている。


藤井は顔を真っ赤にして激昂した。

「ん、んまぁっ!なーんて下品なビッチなの!!それにあたしのマラはマラ元気ビンビン物語りよっ!!それにあたしはモルダーなんて名前じゃないわよ!」

藤井は卓に向き直すと、カンチャンを嫌って四索を切った。

「お、でたか。ロン!12000」

「げぇっ!張飛!!」

ノー警戒だった上家からのロン。
この場は皆ヒラで打っている(イカサマなし)。

これは…藤井の単純なミスだった。テンパイ気配、捨牌の濁りを感じ取れなかった。

こいつのせいだ。後にいるスカリーに似たビッチ女。
誰かの差し金だろうか。罠?そんな馬鹿な…。

「んもぉ〜;ファッキン詰もばっか!グリ〜〜〜ンになれないわぁ…」

親番を飛ばされ、どんよりと肩を落とす藤井。

後をむいて女を睨むと
女は藤井を見て心無しかうっすらと笑みを浮かべている。

「モルダー。あなた振り込んでるのよ」

そう言われて藤井はカーッとなった。
元来、激しやすく冷めやすい質ではあるが、こんなビッチに舐められたままではオカマが立たない。

藤井は頭を掻きむしりながら、怒りで発狂しそうなくらい震え上がった。


南4局。

藤井はもはや怒りで我を忘れていた。
勝負なんてもーどうでもいい。この女、絶対泣かす。

くぁwせdrftgyふじこlpってなぐらい、▲×○XZなことをしてやる。
一晩中苛んでやるわ!

ふふふ…。あたしのお仕置きはと〜〜ってもグリーンなんだから。
▲木馬にデxルドに鞭に蝋燭、浣腸etc…。

女に生まれてきたことを後悔させてやるんだから!

そう考えながら打っていると、何やら染手になってきている。
ワンズのチンイツ。チンコのイチモツの略ではない。
同種の牌で成る手役。清一色(チンイーソー)である。

しかもドラの一萬子がアンコってるし。下手すりゃ倍マンどころではない。

テンパった!6面待ち。

「リーチ!」

まだ、12巡目。これはもらったわ!!グリーンよ!グリーンだわ!
藤井はそう思った。

そして次の瞬間、目を疑った。

なんと己の河に上がり牌の九萬1巡目で切っている。
怒りに我を忘れて適当に切ったのだ。それから、ムダヅモなしでつもってきたのだ。

「クックックッ……」

その声に思わず後を振り向いた。

女は笑いを堪えながら云う。


「モ、モルダー。あなたフリテンこいてるのよ(笑」


そして対面が藤井のツモ切り牌を見て牌を倒す。


「ロ〜〜ン!1000点のみ(笑」

「グリィイイィィィイイィイィイインンン!!!!」


藤井は思わず奇声をあげて女に襲いかかった。


あ、オチがねぇ。

疲れてるのは俺だったわ(笑。

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

立ち食い蕎麦屋にて



いつもの食堂に行って蕎麦の二枚盛りを頼んで席につく。
ひとつ席を空けて蕎麦を食ってる若いリーマンが、ズズーッとでかい啜り音をあげている。

非常に不快な音だ。音を出して食べるのが美味いと考えている人も多いだろうが、
全否定はしないまでも、気に障るぐらいの音を立てて飯を食べるというのは如何なものか。

この男に妻や恋人がいるとしたら、どう思っているのだろう。
ガツガツと食うのは時と場所によりけりだが、いいと思うのだ。
友人たちと囲むバーベキューで、ゴクゴクとビールを飲み、ガツガツムシャムシャと肉を食う。
これは美味しい音を出して食欲を増進させるしTPOに適っている。

啜り音は誰しも麺類を食べていれば出るのだが、あまりにも耳障りで不快な音だったので食欲が減退した。
ちょっと大きい程度だったら気にもしなかったろうが、さすがにひどかったのである。

食事をするときの咀嚼音が生理的に嫌だと言う理由で離婚した女性がいたが、少なからず食事の最中の「音」には注意したほうがいいだろう。
こいうのは気になるともうどうしようもなく気になるものなのだ。
異性に嫌われた理由がわからない時は、食事の時はどうだったかということも考えてみるといいかも。

特に世の男性諸君は、嫁に彼女に友人と食事をするときはテーブルマナー以前に「音」に注意すべし。
それだけで品格を貶める場合もあるからね。
豪快で男らしいとか馬鹿げた幻想は抱かないほうがいい。

狭い店内で憚らず大音を立てて蕎麦を啜るという行為はお世辞にも格好がいいとは言えない。

あまつさえ、恋人や夫が同じ食卓でくちゃくちゃ、にちゃにちゃと食われたら、例え超絶イケメンだとしても100年の恋も冷めるというものだ。爪楊枝もまたしかり。人が食ってる側で爪楊枝でにちゃにちゃとされたら食欲も失せてしまう。
立ち食いだから関係ねえだろと言うだろうが、どこにおいても同じであろうと思う。

昔のドラマで名古屋と東京の下町の若い恋人同士が、親同士のいがみ合いで結婚が難航するドタバタ人情劇があったが、
名古屋人は「音」をたてて食べるのは最大のマナー違反であるとして、東京下町の家族は「音」を出して粋に食べるのが江戸っ子でい!とノタマウ。

名古屋もかなり偏頗な土地柄だが、これは名古屋の家族に1票入れたいところだ。
自分も外食で麺類を食うときは少なからず音には気をつけている。
育った静岡でも音を立てて食うというのはあまり記憶がない。
子どものもぐもぐとかは可愛らしく微笑ましいのであるが。

ラーメンをいきおいよく啜る人でも音をあまり出さずにつるつると食べている人がいるが、
ああいうのは見ていて感心する。

気持ちの良い食べ方は、さらに食事を引き立てると思うのだ。

我らが藤井さんの食べ方を見ていて驚いたのは、ほとんど無音で食べることだ。
リリース音がしない。まさに神業である。

できる男はこーいうところから違うわけですよ。
そこでまたぶち切れですよ。

ま、どーいう食い方しようが勝手は勝手だが、少なくとも食べ方で人を不快にする音を出すのは、その人にとっても損である。


食事の最中の音だけで人格を判断することはできないが、少なくとも判断材料にはされてしまう。
お互い気をつけましょう。つるかめつるかめ。

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武蔵の件




最近、お気に入りの大河ドラマ黒田勘兵衛を観たあとに、宮本武蔵を観た。

黒田勘兵衛は10年くらい前に吉川英治の黒田如水を読んでいたのだが、
かなり地味な話だったので記憶も曖昧でよく覚えていない。

岡田准一が主演なのだが、滑舌に難はあるもののなかなか好演している。
二枚目すぎる勘兵衛なのだが、表情の作り方など年相応に熟練しているように思う。
さてこれからどう成長していくのかわからないが、アイドルグループ出身にしては骨のある演技する一人ではあるかなと。脇を固めるキャストもさすがにいい役者を揃えているし、竹中直人の秀吉もさすがに巧い。
陣内の宇喜田の眼がまるで人形のように真っ黒でびびった。すげぇ眼だね陣内。
岡田准一は時代劇映えする二枚目でやはり絵になる。
若かりし真田広之にちょっと似ているなと思うが、さてこれからどうなるか。

そして木村拓也演じる宮本武蔵。
うーん…。キャスティングそのものに無理がありすぎるのと、
尺の関係もあるのだろうが、脚本の時間軸がでたらめで萎えた。
清十郎相手に二刀とか…。改悪にもほどがある。

木村拓也は、やはり木村拓也の演技しかできず何をやっても木村拓也でしかなかった。
彼もそこらへんは十分にわかっているとは思うので気の毒だなとは思う。
顔つきもつるっとしていて、武蔵の持つ狂気が全然感じられず、ただの浪人にしか見えない。
時代劇はちと無理ではないかいと、前の武士の一分を観て思ったが、今回は確信に変わった。

三船敏郎、萬屋錦之介の武蔵のイメージを超えずとも、違った武蔵を見せられれば良かったのだろうが、やはり配役に無理がありすぎる。
これは木村の責任ではないだろう。能力のない者を起用した決定権を持つものに責任があり、なんでもかんでもネームバリューでごり押しのスタンスがテレビドラマの衰退に拍車をかけたのではないかと思う次第。

多分、この先も木村拓哉でしかない演技を続けるのだろうが、それはそれで仕方のないことだろう。
それで食えてるのだから、まぁ大したものだ。どこかでまた一皮剥けるのだろうか。
断っておくが木村拓哉自体は嫌いではない。ただ時代劇とかは向いていないというだけ。
あとBGMもひどかった。監督が誰だか知らねーが極めてセンスねーなと思う。侍チャンプルーじゃねーんだからさ。
キムタクはさすがに運動神経はいいようで殺陣とかはそこそこ見栄えがよかったけどね。
あと西田敏行の演技は素晴らしかったぐらいの印象。

というか、もう宮本武蔵をやるのであれば、晩節の武蔵を描けばいいやんと思う。
短編で藤沢周平も晩節の武蔵を描いているが、あっちのほうがよっぽど面白い。
それかバカボンドで丁寧に描かれていた、開墾の話とか。
吉川武蔵は既に数えきれないほど映像化されているのだから、小次郎対決の話はもうお腹いっぱいという感じ。

晩節の武蔵だったら、老齢のいい役者はいっぱいいると思う。
これもまぁ素人だから好き勝手言えるわけであって、関係者で事情に精通してたら言えないわな。
大人の事情が色々あるんだろう。

宮本武蔵って食材に例えるなら、レシピをかえていくら調理してもなかなか美味しくならない困った食材だ。


さて宮本武蔵という人物を評価するに当たって、「剣豪」とするのか「剣聖」とするのか、甚だ迷う。

剣豪列伝によればやはり武蔵は剣豪という枠に列挙されている。
では何故、時代の寵児たりえた天才剣士佐々木小次郎は名が挙がらないのか。
巌流島での決闘は一説に、武蔵50歳 小次郎29歳とあるし、実際もっと歳が離れていたのだという説もある。こうなると真実は想像の域を出ない。

武蔵は剣豪でも間違いはないのだろうが、晩節の人間臭さ、いわんや立身に至っての貪欲さなど、
およそ剣豪というには、圧倒的に生臭いものを感じる。剣豪にはもっとこう人間離れした趣があって然るべきだと考えるのは無粋だろうか。そこがまた魅力の一つではあるだろうが。

武蔵の剣は天才の剣であり、武蔵ただ一人の剣である。
誰も真似できない武蔵だけが有することが許された豪壮な剣術。
故に武蔵の剣は流派として完全に体系づけられていない。

剣聖とすると、やはり既に柳生宗厳が天下に聞こえた一人であったり、その師、上泉信綱の名声が先に来る。
または塚原卜伝や富田勢源、伊東一刀斎、鐘巻自斎等々。
なるほどこれらの先人の名には、不思議な韻が含まれているようで、凡百な自分にはまるで人智を超えた存在であるかのごとくその名が響くが、武蔵の名がその域に達するには時が足りず、彼らに備わっている品格にはいささか乏しく感じられる。
これは穿った固定観念とも言えるし、戦後の吉川武蔵のイメージが定着しているからかもしれないが、上記に列挙した先達よりも親しみ易いのだ。

結局のところ、名声とは人が人へ口伝しながら作り上げられるものである。
通信手段がない時代に情報は口伝のみ。となると、噂に尾ひれがついて神格化するのは必然。
5人斬りでも100人斬りとかになるやもしれぬ。

武蔵にすれば、あと30年ほど早く生まれていればと大いに悔やんだのは間違いないとこだろう。
皮肉にも戦後の庶民人気、ネームバリューは圧倒的に武蔵が上であるのだが。

ともあれ1979年に起きた朴正煕暗殺事件の「銃口の時代」が終わりを告げたように、
武蔵の時代の「剣の時代」も緩やかに幕を閉じていく。武蔵は既にその到来を予見として感じ取っていたに違いない。

一時期色んな書物を読みあさって色んな角度から武蔵を眺めてみた。
歴史的見地からも考察してみたり、勝手な空想を抱いたり。

吉川武蔵の歩んだ道は、「剣」の道である。
そのストイックな生き方が庶民にはたまらなくドラマティックであり、日本剣劇ものの十八番となった。
しかし他者の作品には、違う性質の武蔵も数多く描かれている。
武蔵は実はかなり豪奢な色狂いであったとかの説もある。

結局、武蔵はどのような人物だったのか。
それは既に憶測でしかないが、司馬遼太郎は真説宮本武蔵で武蔵に会ったという老爺に話を聞いている。
これは司馬の創作を入れないノンフィクションで語られていて、武蔵という人間にかなり肉薄しているように思われて興味深かった。

が、ここで思うのだが、実際に生きている人間のことでも我々はどれほどわかっているのだろうか。
結局、互いに見せる顔は、人が持つある一部の側面でしかなく、ほとんど主観による決めつけから始まる。
隣人、知人、同僚、家族、兄弟、親戚、恋人、妻や息子や娘…。
自分に最も近しい者のことでさえ、わかっているのかと言われれば、答えはNOだ。

極論を言えば、本当のところは本人しかわからない。わかるはずもない。
武蔵はこういう男であった〜と言われても、それは会ったその人の印象でしかないし、その時の武蔵の有り様もまたその場その場において違ったであろう。どれも断定の憶測でしかない。

人が人を伝聞によって創りあげる。
だからドラマができる。

しかして、まったくの他人であり、既にこの世にない人を勝手な想像で解釈して決めつけるのも、故人にとってはかなり失礼な話ではあるかもしれない。

草葉の影から「えー?俺そんなこと言ってねぇしやってねぇよ」とか思ってるかもしれないね。

ま、それをいっちゃあ話にならないし鍋も蓋もない。
しかもれっきとした武蔵の研究機関もあるのだから、別にケチをつけるわけでもなく。
当然、人が知り得ない事実もまだたくさんあるのだろう。
我ら素人は想像して盛るから楽しいのである。

というわけで野暮はこの辺で終わらせよう。


武蔵と藤井。これを書いてみたくなった。

何故か心地よい響きではないか。
時代は違えど、傑出した英傑が時を超えて対峙する場面を思い浮かべただけでワクワクしてくる。

ほんの少しだけ書いてみることにしたが、例によって尻切れトンボである。
そこはご勘弁願いつつ始めてみよう。


1624年(寛永元年)。

江戸幕府は既に徳川三代将軍家光の代になっている。
既に大きな戦もなく世の見かけは平定そのものであった。


この年、宮本武蔵41歳。
伊織という13歳の童を養子としている。

その2年後、播州明石藩主・小笠原忠真の元へ近習として出仕して、二十歳で家老になるという驚くべき出世をみる。
後に戦功により加増され、都合4000石の筆頭家老となった。
召し抱えの条件として3千石以上に拘ったとされる武蔵の悲願を、はからずも養子の伊織が果たしたとも言える。
生誕の地と言われる播磨で、養子の立身を見ていた武蔵の胸中はどのようなものだったのか。
それは誰にもわからない。


この頃、尾張藩に逗留したとされ、円明流を指導したとある。後の神明武蔵政名流であり鳥取藩で創流したと言われるものだ。


40代になった武蔵はいよいよ自己研鑽による剣の完成型を見ていたのかもしれない。
尾張に来た武蔵は、藩主・徳川義直の前で御前試合をすることになり、気合だけで相手を圧倒したと伝えられている。
この頃の円熟味を増した錬磨の剣は、斬るというよりも断つといった究極の極意に近づいていたと思わされる。

尾張の笠寺天満宮東光院の寺書によれば寛永7年(1630)から3年間、宮本武蔵が逗留したとある。
1630年といえば、武蔵47歳である。

縁あって東光院に逗留するのだが、実は笠寺観音で意趣返しにあって逗留を余儀無くされていた。


「お加減はいかがですかな」

具合を見に来た法主が聞くと武蔵は起き上がって、正座をして礼を述べた。

「おかげさまで傷も浅く。武蔵もまだまだ未熟。あのような者達の斬撃をかわしきれぬとは、油断と慢心が招いた結果でござりましょう」

「ほっほっほっ…。武蔵殿のような天下に聞こえた達人でも、やはり人は人。されば、まだまだ高みに至る路は途切れておりませんのう。楽しいことではありませぬか」

「拙者などが達人などと呼ばれるのは身に過ぎたもの。この身もいまだにままならず、かような流転を繰り返しております故…。武蔵これを肝に命じ一層のこと精進してまいりまする」

「まぁそう堅苦しいことは言わずに。その様子では、あと三日もすれば傷も塞がりますじゃろう。それまでどうぞごゆるりと」

「お心遣いかたじけなく。されば今しばらく甘えさせて頂きます」


奥に控えていた小僧が、武蔵に薬湯入りの椀を渡す。
武蔵が一口飲んで苦悶の表情を浮かべると、法主がくすりと笑った。

「ほっほっほっ。良薬口に苦しと言いますよってな。天下の剣も苦いものには弱いと見えますのう」

「いや…。まったく…これは苦いもので」

苦笑いをする武蔵の顔は、いまだ生気を保った青年そのものであった。


それから一週間ほど経った午後。

「たのもうー」


寺内の客殿付近で何やら大声がする。

庭掃きをしていた小僧が、ぱたぱたと駆けつけると一人の侍が立っていた。
侍の出で立ちは、如何にも高そうな袖なし羽織と袴、大小の二本差しを携えて、どこかの名のある武家と思われる。

小僧が一礼をしながら、何用ですか問うと侍はすらすらと身分を名乗り始めた。

「拙者、伊豆国賀茂郡の江川太郎左衛門が陪臣、藤井駿河守のりあきと申すもの。ここにご滞在なさっている作州宮本武蔵殿に何卒御拝謁賜りたく」

はきはきとした物言いと、眼力に圧倒された小僧は困惑した。
法主からくれぐれも武蔵の逗留は口止めされている。

さりとて、この侍にはおりませんと居留守を使っても大喝されそうで怖い。
武蔵とは異質の威容を感じていた。

「これ、お坊。かかしのように突っ立っておらんで、はよう武蔵殿に取り次いでくれい」

小僧はやっと口を開いて、たどたどしく受け答えをした。

「あのう…ここには武蔵様と言う方はおりませんが…」

「なにっ!?」

藤井と名乗る侍は気色が変わった。
その声色に小僧がひるむと、すぐに怒気を抑えてにこやかに笑う。

「そうかお坊。ではこうしよう。ご滞在中の某殿にこの文を渡してくれまいか。無論、武蔵殿にではなく、某殿にである。渡してくれるだけでいい。それでわからぬなら某は大人しく帰ろう」

「はぁ…渡すだけですね」

「それで結構」


小僧はおどおどしながら客殿の中へ入っていった。

藤井駿河守、このとき37歳。

いまだ童貞であった。

【終】



結局このオチしかなかったよ藤井さんw


テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

北斗の世界で(空想外伝)




人類史上最も愚かな選択によって地球は病んだ。

祈るべき神もいない世界。
そんな世界で生まれたもの達の未来は?

世紀末に起こった核戦争。
すでに時は移り、過去のものとして語られるようになっている。
が、いまだにその傷跡は深く世界中に爪痕を残していた。
傷ついた地球は人類に対して贖罪ともいうべき猛威を幾度となく震う。
異常気象による災害は文明を飲み込み、人類が培ってきた技術や文化は天の怒りにより剥ぎ取られた。

わずかに残ったエネルギーや資源を、特権階級にいる者達はこぞって独占した。
その者達はそれぞれの地で独裁者となり、国家ともいうべき独立した自治区を築いている。


かって、この世の地獄とかした世界で拳のみで人々の魂を救済した男がいた。
世紀末救世主、その名はケンシロウ。
人々の心は荒み、暴力と富のみが支配する世界において、いまだにケンシロウの名は語り継がれていた。
一子相伝の北斗神拳を操る無敵の男。すさまじいほどの哀しみを背負って戦い続けた男。
しかし今となっては風化した記憶の中の残骸でしかない。

救世主はもういない。
すがるべき力は伝説の救世主でも、神でもなかった。
ただ、独裁者達の慈悲にすがって生きる力なき人々は、明日の希望も見えない。

そして人々はさらに新たな脅威に恐怖していた。




■プロローグ


最果ての荒野を一台のジープが車体を上下させながら走っている。


「腹ぁ…減ったな」

後部座席で銃を脇に腰を沈めている男がぼやくと、ガコンッ!と車体が浮き上がった。
その度に舌打ちをしながら、座るポジションを入れ替えている。
舗装路ではない痩せた土の荒野。

見渡す限り岩ばかりで、およそ人が住んでいる気配もない。
ターバンを巻きサングラスをかけた初老の男が運転をしながら地図を開く。

降りかかる砂塵を払い位置を確認する。羊皮に記された赤茶けてはいるが、緻密な地形図が描かれている。

「あと2時間ほど行くと村があるはずだ…」

初老の男は地図を助手席に置くと、シフトチェンジをしながら、胸のポケットからよれよれのソフトパッケージの煙草を取り出した。
コンソールの火種を咥えた煙草に擦り付けて火をつけると、風にあおられて火種が飛散していく。

後部座席に飛んでくるそれを手で払いながら、若い男がぼやく。

「あと一日か…。クロノスの先遣部隊に出くわさなきゃいいけど」

「奴らの補給路からは外れて走ってるから大丈夫だとは思うが…。おかげでタイヤがオシャカにならんか不安だ」

「スペアもないし、ここで立ち往生とかまじ勘弁だ」

「まったく、だ」


初老の男は言葉を切ってアクセルを踏み込むと、車体の上下はさらに激しくなり、後部座席の荷物が若い男とともに宙で踊りだした。
地平線はまだ遠くに続き、ぼんやりとした太陽がゆっくりと沈んでいく。
この世の果てまで続いているような、そんな不安を感じさせる景色だった。


■ベーネのマリア

村が見えた。
完全に陽が落ちるまで間があるのだが、ひっそりと静まり返っている。

漆喰で塗り固められた壁とレンガ造りの建物が、通りを挟んで建っていた。
貧しい村でそこかしこの壁が崩れている。
以前に襲撃を受けたの傷跡が残っている。

しかし廃屋とまではいかず、かすかに生活の跡が見て取れる。
しかし窓や扉は固く閉ざされたままである。


「おーーーいっ。誰かいないのかー」


二人はそれぞれに呼びかけながら村の中心部に進んでいく。
中央広場には小さな井戸蔵とくみ上げ式のポンプが見える。



「ケン!」

何かに気づいたように初老の男が小銃を構えた。
ケンと呼ばれた男も、素早く重心を低くして9x19mmパラベラム弾を込めたサブマシンガンを構える。

小屋から人の気配を感じる。

初老の男が井戸の脇の小さな小屋を指しながら、左から回り込むようにと指示をする。
俺は右から行くと合図をした。

バリケードポジションを取りながら、小走りに小屋の手前に辿り着くと、左右に分かれてドアの左右に張り付いた。

ドアノブに手をかけて確認すると鍵はかかっていない。
初老の男が目で合図する。


「いくぞ」

「オーケー!」


次の瞬間、二人は小屋の中へ転がりながらなだれ込んだ。
二人の銃口は部屋の中心部に向けられている。


「動くな」

巻き上げた埃の膜が部屋中に舞い上がる。

薄暗い小屋の奥に人がいた。

年端もの行かぬ3人の子どもと女だ。
子どもたちは怯えて女にしがみついている。

「なんだよ…。ガキと女か」

ケンが安堵のため息を漏らしながら銃口を降ろして立ち上がる。

初老の男はまだ銃口を下げずに立ち上がった。


「女と子どもだからといって油断すると早死にするぞ。まずは銃をもってないか女を調べるんだ」

「ち、うるせぇーなぁ。こんな時までセッキョーかよ…」


ケンはぶつくさ言いながら、部屋の隅に踞っている女の腕を掴んで引っ張り上げた。

「あうっ;」

「お姉ちゃん!;」

「わぁぁ〜〜ん;」


子ども達が一斉に鳴声を上げた。

ケンはキンキン鳴り響く鳴声にたまらなくなって指で耳に栓をした。
女の両腕を引っ張って武器を持っていないか調べ始める。

初老の男は銃口を向けながら、気を許さずに構えている。

褐色の肌に黒い髪と黒い瞳。
衣服は汚れてボロボロだったが、若く美しい女だった。
女の細かい息づかいが伝わってくる。

ケンは顔を赤らめて女の手を離した。

「女は丸腰だ。心配ねえよ」

呪縛から開放されると、女はキッとケンを睨んで子ども達に駆け寄った。

「大丈夫よ大丈夫。心配しないで…」

泣きじゃくる子どもたちを優しく抱擁しながら、ケン達を睨んでいる。


「ダン…。そろそろ銃を降ろしたらどうだい」

ケンに言われて銃口をゆっくりと降ろしたが、まだ警戒は解いていない。
ダンと呼ばれた初老の男は慎重すぎるほど慎重だった。

信用という言葉ほど曖昧なものはない。
心許したものに背中を向けた瞬間、笑いながら撃たれた奴らも見てきた。

ダンはそんな世界で生き抜いてきた男だった。


「あんたら、一体ここで何をしている」

ダンがそう聞くと、女はダンを睨みつけて無言のままだ。
さすがに怯える子ども達を見ると、胸がちくりと痛んでくる。

大笑いをしながら、ケンがダンの肩をポンポンと叩いた。

「あ〜らら。嫌われちまったなぁおっさん。ど〜れここはひとつ俺が…」


そう言ってケンが女の肩に触ろうとすると、ピシャリと手をはねのけられた。

「さわらないで!」

「ってぇ…!?なんだよ…」


はじかれた手を擦りながら、不満そうに口をとがらすと、今度はダンがケンの肩を叩いて笑う。

「はっはっはっ。嫌われたのはどうやら俺だけじゃないようだな」

ダンは銃を立てかけて、女の前でしゃがんだ。
理解を求めて話し合うときは目線を同じにするのが礼儀だ。

警戒を解かない女に対して諭すように語りかけた。

「お嬢さん、驚かせてしまってすまなかった。俺たちは帝都に行く途中の行商人でね。怪しいもんじゃない」

「…商人?」

「商売上、はったりも必要でね。どれ…」

ダンはターバンを取ってサングラスを外した。
そこには意外に若く彫りの深い顔が現れた。目尻の皺が何とも優しく人なっつこく見せている。

子ども達はそんなダンの暢気な風貌に安心したようだ。
一番小さい女の娘は笑顔すら見せている。


子ども達に笑顔を向けると、振り返ってどうだと言わんばかりにケンに目配せをした。
ケンは面白くなさそうに、そっぽを向いて反対側の壁に寄りかかる。

「あなたたち…レイブンの手下じゃないの」

「レイブン?」

「この土地の支配者…。そして残酷な男」


ケンがバンダナを直しながら眉をひそめる。

「レイブン…。聞いたことあるぜ。東地区の独裁者で妙な拳法を使うと言われているな。相当にいい性格してるらしい」

「悪魔のような男…あいつは人間じゃないわ」


女は唇をかみながらうつむいた。
はだけた服から左肩がこぼれ、背中に近い部分から黒い刺青が見えている。

「これは…デロスの烙印」

思わずダンが呻いた。

デロスの烙印。
その烙印を焼き付けられたものは一生奴隷で過ごさなければならない掟。
烙印を押されたものは、その所有者である主人に対して絶対の服従を誓わなければならない。

人として生きていくのに、最も辛い階層にいる者達が「烙印の者」と呼ばれていた。
子ども達も見ると手や腕に烙印を押されている。
奴隷商人から売られる時に印としてつけられるものである。


「あんた…逃げて来たのか」

ケンが腕組みをしながら苦い表情で聞いた。
女は無言でうなずきながら、大粒の涙を流した。

弱い者は死ぬか強い者にかしずくかどちらかしかない。
おそらく大規模な奴隷狩りで運悪く捕縛されて奴隷にさせられたのだろう。

しかもこんな小さな子ども達にまで…。

ケンは拳を震わせていた。
理不尽に虐げられる理由はなんだ?

弱いからだ。弱いことが悪い。弱いから死ぬ。
そんなことは幼少の頃から痛いほどわかっていたが、許せなかった。

弱い自分も、人を家畜のように隷属させている支配者もだ。
この子達をこんな目に遭わせる支配者ども、どいつもこいつもぶっ殺してやりてぇと思うが、ケンにはそんな力はない。

圧倒的な力を有する支配者達は一騎当千の化物である。
挑むどころか、対峙することさえ適わぬだろう。

「くそぅ…」

ダンは立ち上がって女の手を取りながら笑顔を向ける。

「お嬢さん達、腹が空いているだろう?我々と一緒にディナーでも如何かな?」

ひょうきんなダンの言い回しに重くなった空気が軽くなる。
張りつめていたケンも思わず吹き出して笑った。

女と子ども達もようやく安堵の表情を見せていた…。


【シリアスは疲れるので続くかどうかは気分次第…】

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

藤井伝3

)


藤井さんは有頂天だった。
そりゃもう天にも昇る気持ちさシェケナベイベェ。
横に並んで話しかけられるたびに、くるくる回って腰が抜けそうになっている(精神世界)

端から見ると美女と野獣どころか、ヤクザが若い愛人を連れて歩いてるとしか見えないのが悲しい。
しかし彼女は気にもかけないで、笑いかけてくる。

ほんまええ子や;ぐっすん。

「ここじゃあなんだから…どこか茶店にでも…」

とりあえず藤井さんがリードする。

「はい」

大きなお目目をパチパチさせて、まさに天使の如く微笑み彼女。

藤井さんは目を合わすことができずに、ずんずんと前を歩く。
早足なので彼女はちょっと駆け足だ。

それに気づいた藤井さん。

「あっ、わりぃ…。歩くのが早かったかな」

「い、いえ…。でも男の人って歩くの早いんですねぇ」

「いや俺がいつもの調子で歩いちまって…。なにせ女と出歩くなんて初めてだから…」

「あたしも男子とこうやって出かけるなんて初めてなんです。だからどうしていいか…よくわからなくて」

「意外だな、あんたみてぇな可愛い子が…。つきあった男とかいねぇのかい?」

「いえ…彼氏とか全然」


「うほっ」
↑藤井さんの心の声

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↑現在の藤井さんの精神世界


ウ・ホ・ッ・じ・ゃ・ね・え・よ

とは天の声。
何をイチャイチャしてやがるんだと俺怒る。

二人はなかなかいい感じ。くそぅくそぅ、うんこー。
そんな俺の憤りを感じつつ涙涙のアフリカちんぽ。
万年女日照りで枯れそうだ。あたしゃ入れ歯で歯が立たない。

俺の魂の慟哭なんざ藤井さんには届かないんだよなこんちきしょう。
羽化登仙の桃源郷で桃を盗む悟空の如く顔がだらしなく緩みきっている。


二人はレトロな門構えの茶店に入る。
薄暗い店内でカウンターで人相の悪い髭面のマスターが藤井さんを睨む。

「なんでぇ藤井か。まーだ生きてやがったのか…」

「相変わらずひでぇな。そう簡単にゃくたばらねえよ」

「おめぇらみてぇなハングレのガキどもが、このへんで悪さばっかしやがるから、店がちっとも繁盛しねぇ。早くくたばってくれよまじで」

「はいはい…。そうやって客に悪態つくのをやめりゃあ繁盛するのよ」

「抜かせ糞ガキ。誰が客だ誰が…って…」


藤井さんの後からついて来た恵美を見て驚いた。

マスターは、背を向けて隣にいたバイトのウェイターとひそひそと何やら話しだした。

「おい…、何年だ。何年くらう」

「そうですねぇ…未成年の誘拐と監禁で3本はくらうんじゃないすか」

「とりあえず警察に電話か、それか興奮させないように説得するか…」


その話を聞き耳たてて聞いてる藤井さん。
拳を握って身体を震わせる。

「うわっ!!」

さすがのマスターもその形相に一瞬ひるむ。

ぜーーんぶ聞こえてんだよバカヤロウ!




二人は奥の席に座ってコーヒーを頼んだ。
マスターとウェイターが親指を立てて応援しているふりをしているのが超うざい。

「…ったく、ゴメンな変人ばっかで。ここのマスターは腕はいいのにあの通りでよ。いっつも客と喧嘩ばっかしてっから客が少ねぇんだここ」

「クスクス…。いえ、藤井さんのお知り合いって楽しい人が多いんですね」

「楽しい?馬鹿ばっかさ。力の加減ができねぇ奴らばっかでよ。俺も人こた言えないけどよ」

「純粋なんですよきっと」

「純粋ねぇ…。はっはっ、悪いことばっか考えてるってことでは純粋かもな」


なんだよ藤井さん。ちゃんと普通に会話しできてんじゃん。
心配して損しちゃったぜ。オラやだもうやだ。


それから二人は、趣味や学校のことやらで盛り上がったのさ。

「そういや…俺の携帯を教えてくれたクラスメートって、恵子さんの友達かい?」

「あっ…いいえ。彼女とはあまりお話もしたことなくて。どちらかというと派手目な人だし」

「えっ、そうなのか。じゃぁいきなり驚いたんじゃないの」

「ええ…。彼女…安田さんはどちらかと言うと、わたしみたいなタイプは苦手のようだし。いきなりメモを渡されて驚きました」

「そりゃあ…。すまんかった。俺のダチが変に気をきかせちまってな…。そのぅ…あんとき電話くれって言ってたから…」


藤井さんは真っ赤になりながら言葉をちぎりながら話す。

「わたしも、いきなり電話とか失礼って思ったんですけど…どうしてもあの時のお礼をちゃんと言いたくて。本当にありがとうございました」


頭をぺこりと下げると可愛いつむじが見えて、しなやかな黒髪の一本一本が鈍いタングステンの光源に照らされて宝石のように反射している。

かっ、可愛い。

「い、いや、ほんと俺なんもしてねぇし」

「いえ、きちんとお礼をしておかなくてはけじめがつきませんし」

「えっ?けじめ?」


恵美の言葉とともに敷居で区切られた隣の席でガタッと立ち上がる音がした。

学ランをきた3人の男が藤井さん達を取り囲む。

「なんだぁ…てめぇらは」

藤井さんはすごみをきかせて威嚇するが3人は動じず、うっすらと嫌な笑いを浮かべている。
みかけは普通の学制で頭髪などもさらさらのストレートヘア。
見かけは不良という感じではない。

しかしその目は侮蔑と悪意に満ちている。
藤井さんが最もきらう目つきだった。

その中の眼鏡をかけた秀才っぽい一人が口を開いた。

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「安全確認?なんのことだ一体…」


意味不明な言葉に藤井さんが困惑していると、秀才眼鏡は恵美の側に寄り添うように立った。

「副会長、お疲れさまです」

同時に他の二人も恵美に向かってかしずくようにお辞儀をする。

恵美はまるで女王のように優雅に頷いた。


「けっ、恵美さん、こりゃあどういう…」

藤井さんはわけがわからない。
さっきまで天使のように微笑んでいた恵美が一変している。

「藤井さん…。あなたは去年、聖林高校の3年を一人病院送りにしたことを覚えてるかしら?」

「去年…。あぁ…確か帰り道の女子中学生を襲おうとしてぶっとばした奴は覚えてる」

「ぬけぬけと…。しかも兄さんが強姦未遂などと嘘をならべて陥れ、あまつさえ病院送りにするまで殴る蹴るのひどいことを…!この、けだもの!!」

「なっ!?俺は嘘は言ってねぇ!それに殴ったのは顔と腹に一発ずつだぞ。てか、あんた長女だったんじゃ…」

「うるさいっ!あんたみたいな不良の言うことなんざ信じられるもんか!!兄は兄でも義兄よ腹違いの。可哀想にあれから兄は強姦魔のレッテルを張られて廃人のように引きこもってしまった…」

「……」

「ずっと近づく機会を狙っていたのだけれど、チャンスが作れなくて不良の吹きだまりをうろうろしていたら、はからずも敵に助けられるとは、これも運命って奴かしらね」


藤井さんは頭の中がぐるぐる山手線のように回っている。
さきほどまでの幸せな時間はどこいった。

「じゃそれが目的で俺に近づいて…。あ…まさかアントキもグルってことか!?」

「ああ…あのチャラい男。あいつの父親はあたしのパパの系列会社で働く三下でね。クビをちらつかせて脅したら、快く協力してくれたわよ」

「ぐっ……!?」

なんと唯一の親友だと思っていた奴にも裏切られた藤井さん。
天使だと思っていた初恋の相手がこんなビッチじゃ浮かばれない。
気の毒な藤井さん。可哀想な藤井さん。
つーか、ざまぁあああああああ!!!


「さぁ一緒に来てもらうわよ。そしてあんたのずたずたになった姿を兄さんに見せて立ち直ってもらうのだから」

「…女をレイプするような屑が立ち直ってどうしようってんだ」

「まだそんな嘘を…。兄さんは頭がよくて優しくて女子の憧れだったのよ!そんなことするわけないだろぉっ!!」

「盲愛ってやつか…。兄弟揃って救えねぇ…」

「くっ;だまれこのっ!!」


恵美は冷めてしまったコーヒーの中身を藤井さんにぶちまけた。
アントキが貸してくれたスーツが台無しだったが、もうどうでもいい。

藤井さんは静かに立って入口に歩いていく。

「ここじゃぁ…店が壊れる。表に出よう…」

怖いほどに落ち着いた口調にすごみが出ている。
側近の3人もさすがに緊張した面持ちで身構えた。



「マスター…ちょっくら出てくるわ。あとで金払いにくっから」

「けっ…。ほんとにてめぇは女運がねぇなぁ」


苦笑いをしながら、呆れた様子で藤井さんを見送ると、側近の一人が迷惑料だといって2万円を置いていった。

「最近のガキは金持ってやがるなぁ…。やる気なくなったし店しめてパチンコでもいこっと」


マスターも屑だった件。


藤井さんと恵美達は町から少し離れた空き地に着いた。

「藤井!この三人はね、こう見えても空手、ボクシング、柔道部のインハイ候補よ。あんたがぎたぎたにされて土下座あするまで絶対に許さないから」

「……」


恵美の罵倒を無言で受ける藤井さん。
哀しそうな目をして静かに立っている。

「お前たち!いきなさい。藤井を倒したら私を好きにしていいわよ」

「うすっ!」

3人とも学ランんを脱いで、シャツ一枚となっている。
なるほど、いい体格をしている。学ランの上からはわからなかったが、明らかに戦う筋肉を有した身体だ。
見るからに強そうである。

「けやぁああっつ!!」


空手使いとおぼしき短髪の男が、するどい気合いとともに蹴りを放ってきた。

上段回し蹴り。
膝をコンパクトに折りたたみ、鋭角に上から振り下ろされる蹴りで従来の空手の直線的な動きではない。

藤井さんは、それを手前に受け流すが、身体を回転させながら、すかさず二の撃が藤井さんの後頭部を襲ってくる。
すっと身を屈めてそれも受け流す。

次はするどい突きだ。遠慮のない腰の入った連撃で、顔面を容赦なく襲う。
明らかにフルコンタクト、それもスーパーセーフをつけて鍛錬をしているものの動きだ。
目標の先を打ち抜くようにして拳を突き出していく。
普通に顔面をうちぬける空手家はそうはいない。
空手家の拳は凶器だからだ。
下手をすれば相手を死に至らしめることもある攻撃を躊躇なくだせる奴は強い。
これは試合ではなく死合だった。

藤井さんは相手の攻撃を受け流したり交わしたりして、自らは攻撃をしかけない。
空手家の男は少し息が荒くなっている。
そうこうしているうちに、とうとうへばってへたりこんでしまった。

藤井さんは一撃もダメージを受けていない。
空手家もダメージをくらっていないのだが、藤井さんとの力量の違いを悟ってしまったようだ。
明らかに気力が萎えている。
さすが藤井園瞑流の相伝者だ。すげえよ藤井さん。

恵美は逆上しながら空手家に向かって罵詈雑言を履いた。

「なっ;なにやってるの全国で準優勝したくせに、こんな不良も倒せないの!この役立たずのインポ野郎!!」


百年の恋も冷める恵美の豹変ぶりだ。
あの可愛いお口からよもやそんな下品な言葉がでてこようとは…。

「もうやめようぜ…。意味ねえだろこんなこと」

「なっ、なになになに?何かっこつけちゃってんの眉無し海坊主のくせに!きめーんだよ、あからさまにあたしに欲情してたくせに!強姦したのはお前でしょ!それを兄さんに罪をなすりつけて…」

「…俺ぁ、真実を言っただけだ。信じるか信じねえかは勝手だがな」

「もういいわ。後藤、百田!お前ら二人がかりでやっておしまい!」


「あいっ!」

「了解しましたお嬢様」

秀才眼鏡が眼鏡を外してワンツーをしている。
ボクシングか…。

あとは柔道ってことだな。

さっきの秀才眼鏡とつるっぱげの肉だるまが同時に襲いかかって来た。

眼鏡は距離を取りながら左ジャブを放ってきた。
スタンダードな構えから察するに…
インファイターではなくアウトボクシングを主体とするタイプだろう。
距離を取りながら、ポイントを稼いでカウンターでダウンを狙う。

一発一発の重みはないが、それでも喧嘩をした場合一番厄介なタイプがこれだ。
ダメージがちくとくとたまり、一発ノックアウトより危険度が高い。
なぶり殺しという言葉があるが、リンチをする場合には最も最適なスタイルである。
無駄のない動きから、獲物を確実に追いつめるようなボクシング。
この蛇のようなめつきをした眼鏡にはまさしくぴったりだった。

眼鏡がトントンと身体を浮かせながらリズムをとると、話しかけて来た。


「なぁ君。実は僕は喧嘩はしたくないんだよ」

「へぇ、気があうな。俺もだよ。これ以上無駄な体力は使いたくねえんだ」

「勘違いしてもらっては困るな。僕は君を一方的にリンチしたいって言いたいのさ」


シュッシュッと弾丸のようなジャブが藤井さんの右の顔面を狙ってくる。
ボクシングの怖いところは、熟練者のパンチは素人では軌道がほとんど見えないということである。
フックなどは空間からまるでいきなり現れたかのごとく感じるだろう。
喧嘩においてボクシングの怖さは、その見えない軌道との戦いになる。

もちろん藤井さんには通用しないけどね。やっちゃえ藤井さん。


「しゅっうう!!」

いきなりハゲがタックルしてきた。
寝技に持ち込み間接をとる動きだ。

柔道は投げより関節技が怖い。引く力が尋常ではないので懐に身体を預けてしまったら終わりだ。
浴びせ倒しなども屋外で最悪頭を打って絶命に至る場合もある。
元々が戦国時代に組伏して石に打ち付けるところが始まりという柔道。
血なまぐさい殺人技も無限にあり底がしれない。
グレイシー柔術も、前田光世が錬磨しぬいた殺人術を今のような競技体系に変化させて、研鑽の結果今のような洗練されたものにしたのだろう。

と、どうでもいい蘊蓄はここまでにしておいて、めんどいので途中のやりとりは割愛するね。


はげが左脇にまわりこんだところで、藤井さんに肘がハゲの首に突き刺さる。

「ぐえっつ;;」

もんどり打ってハゲ倒れる。口から泡を吹いている。

「こっ、このやろぅあ!!」


眼鏡が身体を揺らしながら、顔からボディにワンツーを放って来た。
高度なコンビネーションブローだ。

しかしそれを藤井さんはパーリングではねのけて、背中を見せる。
馬鹿にされたと思った眼鏡は髪の毛を逆立てて怒り狂った。

「くそがぁああ!!!!!屑野郎がなめてんじゃねえぇえ」

藤井さんめがけて渾身の一撃が放たれる。
くらったらさすがにやゔぁいぞこれは。

ドカッ!!

「ぐっ;あぁ…」

ウラケン。
藤井さんの見事なウラケンが眼鏡の顎を捉えていた。

裏のケンちゃんじゃないよ。
裏拳だよ。

眼鏡はふらふらと踊りを踊るような格好でばたりと倒れた。



「後藤まで…あ、あなた一体何者なの;」


藤井さんの全身から湯気のような煙が見えている。
さすがの恵美も怯えて後ずさっていた。


恵美にゆっくりと近づく藤井さん。
怯えながら涙目で首を振る恵美。

「いやっ…いやこないで!こないでよぉ!!」

泣きじゃくる恵美の肩を抑えて睨む藤井さん。
おいおい、まさかやっちゃうきじゃないだろな。
それはさすがに外道だゾ!


「な、何する気;;やめて離して;」

「……」


藤井さんは、恵子の胸をぐわっと掴んで顔を鼻先まで近づけた。

「い、痛い;やめて…お願い;」

そして吐き出すよう言ったのさ。


「俺は藤井さんだ。さんをつけろよでこ助女」


そう言って、強引にキスをした。
もちろん舌までいれていた。

んぐんぐと長いこと口を吸っていた。

それを見ていた空手家はボッキして前屈みになっていた。

藤井さんはようやく恵美の身体から離れたけど、恵美は呆然として目がうつろ。

う〜〜ン;これはちょっとした犯罪だぞ藤井さん。


「じゃあな」


捨てるような台詞を残して立ち去る藤井さん。
手に残るおっぱいの感触を確かめながら立ちさる姿に漢を見たよ。

初恋破れて山河あり。
しかし男には自分の美学がある。
例えるなら空を翔るひとすじの流れ星。

寂しさこらえて一人行く。
我らの藤井さんここにあり。


数日後──

アントキが東京に引っ越していった。
あれ以来アントキからは連絡はない。


その代わり─

「おーほっほほほ!藤井さん、今日こそ返事をしてもらうわよ!」


藤井さんの男気にまじぼれした恵美が学校に押し掛けて来ている。

実は恵美は超ド級のメンヘラ女で、兄への愛が藤井さんにスライドして狂気とも言える求愛を夜討ち朝駆けで迫ってくる。
兄が歪んで廃人と化したのも、実は恵みの過剰な求愛のせいであったのだ。
伝説の藤井さんの恋の結末はまだ終わらないのである。

ではきりがいいのでこのへんで。

【終】

テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

藤井伝2

)

気になるあの娘から突然の電話をもらった藤井さん。

いきなりのことで頭が暴走モードでてんやわんや。
まず何を話していいのかわからない。
まぁそりゃそうなるのも無理はない。
顔は恐いがなんだかんだでサイチバのチェリーボーイと変わらんのだもの。


「ど、どどどど、どうも;」

「あの…いきなりすみません。ご迷惑でした?」

「い、いいいい、いやいやいやそんなこたねえーし、俺長男だし!」

意味が分からない。どもってとちってとっちらかって。
藤井さんはこれ以上ないほどテンパっている。
例えるなら南四局ラス親で残り4巡。上がればドベからTOPの親の役満をテンパっているようなもの。
頑張れ藤井さん!

「藤井さんは長男なんですか。わたしも長女なんですよ」

「そっ、それはっ、どっつどっどど土偶ですね!!」

もちつけ!それを言うなら奇遇だ藤井さん。


「ぷっ…くっ」

携帯電話の向こうから弾けるような笑い声が響いてくる。
恵美が藤井さんのトンチンカンな受け答えに我慢できずに笑っている。

「ごめんなさい…。でも、藤井さんって…もっと怖い人かと思ったけど…すごく面白い人なんですね。くすくす…」

藤井さんはその笑い声を聞いて、ようやく落ち着いたのさ。
何やら心がほっこりしてきて、自分も何故かつられて笑ってしまう。

”繋がる”想いってこーいうことだね藤井さん。

藤井さんの携帯の連絡欄は家族とアントキ、それによく行くショップぐらいしか登録してない。
だからほとんど携帯なんざ使うこともなかったし、電話がこんなに楽しいものだと感じたことはなかったのさ。
ビバビバ携帯!ビバ携帯!この時代はまだスマホはないのだよ。悪しからず。

とりとめのない話をした後に、恵美が口ごもりながら提案をしてきた。

「あ、あの…次の日曜日なんですが…お暇でしたら私とデートしていただけませんか」

「でっ…デェトぉ…!?」

「あっ、あのあの、お忙しいなら結構ですけど」

やったじゃん藤井さん!っていうか女から言わせてどうすんねん!もっと頑張れ藤井さん。


…いきます

「えっ?すみません、よく聞こえなかった…」

いく!いっちゃいます!!

藤井さんは興奮して叫ぶように声を荒げて返答した。

さすがにびっくりした恵美は、思わず携帯を床に落としてしまった。

ガコン!と鈍い音がして、ツーツーとしか聞こえない。
切れちまった…。


やべぇ;やっちまった…俺って奴はと自己嫌悪。
さすがに引くよなあれは引く…。やっぱり野蛮で下品な男に思われたに違いない;

死にたい;
いや、いっそ死のう。死んで生まれ変わったら白馬に乗ったアンソニーに生まれ変われますように。

さすがにそれは無理だよ藤井さん…。


頭を抱えていると、携帯がぴぴっと鳴った。恵美からのリダイヤル。
まさに地獄から天国。
かろうじて生き返った藤井さん。

「すみませんっ;携帯落としちゃって…。じゃぁOKってことでいいんですよね?」

「もっ、もちろんバブロンっ!」

「じゃあ…」


そこからの会話はよく覚えていなかった。
とりあえず待ち合わせの時間と場所を決めて携帯を切る。

藤井さんは浮かれた。
今なら空だって飛べそうだ。

夢じゃないよな。藤井さんはぎゅ〜〜つと頬をつねってみた。
いてぇ;この痛み別次元。

兎にも角にも瞳キラキラ 胸がキュンキュンしちゃって(キュン♪)

「はっ!」

浮かれてばかりもいられない。

今日は木曜。

まず床屋に行って着ていく服をどうしよう…。


藤井さんは衣装箪笥から持っている服を全部だして考えた。

学ラン以外は、灰色のスエット、ヤクザ風の縦縞の入った上下のスーツと玉虫のシャツ。
今時のカジュアルな服なんぞ一切持っていない。
それ以前に今風ファッションとか皆目見当がつかない。
いまさらFineやGainerを見て衣装を見繕っても、先立つものもありゃしない。
いきつけのショップはマルカワか寅屋ぐらいしかねぇときたもんだ。
密かな憧れはSamurai Magazineのストリート系なんだよね藤井さん。

どうしよう…。

あれこれ悩んでいると、携帯でアントキから連絡が入る。

「どうよ?うまくいったかい。いきなりで驚いただろうが白百合のクラスメートに伝言でお前の携帯を教えて段取りしたんだぜ。苦労したよ」

「…デーとすることになった」

「まじかよ!やったじゃん!!」

「色々世話ぁかけちまったな…。ありがとよ」

「水くせぇな。ダチじゃねぇかよ。じゃぁ頑張れよ」

「あっ、ちょっと待ってくれ!実はよ…相談があるんだ」

「ん?」



日曜日─。

駅前のロータリーの電話ボックス付近で11時に待ち合わせだが2時間も前に来てしまっている。
緊張しすぎてもう5回もトイレに行っていた。

まぁ好きな子との初デートってこんなもんだよね。
君たちも経験はあるだろう。ここは温かく見守ってやろうじゃないか。


藤井さんはアントキに頼み込んで服を貸してもらった。
幸いアントキも細身ながら体格は藤井さんとそうは変わらない。

「いいけど…どんなイメージがいいんだよ」

「イメージ?なんだそりゃ…」

「お気に入りの映画俳優とかいるだろ?真似したいって思うようなファッションってないか?」


藤井さんは自分の好きな俳優を思い浮かべた。
その中でも真似したいような俳優とか…。

思い浮かんできたのは、哀川翔とか…竹内力とか…的場浩司とか清水健太郎とか…。
だめだ;極道っぽい俳優ばっかだし、そもそも若さがない。

それに彼らは坊主じゃねえし…。坊主でかっこいい俳優と言ったら…。

渡辺謙!
だめだ…俺みたいなガキが真似したってあんな渋くはならねえし。
せいぜいが松本ひとしか織田無道がいいとこだろう。

う〜〜ん;誰かかっこいい坊主…

「あっ!!」

いた!かっこいい坊主が。

藤井さんは先週借りて見ていたプリズン・ブレイクを思い出す。

ウェントワース・ミラーだ!

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確か…自分はゲイだとカミングアウトして話題になってたな。
まぁかっこよけりゃどうでもいい。


「ウ、ウェントワース・ミラーっぽい感じでお願いします!」

藤井さんなりのイメージでアントキにお願いする。
まぁ…ちょっとハードルが高すぎやしないかと思うのだが、そこは気合いと根性と浪花節で乗り切るしかないよね。


ということで─
アントキに服を借りてビシっと決めてきた藤井さん。
やはりここはシックに決めるのがいいんじゃないかとアドバイスをもらう。
ネクタイとシャツは親父から借りた。フランネル地のラルフ・ローレンのボタンダウンとダンヒルのネクタイ。
カジュアルなポール・スミスのスーツもなかなかいい感じにきまって…




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…ただのおっさんやん


果たしてデートはどうなるどうする藤井さん!
何が欲しい何がしたい何処にいきたい?

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調子に乗ってる藤井さんだが、このまますんなりいくはずもない。
この後に待ち受ける超ド級のシリアス展開を藤井さんはまだ知らないのだ。うけけけ。
一人だけ幸せにはさせ内臓。

では続きはまた明日!

【終】

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

藤井伝1




高校生時代の藤井さんは、ヨーラン背負って丸坊主だった。

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 ↑©地獄突:高校時代の藤井さん


休日でも詰め襟学ランを着てよたって歩く。
もちろん裏っパリは虎の刺繍のベンクーガー。
ズボンはタクトンのツータックドカンに学校の上履きを履き崩し、ケツの財布は黒ビニールのクリームソーダ。
ちんたらちんたら歩いて流す。

眉毛までそっていたので、街を歩くと誰も目を合わせない。
そりゃどう考えても危ない人ですよね。見た目が菊リンのようなヤクザ予備軍だもん。
だから敵も多かった。近隣の不良どもからはいきなり襲われることもしばしば。
しかし全部返り討ち。とにかくユダのように強かった。

なにせ藤井さんは、伝説の格闘術、藤井園冥流の正統継承者だし。

その日の藤井さんは暇だった。
藤井さんはゲーセンに入ったり、CDショップを冷やかしたり。

「あ〜〜あ。せっかくの休日だと言うのに金はないし女はいない。青春という字は虚しいと書くのかのぅ」

そんなことをつぶやきながら歩いていると、いきなり女性の叫び声。

「きゃぁーっ!誰かー!」

商店街の路地裏から聞こえた悲鳴の主はなんと可憐な女子学生。
黒髪ロングでストレート。清楚なお顔に淡いブルーの制服は、あのお嬢様学校で通名な白百合女子高。
如何にもって感じの二人のヤンキー小僧にしつこく軟派されて怯えている。

見た目はあれだが、こう見えても熱き血潮の正義感。
藤井さんの男を魅せる絶好の機会。


「しつけぇのはよくねぇな…」

藤井さんが颯爽と登場だ。かっちょいいー。

二人のヤンキーは、一瞬ガンを飛ばして睨んだが、藤井さんを見た瞬間に顔色が変わる。

さ、三高の大魔神藤井!

「な…なんすか。僕ら、この人に茶でもどうかとお誘いしてただけなんで…」

藤井さんはギロリと睨んで無言で消えろと促すと、ヤンキー二人は小声で悪態をつきながら去っていく。
お嬢様にしては似つかわしくねぇ場所で軟派されたもんだなと不思議に思う藤井さん。

そんなことより女子高生は、藤井さんの風貌に怯えるも会釈をして礼を言う。

「ありがとうございました。あの…」

「俺は何もしてねぇよ…それに、ここはあんたみてぇなお嬢様がうろつくとこじゃねえよ。さっさと帰んな」

よく見るとすげぇ可愛い女子である。男ばっかの男子校にあってこれは破壊力抜群の兵器だ。
あまりにも可愛くてまともに顔を見れない藤井さん。
藤井さんは顔に似合わず女に関しては超絶ウブだった。
可愛いね藤井さん。

女子はもじもじしながら、肩を震わせている。
まるで寒空に凍えた小鳥のようだ。

「あのぅ…何かお礼を」

「礼なんざ…いいってことよ。さっ帰んな」

<ああ!何かっこつけてんだ俺はぁ;;名前ぐらい…>

武士はくわねど高楊枝は今時流行らないゾ!藤井さん。

恵美と名乗った女子高生は、手帳にすらすらとメモしながら破り取ったページを藤井に手渡した。

「これ…。あたしの携帯です。電話くださいね…」

そう言うと顔を真っ赤にしながら、背を向けて走り去った。

「あっ…おい!」

藤井さんの手の中に残ったメモ。

電話番号とともに、日向恵美と書いてある。


メモを手渡された時に甘い香りがした。
何故か胸に甘酸っぱいものがこみ上げて来て、藤井さんはぼーーっと立ちすくんでいた。
それは今まで感じたことのない何かだった。


「ふーん、そりゃあ恋だな」

連れの安藤時貞ことアントキが言う。

「ぶぶっ;;」

藤井さんは飲んでいたチェリオを吹き出した。

「…ば、馬鹿言え!俺が恋なんざ…」

しどろもどろで答えて真っ赤になる藤井さん。
眉毛がないので、可愛いというより恐ろしい形相になっている。

あたふたしている藤井さんの様子をゲラゲラと笑い飛ばすアントキ。

「タコこいてんじゃねぇよ。俺ら花も実もある高校生だぜ?恋のひとつやふたつしなくてどうするよ」

アントキは、三高一のスケコマしで有名だ。
一度に5人の女を口説いて落としたこともあるという強者である。
携帯の連絡欄はほとんど女の名前で埋まっている。

「そんなんじゃねえ…。ただ俺は…せっかく電話番号もらっても女に電話したことなんてねぇから…」

「かーーーーーーっ;;オモダさぁ(おもいっきりださい)せっかくのチャンスじゃねえかよ。がんがんいこうぜ」

「しかし…電話をかけて何を話したらいいんだってばよ」

「決まってるだろぅ。どこか遊びに行こうって誘えばいいんだよ。簡単だろ」

「遊びって…どこへだ」

「…お前喧嘩だと頭はよく回るのにこーいうことはからっきしだな;よっしゃ!俺にまかせとけよ。悩める友人のために人肌脱いでやろうじゃんか」


アントキはそう言って胸を叩くが、藤井さんはそれどころじゃない。
あの日以来、恵美のことを考えると、動悸が激しくなり身体に力が入らない。


今日の現国の授業中も


「えーと、じゃあ次は藤井。そこを読んでみろ」

「おす…。藤井読みます。えー…ね、ねぇ、隆、もっと。もっとイジメて。そこを、噛んで……。恥ずかしくて言葉にはできないが、腰を浮かせ脚を開くことで、隆に訴える…」


ドガゥアッ!!!

「ぶべらッ!!」

教師の容赦ない蹴りが顔面に入って壁まで吹っ飛ぶ藤井さん。
三校の教師は皆半端ない。
普通学科を教える者でもヤクザにスカウトされるほどの強面が揃っているのだ。

しかし他の生徒は日常茶飯事のようで特に動揺もしていない。
さすがはドグされ男子校。荒っぽい愛の鞭には慣れっこだ。

「ダボがぁ!ワシの授業中に何を読みくさっとるんじゃぁオドレはぁ!!!」

「お、押忍;ご、ごっつああんで…す」


藤井さんはバケツを持たされて廊下に立たされる。
懐かしい光景だね昭和脳。

まぁ、そんなんもあって、最近の藤井さんの様子がどうにも変だと思ったアントキ。
しつこく藤井さんに問いただして、渋る藤井さんからようやく先日のいきさつを聞き出したってわけ。


「しっかし、あの硬派の藤井さんが恋とはねぇ。よっぽど可愛かったんだなその子」

「……まぁ、例えるなら白百合のような…そんな子だった…かな」

「やめてくれ;そんなおっかねえ顔してメルヘン語られても大概は逃げ出すぞ」

「う;うるせぇ。柄じゃねぇことは俺にもわかってんだ…でもよ」

アントキは藤井さんの肩をポンと叩くと、まぁ俺にまかせとけと親指を突き出した。

いつの時代も男の友情は美しいもんでやんす。
男の道はど根性でやんす。


アントキは多方面に女の友人がいる。
女子校はもとより、小学中学、定食屋に街のスナック。
恐ろしいスケコマしだがその情報収集能力はすさまじい。

女の情報収集能力の高さをよく知っている。まるで徳川家康の如くだね。
女はどこにでも水のように入り込み、情報を聞き取っていく。
アントキはそれを駆使して、2年生ながら三高の中での四天王の座に君臨していたのであるよ。


日向恵美。白百合女子高等学校2年C組。
16歳。158cm、上から87,58,88のごっくんボディ。
成績は常に上から10番以内。スポーツ万能、テニス部所属。
性格は少し控えめだが明るく誰にでも優しく誰にでも好かれ生徒会書記も勤める…。

屋上でアントキが知り合いの女子から得た情報を藤井さんに伝えている。


「非の打ち所がねぇな…大したもんだ」

「まぁ一般的に言う、才色兼備で性格も二重丸って言うめったにいない逸材だあね。」

「俺なんかとつりあうわけがねぇ…というより、住む世界が違いすぎる…」

「う〜ん…しかしなぁ…」

「なんだよ?」

「どうにも出来過ぎなんだよ。天は二物をって言うけどよ…。女ってぇのは多少なりとも粗を探して一つ二つ欠点挙げるもんだけどな」

「考え過ぎだ。所詮あの子は俺なんかにゃ…」

「まぁ待て。あきらめたらそこでって安西先生も言ってるだろ?お膳立てはしてやっからあとはお前次第だぜ」

「…だけどよぅ」

藤井さんはふっと寂しい顔をする。

「俺は頭も悪いし顔もこえぇし、不良だし、坊主だし、眉毛もねぇし、陰毛も薄いし、長男だし、でべそだし…」

「それじゃぁいいところがないじゃぁないか…;」

藤井さんは不意に口ずさんだんだ。


電話してねと微笑んでくれた俺のエンジェル。
だけどオイラはしがないロックンローラー。
あの子の翼にゃなれやしない。
粋なツイスト、ステップ刻んでもあの子の♡にゃ届かない。
恋は辛いよせつないよ。
片道切符の青春鈍行。
坊主で眉なし海坊主。だけどオイラにゃ熱い♡が燃えている。
ララバイララバイ。
あの子の寝顔にロバータ・フラックの子守唄…



なんかよくわからんが咄嗟に浮かんで来た歌詞だった。
実は藤井さんは吟遊詩人に憧れていた。
卒業したら家を出て表参道で詩を売って生活しようと考えていたのだ。


「それ…彼女に聞かせてやったらどうだい?」

アントキがニヤニヤしながら藤井さんを煽る。

「ばっ…!?馬鹿言え…。こっぱずかしい…」

「やめろその顔!俺まで恥ずかしくなるわ」


二人はまじまじ顔を見合わせると、ぷっと吹き出して大声で笑い合った。
他には誰もいない屋上で腹の底から笑った。

青春でやんすねぇ。そして藤井さんは決心した。

ダメもとで当たって砕けよう!ってね。
って、砕けちゃだめでしょ藤井さん。


その晩、アントキがどうやったのか知らないが、恵美のほうから電話がかかってきた。


「もしもし藤井さん…ですか?覚えていますか、日向恵美です…」

「くぇrちゅいおp@「sxsdcdf!!!!!」


さぁ藤井さん、どうすんだぁ?どうすんだよ!

恋の決着はきっちりつけよう赤信号。

というわけでこの続きはまた次回。

【終】



テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

いなりこんこん恋ふじい



藤井はれっきとした中年のおっさんである。

彼はもっかのところ、恋をしている。
もちろん中日ドラゴンズのモッカではない。
とにかく片思いだ。
なんと相手は神様である。紙でもなく髪でもなく神である。

家から徒歩5分の伊奈里神社の主神である「宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)」通称「うか様」に恋をしていた。
しかし人間が神に恋をしても所詮は適わぬ恋。
どうしようもない恋の袋小路ではあるが、本人が幸せならそれはそれでいい。
よいではないか幸せならば。


藤井は幼少の頃からクラスでも目立たない気が小さい子どもであった。
嫌なことがあると伊奈里神社へ行って石段の上で泣いていた。
そして誰に語るのか、愚痴を延々とこぼすのである。


藤井が小学5年生の頃だ。
いつものようにクラスメイトの悪ガキにいじめられて境内の石畳に座ってく泣いていた。
夕方近くになり涙も涸れ、そろそろ帰ろうと立ち上がった瞬間、背後に気配を感じて振り向くと、
なんとそこには光に包まれた女が立っている。

不思議と恐怖感はなく、その光が何やら暖かく感じる。
光の中にいた女は、それは美しくも可愛らしく、おまけにおっぱいも大きい。
今で言うエロ可愛い女子である。
小学生の藤井は下半身に沸き上がってくる熱を感じた。

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ふ じ い は ボ ッ キ を お ぼ え た

おっき。これにより藤井は大人の階段をひとつ登ったのである。
とは言え、このもやもやを解消する方法がまだわからない。

ちんこを抑えてもじもじしながら顔を赤くしていると、うか様は優しく手を取ってニッコリと微笑んだ。


「驚かしてすまないね。わたしはこの神社の正一位稲荷神だ」

うか様の微笑みはどこまでも優しくまさに天使だった。
このとき、幼少の藤井の胸に大きなくさびが打ち込まれたのである。


「か、神様!?おねーちゃん神様?」

「うん。わたしは神様だよ。ここで君たちをいつも見守っているんだよ」

心地よい響きの優しい声でそう言った。

うか様は衣服の上からでもわかる、自分の豊かなふくらみに手を当てると、七色に光輝く珠を取り出した。

「君にチカラを授けよう」

うか様はそう言って、胸から取り出した光の玉を藤井に与えた。
すると身体中にチカラがみなぎり、やる気がモリモリと湧いて来た。

「私の神通力だよ。これでもう大丈夫」

そう言うと、すーっと消えてしまった。

この時から何故か藤井は一切、神社には行かなくなってしまう。
そして、うか様のことは記憶からまったく無くなってしまっていた。

いじめられっ子だった藤井はこの日を境に別人のようになった。

数日後、いつも絡んでくるいじめっ子達を全員半殺しにしてしまう。
もともと身体は大きかったので、本気を出せばそこらの上級生でさえやっつけられる力は持っていたのだ。
しかし返り討ちにするまではよかったが、その後がひどかった。
いじめっ子達が泣いて謝っても容赦せず、縄で縛り上げて口に花火をぶちこんだり、蟻を耳の中から流し込んだり。
数時間に渡って拷問を繰り返し、一人は精神病院に入るまでのダメージを負わせた。
PTAでも大問題となり、両親は相手の親に連日謝罪に出向き、藤井は特殊認定問題児童となる。
当然、孤立して友達もまったくいなくなった。

が、藤井は全然平気だった。
神通力によって、体力、知力、精神力が飛躍的に向上した藤井にとっては、怖いものなどなく、世界征服すら夢ではないと本気で思い込んでいた。

それ以来、藤井は生徒どころか教師でさえ腫れ物に触るような扱いとなった。
そして中学に上がる頃には、恐喝、暴行、レイプ、RMT、多重ログインなど、無法の限りをつくした。

ぐれにぐれた藤井は、高校生になって族を結成した。

喧嘩上等の走り屋チーム「下田ポロロッカ」。

そのカリスマ性と統率力で瞬く間に勢力を拡大させて、伊豆の覇権を手中にした。
藤井は毎晩喧嘩に走りに明け暮れた。

触るものみな傷つける勢いで、構成員は1500人を越え、他県にも知れ渡るほどに伊豆の暴君として君臨した。
まさに藤井の天下だった。

しかし、そんな所行もいつかは終わる。
藤井は遂に人を死なせてしまう事件を起した。
当時つき合っていた女をKawasaki FXに乗せて流していたのだが、敵対グループの族に絡まれて、小競り合いの中、女はシートから投げ出され頭を強く打って死亡した。

さすがに藤井もこれにはまいった。
抗争に巻き込まれて死んだ娘は藤井より一つ歳上だった。
女の親族からはなじられ泣かれ、葬式のときに怒り狂った父親には鉈で追い回された。

チームは解散し、藤井は鑑別所行きは免れたが、今までの素行から絶えず保護観察の監視下に置かれた。
高校は中退して、働きに出るも世間の風は冷たかった。勤めた先ではことごとくトラブルを起して、職を転々とした。
そして最後に佐川急便の仕事に就くが、宅配先の客から暴言を吐かれ我慢できずに殴り倒してしまい、逮捕されてしまう。

2日の拘留ののちに釈放され、藤井はそれ以降、引きこもりになった。
両親も外に出て面倒を起こすよりはと、諦めて状況を容認した。


引きこもり15年目のある日、いつものようにネットでエロ動画を見ていると、巫女のコスプレAVがアップされていた。
藤井は何の気なしにその動画を視聴してみた。
AVはチープな企画もので、巫女のコスプレをしたAV女優と男優が神社で罰当たりなSEXをするだけのものだった。

「くだらねぇ…」

饐えた匂いのする部屋でカーテンも開けずに、藤井はつぶやく。

動画は画質が荒く、まるでVHSの頃のハンディカムで撮影したような粗悪な出来だった。
抜く気も起きず、動画を消そうとした瞬間に、何かが頭の中で響いた。

「っつ!?」

動画の中のAV嬢の顔が誰かと似ている気がする。
誰だったのか…ぼんやりとして思い出せない。

神社…。鳥居…石畳…。

徐々にその女性の顔が鮮明になっていく。

藤井は思い出した。
小学5年生の頃に出会った神様を。


藤井はスウェット姿で家を飛び出していた。
そして伊奈里神社に向かって走った。

そうだ、あのとき俺はもらったんだ神通力を。

何故、今の今まで忘れていたのか。

あのエロ可愛い神様は一体何だったのか。
あの神通力を授かったことによって俺の人生は狂ってしまった気がする。

あの時の……。


15年ぶりの全力疾走である。
しかしまだ体力は衰えていない。
精力もいまだにビンビンで朝は腹に痣ができるくらい跳ねている。

「ふぅ…ここも恐ろしく久しぶりだな」


神社の境内に辿り着くと、平日のこともあってか人っ子ひとりいない。
境内の白い砂を踏みしめると、ジャリっと音が響く。

深深と透き通った静けさが、濁った心身を浄化していくような気がした。
目の前に小さな社殿があり、数段の石畳が見える。

あれだ。あそこで俺は神に出会った!

会ってどうするのかという疑問はない。
ただ会って問いただしたかった。

なんで俺に神通力を授けたのか。

「神様ぁ!!いるのかいー?」


藤井は大声で叫んだ。藤井は、うか様の名前も覚えていない。
あの時の記憶は、ただ、光っている綺麗なお姉さんのイメージしかないのだ。

「神様よぉい…」

幾度も叫んでみたものの、いっこうに現れる気配はない。

日が暮れるまで待ってみた。
しかしまったく現れない。

あれは夢だったのだろうか。
いやしかし、、、。あれから俺は確かに変わったんだ。
これは人ならざるものの力であることは間違いなかった。

暮れなずむ木々を見ながら黄昏にふける藤井。
思えば…こんなはずじゃなかった人生が浮かんでくる。

俺はガキの頃、声優になりたかったんだ。
山田康夫みたいな声優に。

なんでこうなったとは言わない。
全部自分のせいだ。自分で選んで来た道である。

しかし…。

そう考えて杉の古木の下で座り込んでいると、セーラー服を着た少女が息を切らして境内に入って来た。

「うかさまぁ〜〜」

そう叫びながら、少女は社の前で止まって何やら一人で話している。

その様子を見ていた藤井は、咄嗟に理解した。

自分には見えないのである。
中年になってしまった藤井には、神様を見ることが出来なくなってしまっているのだ。
子どもの頃には、誰しも人ならぬものと会話ができたはずだが、いつしかその記憶も消えてしまうという。

あの少女は、俺が幼い頃に見たあの神様と話をしているのだろう。

少女は顔を真っ赤にして誰かに笑いかけている。
普通の人が見たら、ただの狂いにしか見えないのだろうが俺にはわかる。

あの子はいま神と対話をしているのだ。

藤井は自分が薄汚れた成人になったのを実感した。
悲しくなった。せつなくなった。そして残酷な天使のテーゼだった。

「もう会えんのかい…」

絞り出すようなか細い声が震える。


すると、少女がこちらを見て何やら頷いている。
そしていきおいよくこちらに走ってきた。

藤井のほうがおどおどしていると、少女が目を血走らせて驚くべきことを口にした。

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「な…なぁなぁ!おっちゃんって、うか様のふっるい友達やねんて?」

「えっ…?」


藤井が驚いて目を丸くしていると、少女は自分の左側を指差した。

「ほらっ、うか様がおっきくなったねぇって言うてはる。悔しいなぁもう!あたしが最初に友達になったとおもてたのにぃ」


少女の左側に白い輪郭が浮かび上がってくる。
それは徐々に形を成して、白衣と襦袢を身につけた娘がはっきりと認識できるようになった。
少女は得意げに説明をしてくれた。

「あんなぁ、こうやって手を繋いでいると、大人でも見えるようになるねんてー」

「や…やっぱりあの時の神様!?」


女の子と手を繋ぎながら、うか様と呼ばれる神がニッコリと笑ってうなずいた。

藤井に向かって、何かをしゃべっている。

声は聞こえなかったが、藤井にはわかっていた。

「お・か・え・り」

藤井の目から洪水のように涙が溢れ出してくる。
あの時の記憶、あの時の暖かさ。
なんだろう、心にしみ込んでくる天寿が藤井の頑な心を氷解させていく。

「おっちゃん、20年ぶりにうか様に会うたんやねぇ。大きくなったねぇ言うてはるよ」

少女はにぱっと笑った。

藤井は応えられなかった。
ただただ、暖かい涙が頬を濡らし、短い嗚咽が漏れてくる。

うか様はそんな藤井を優しく見つめながら微笑んでいた。


その日から藤井は引きこもりをやめた。
外に出て働くことにしたのである。
そして毎日神社へ出かけて、お参りをするようになった。

あの少女とも友達になった。

伏見いなりという藤草中学校の2年生だそうだ。うか様に変身能力の神通力を授かったらしい。
彼女がいる時に限り、顕現する姿を認識できるのはうらやましくもありがたかった。

実はあの時の神通力を授けるといったのは、方便だったと明かされた。
元気のない俺を励ます意味で自信をつけさせようとしたらしい。
結果的にそれがひん曲がった方向にいってしまったが、うか様はずっと気にしていたらしい。
せめてもう一回神社に来てくれればなんとかできたのかもしれないがと、残念がっていた。

「ってことは…思い込みだったんかい?」

「うか様言うには、神様の方便やから言霊として少しは効力があったんかもしれへんて」

「われぇ、ご…ごっついのう〜(笑」

今となってどうでもいいことである。
藤井は大きく伸びをした。

いい天気だ。
陽は高く空も澄み切って青い。

だいぶ遠回りをしたが、まだまだ人生これからである。

勤め始めた小さな運送会社も何とかやっていけそうだ。
藤井は新しい人生を歩みだしていた。

灰色の狭い部屋から抜け出して外の世界へ。


「さて…いっちょ行ってみるか」

いなりに別れを告げ、うか様にお辞儀をして藤井は未来へ歩き出す。

うか様は藤井の後姿を見守りながら、頑張れ!と応援していた。
その見つめる目はどこまでも優しく涼やかであった。

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しかし─

未来に向かって歩き出したと思われた藤井の足は、パチンコ屋に向かっていた。
その日、藤井はパチンコで10万の大負けをくらいすっからかんになった。

藤井は泣きながら、神社に駆け込み、うか様に運をくれやぁと頼み込んだ。


もちろん

そんな頼みごと聞いてくれるわけねぇだろがべらぼうめ!!

【終】


テーマ : 二次創作:小説
ジャンル : 小説・文学

高崎さんは会議の後で…




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その晩、藤井と高崎は屋台で酩酊するまで飲んだ。

「なーにが、続けぇ!織田魂を見せてやれぇだよぅ…。関東軍の満州じゃあるまいしー」

織田の評定議員の高崎がコップ酒を持って吠える。

他鯖の運営と意見が真っ二つに割れて、会議がぐだぐだになってしまって荒れている。
保守派である高崎は、現運営のタカ派的スタンスが気に入らない。
双方の意見がぶつかるのは至極当然のことだったが、着地点が見えないのが何とも気分が悪かった。

したたかに酔っている割に顔が青い。
もうしばらくすると、道端にお好み焼きをまき散らすことになりそうだ。

隣にいる藤井はゆっくりコップを傾けながら、うんうんと頷きながら口を開いた。
藤井は現在武田側に所属している。
織田である高崎の敵であったが、合戦がない時は別段普段通りの関係であった。

「しかし…既に過疎化の徒を辿ってる世界でさ、織田と武田が斎藤を挟んでギンギンに睨み合って突っ張ってるってぇのもなぁ…。同盟国にとっても重荷でしかないんじゃないかしらん」

「藤井さん、あれだ。ウィッ…」

藤井の言葉を受けて高崎がドンっと空っぽになったコップを台に叩き付ける。
いよいよ呂律が怪しい。

「昔っから武田ってぇのは、露助みたいに欲しいもんは必ず取るんだ、それが奴らのやり口さ。おい、親父、酒っ!」

真っ青な顔で親父にコップを差し出して催促する。
屋台の親父が心配そうにろれつの怪しい高崎を見て横やりを入れる。


「お客さん…。もう打ち止めにしといたほうがいいんじゃないですかい。家に帰れなくなりますぜ」

「あ?これしきの酒で酔っぱらうかにょ…。いいから早く酒ら酒っ!」

「へいへい…」


とくとくと一升瓶から注がれた酒を一息に煽ると、立ち上がって咆哮する。

「うぃ〜っ…織田に栄光あれぇ!ジーク・ジオン」

そのまま、どさっとそのまま台につっぷしていびきをかき始めた。

その様子を見てやれやれといった感じで藤井は首を振る。


「つぶれたか…。いつものことだが会議があった日はいつもこうね」

藤井は優しい目でつぶれてしまった高崎の背中をぽんと叩いた。

織田の会議は毎回荒れる。
これは伊豆の朝は早いと言った大橋巨泉の言葉と同義だ。

そう。
今では当たり前のことになっていたのだ。

一門ですらまとめるのは大変であるのに、一国まとめるのは身を削り精神を削る相当のストレスになる。
他国の国政会議も荒れることは荒れるが、統一合戦になってから織田会議は、噂によると合戦より面白いとうそぶく人もいた。織田の会議では少なくとも3人のプレイヤーが精神崩壊を起している。
会議に参加するのも命懸けだった。
獅子身中の虫とはよく言うが、真の敵はいつの時代でも内部にいる。
君主がNPCでシステム側にしか存在しないのだから、ユーザー主導で誰かを祭り上げるしかない。
しかし今現在において、神輿に乗せる絶対的なカリスマはどの国でも皆無であった。
故に民主主義形態を保ちつつ、如何に同国のプレイヤーのベクトルを同一方向に向かわせるか。

これがどの国にとっても国政運営側の最大の課題でもあった。
一枚岩ではない意識体をまとめるプレッシャー。
それだけに運営側のストレスは相当なものであると推察される。
私がビリー・ジョエルなら労いに一曲唄ってあげたいところである。

藤井も織田には直接関わっていないとは言え、以前は今川の国政によって散々苦しめられた経験もあり高崎の苦労が痛いほどよくわかっていた。

かの、会議クラッシャー藤川みさおも白石綾とともに会議のたびに泣いていた。
みさおは思いあまって藤井に相談したことがある。

「私のどこがいけないの」

「貧乳だからwwww」

この後、藤井は肋を4本砕かれる全治三か月の重傷を負わされたが、それはまたいずれ。
みさおはこの後、一線を退き、現評定議員最高責任者の高崎にバトンを渡した。

この日以来、高崎のストレスは今日まで極限状態まで達していた。
胃潰瘍になり、不眠症に陥った。抜け毛も多くなりオナニーの回数も減っている。
軽度のストレス障害である。

唯一の救いは友人である藤井との懇談であった。
ここで全てを吐き出しリセットする。それが今出来る唯一の解消法であった。


店終いをしながら屋台の親父が興味深そうに聞いてきた。

「お客さんはなにかい、織田の運営の人かい?」

「俺たちか?俺たちはな…」

藤井は目を伏せながら残った酒を飲み干した。


「ただの郵便配達さ…。お勘定」


ぐでんぐでんの高崎を抱えながら、夜道を歩く。

「結局のところ…俺たちなんざデフコンが4に上がろうがこうやって酒を飲んでられるんだ。その程度ってことさ」

高崎にはそんな藤井のつぶやきは聞こえておらず、歯ぎしりをしながら唸っている。

「う〜〜っ;う〜〜〜っ;あの野郎ども〜〜、う〜〜〜っつ;;」

誰かを罵りながら、千鳥足でふらつく身体を藤井が支えた。
すると、高崎は口を抑えながら草むらに駆け込んだ。

「グエッ;;うぅうくぁwせdrftgyふじこlp…」

お好み焼きタイムの始まりだ!

「吐くほど度飲むなよ、もったいない」

身体を二つに曲げて嘔吐する高崎を尻目に、藤井は道向こうから灯りが近づいてくるのに気づいた。
灯りは次第に大きくなり目の前まで近づいて来る。

提灯の灯りに照らされた顔はどこかで見た気がする顔だ。


「おや、藤井さん。こんなところで奇遇ですね」

その声は確かに聞き覚えのある男の声である。

「ややっ、もしやあんた…三浦さん?」


偽りの救世主、三浦。武田所属。
かっての烈風鯖で武田の使者として織田との同盟を働きかけ、常に影で暗躍した男。
武田国政の裏の部分を一手に引き受けていた烈風武田の暗部でもあった。
武田の国力が底をつきかけたとき、織田の助力を請うために織田の会議で裸踊りまでしたという噂がある。

古参武田の者なら知らぬ者はいない男だった。

三浦は酔いつぶれた高崎を見て、合点がいったという風に鼻を鳴らす。

「ははーん、高崎さんの様子を見ると…また会議が荒れましたか」

「えっ?三浦さん、高崎さん知ってるの?」

藤井は驚いた顔を三浦に向けながら、高崎の身体を支える。


「そりゃ、運営側の人の顔くらいは知ってますよ。これでも織田には縁故がありますしね」

「へぇ…。で、またこんな所で何を?」



藤井が訝しんでそう聞くと、三浦はくっくっと笑いながら


「藤井さん、ライオンにはライオンの餌が必要ですよね」

「え?何を一体…」

「この退屈な天下情勢にも飽きましたしねぇ…。そろそろ、眠れる獅子に起きてもらおうと思いまして」

「眠れる…まさかっ!あの国を動かす気かっ」

「ふふふ…。そう彼の国を動かせば天下は驚天動地の変動を見せるでしょう。そして再び群雄割拠の戦乱時代が訪れる!」

「彼の国って……」


藤井はゴクリと息を呑んだ。

長い歴史の間、静かな水の底で眠り続けている石のような国。
その名は……

「伊賀ッ!」


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「うげっ;;気持ち…悪い…」

「うわっ!」

悲鳴をあげて飛び退く藤井。

高崎はまた吐いた。
笑いながら吐いた。
雲に隠れていた月が姿を見せ、冴え冴えと3人の男を見下ろしていた。


【終】


※伊賀:国としては最小でガンダムのHALOのような存在。ぬるぽ、ガッ!のネタに使われる可愛い国。

テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

お前ら、もっと藤井さんのヤヴァさを知るべき也

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ジョン・ウェインが死んでもアメリカの民主主義が死ぬわけじゃあるまいしとジョン・ガンサーは言った。
藤井さんが毎回死んでも、為替が変動するわけでもないしアベノミクスに何ら影響もない。

僕は藤井さんを登場させるたびに殺しているが、次の回にはケロッとして違う藤井さんが現れる。
これも一種のパラレルワールドだ。
幾重にも折り重なった世界レイヤーには、あらゆる藤井さんが存在する。

ジャンー・ジローことバンドデシネ最大の巨匠メビウスが描いたアルザックの世界観。
その中に僕の藤井さんのイメージは浮遊している。
無機質な造形の建物の中にエッチングをきかせた描写の群像。
そのわんさの中にいて微笑んでいる。それが藤井さんだ。
不動の笑顔をしたためて微動だにしない。
日常の狂気。それが藤井さんだ。

現在、藤井さんが棲息している下田はとてもいいところだ。
空気は美味いし、山あり河あり海もあり。さらに魚が安くて美味い。

しかし、近い将来あそこがサイバー・パンクでキッチュな電脳都市になったらどんなに素敵だろう。
果たしてギブスンの小説では、千葉がそうなる予測だったのだが、これからの未来予測は地方の海岸都市を中心とした開発が進められると楽しい。ネットワーク・コンピューティングがもう未来ではなくなった今は、フレキシブルネットワークを通じて人と人が繋がる世界。ぞくぞくしちゃう。
まさにあらゆるコンテンツの坩堝にはうってつけな下田シティ。
いつの日か、Shimoda City Bluceなどが口ずさまれることだろう。

そして今日も藤井さんは華麗に高濃度なドラッグをチョルチョックに決めながら、Bハンターとして仕事をする。
そして下手を打って組織に追われて最後は木っ端みじんに吹き飛んでジ・エンド。
なんてスリリングでエキサイティングな結末だ。

そんなヤヴァい藤井さんの物語を考えていると、いくらでもアイディアが出てくる。


僕がそんなことを夢想しながら、ベンチに腰掛けていると、黒いサングラスとベレー帽に白いマスクをした胡散臭い男が声をかけてきた。

「ヘイ、ミスター、ガールいるよ。プリティベイビー、ファックOKよー。インターコース、ベリベリチープね」

ぽん引きだが、声に聞き覚えがある。


「あれっ?その声…」


僕がぽん引きの顔をまじまじと見ると、グラサンとマスクを外して素顔を見せた。

「あれーーっ?凸さん!?」


ぽん引きは藤井さんだった。

「めんぼくねぇ姿をみられちまった…」

藤井さんは、何やら一攫千金を狙ってガリンペイロになりブラジルに渡ったが、
何故かコーヒー農園で働かされて腰を痛め、夢破れて帰国したそうだ。

「俺みてぇな引き揚げものが食っていくには、もうこんなことしか…」


僕は腕を組みながら、うんうんと頷く。

一通り身の上話を聞いた後で、藤井さんを飲みに誘って居酒屋に行く。


ここで、僕は目が覚めた。
そう、最低の夢オチだが夢を覚えている時は何らかの形で残しておいたほうがいい。

藤井さんのグリード・アイランド編を途中まで書いていたのだが、飽きて止めてしまった。
他にもこんな中途半端な下書きが山ほどある。

今日は木曜日だ。
だが、今週は割と暇だ。

そろそろ真面目に何かを書いてみようと思うのだが、シリアスを書くとどうにも途中で飽きて投げ出してしまう。
何か題材を与えられた方が、職業上モチベがあがるのだが金もらえるわけじゃないしなとやはりめんどくさくなる。

よくわかったのだが、自分がすげぇものぐさで飽きっぽいことを改めて自覚する。
多分、今の仕事も好きだからやっていられたわけで、嫌いなものを我慢してやるという性分はとても無理だ。
若い頃は多少我慢もしたが今はもう無理。
無理よ無理無理かたつ無理のダディクール。

さて、次は宮本武蔵でも題材にして藤井さんを絡めようかしら。
でも途中でメンドクサくなって結局放り出すんだろうな。

ま、僕はやっぱりシベリアの文化人よりマイアミの靴磨きが似合ってるようだ。

なんちゃってー。


テーマ : 日記というか、雑記というか…
ジャンル : 日記

コブラ的

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「だるいぁ…」

海賊ギルドの末端構成員が休憩室で一服しながらぼやいている。

この構成員、本名は藤井という地球名を持っていた。
中学からぐれだして、気づいた時には立派なヤンキー、18歳の頃には地元でヤクザも恐れる愚連隊。
親と喧嘩して家を飛び出し、組の鉄砲玉になったはいいが、見事に失敗。
刑務所に送られ、2年で出所。組を破門され日雇いで日銭を稼ぐ日々。

いっそ銀行強盗でもやってやろうかと思ってた矢先に、海賊ギルドの幹部と飲み屋でもめてぼこぼこにされる。
その時の幹部に根性と腕っ節を見込まれて海賊ギルドへ誘われて入ったはいいが、聞いてた話と労働条件がまったく違う。

初めての星間飛行に浮かれていたのは最初だけ。
未開の地での発掘作業や民間人の誘拐、街への襲撃、炉度麻薬の精製業務、広大な敷地の24時間警備etc…

「きつい (Kitsui) 」「汚い (Kitanai) 」「危険 (Kiken) 」のバブル時代の三拍子以上だ。
しかも思ったより実入りも少なく割に合わない。

しかも、最近では恋人を殺されたコブラが怒り狂って各方面の支部をことごとく壊滅させていると聞く。

「そりゃ恋人殺されりゃ誰だって怒り狂うわなぁ…」

コブラの気持ちはよくわかる。

藤井にも愛する彼女がいる。ショウパブで働く21歳の踊り子のナオミである。
薄給ながら半年ローンで指輪も買った。明日のナオミの誕生日にプロポーズをする予定だった。
ナオミにはギルド員だということは話していない。
今のところ中堅家電メーカーの営業マンということで通している。


ギルドの最大の敵は、銀河パトロールだが、今は最も恐ろしいのは復讐に燃えたコブラである。
そもそも末端構成員はコブラには何の恨みもない。

それどころか中には憧れている奴さえいる。
コブラのライバルと言われているクリスタルボーイ派もいるにはいるが、藤井にはどうでもよかった。

中卒で反グレの半端者を雇ってくれたギルドには恩義を感じるところはあるが、末端構成員は本部の幹部の顔すらリアルではまず拝めない。いわんや総統の顔などスクリーンでしか見たことはない。

藤井はそろそろ潮時だと思っていた。
既に30半ばだし、身体もあちこち痛いし無理がきかない。
同じ頃に入った同僚は、ほとんどがすでに死んでいたし、奇跡的に部隊長クラスに昇進した奴もいたが、
一回のミスで辺境の地に飛ばされている。

「地球に戻って野良仕事でもしようか」

ナオミに言うプロポーズの言葉である。
それを考えるとバックンバックンと心臓のタコメータが跳ね上がる。
ギルドを辞めてナオミと一緒に新しくやり直そう。
藤井はそう考えていたのだ。

普通に考えて犯罪ギルドを辞めるには、ひとつの選択肢しかない。

死ぬしかないのだ。
実質、辞表など存在しない。ギルドのわずかな情報でも流出を防ぐためである。

藤井には考えがあった。
コブラが今度襲うターゲットは、ここ火星支部であろうと予測されている。

コブラが襲って来た時がチャンスである。
殺してもらうのである。正確には”殺してもらうふり"をするのだ。
敵に回したら恐ろしいが、彼は決して無差別殺人鬼ではなく男気もある奴だ。俺みたいに末端構成員を殺してもどうしようもないし、慈悲を乞えば情けもかけてくれるはずだ。

奴のサイコガンは精神力によってその威力の強弱をつけれると聞く。
何とか話をつけて撃ってもらい、死んだふりをしてとんずらをかまそう。

そしてその足でナオミを連れて星港ゲートに向かい地球へと向かう。

情報では、コブラが来るのは二週間以内だという。
とにかくもう末端構成員のモブキャラはごめんだ。
便所掃除や風呂掃除、炊事洗濯まで俺らの仕事でいい加減うんざりだった。


藤井はマスクをかぶり直して持場へ戻ると、別の構成員が銃を持って立っている。


「遅いよ!交代の時間はとっくに過ぎてるだろう」

蝉を形どった戦闘員用マスクであるから、顔の表情は見えないが怒気を放って怒っているのはわかる。


「すまんすまん、ちと疲れて寝ちまってな」

「まったく…。あんた明日オフなんだろ。俺は明日も一日警備なんだぜ。勘弁してくれよな」

「わかったわかった…。今度、一杯驕るからさ」

「しょうがねえな…。じゃハーパーダブルな。2050年ものだぜ」

「へいへい。高い一杯だな」


構成員は笑いながらよろしくと手を振り休憩所に歩いていく。
ここは北のゲートで最も手薄になっているが、ゲートの手前にはサイファーが待機して常時監視しているし、高感度サーモグラフやビームシールドが張り巡らせてある。しかし、危急の対応にはやはり人間の柔軟な思考力と行動が不可欠だ。
よって機械だけにまかせずに人為的な体制も盤石にしておく必要がある。

なにせここはギルドの資金源であるロド麻薬の精製所が地下にある。
ここを潰せばギルドにとって大きな痛手となるのだ。

コブラは近いうちに襲撃をしてくるはずだとギルド中に伝わっていた。
 

「コブラを見つけたら…まず敵意がないことを示して、中を案内してやろう」

そしてその後に死んだと見せかけるように撃ってもらおう。

大体、あんな化け物にまともに戦って勝てるわきゃねえし、所詮、雑魚キャラはなんざ刺身のツマにもなりゃしないんだ。総統に絶対的な忠誠を誓っている構成員なんて半分もいるのだろうか。
大概はギルドの名をちらつかして傍若無人に振る舞えるから構成員をやっているにすぎない。

過ぎた野心は命取りだし、無能すぎても生きられない。

金も女も自由だ。
藤井を誘った幹部に入るときにそう言われたが、実際は街を襲撃した盗品のおこぼれや、ギルドと聞くだけで怯えて逆らわない女を自由にできるだけだ。およそ人としては終わってる。まぁ、海賊ギルドに入った時点で終わってるっちゃあ終わってるのだが。

その幹部も失態を演じてクリスタル・ボーイに殺されている。
確か俺より10歳上の妻子持ちだったはずだが。
ようやく家のローンも終わって、子ども有名なハイスクールに入ってこれからだって時にな。

クリスタルボーイのことを、噛んでしまい「クリトリスボーイ様…」と間違えて呼んでしまい逆鱗に触れたらしい。
哀れ、先輩幹部は宇宙空間にそのまま放り出された。
クリスタルボーイも案外ちっちゃい男だ。それくらい笑って許してやれよと思う。
死んだ理由なんざ家族には話せないだろうなぁ。

藤井は手すりにこびりつく火星の赤砂を指ではじきながら、家族は気の毒になと思った。
しかし、明日は我が身だ。

とにかく、敵であるコブラに自分の命運がかかっているのが皮肉だ。

「ナオミ…プロポーズ受けてくれるかなぁ」

ナオミのことを考えて渡す指輪をポケットから出して眺める。
金星ルビーで造られた指輪だ。
紅く透き通った光が仄かに揺らめいている。


「へぇ。いい指輪だな。サンタさんからの贈り物かい?」


背後からの声に、振り向いた瞬間に大きな光とともに身体の中から何かが爆発したような衝撃を受けた。

そこに立っていた声の主は、コブラだった。


「コ、コブラ…。お前…何故」

「悪いな。頭に来ている時の俺は手加減はできないんでな」

「ナ、ナオミ…」

身体をサイコガンによって真っ二つにされてしまった藤井は息絶えた。
その手から転がり落ちた指輪を拾って、藤井の胸に置いてやる。

コブラは藤井の亡骸を一瞥すると、ライターを取り出して葉巻に火をつけた。

「生まれ変わったらギルドなんぞ入らないで、クワイヤボーイズ(少年聖歌隊)にでも入るんだな」

そう言って、ゲート前のサイファを次々と撃ち落としていく。


大いなる誤算で藤井は死んだ。
よくよく考えてみると、コブラにとってはギルドの構成員は全て敵であるし事情なんぞ知る由もない。
しかも明後日来ると言う情報だって確定じゃないわけだ。

とにかく藤井は死んだ。最愛の恋人に想いも告げられずに。

翌日、ギルドの火星支部がコブラによって壊滅させられたと星間ニュースが報じられた。


─火星、中央シティ、オーロラビジョン噴水前

時計を見ながら一人の若い女性がベンチに腰掛けて待ち人を待っている。
ブロンドの長い髪で、露出したボディスーツがチャーミングだ。


「おっそいわねえ…。なーにしてんのかしらあの人は…。大事な話があるからって連絡してきたくせに」


はす向かいのビルのオーロラビジョンには、「コブラ、ギルドを襲撃!」という見出しでセクシーな女性レポーターが現場で取材をしている様子が映し出されている。

そのニュースを見ながら、女性がため息をつく。

「美人のため息は、ぐっとくるねぇ」

長身で金髪の逞しい男が声をかけて来た。
赤いボディスーツに映える胸板は鋼鉄のようだった。
葉巻を加えて、口元に笑みをためている。

うっとりするほどのハンサムではないが、セクシーで渋いおじ様といった感じだ。

「ええ、そう!約束した男がもう2時間も連絡つかずなのよ」

「こーんな美人を待たせる奴ぁは、何回生まれ変わっても女にはもてないな。俺ならデートに遅れた時点で首を吊るね」

女性は「まぁ!」と言いながら顔を赤くしてクスクス笑った。

女心をくすぐる会話を知っている男だった。
そう言って葉巻をくゆらせる仕草が何ともセクシーである。

「もう帰ろうかと思ってたところ」

「じゃあどうだい?その先にいいBARを見つけたんだが、こんな晩に一人で行くには寂しいんでね」


女性はすこし迷ったふりをしたが、連絡すらしてこない藤井が悪いのだと見切りをつけた。

男の太く逞しい腕を両手に巻き取って

「ええ、いいわよ。行きましょう」

そう言って歩き出す。


「ありがたい。これで苦くない酒を飲めそうだ。っと…ところで君の名前は?」

「私はナオミ。踊り子よ。あなたは?」

「俺か?俺の名は…」

彼女は、小首をかしげて男の横顔を見た。
それがオーロラビジョンに映っている男の顔とは気づかずに。

そして二人のシルエットは、火星街のネオン光線の中に融けていった。




【終】


テーマ : 日記というか、雑記というか…
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