スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

さや 【参】

「やっ!?さや殿がいなくなった?」

地獄突は素っ頓狂な声を張り上げた。

表向きには召し抱えという形で書状を携えて、だるま屋に赴いた突だったが、夫婦から話を聞かされると腰を抜かさんばかりに飛び上がった。

「へぇ…。十日ほど前に急に暇をもらいたいと言い出しまして」

申し訳無さそうに、主人が突に頭を下げる。

「むむむ…。それで行き先は?どこか宛はあるのか」

「なんでも肥後のほうに母方の身寄りがあるからと…。まぁそれだけ残して」

「肥後とはまた…。西の果てじゃぁないか…。まいったな」

「あいすみませんことで…」

夫婦そろって頭をさげるが、どうもおかしい。
妙な明るさが声色に見てとれる。

大三元とはあれ以来会ってはいないが、聞けば寺子屋を閉まって旅に出たと言う。

ははーん。

三元さんめ、やりやがったなぁ。

突はにやりと笑いながら、ことの次第を理解した。

駆け落ちとは豪奢な真似を。
しかもまだ幼き少女と、あの堅物が…。

突にしてもうら若き乙女を、任とは言え、乱破(らっぱ)素破(すっぱ)にするのは気が進まなかった。
こうなったら、こうなったでまぁしょうがない。
正直なところ少し安堵もある。

しかし…このままでは済むまいなぁ。
せめて、かようなひとときを安らかにと祈るしかない。

突は旅の空に舞う二人の姿を思いながら、気が重い報告に臓腑が痛むのを感じていた。



【越後】


上杉謙信はこの人にめずらしく憤っていた。

「足長めが!」

これは武田信玄を指して言う。
これは信玄につけられた渾名である。
甲斐ほどの偏頗な山峡の国にあって、実にまめな早足早業を見せるところから起こったと言われる。


三年前の永禄元年。
武田と上杉は、和議が成って親睦の約定を取り結んだ。

しかし、表向きは「今後は善隣として」と外交を成しているが、干戈(かんか)交えていた頃より、始末の悪い結果となっていた。

去年のこと、富山城の神保一族が国境付近を悪戯に乱すので平定したところ、残党に信玄の息がかかった僧兵や、信州訛のものがいたり、常に往来した機密文書やらが無数に発見された。

和議和平どころか、ますます信玄の蛇影が見え隠れする。
信玄の謀略的性格が顕現してきているのだった。

そこにきて、割ヶ嶽城への霹靂のごとき武田の襲撃に、さしもの静なる謙信も堪忍袋の尾が切れかかっていた。

若い頃の謙信はよく泣いた。多感な質で感じやすく激しやすい。
禅道に入ってからは、それらの多情の面はなりをひそめて、心鍛により静かなる風格が備わってきている。

だが、この時ばかりは泣いた。
身をよじって畳を転がりながらわめきちらした。

「うわぁあぁ!信玄!信玄!信玄!信玄〜〜!!!!!」

泣きわめきながら、罵る様はまるで年端のゆかない子どもだった。
割ヶ嶽城で、城中にいた者は全て討ち死にしたという。武田側の死者もかなりものだという報告を受けていたが、死んでいった家臣を思うと腸がちぎれるぐらい悔しかった。

「ううぅう…。あんまりだぁ〜〜…」

謙信は三十三歳で、もはや天下の名将とも誉れを受けていたが、本来の多情な性質は根本から消え去る事は無い。
信玄は謙信の一回り近く歳上であり、かの好敵手として端倪するもやはりどこか軽視している風がある。

和議の裏をかき、まだ若く実直な謙信の泣きべそを思い浮かべて楽しんでいるに違いなかった。
戦乱の時代に置いて約定など、ありていの建前に過ぎないことを謙信は知らなかったのである。


これは、敢然と信玄が仕掛けた狡猾な罠である。
謙信をまだまだ弱輩と高らかに笑って攻め入ったことだろう。

しかも、割ヶ嶽城は野尻湖の東南に位置し、越後信州の国境にあたる。
南、西、北とここを分岐とする交通の要衝でもあり、武田にとっても最大価値のある拠点である。
ここを抑えられると、全ての方位への進出を封じられたも同じであった。

戦を受けて立とうにもあまりにも分が悪い。
謙信は、憤りながらも使者を出し、今一度、和睦の要約を取りつけて割ヶ嶽城の返還を求める評議を決定した。

使者には、斉藤下野という者を使いに送り出した。

しかし、これがまた片目に眼帯を巻き、片足はビッコを引く足萎えでとても使者には不向きの風体である。
内密に素早く。謙信は斉藤下野にじきじきに申し付けていた。
それだけ、斉藤下野の折衝の手腕を信頼していた。容姿によらず、能力による。
清廉な謙信らしい抜擢である。


しかし、謙信とて事を軽く考えてはおらず、伴人を一人つけた。
戸隠忍軍の仁科大助を裔にする子孫である。

名はさくや。
女であるが、歩き巫女のような遍歴の諜報はせずに、世に聞こえた「飛び加藤」の元でひたすらに術の研鑽を重ねた手練である。

女の身でありながら、卓越した体技に目をつけた飛び加藤は、さくやに徹底的に術を仕込んだ。
さくやの親は、やはり戸隠の裔だったが、その方面に才能はなく、商人としての才覚を開いて堺に居を構えている。世継ぎがいない飛び加藤は、幼少の頃から男勝りで勝ち気だったさくやに、戸隠の未来を見いだして引き取って育てたのである。

さくやは、飛び加藤の片腕となるまでに腕をあげた。
歳の頃ならかぞえで17歳であった。

さくやが伴人となったのは、いわゆる「土産」としてである。
信玄はその風貌の如く絶倫な精力家である。加えて女に対しては甘いと聞く。
今回の使いは、和の密使であり訴状ではない。
さくやは献上品として謙信のもとに仕えるように任を受けた。
もちろん、命がけである。信玄が不要と一言言えば、そこで終わりである。

だが、謙信はさくやの容姿を一目見るならば、男であればとても刃を放つには躊躇われると確信している。
越後の雪のように白く、なめらかな肌。切れ長の目に長い睫毛にかぶり何とも男好きのする顔。
加えて見事な曲線を描いた姿態は男を狂わすには十分である。
もちろん、さくやはその方面の訓練は受けていたし、閨での暗殺術も心得ていた。

獅子身中の虫となり得る乱波を許容する度量が信玄にあるかどうか。
その結果次第で謙信は先のことを計ろうとしていた。

もし受入れるなら…。

戦をする気なら無言で仕掛けている。城中では血気盛んに武門の恥とばかりに信濃入りを切望する者も多かった。

が、謙信はこの時まであくまでも至誠を通した。
また、信玄の徹底的な知略のいやらしさも知っている。
あの百錬の功を経た非違の僧将の不気味な頭脳は、決して易くはみれない。
故にさくやという賽を斉藤下野とともに送ったのである。

さくやは男装を施し、斉藤下野とともに信濃を馬で南下している。
他の一行も並走しながら、一団は魔人神 武田信玄の居城へと向かっていた。

もちろん、命を賭けた任である。口上ひとつでただちに斬りさげられ骸になりかねないものだ。
しかし、斉藤はもちろん、さくやにも恐怖心はなかった。
死ぬならそれが運命であり、信じて疑わない盤石な信念が出来上がっている。

まだ雪の残る山道を、疾風の影が切り裂くように駆けていった。


【続く】





スポンサーサイト

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

さや 【弐】

甲府にある躑躅ヶ崎館(つつじがさきやかた)の毘沙門堂に二つの影があった。

ひとつは座していても、その体躯からかなりの巨漢とわかる。
もうひとつは、小さく影の輪郭も細い。

巨漢の影は、甲斐武田家第19代当主 武田信玄である。
戦乱の魔王と呼ばれる織田信長が、最も怖れ常に警戒していたのが信玄と言われる。

座していても目に見えるほどの「気」が信玄の身体を覆っている。
信長が魔王なら信玄はまさに魔人神である。

「千代、件の首尾のほうはどうであろう」

信玄がそう問うと、千代と呼ばれた影は平伏しながら短く答えた。

「はい。上々にござります」

まだ幼さの残る澄んだ声で答えた。

望月千代女。このときまだ16歳であるが、その明晰な頭脳と卓越した術は武田忍軍の中でも随一と目されていた。信玄の命により、歩き巫女と呼ばれる間諜集団を作り上げることを任ぜられている。

歩き巫女の最大の利点は、国を自由に行き来できる点にある。
男は土地に縛られ、自由に動くことはままならない。
彼女達は関所も手形いらずで通過でき、芸を行なって旅先の民家に宿泊させてもらうこともできた。

クノイチと呼ばれる女忍者のイメージは後年の伝奇小説によるもので、実際には戦闘による術などはまず使わない。情報収集が主となり、町人などにまぎれて密かに活動を行なうものである。

信玄は戦においては、数の優位性を否定していた。半分の兵力でも、見せかたによっては倍以上に敵を欺く事ができると家臣達に教えている。その信玄が情報戦を最も重要な要素として考えたのは、当然のことであろう。

いつの時代も敵の情報を握ることは、有効な対策を企てる機会を得る。戦力が拮抗している相手ならば、弱点を探り利点を活かして、最も有効な戦略をしいて攻める事が可能だ。

さらに、信玄は女というものの力をよく理解していた。
男では入り込めない、得られない情報を女は容易く入手する。

歩き巫女の育成は、戦略上の急務の課題であったろう。

歩き巫女は、国各地を遍歴し祈祷・託宣・勧進などを行なうとあるが、おそらくは、地理学、
薬学などにも精通し、時に応じては性戯をもって閨での情報収集を行なっていたと思われる。

歴史は男が創るものだが、女は歴史を動かす。
戦乱の世には史実には語られない苛烈な陰の戦があった。


信玄はその大きな眼を見開いて、千代を手招きした。

「ちこう寄れ」

千代は軽く頭を下げて音もなく信玄に歩み寄った。
堂内は暗く毘沙門天の仏像を前に蝋燭が囲むように置かれている。

橙色の灯りの陰影に映し出される千代の顔は、息をのむほど美しかった。
一時は妻となり、幼いながらも覚悟を決めた強さが見てとれる。

背は低く流れるような黒髪を背中に垂らしている。
端正な顔立ちに匂うような優雅な挙措があった。

薄く笑っているような白い表情と紅をのせた唇が、凄艶な色気を映し出している。


「親方様…」

ゆっくりと信玄の前に立つと、衣服をさらりと脱ぎ捨てて擦り寄っていく。

信玄は身体の中に納めるようにして、千代を抱きかかえて愛撫をした。
千代は低く呻きながら、身体を震わせた。

さやが信玄のものをおさめ上下に動き出す。
さやを貫ぬきながら信玄は短く言った。

「もはや猶予はない。急ぐのだ」

「御意。千代におまかせください…」

答えながら、さやは隆起してくる信玄を受入れて激しく動いた。

やがて、ふたつの影は重なり合いながら歓喜の絶頂を迎えていた。



棚通りにある米問屋のだるま屋から、大三元兼之介が暗い顔で出てきた。
眉間に皺を集めて考え込んでいる。

だるま屋は、さやが7つの時から奉公している店だった。
さやはもう一奉公人ではなく、まるで娘の待遇で扱われていた。

だるま屋の夫婦は、さやをゆくゆくは長男の嫁にと考えていたようだ。

「はぁ…」

ため息をつきながら、兼之介は突から言われた期限を考えていた。
今より一月後、迎えにくると言った。

だるま屋に顔を出したのは、夫婦に話をするために来たのである。
おいおい、夫婦のところに公に沙汰がくるだろうが、先に知っておいたほうが良いだろうと思ったからだ。

幸い、さやは今日は暇をあげて出かけているとのことである。
いてはさすがに話しづらいのだが、遅いか早いかの違いだ。それでも、今それをさやに告げるのは躊躇われる。

さやはもう、帳簿をまかされるほどに信頼され、実質は番頭よりも頼りにされている。
立場上、下働きの端女にはしているが扱いはもう愛娘の如く可愛がっている。

それもこれも、さやの利発でいて天真爛漫な明るさと、優しい性根のおかげでもあった。

夫婦は話を聞いて相当落胆していた。おかみに至ってはわんわん泣き出し、主人がなだめるのに必死だった。
しかし、これを断るは不忠になる。せめて、いる間だけでも親のような真似事をしてあげようと涙ながらに語った。


さもありなん…。歩き巫女になるは人としての生き様を捨てねばならない。さやが、この世にいたことすら語る事ができなくなるのだから…。


兼之介は、夫婦以上に残念でならない。

寺子屋の子供達は姉のように慕っている。実質、さやが子供達をまとめているようなものだ。
さやがいなくなったら…。

そう思うと、やりきれない絶望感が込上げてくる。

空をふと見上げると、いまいましいことに快晴で爽やかな卯月の日和だ。
気づくといつの間にか、町を外れた橋の袂まで歩いてきていた。

小さな橋の下には、清らかな青流が流れる小川があり、周りには田園の緑が広がっている。


「あっ!先生」

声がするほうを見ると、橋の反対側にさやがいた。

寺子屋でしか顔をあわせることがなかったが、最近は店が忙しく顔を見せる事が少ない。

さやは、亜麻色の長い髪をなびかせながらてを振りながら走ってきた。

「さや」

「先生、ご無沙汰しております」

息を切らしながら、にこにこと笑顔を向けてきた。

それにしても、ますます美しくなる。
体つきも丸みを帯びて、若くたおやかな身体がはちきれんばかりに主張していた。

無論、さやはそんなことは自分で気づいていない。
女が自覚していない美をふりまくのは、成人の男にとっては酷であった。

兼之介はさやの紺碧の瞳にじっと見られるのが苦手だった。
なんとなく、こちらの考えを読まれている気がするのである。


「どうしました?」

そう問われて、言葉に窮した。

「い、いや何。ところでお前は使いの帰りか」

あわてて、話題を反らして逃れるがさやの顔をまともに見れなかった。
それは、件の話もせいでもあり、どことなく後ろめたかった。

「ええ。ほらこれ!与兵さんのとこで茄子の苗木を分けてもらったんです」

「ほう、茄子か。漬けると美味いな」

「わたしも大好きです」


そう言って、さやは太陽のように笑う。

兼之介は、少し考え込んで意を決したようにさやを見た。

「さや、少し時間はあるか?」

「えっ?あ、はい。今日は店もお休みなので」

「そうか。よし」

兼之介はさやを少し離れた高台の丘へと誘い、並ぶようにして座った。
丘からは城下まで一望でき、見晴らしは最高だった。

「先生、お昼まだじゃないですか?」

「ん…。ああ、そういやまだだな」

さやは苗木の袋とは別に、持っていた風呂敷を広げると、笹に包まれた握り飯と漬け物があった。

「弁当か。用意がいいのう」

兼之介が感心して言うと、さやは舌をペロッと出して照れている。

「今日はお休みを頂いたので、用事がてら少しより道をしていこうと用意していたんです」

「相変わらずさかしいな、さやは」

兼之介がそう言って笑うと、さやも同じように手で口を抑えながらクスクス笑い出した。

さやから、握り飯をひとつもらい口にほおばる。
黒い海苔をまきつけて、中には梅干しが入っている。


「美味い!塩加減が絶妙だの」

「よかった。それわたしが握ったんですよ」

「そうか。しかし、黒海苔とは贅沢だの」

「わたしもそう言ったのですが、女中頭の早苗さんにいいよと勧められて…」

「なに?あのケチな女中頭がそう言ったのか!こりゃたまげたの」

兼之介が目を丸くして驚くと、さやに早苗さんは倹約家だけどいい人なんですよとたしなめられた。
漬け物をゆっくりと噛みながら、城下を見るとひとすじの河が南西にいくつもの筋をつくって流れている。

「さや」

「はい?」

「ゆく河の流れは絶えずして…」

さやは、それに答えてすらすらと流れるように朗読した。


「しかももとの水にあらず。淀みに浮ぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例(ためし)なし。世の中にある人と、栖(すみか)とまたかくのごとし…」


「うむ。もういい」

「もぅ、最後まで覚えてますのに…」


さやは、口を尖らせてなじるが、兼之介は笑いながらなだめた。

鎌倉時代の歌人・鴨長明作の方丈記の一節である。


「知らず、生れ死ぬる人、何方(いずかた)より来たりて、何方へか去る…か」

兼之介がそう読むと、さやは少し寂しそうな目で遠くを見ていた。

「人はどこから来てどこへ行くのか…という意味ですね」

「ああ。それが人の一生だな」

「わたしは人が生まれたら、最後は土に還るだけだと思います」

「ふむ」

「先生。先生は輪廻ってあると思いますか」

「うーん、経験したことはないからのぉ。でも、あると信じたいものだな」

「わたしは絶対あると思うんです。それに…」

「なんだ?」

「夢を見るんです。どこかの見知らぬ土地で暮らしていた夢を」

「ほぅ。どんなところだそこは」

「うまく言えないんですけど…わたしは剣を持って闘っていた気がします」

「ふぅむ…」

「最近、よく同じ夢を見るんです。その度に不安になって…」


さやはうつむいて不安そうに下を向いた。
陰を落としたその表情にははっきりと怯えが見てとれる。

兼之介はさやの頭を軽くなでながら、大丈夫だと励ました。

しかし、そう言いながらも歩き巫女への招集の件は自分にはどうにもできなことである。
何が大丈夫なのか。口先だけの気休めを言うしか無い自分に腹が立ってくる。

さやは、頭をなでられて気持ち良さそうに目をつむっていた。

早熟であるとは言え、まだ十四の少女である。
しかも、すべてを並以上にこなすこの娘の努力を皆知らない。

天才とは言え、影の積重なる精進の賜物であることも事実だ。
出来すぎてしまう故に、同年代には精神的に頼れるものなどいなかった。

唯一、兼之介だけがさやが甘える事のできる大人であり師匠である。

件のことを考えると鉛のように気が重い。
両親を亡くし悲しさを押し殺して必死に耐えている痛みが、兼之介にはよくわかる。

さやは耐えている。そして絶えず闘っていた。

兼之介はさやに確かめるように問う。

「さや、お前は将来何になりたいのだ?」

いきなりの問いにさやは、首をかしげて考え込む。


「え、将来ですかぁ?え〜〜っとぉ…」

「はは。お前ほどの器量なら、どこぞの良縁にでも恵まれていい嫁になるとは思うがの」

「なっ…わ、わたしは…嫁いだりなぞしません…」

そう言って、ぷいと横を向いてしまった。


「おいおい、どこかに嫁いで子どもを作り育てるのも立派な仕事であろうが」

「…わたしは嫁いだりしません。…ずっと…ずっと先生のおそばで学びとうございます」

見ると耳たぶまで真っ赤にして顔をそむけている。


「う〜む、ありがたい話だがの。そんなことをしたら、私が米屋の主人に殺されてしまうよ。それにお前は頭もよく気だても良い。お前の婿になるものは黄金を手に入れるより果報者だ」

「……」

さやは、そっぽを向いたまま無言である。

兼之介がいくら褒めてもうんともすんとも言わなくなった。
途方にくれてしまい、これではとても歩き巫女の件は切り出せそうにない。

日が陰って少し風も出てきた。さすがに陽がなくなると肌寒かった。

「さて…、そろそろ帰るか。の?いい加減機嫌を直せ」

兼之介がさやの背中に語りかけると、肩が震えている。

泣いているのだ。さやは声を出さずに泣いていた。


「さや?」

「嫌です……」

「あ?」

「嫌です!嫁ぐのは嫌です。ずっとずっと…先生の…側に…」

「…わかった。わかったよ、さや。だからもう帰ろう」



兼之介がそう言うと、さやは振り向きざまに兼之介の胸に飛び込んできた。


「さや…」

「わたしは異人の娘です…。こんな髪の色で目の青い娘などもらってくれる人もおりません。それに、わたしは…わたしは」

「わかった、わかったから。さや、わかったよ」


兼之介は、さやをしっかりと抱きしめながら今はっきりとわかった。
自分もさやを愛しているのだ。そして誰にも渡したくないと。

亡くなった娘のような想いで見てきたはずが、いつしかそれを超えた愛情に変わっていた。

さやは、ただ運命に流されるような娘ではない。
どこまでも逆風に立ち向かっていくだろう。


兼之介は暮れていく城下を見下ろしながら、さやの涙を指でぬぐいながらある決心をした。
さやを歩き巫女になどさせはしない。

「消えずといへども夕を待つ事なし」

そう呟くと、さやもようやく笑顔を取り戻していた。


【続く】




テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

さや 【壱】

defdvsdvbj


大三元兼之介が首飾りの生産に勤しんでいると、ふいに背後から肩を叩かれた。

振り向くと髭面の男が笑顔を溜めて笑っている。
馴染みの顔だ。

「やぁ。突さんか」

兼之介はそう言うと手を休めて、ゆっくりと伸びをした。


「精がでるなぁ。どうだい?もう昼時だし飯でも食いに行かないか」

「いいね」


二人は近くにある小料理屋の暖簾をくぐった。

一番奥の平座敷にあがると、お茶を運んできた小娘に定食を注文する。
娘は元気よく答えながら厨房に料理を伝えると、あいよっ!と威勢のいい返事が返ってくる。

突と呼ばれた四十絡みの男は、湯のみを両手で持ちながらふぅふぅと冷してお茶を啜った。

「どうだい最近」

そう言いながら、突が目を丸くしておどけた様子で首を前にだす。
まるで亀のような様が妙に可笑しいので、兼之介は思わず吹き出した。


「どうもこうも、相変わらずさ。そっちは?」

「こっちもさ。貧乏暇無し」

突が肩をすくめながら顔をしかめて口をへの字に曲げた。

いちいち面白いので、兼之介は突の顔をまともに見ていられない。
しかし、突は別にふざけているわけでもなく、このような質なのであった。

お互い注文した、鰯の定食が来ると醤油をかけて食べ始めた。
あとは味噌汁とタクワンが付いてきた。

安くて美味い。この店は武田民御用達の名店である。

二人とも飯を無言で食べる。男は食事中に無駄なおしゃべりは厳禁だ。
何か話があれば、食事が終わってからである。

飯を食い終わると、茶のお代わりを頼んだ。

シーシーと楊枝を口で回しながら、突は兼之介の顔をじっと見た。

「じつは折り入っての頼みなんだが…」

神妙な顔をして頭をぼりぼりと掻きながら、一文字に口を結ぶと、またしても眉間に皺をよせ、目をくるくると回している。
口をとがらせて、仏頂面を決め込んだ狸のようだった。
まるで福笑いであるかのように、表情が変化していくので堪らない。

縁のない人が見ればからかっているのかと思えるだろうが、兼之介はつきあいの長さから突が大真面目だということは理解していた。

理解はしていたが、やはり可笑しいものは可笑しいのである。


「なんだね頼みというのは」

笑いを堪えながら、兼之介は突の顔を避けるように下を向いて冷めたお茶を啜った。

「うむ…。三元さんは、ほれ、寺子屋で童どもに手習いなどを教えておるだろう」

「ああ、うん」

「それでな、そこの生徒に、さやという名の娘がおるだろう」

「さや?ああ、いるよ。それが?」

「ちょっと込み入った話なのだが…望月千代女殿を存じておるかね」

「ああ、親方様の命を受けて「甲斐信濃二国巫女頭領」を任された方だろう」

「うむ。その千代女殿が是非にさやを信濃に欲しいと言われておってな…」

「え?まさか…さやを歩き巫女に!?」


戦国時代、上忍の家柄 「甲賀望月氏」の甲賀望月氏の本家に当たる信濃豪族の望月氏当主・望月盛時に嫁入りした望月千代女が、武田信玄の命にて甲斐・信濃の巫女の統帥「甲斐信濃二国巫女頭領」を任され、「女間諜」の養成を行うため、信州小県郡禰津村の古御館に「甲斐信濃巫女道」の修練道場を開いた。

戦で、孤児や捨て子となった少女達数百人を集め、呪術や祈祷から忍術、護身術の他、相手が男性だった時の為に色香(性技等)で男を惑わし情報収集する方法などを教え、諸国を往来できるよう巫女としての修行も積ませた。

それが歩き巫女と言われるクノイチ集団であった。

一人前となった巫女達は全国各地に送りこまれ、彼女達から知り得た情報を集め武田信玄に伝えたと言われており、武田家の情報収集に大きな役割を果したという。


「いや…しかし、さやは…」

兼之介は先ほどのんびりした心持ちは消し飛んで、思わず腕を組んで唸った。


「さやは14歳であるが…あの子には普通の暮らしをさせてやりたいと…」

「気持ちはわかる。わかるが、千代女殿が言うにはあれほどの器量と質を備えた者はそうはいない、是非にと申されておるのだよ」

「どこで、さやを知ったのだろう?」

「先だっての奉納ということだ」

「あっ…」


一ヶ月ほど前、甲府にて「武田神社古武道武技奉納」が取り行われた。
男と女が別れて体技などを競うものだが、女の部でさやは二番手となったのだ。

大人の手練に紛れての二番手となり、見物人からは拍手喝采を浴びた。

さやは、十ニ歳ながら背は高く大人の女性とも見劣りしない立派な体格だった。
父は日本視察に来ていた農学者のオランダ人である。在住中に一人の娘を見初めて夫婦になり、さやが生まれた。

さやが七つの時に、戦で家を焼かれて両親はその時に亡くなっている。

髪は亜麻色で目は青く鼻が高い。そんな、さやを当然のごとく周囲は異人の子と忌み嫌い蔑んだ。

親戚の計らいで米問屋へ奉公に出されたが、体のいい追っ払いだった。
部落民的排他主義は、どこにでもつきまとう。

しかし、さやは泣き言を言わずに一生懸命働いた。

父に教えてもらっていた、読み書き、算術なども達者にこなし、一度覚えた事は決して忘れない。
それでいて屈託のない明るさで人に接していく。

奉公連中も、はじめは敬遠して嫌がらせをしていたが、さやの優しい性根と利発な機転に感心しはじめた。
手紙を代筆したり、番頭の勘定の数字間違いを教えたりと、その才気を発揮していった。

十歳になると、背もすくっと伸びて明るさに加えて。清楚な華やかさを纏うようになった。
さらに、主人に頼み込んで近くの剣術指南の道場に通えるようになった。

さやは、戦で命を落とした人々を守れるぐらいの力が欲しかったのだ。
せめて一人でもいい。自らの手で守れるぐらいの力が。

さやはめきめきと腕を上げた。身体能力にも、異能の片鱗を見せ、道場の同年代の男でさやに叶うものはいなくなっていた。
当然、ここでも女にいいようにやられては男としては立つ瀬が無い。
子どもと言っても、通ってきているのは武家の子ばかりである。
男の面目というものがまるつぶれであった。

男子は徒党を組んで、帰り道のさやを襲った。
手に持った木刀で、交互に殴りかかっていった。

さやの腕ならば、3人程度の剣など見切るに容易い。
しかし、さやは迫ってくる男子を動かずに見据えた。

先頭の男子が打ち込もうとすると、はっとその剣を止める。

さやは、はらはらと涙を流して泣いていたのである。

道場の稽古ではどんなにきつく、先輩からいじめを受けても気丈に笑顔を見せていたさやが泣いている。

男子達は驚いた。



「なぜ泣く。怖いのか」

「いいえ」

「ではなぜだ」

「あたしがあなたたちに、そこまで辛い恥をかかせていたのに今気がつきました」

「……」

「どうか気の済むまで打ち据えてください。この思い上がった性根が消えるまで…」


そう言って、涙を拭いてにっこり笑うさやの顔は、恐るべき威容で包まれていた。
果たしてこれが十歳ごときの女童が言える言葉であろうか。
男子達は、ことごとくその迫力にのまれ、言葉を失った。

如何に自分達が卑怯でみっともない事をしていたかを悟り、ともどもに自戒して泣いていた。
さやと一緒にわんわんと泣いた。今までのわだかまった想いを洗い流すように。

それから、さやは同年代の筆頭となった。
誰も文句もなく、男子達はさやに教えを請うまでになっていた。



さやが寺子屋にきたのは、簪(かんざし)職人だった兼之介が四年前に寺子屋を開いた時である。

簪(かんざし)の飾りの美しさに魅了され、半ば押し掛けて名人と呼ばれる甚五郎の弟子となり、いっぱしの簪職人となっていたが、やはり戦乱による焼き討ちで、妻と子供を失った。

戦の飛び火が小さな村を幾つもつぶし、田畑や森は焼かれて荒れ野になっていく。

名人もなくなった兼之介は落胆して周りを見ると、親を失った孤児が飢えて泣いていた。
両親の亡骸とともに、踞って死んでいく子供を見たときは、地面を叩いて叫んだ。

そして子供達を守ろうと決心したのである。

幸い父が蘭学者だったため、幼少から様々な知識を教え込まれていた。
寺子屋を作って子供達に生きる術を学ばせよう。


そして最初に入ってきたのが、さやであった。

初めに見たときは、その容姿に驚きもあったが、実に利発で賢く明るい。
可愛らしい転がるような声も心地よい。
聞けば、道場では筆頭も務めていると聞く。

兼之介は、さやに読み書きだけではなく、蘭学の科学、医術、農業、歴史などの初歩も教えた。
論理的な考察も学ばせて、それらを綿が水を吸い込むように吸収していく。

兼之介はさやの天賦の才に驚嘆した。
同時に強烈な不安にかられた。

さやのこの才が世にどのように顕現していくのか。

優れた人材は戦において力となる。
ある時期が来たら、さやには何か大きな転機がくるような気がしていた。

さやがいれば、どこでも人は寄ってくる。
子供達は、寺子屋にさやがいるというので、こぞって押しかけて入門をした。
たちまち寺子屋はさやを中心にいっぱいになった。

まさしく、さやは子供達のリーダであり姉のように母のように慈母深い女神のごとくあった。

そして4年が過ぎ、見目麗しく成長したさやを間諜にすべく千代女が欲しがっている。
宿命と言ってしまえばそれまでだが…。


「何とか断れないのだろうかなぁ」

兼之介が独り言のように呟くと、突も腕を組んで唸った。

「特務機関とは言え、あそこで訓練される娘達はみな華なら莟…。しかもすべて美しきものたちだ。聞けばさやという娘も大層な器量と聞く。せんないことだが…」

「うん…。確かにあれは天才だ。女子でなけれは天下を狙えた器かもしれんが」

「歩き巫女は、役割もそれぞれだが、それだけの器量であると武官の籠絡も任ぜられるだろうなぁ」

「……むぅ」


兼之介が手元にある湯呑みに目を落とすと、皮肉なことに茶柱がひとつぷかりと浮かんで立っていた。


【続】

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

EVAテイスト

vdfgnfg


葛城ミサト   はい……もしもし…。…何だリツコかぁ。

赤木リツコ   どう?彼氏とはうまく行ってる?

葛城ミサト   彼?ああ、シンジ君ね。信onを始めて二週間、相変らずよ。
        いまだに誰からも対話はこないのよね…。

赤木リツコ   対話?

葛城ミサト   必須アイテムだから、ずいぶん前にスカイプ教えたんだけどね、自分で使ったり、
        誰からもか誘われた様子、無いのよ。
        あいつ、ひょっとして友達いないんじゃないかしら。

赤木リツコ   シンジ君て、どうも友達作るには不向きな性格かもしれないわね。
        ヤマアラシのジレンマって話、知ってる?

葛城ミサト   ヤマアラシ?あの、トゲトゲの?

赤木リツコ   ヤマアラシの場合、相手に自分のぬくもりを伝えようと思っても、
        身を寄せれば寄せるほど身体中のトゲでお互いを傷つけてしまう。
        人間にも同じことが言えるわ。今のシンジ君は、心のどこかで、
        痛みにおびえて臆病になっているんでしょうね。

葛城ミサト   ま、そのうち気付くわよ、ネットゲーマーになるってことは、
        近づいたり離れたりを繰り返して、お互いが余り傷つかずにすむ距離を見付け出す、
        ってことに。



碇シンジ   うっ、うわぁっ!!

鈴原トウジ   すまんなぁ、新規生。わしはお前を殴らなあかん。殴っとかな気が済まへんのや。

相田ケンスケ  悪いね、この間の騒ぎで、アイツの妹さん、晒されちゃってさ。
        …ま、そういうことだから。

碇シンジ   僕だって、晒されたくて晒されてるわけじゃないのに…。



桶狭間の光秀を克服できず、半蔵からも逃げ出すシンジ。
だが一門は、少年をあっさりと連れ戻す。そこに優しい言葉は無かった。
次回、「クエ、逃げ出した後」。この次も、サービス、サービスぅ!

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

所感とちょっと言いたかった事

馴染みの三浦がガンダムオンラインで結構な金額を課金している。

「俺だって好きで課金してるわけじゃないんだ」

そう言って得意げに鼻を鳴らすのだが、俺金持ってんゾー自慢をしてるだけだ。

ガチャコンプというものがあるが、なるほどユーザー心理をつくいい商法だ。

子供の頃の心理は面白いもので、特に興味がないものでも、他人が集めたコレクションを見ているうちに集めてみようかなと思えてくることがあった。

人がいいアイテムをゲットすると自分も欲しくなるのは当然のこと。
いいアイテムが出るまでやめない!

これは、ジョジョの一期のワンシーンで、ディオ!君が泣くまで殴るのをやめない!といったところだろうか。
いやちょっと違うか。

ともあれ、三浦は今日も信にインしながらガチャをやる。そのうちガチャ男と呼ばれる日も近い。

さて、ここらで最近の信の所感を述べよう。

退屈だねぇと呪いのように言いたいところだが、そもそも能動的に自ら動かなければリアルだろうがネトゲだろうが退屈なのだ。

引きこもって、コナちゃんのようにキルバラの開発をしたり、同人誌を制作して己の趣味に没頭している人はおよそ退屈とは無縁だろう。

ネトゲで退屈だなと感じたら、それは至極正常なことである。
むしろ、おもしろくてしょうがないというのは、嵌りすぎて大事な何かを失ってしまう可能性がある。
少なくとも必ず何かを失う。

自分では気づかない。気づいていてもどうしようもない。
そんな人を他ゲーでも数多く見てきた。

つまり俺もそうであった時期がある。
他に責任転嫁をして自分にその原因を求めない。反省しない。改善しない。
典型的な自己中心の思考である。
周りから引かれる。人は離れていく。精神が壊れそうになる。

しかし、それが自分でコントロールできないから依存症として、ますます深みに嵌る。
ネトゲ自体に責任はない。すべて自らの責任だ。
あえて言うなら三浦のせいだ。そーよ、そーだわ港のヨーコ横浜横須賀。

歳を取ったせいもあるだろうが、執着心が薄れた今は、ネトゲと一番最適な距離を保つことができている。
というより毎日毎晩インすることもなくなったのだが。

もちろん、楽しくてしょうがない人は多々いるだろう。
否定はしない。そーいう時期が俺にもあった。藤井さんにもふぇいにもマソにもあった。

そう、いまこれを読んでいるあなたにも。

何気ない会話に、暖かさを感じたり、喜び、怒り、妬み、猜疑心、屈辱などの様々な想いをめぐらせてきたはずだ。


付き合いかたはそれぞれだ。

のんびり行こう。

人より強く、そして速く。

なんとなく適当で。

しっかりやって盛り上げよう。


結局、人が一番面白い。
与えられたコンテンツなどは、所詮、メーカーの利潤追求のためのサービスにしか過ぎないのだから。それを味付けしていくのが、ユーザー自身であり、世界を創るのはその一人一人のストーリーだ。
人の数だけドラマがある。ふぇいのレスだけ晒しがある。

だから、う〜んと何が言いたかったんだ俺は。
まぁいいか。今日はもう週末だしな。

そんなことを書いているうちに、時間がきてしまった。

俺は恥ずかしながら学がないので、なかなか真意をうまく表現できないことにジレンマを感じることがある。
だから、このようなダラダラとした長文になってしまう。

短く適切な文言を創りだす人はやはりすごいと感心するのだ。


あー、そうだ。
これは、ゲームに関係ないことだが、最近の自殺のニュースで感じたことを書かせて頂きたい。

これはあくまでも俺の私見なので、読んでみて違うんじゃね?と思われることもあるだろう。
しかし、俺が親から教わったことでもあり、曲げることの無い考え方である。



続きを読む

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

お前の懺悔室1〜うつろいゆく源の魂 【後編】

vsdbsdds



男性機能不全により、南蛮街の教会へ相談に来た真紅の種馬、池田源十朗。
しかし、意を決して悩みを打ち明けた途端、神父に一笑にふされてしまう。

「神父さん…。笑いごっちゃないんすけど」

「い、いや笑ってません。ごほっ…。ちょっと、昼食を食べ過ぎてむせただけですので」

肩が震えている。必死でこらえてるのは一目瞭然だ。
源がこの胡散臭い神父に対して、猜疑心を持ったとしても責められる事ではない。

というか、神父=地獄突とは知らずに相談している時点で乙であった。

「……まぁ、いいんすけど、とにかくインポテンツになっちまったんです。医者も薬もまったく効果なし。どうすりゃいいんすかね」

「ふぅむ…」


神父はようやく笑いをおさまったようで、一息ついて考え込むフリをしている。

<大丈夫かよこいつ>


源はそう思ったが、ここまで来たらとりあえずは一通りアドバイスというものを受けてみるしかなかった。
どうせ、誰にも言えない悩みである。


「よくありますね。そのような相談は」

神父=地獄突は、落ち着いた声でそう言った。

源は身を乗り出してカウンターにひっつかんばかりに詰め寄る。

「え!まじすか!!まじ山まじ男っすか!」

「まじ山まじ男です。なんですかねえ。これも現代病とでもいうんでしょうか…。おっきしないという相談は結構あります」

まじかよ…。俺だけじゃないんだ、この悩みを抱えている人は…。

源は少し気が楽になった。


「同じ悩みを抱えた人同士で一門を立ち上げるような事も言ってましたねえ」

「へぇ…。どんな名前の一門なんだろう」

「え〜と確か…あぁ、思い出しました」

「なんて一門名です?」

「流星人間チンポとか言ってましたよ」

「……名前からしてダメだろうそれ…」


源は聞いた俺が馬鹿だったと後悔した。後悔先に立たず。
出てくるボキャも立たないとかの語彙が増えてきた。
このままでは本当にやばい。


「あの〜、それで何かいいアドバイスはないんすか?」

「う〜ん。医者も薬もダメなら、温泉とかどうでしょう」

「ふむ、温泉かぁ…」

「機能不全に利く温泉の混浴とか入れば、眠っていた息子も起き上がるかもしれませんよ」

「どこかいい温泉を知ってます?」

「そうですねえ…。しごき温泉とか言うところがあるそうですが…」

「しごき温泉!?名前からしてハードそうだけど…」

「あまりお奨めはできませんね。そこは男性限定で女人はいませんので。治ったとしても。ほとんどゲイかホモになって帰ってくるそうですし」

「嫌すぎる;別なリビドーに目覚めそうだ;;」

「ふんどし締めて、こいよ!とか言われるそうですよ」

「こぇええ;ダメだな。俺には無理無理」

「ふぅむ、となると…」

地獄突は、何やらごそごそと袋から取り出している。

編み目のカウンター越しに、コトリと音を立ててあるアイテムを目の前に置いた。


「これは?」

源がそう聞くと、ローブから見える地獄突の口元が下品に歪んだ。


「これは、あなたのような人に対しての救済アイテムですよ。ご覧なさい…」

地獄突はアイテムを手にとり、何やらスイッチを入れた。

そのアイテムは、透明な男性器の形を取り、その表面にはラバー上の丸い突起が無数にしつらえてある。

ウィン、ウィンと唸りながら、不規則な回転をループさせている。


「これ電動バイブっすか…」

源はもうつっこむのも嫌になっていた。


「手が切られれば足で這い、足を切られれば腹で這う。まさに背水の陣で挑むあなたには最適のアイテムでしょう」


地獄突は至極真面目に訴えている。

「かっこいいけど、かっこ悪い;しかもバイブで侍魂を唱えられてもなぁ」

源はバイブを手に取り、まじまじと眺めた。

「ん?なんだこれ…」


バイブの取っ手の部分に墨文字で何か書いてあった。


「ふ…じ…い。おい!これ名前が書いてあるぞ」

「はっはっはっ。ブランドですよ。そのバイブは世界最高のブランド、FUJIIで作られたものなのですよ。ワイルドだろぅ〜?」

「ワイルドじゃねえ。なにがFUJIIだ。誰かのお下がりだろうこれ!」

「まぁまぁ…落ち着いて。私の師匠が言いました。あら?インポになったら道具を使えばいいじゃない。とね。落ち込む事はありません。我々には知恵と知識と経験があります。あなたの粗チンより、このFUJIIのほうが、何倍もいい仕事をしてくれるはずですよ」

「言いたい事をずけずけとまぁ……。どうにもおかしいぞ。お前誰だ!一体何者だよ」

「あなたの隣人であり、友ですよ。まぁ、そんな騰がらず、お座りなさい」

突はあくまでも正体を明かさない。

まったく内心笑いをこらえきれない。からかっているのだ。
そもそも、地獄突がなんでこのようなことをしているのかというと、知人の神父が旅行にいくので一週間ばかり代役を頼まれたのである。

突はかずはにはこのことを教えておいたが、さすがにそんなことを源は知るよしもなく。
源には教えておこうと思ったのだが、とりあえず内緒にしておいたほうが面白いと思ったのであった。

源はムスッとしながら椅子に座った。

不審な目を神父突に向けると、乱暴な口調でつっかかる。

「真面目にやってくれ。真面目に。こちとら真剣なんだ。恋にやぶれてトラウマ背負い、勃たたなくなってもう三月。どうする、どうなの、どうなんだい!このまま俺は女とやれない人生か。何とかしてくれよ神父さん;おらやだ、もうやだ;;」


悲痛な叫びである。命がけの問いでもあった。

突もさすがに気の毒になってきた。そりゃオナニーもできない身体になったらそりゃ辛い。
辛いデービス.Jrだろう。コーンコンスキャコーンとか言ってる場合ではない。

マソが生前言ってたっけなぁ。性戯に果てあれどオナニーに果ては無しと。
至言だな。

突は、真剣に源のために人肌脱ぐ気になった。
静かな声で諭すように源に話しかけた。

「わかりました…。真面目にやりましょう。まずは原因を探ることにしてみましょう。内的外傷は深層心理の奥深くに根ざしているものです。そこを究明できればあるいは…」

もっともらしいことを、とりあえず言ってみる。

源はそれを聞いて、落ち着きを取り戻した。


「…よろしくお願いします」


「まず、考えられる原因を話してください」

「う〜〜ンと…。やっぱ失恋したことだろうなぁ」

「ほぅ。それは相当まじだったのですか」

「ええまぁ…。まじです。大まじでした」

「振られたことが相当ショックだったようですね」

「かなり…」

「なるほど…。失恋ですか…」


源はまたあの悪夢を思い出していた。

毎晩寝る度に、三浦の顔を「ふひひ」と笑った声が耳にこびりついている。
ウンコをして仕返しをしたつもりだったが、逆に自分自身がみじめになっている。


「それなら処方は簡単です。新しい恋を見つけることですね」

「恋?いやいやいや…そう簡単にふっきれないから困ってるんだけど…」

「人の思いは歳月を重ねるごとに、風化していくものです。知ってましたか?人間は忘れることで己の理性を保っているのです。いいことも悪いことも雨のように流れて消えていく。それが人の人生です」

「………」

「一歩を踏み出すのです。今こそ部屋から出てハロワに行きましょう!そこであなたの人生は変わります」

「…ちょっと待て。俺は別に引きこもりのニートじゃねえよ」

「あ…。これは失礼。ちょっと脱線しました(テヘ。とにかく恋です恋。恋をしなさい」

「恋ねぇ…。俺にまた、あんな想いができる恋なんざできるのだろうか…」

「マジで恋する5秒前という唄があるじゃないですか!ようはやる気です根性です。そしてファムファタルを見つけるのです!」

「そうか…。そうかもしれないな。恋をしたら俺のインポも治るのかもしれないな」

「間違いありません。さぁ、行くのです。新たな恋、素敵なサムシングを見つける旅に!」

「わかったよ神父さん!礼を言うぜ。早速、秘蔵のリア美ちゃんリストで対話をいれまくってみよう」

「幸運を」


源は意気揚々と教会を出ていった。
そのうちインポも治り、もとの生活に戻るだろう。

失恋の痛手は、新たなる恋でしか癒せない。
突は源の後ろ姿を見送りながら、うんうんと頷いていた。

突はこのやりとりを速攻で2chで晒していたが、特に話題もならずスルーされたという。
最高だろ?この話と書いたら、しかしお前が最低とレスを返され顔を真っ赤にしてふぁびよった。

それ以来、突の姿を見たものはいない。



三ヶ月後─。


不動かずはは、甲府の町を草餅を食べながら散策していた。

するとまた神社のベンチに座っている源をみかけた。
ぐったりしてうなだれている。
憔悴しきった、その顔は生気を抜かれた碇シンジのようだった。

「あらん、源たん。おひさしぃ」

「ああ、かずはちゃん。おひさ…」

「どったのぉ?またまた元気ないじゃない。まぁだ悩んでるならお姉さんに話してみんさい!」

「いや、前の悩みは治ったんで解消されたんだが…」

「あら、新しい悩みかえ?」

「いや…実は」


源は、あれから新しい彼女をゲットしていた。しかも真紅一のリア美ちゃんと誉れの娘である。
普通ならうきうきうはうはで毎日がびっくりするほどユートピアなはずだ。

しかし、ひとつ問題があった。

リア美ちゃんの一人がアフリカ系のハーフで夜の生活に不満を洩らしている。
インポは解消されたが、パワー不足ということだ。

例えるなら源の息子は、国産のシビックの直列4気筒。彼女はフォード・マスタングのV8エンジンだ。
これでは、並走もできず不満がでるのも当然である。

そこで、源は荒っぽい方法に踏み切るしか無かった。
日の本の国。侍男児が馬鹿にされては、日本の恥である。

そこで源が取った手段とは…


「俺…真珠いれたんだ。そして彼女と夜のタイトルマッチさ。フルスロットルで燃え尽きたぜ…真っ白になぁ」

かずはは真珠の意味がわからなかったが、疲弊しながらも満足そうな表情を浮かべる源に「よかったね♡」と言った。


この後に、源は真珠郎と呼ばれることになるのだが…それはまだかなり先のことであった。


【完】

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

お前の懺悔室1〜うつろいゆく源の魂




不動かずはが甲府の町を散策していると、池田源十朗が肩を落として神社のベンチに座っている。
まるでこの世の不幸を全て纏ったかのようなオーラが出ていた。

「あらん、どうしたの源たん」

かずはに声をかけられて顔を上げた源は、まるで濡れた犬のような情けない風体をしている。

「あぁ、かずはちゃんか…。ちょっとね」

「ちょっと!ひどい顔だお。悩みがあるならお姉さんに話してみんさい」

「いや…。これはちょっと人には言えない悩みなんだ」


源がかぶりを振って、深いため息をついた。
相当、深刻な悩みらしい。

そんな源を見て、かずはは考え込んでいる。


「辛そうねえ…。あっ、そうだ!」

かずはは、ぽん!と手を叩いて思い出したように叫んだ。


「堺!堺に行ってみたら?」

「え…。なんで堺?」


源は不審そうにかずはを見たが、様子を見ると真剣な面差しだ。


「堺の教会にお悩み懺悔室っていうのがあるの。悩みを聞いてもらうと何かいい解決法があるかもよ」

「懺悔室…ねぇ」

「守秘義務もあるから、誰にも言えない悩みを打ち明けるのに最適だお」

「ふぅん…そうか。そんなところがあるなら行ってみようかな」

「うんうん、全部吐き出してすっきり抜いてくるんだ!そしたら絶対元気になるよ」

「あのねぇ、かずはちゃん。ソープじゃないんだから…」

「テヘェ」

舌をぺろっと出しながら、おどけるかずは。

落ち込んだときは、こんなアホな明るさがありがたい。

「わかったよ。暇みて行ってみるとする」

「うんうん。絶対行ったほうがいいよ!まぁ…でも…」

「ん?何かあんの」

「う、ううん。なんでもなぁい。行ってみりゃわかるよぅ」

「ふぅん」


屋敷に戻って源は考えた。

このまま、悩んでいてもしょうがない。
恋愛トラウマのインポテンツなんて誰にも話せないのだ。
あれから、川崎、五反田、錦糸町、吉原といったソープに行ってみたが、息子はいっこうにスタンダップしない。
折れたバットじゃ野球はできん。立たない如意棒は信のドロップアイテム装備くらいに使えない。

○ァイザー製薬から、禁断の「強力ビンビン君スーパー!」を取り寄せようと思ったが、処方箋の基準がかなり厳しい。
保証人の押印が必須とのこと。
知られるのは嫌だ。それだけは嫌だ。嫌すぎる。嫌かもしれない。嫌じゃないかな。

知られたら…北斗の拳みたいに動いたらボンだ!と同じである。

とにかく、精神的なものであることには間違いない。
源はあれから、三浦と秋穂には会ってはいない。

秋穂とは連絡も取らなくなっていた。対話が来ても気のない挨拶をするくらいである。

源はさすがに腹の虫が収まらないので、腹いせに三浦の屋敷の庭でウンコをしてやった。
三浦が私設で飼っている猫の凸がくそでかい糞をしやがった!と喚いていたが、ばかめ、俺の糞だとは思うまい。

そんなせこい嫌がらせをして、源のまじ恋は終わったのである。

異変に気づいたのはそれからだ。
朝勃たない。そして性欲はあるのに反応しない。
さらに風俗で、お姉さんのすごいテクニックをもってしてもチャーリー・シーンである。


精神的ダメージが思いのほか、源の身体メカニズムに裂傷を起こしていたのである。


源はあせった。そして泣いた。

「うわぁぁぁあああ!!どうすんべぇええ;;おかあちゃん〜〜;;;」

不能な源はただの源である。飛べない豚はなんとやら。

病院にいき、針治療もやったし投薬もした。
しかし治らない。内的外傷は、普通の治療ではどうにもならない。

いよいよ宗教にでも頼るしかなかった。


「とにかく行ってみるか…」


源は意を決して堺へ向かった。


堺に着いて、教会のある南蛮人街へ向かう。
途中で一口カステイラを買って食べた。

美味かった。
そういえば、佐山聡(初代タイガーマスク)は、寝る前にカステイラを一本丸ごと食っていたというが、さすがに一本丸ごととかねぇわな。

などと、どうでもいい事を考えていると、いきなり対話が来た。

「信用卡可以用吗(クレジットカードが使える?)」

中華業者だ。この手合いには一言で終わらせるが吉だ。

「不能!」

あっ…。違った。不要だった…。


すると、対話が帰ってくる。

「辛苦您了(お疲れさまです)」

中華には俺はインポです!と聞こえただろうか。
情けなくなった。そして哀しくなった。

そうさ、今の俺はインポマン。テンツみなもとと言われても仕方ない。

糞ぅ。どうしてこんなことに…。
因果応報という言葉があるが…まさか。

何か俺に天罰でも下ったって言うのか!!<そのとおりだよ!>←さぁ、みなさんご一緒に


教会の前に行くと、階段の前に数名のプレイヤーが座ってだべっていた。
髪型がモヒカン、スキンヘッドや針金頭。

アナーキストなのかパンクなのかよくわからんが、最近はまたピストルズやクラッシュなんかのファッションがブレイクしてるのか。あれもあれでカブキものなんだろう。

深夜のコンビニかよここはと毒づく。
教会だってえのに、なんか退廃感が漂ってる。パリのデカダンなんぞは今の俺には不要だと言うのに。
こいつら、まさかネトウヨじゃねえだろうな。
そいつらを交わしながら、ドアを開ける。

ギィと重い音をたてて、正面のステンドグラスからこぼれる光が眩しい。
十字架に張り付けられたキリスト像がラモス瑠偉に見えた。
その礼拝堂では数名のクリスチャンらしきプレイヤーが座って聖書を読んだり、祈ったりしている。

源は右にある懺悔室を見つけた。
幸い今は誰も入ってはいないようだ。

迷わず懺悔室に向かい、ドアを開く。

中はせまくて薄暗く、間接照明が1個ついてるだけである。
パチンコの景品交換所のようなカウンターがあり、その向こうに神父が懺悔を聴くようになっている。
全面漆塗りのレトリックな造りだ。

神父は既にいた。黒いローブをまとっていて顔を深く沈めているので表情が読み取れない。
神父というより魔法使いのようだった。

神父は源を見るなり、静かな声で「あなたの罪をお話しなさい」と言った。

「実は……」

「ふむ」

「俺…俺の竿のリールにのっぴきならないトラブルが発生しまして…その…」

「………」

神父は無言だった。

長い間が空いた。


ぶふっ!


神父は吹いた。

神父の正体は地獄突であった。


<続く>

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

壁が足りない僕ら

fvfdbndf


恋は盲目と昔の人は言ったもの。

一目を憚らずいちゃついてるカップルを見ながら、よくもまぁ恥ずかしげもなくと池田の源は思っていたが、いざ自分がその身になると、確かに周囲は見えなくなるものと理解した。

真紅の種馬、池田源十朗は彼女がいる。セフレも2名キープしている。
現在、コナをかけている女も3名ほどいた。

別鯖で稼動していた時にも、別の彼女はいたのだが、3股がばれて包丁で刺されそうになった。

自宅にまで押し掛けてきて、ドアを開けるなり、包丁を取り出して「一緒に死んで!!」と泣きながら言われた。
なんとか説得して事なきをえたが、生きた心地はしなかった。
別れるときも、知人の仲裁でどうにか別れる事ができたが、元カノのストーカー行為は2ヶ月ほど続いたという。

さすがに懲りたのかそれ以降は、バレないように痕跡をまったく残さず処理をすることに心掛けている。

源は「処女はおっかねぇ」と口癖のように言う。
だから源が遊ぶのは主婦なのだ。

主婦の手練手管のテクニックと、甘えさせてくれる寛容なスタンス。
これこそが大人の男女の開放されたあり方だろうとうそぶいている。

そんな、好色一代男の源に晴天の霹靂が訪れる。

なんと、源がある女性プレイヤーに本気で惚れてしまった。

惚れてしまったら、恋の暴走特急はやめられない止まらない。
日を追う度に募る想い。せつない気持ちがこぼれ落ちる、胸がきゅんきゅん絞めつけられる。

本気の恋は人を変える。
逆に言えば、本気の恋もしたことのない奴は成長しない。

源はそう思っている。
しかし、本気の恋ができなかったからこそ、手当たり次第に女とつきあっていたのだろう。


野良で知り合ったその子は女侍である。

キャラネームは秋穂といった。

キャラクター越しに見える品の良さ。チャットをしていても、知的でいて暖かさを感じさせる受け答え。
聞けば、新規で友達と一緒に始めたのだそうだが、友達はみんなやめてしまって自分だけ残ったそうだ。

戦国武将が好きで小説も相当読んでいるとのこと。
歳は20代で家事手伝いということだけは教えてくれた。

源と秋穂は急速に親しくなった。
友達がいなくなったばかりで心細さも手伝ってか、秋穂も源に心を開いていった。

インしたら、まず秋穂のリストが光ってないかを確認する。
いれば、対話をいれて予定を決める。それが日課になっていた。

チャットの内容は他愛のないものだったが、それだけで十分すぎるほど楽しかった。
源が、たまに下ネタを言ってからかうと、秋穂はぷぅとむくれて「エッチ!もう知らない」と怒る。
そんなところもたまらなく愛おしく思えた。


ますます源は秋穂にのめり込んだ。

しかし、その異変にめざとく気がつくのが女である。
源のリアル彼女がこの頃ちっとも遊んでくれないとメールをしてくる。

「わりい、仕事が忙しくてな」と簡単なメールを返すが、それすらも鬱陶しい。
セフレの主婦からも連絡は来るが、会う気になれなかった。

それよりインして秋穂と会いたい。
そればかりが頭に浮かぶ。まるでこれでは中学生だ。なんてこった、この俺が。

そう思いもするのだが、この込上げてくる甘酸っぱい感情は止められない。
恋は誰しも人を詩人に変える。

源は以前のような節操のない軟派は影をひそめ、ぼーっともの憂げに沈む事が多くなっていった。


ある日、リアル彼女の誕生日にデートをすることになった。
当然乗り気ではない。
以前なら、まめにプレゼントを用意してレストランに予約をいれてホテルで宿泊といったお決まりのコースを考えていたものだが、今回はノープランだ。
しかも、デートをしていても心ここにあらずといった調子で、彼女はすっかり機嫌損ねている。

「まさか…浮気してないよね?」

「……」

そう言われて、心の蔵がばくばくになった。
そして答えられなかった。
これは浮気なのだろうかな。いや浮気じゃない。

本気である。だから最悪だ。
彼女に抱いていた、親しみや愛情が今はまったくないのである。

途端に、目の前にいる彼女にとてつもなくすまない気持ちになった。
二股三股をしていた頃はありえなかった感情である。

それだけ本気になってしまったのである。

単なる肉欲ならそれはもちろんあるが、本気で大事にしたものができると人は臆病になる。
秋穂には、つきあおうとか、リアルで会おうとかは一切口にしたことはない。
秋穂もそれを口に出す事はタブーであるかの如く口にはしない。

お互いが見ているのは、源と秋穂という人格が投影された仮想のパーソナリティである。
鏡の中にいる決して触れることができない2次元の投射物、すなわち入れ物である。

彼女は、食事を済ませると無言で手を振って帰っていった。
答えられない源の様子を見て、無言でかすかに笑っただけだった。
目が哀しそうに乾いていたのが、印象的だった。


終わったな。そう思ったが、逆に重い枷が身体にまとわりついた気がする。
自分には過ぎたいい女だったのかもしれない。

最低だ。そう思いながら、帰宅の途を辿る。


帰宅してインをすると、一通の信書が入っていた。
秋穂からだ。

急いでクリックして信書を開く。


「源ちゃん。いきなりのお手紙でごめんね。今日はインしてないようなので、明日ちょっと話したい事があります。とっても大事なお話です。夜の10時に私のお屋敷に来てください。待っています。 秋穂」

「大事な話…?」

まだメアドも聞き出せていないので、メールで連絡も取れない。

源は急激に不安にかられた。
一体なんだ大事な話って。


考えられることは各種ある。


1、結婚するので信辞めます

2、実は男なんです ついてます

3、お袋だったというオチ

4、好きです つきあってください


とにかく3だけは勘弁してもらいたいが、2はありうる話だ。寝釜なんざ無数に存在するし実際それで騙された奴は星の数ほどいる。1はまぁもうしょうがない。
4もありえない話ではないが、期待をすると必ず裏切られる。

人生はすべからくそうしたものなのだ。

驚天動地の結末になるのが、たまらなく怖かった。

が、彼女とも終わって、そろそろこの恋のにも決着をつけなければ、前に進めない。
腹をくくるしかないか。

源はその晩、布団に潜り込んだがなかなか寝付けなかった。

会社から帰宅すると夜の9時である。いつもなら、速攻でインして秋穂を探すのだが、今日はそんな気になれない。怖いのである。大事にしてきたものが一瞬のうちでガラクタになる瞬間。
それがたまらなく怖かった。

ビールを飲みながら、ログイン画面だけを表示して時間がくるのを待った。

5分前になり、ようやくインをする。

秋穂の屋敷は近江にあった。

屋敷に入ると鎧姿の女侍が正座をしている。
兜はつけずにポニーテールの黒髪が揺れているように見えた。


「あきちゃん…来たよ」

「源ちゃん」


二人は呼び合いながらお互いのアバターを屋敷の囲炉裏の前で対峙させた。

「大事な話って何?」

「うん…あのね、私ね…」


源はもう何を言われても受入れる覚悟を決めていた。

さすがに、目の前のキャラが自分のおかんとか以外は…。


「好きな人がいるの…」

「えっ」

「その人はとっても優しくて、いつもわたしを見守っていてくれて…頼りになる人なの」

「そ、それって…まさか」

「うん、すぐ近くにいる人…」


mona

「あ、あ、あ、あきちゃん!お、おれ、おれも!!」


源が動揺してどもっていると、いきなり陰陽のキャラが秋穂の隣に現れた。


「紹介するね。こちら三浦さん」

「三浦です!よろしく。ふひひ」


源の目の前には、施設でも馴染みだった三浦がいた。


「……あ?」

「源さん、おひさ!」

「あら、知り合いだったの二人とも」


困惑している源の様子など気にもせず秋穂は恥ずかしがりながら、いきさつを語った。


「三浦さんとは、源さんと知り合う前からずっと面倒みてもらっていて…。一昨日、告白されて正式におつきあいすることに…キャッ♡」

照れまくっている。小動物のように愛らしいのだが、源には何が何だかわからなかった。


「あ、あ……。え〜〜〜と…」


三浦がその様子をみて、ニカッと笑った。

「源さん。秋穂の面倒をみてくれてサンキュ。後は俺にまかせてくれ」

「………え。えぇぇぇええーーーー!?」

「驚かせてごめんね。でも、お兄さんみたいな、源ちゃんには一番に報せたかったの…」

源はモニターの前で固まっていた。頭がフラッグしていた。
あqwせdrfgtyふじこlp;

えーと…。何を言えばいいのかわからない。
カライセイロガンはタフでなければ完走できない。

おかんにナイキのバッシュを買ってきてくれと頼んで、ナイスのバッタもんを買ってこられたときのショック以上だ。
もうだめだ。

あれか。これはトンビに油揚げという結末ですか?
想定外だぜかのかっちゃん!

三浦の「ふひひ」が耳に響く。

こんなことなら、くそっ、くそっ!くそぅうううう!!!
壁がたりねぇ!

ははは…。

はははははははははははははは。

はっはっはっはっはっはっのはーだ。

その夜、源はカラオケスナックで「夢芝居」を泣きながら熱唱したという。


男と女 あやつりつられ

対のあげはの 誘い 誘われ

心はらはら 舞う夢芝居

恋はいつでも 初舞台  


源はこのあと半年ほどインポになった。

ま、めでたしめでたし。


テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

宿敵(とも)あり休止より来たる また楽しからずや

復帰したマソが、何やら稲葉の立食い蕎麦屋の前で悩んでいる。

「しっぽくか、花巻にするか…いやさ、やはり天ぷらか」

マソが腕を組んで悩んでいると、そこに通りかかったのは白夜一門の勇馬だった。


「マソじゃねぇか。何やってんだこんなとこで」

「…なんでぇ、ゆ〜まか。ここは天下の往来だ。犬や猫でも勝手に通ってらぁ」

「ゆ〜まってのばすのやめろこの野郎。相変わらずとっぽいなてめぇは」

「お前こそどうだチンカス、元気にしてたか」

売り言葉に買い言葉。
二人の間に凶悪な気が膨れ上がっていく。鯖統合以前からこの二人は宿敵なのだ。
顔をあわせれば一悶着を起こしていた。

臨戦態勢に入っていると急に勇馬がはぁとひと呼吸おいた。

往来で喧嘩をおっぱじめるほど勇馬はガキではない。
ましてや、最近は本業が忙しくて信のほうはとんと手をつけておらず、新年の挨拶にインしただけだった。

それに正月だしなと溜飲を下げて、勇馬は鼻をこすりながら周囲を見渡す。
集まりかけた野次馬も、興味を失い離れていった。


「おいマソ。ちくとつきあえよ」

「はぁ?おめぇと何をつきあうってんだ」

「水心ありゃって言うだろう。ちっと昔話で一献ささねぇかってこった」

「へっ。おめぇがどうしてもってんなら付き合ってもいいがよ」


マソも興をそがれたらしく、やりあおうって気はないようだった。

二人は肩をならべて歩きだし、昼からやっている居酒屋に入った。

出された肴を箸でつまみながら、二合徳利を手酌で猪口にさす二人。

無言のまま、すぐに徳利は空になった。

「おい!酒だ!おかわりだ」

マソが徳利を振りながら、店員を呼ぶ。

「へいへい、ただいま」

風采のあがらなそうな親父が、弱々しく答える。


「しけた店だな、ったく」

マソがそう悪態をつくと勇馬は、ギロリと睨んで面白くもなさそうに猪口を一気に煽った。


「マソォ…てめぇに対人タイマンで負けてから、俺の輝かしい伝説が崩壊しちまった。よりによってお前なんぞにな」

「ほう、そうかい。」

「あれから3年…。それをふっきるために信を休止してリアル商売を血の滲む思いで頑張ったんだ。その間にリアルの店は大繁盛しちまったがな」

「ふーん」

「ありとあらゆる苦渋を舐めてきたんだよ。てめぇにやられてから運が堕ちっぱなしだったからなぁ」

マソは勇馬の話を聞くうちに涙を流していた。そして泣きながら鼻を噛んだ。

ちーん。

「かぇえそうになぁ…;」

泣きながらマソがそう言うと、勇馬は蛇の目で睨みつけてドスをきかせた。


「なんだぁてめぇ。今さら同情でもすんのか!」

マソは、そんな勇馬の威嚇を気にもせず鼻を噛み終わると両手でティッシュを団子のように丸めた。
ぶすっとして鼻を噛んだティッシュを丸めて勇馬に放り投げる。


「ぱーぷー野郎!そりゃー俺のことだ。てめーが休止してからっていうもの、いじめる相手がいなくなって、退屈で退屈でとほほのほーよ!」

泣いていたのは自分のいじめる相手のいなかった時期を思い出しての事だった。
どこまでも自分本位の男だった。


「舐めやがってこのガキィ……」

勇馬の肩がぶるぶる震えている。右手に持ったビール瓶をつかんで今にも殴りかかりそうないきおいである。


「同情はしねえ。糞洩らそうが、信をやめようがてめーで選んだんだろうが」

そう言って、マソはしーしーと爪楊枝を口に加えてふんぞり返る。


「ちょっと待て。信オンと糞を一緒にするんじゃねえ!」

勇馬はそう言って立ち上がった。

「おちつけぇ!酒飲んでいきってんじゃねぇよ」

マソも負けじと机台を叩いて怒鳴る。


親父がおかわりを持ってきた。
二人の剣幕におどおどしながら厨房に下がっていく。

また手酌で無言で飲み始める。

どうにも話が途切れて話題が無い。

そうこうしているうちに、あっという間に6本の徳利が空になって転がっている。

酒の酔いも手伝ってか、勇馬が先に口を開いた。

「マソォ、てめぇいつまでこんなゲームをやってるつもりだぃ」

伝法調な物言いが更に乱暴になってきている。

マソはそんな勇馬を無視してスマホをいじくっていた。

「どうだ チンカスども…元気にしてるか と」

2chの晒しに書き込んでいるのだ。

「真面目に聞けってんだ、この和製ニコラスケイジ!」

勇馬がそう言ってマソの頭をひっぱたく。

「いてぇな!この信オンのトム・クルーズがよ」


二人を見ながら親父が呆れ顔で「アホや…」とつぶやく。


マソがそう返すと、勇馬はニヤリと笑って机に肘をつき身を乗り出した。

「いいかマソ、ひっくぅ。世の中はな、てめぇの考えているよりず〜〜〜っと厳しいんだぜ。ミツカンでキビポンどころじゃねえんだ。わかるか?」

「なんだ、うぜぇなこいつは」

「いいか、俺ぁなそんな世間の荒波をくぐって、耐え難きを耐え、偲び難きを偲び…」

説教モードだ。こうなると話は長い。しかも人の苦労話を酒の席で聞くほどうぜぇことはない。
マソは辟易しながら、隣で怯えた顔で飲んでいるカップルに顔を向けた。

「いるんだよなー。酔っぱらって苦労話をしつこくする奴がよー。たまんねーな」

マソが同意を求めるかの如くそのカップルにボソボソと話しかけた。
カップルは愛想笑いをしながら、あいづちを打つ。当然、こんな輩に関りたくはない。

すると、いきなりマソの脳天に衝撃が走った。
勇馬が徳利を持ってマソの頭を勝ち割ったのだ。

「真面目に話を聞けや!この野郎!!」

激昂しながら、勇馬が叫ぶ。

「……」

マソは無言で、割れた徳利の欠片を払うと片してある空のビール瓶を持って勇馬に飛びかかっていった。


「てめっ!上等だこの野郎」

「やんのかガキィ!」


遂におっぱじまった。

机や椅子を放り投げての大乱闘である。
酒が入ってるから尚更悪い。

二人とも周囲のことなんざもうきにもかけてはいない。

その様子を静かに飲みながら静観している女がいた。

振り返ることもなく、親父に酒の追加を注文している。

「あ、あんた…帰ったほうがいいよもう」

親父は相変わらずびくびくしながら、カウンター越しに身を低くしていた。

「構わないさ。馬鹿が二人暴れているだけのことでしょう」

「いや、だけどあんた…」


女は出された酒を一息で飲み干すと、立ち上がってカウンターの隅によけてあったビール瓶を両手に掴んだ。

そして、とっくみあって暴れている二人の背後に忍び寄ると、両手に持っていたビール瓶で痛恨の一撃を振り下ろした。

バキャァアアアアンン!!!

ビール瓶が木っ端微塵に砕けちり、二人の脳天からは血が噴き出す。

もちろん、二人は昏倒してきゅうとのびてしまった。

女はのびている二人に起きたらこれを渡しておくれと、親父に一枚の紙を手渡した。


「勘定はこの馬鹿二人につけといておくれよ。迷惑料さ」

そう言って、しれっと出て行った。


一時して気がついた二人は、一枚の紙を親父から渡された。

-------------------------------------------------------------------------
喧嘩はだめだお。
月に代わっておしおきだおヾ(o´∀`o)ノ 。
みさお

-------------------------------------------------------------------------

マソが頭を抑えながら、立ち上がってつぶやいた。

「女がビール瓶で殴るかふつー…」

「みさおならやる。あいつはこぇえ女だからな…」

勇馬は首を振りながら、目をぱちぱちとさせている。


「お客さん、お勘定」

親父が伝票を二人に渡した。


飲み食いの他に破損した机や椅子の修理代、その他にみさおの勘定がつけられている。

「なんじゅあぁこりゃぁあ!!」

あまりの金額に二人は声をそろえてポーズをとりながら叫んだ。


inochi
命 !(いのち)

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

藤井さんからのメッセージ

久々にインすると、烈風時代の裏話がごっそり詰まった年賀状が届いていた。
もちろん差出人は、名前を変えてはいるが藤井さんである。

烈風今川の黒い話や、あの人この人のリアルネタ。
驚愕の事実がそこにはしたためられていた。

これを読んで人間不信に陥るプレイヤーもいるのではと危惧をする。

続きを読む

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

龍尾凶介 一触即発の死に技能



<野外回復ぅ?丹でも使って回復しとけやksが>

真紅武田の僧兵 龍尾凶介ことタツヲは憤っている。
野良狩戦闘で野外回復を強いられ、あまつさえ、効率わりぃ〜とか抜かす野良陰陽にイライラしていた。
しかもこの61の陰陽以外の徒党員はほとんどLV65である。

こいつ以前も野良で一緒になったことのある陰陽だ。まったく男陰陽にはろくな奴がいない。
初期は礼儀正しく楽しい陰陽が多かったものだが、火力向上の折から傲岸不遜な輩がつとに増えてきている気がする。

僧兵を舐めるな。

タツヲは僧兵が舐められるのが嫌いだった。
紹介文に【極楽のみ不可】と書いているのもそれだ。

ネタにされるのはなれっこだ。特化ができた初期から、炭山にこもって対話を待つ日々。

インする→青を出す→炭掘り→知行いじり→ログアウト

こんな状況が続いたのは、2度や3度ではない。それも長期スパンで同じループだった。
思えばここで忍耐と精神力を培ってきたのかもしれない。

しかし、あきらかに悪意を持って僧兵を貶めるこの野良陰陽。

挨拶もせず、廃武芸にはヘコへコ。そして俺には「僧兵さん、結構すかりますねぇ…」とか。

スカるのはしょうがねぇんだよ!しかも許せんのは、…とか語尾につけやがって。

リアルで新宿のルミネ前に呼び出したろかこのガキぁ。
通信教育で習った少林寺拳法を味あわせたくなった。

僧兵でいること。タツヲにはそれがすべてだった。

カイエン乗りてぇ〜とか、うわぁビッグになろうとかは思っていない。
ただ、僧兵としての立ち位置を確立したかっただけだ。

何かのアニメであったな。

そいつはただ僧兵だっただけさ。
ボス以外の一門クエを楽しめない。
炭山の中で生きているような。
そんな特化だった。

なんか違う気がするが、まぁどうでもいい。

とにかく、こんな糞がいる野良徒党はお断りだ。
早々に抜けるが吉だ。


その陰陽の名前は【摩羅嫌 樹蟻】という武田の陰陽である。
        マライヤ キアリ

マライア・キャリーを知ってるものならじわじわくる名前だが笑えねーんだよ糞が。
タツヲは画面を見ながら、中指を突き出していた。

戦闘がほどなく終わり、メンツの入替が行なわれる。
基本は入替自由のフリーダム徒党だ。

おっと、今度は65の僧兵の人だ。

すると、その野良陰陽 摩羅嫌がいきなり声をあげた。

「あっ!ドンタコスさんだ。おひさしぶりぃ」

馴れ馴れしく、徒党内で挨拶をする摩羅嫌。

ドンタコスと呼ばれた僧兵は、軽く挨拶をしながらお久しぶりです^^と短く挨拶をする。

狩りが再開された。

ドンタコスの攻撃力はかなり高い。相当な廃レベルだ。装備や覚醒も相当なものだろう。
かなりの手練だ。

タツヲが感心して見ていると、摩羅嫌がわざとらしい賛美をする。

「さっすがぁ!真紅一の僧兵様〜。そこに痺れるあこがれゅうう!」

うっぜぇええぇぇええぇぇぇええええ!!!

やばい、お兄ちゃんどいてそいつ殺せないってレベルだ、キタコレ。

あこがれゅうう!じゃねーよダボが!

摩羅嫌が尚もおべっかを使う。

「ほとんどスカラないし、火力もすごいなぁドンさんは(チラッ」


さすがにこれにはタツヲは怒った。

そして対話をいれた。

「あのさぁ…。いい加減にその厭味ったらしい言い方やめてくれない?気分がすげぇ悪いんだけど」

すると、間が少し空いて対話が返ってくる。


「………おい、タツヲ。誤爆してんじゃねぇよww」


返信が着たのは地獄突からだった。あろうことか、怒りにまかせて誤爆対話をしていたのである。

「げっ!すまん誤爆だ」

タツヲはあせった。地獄突だからよかったが、他の人だったらどうなっていたことか。

事情を察したのか地獄突から対話がくる。

「対話するほどすげぇ奴がいるのかよw」

「ああ…。毛が抜けそうになるほどヒートだ」

「今すぐ回線を切るんだ!」

「それはいやだw」


誤爆した会話で少し溜飲が下がった。

相変わらず、摩羅嫌は勝手なことを一人でくっちゃべっている。

タツヲは画面を見ながら、冷めていく自分を客観視していた。

「ふっ…いかんいかん。こんなガキと同レベルの思考になってどうする俺。大人になれ大人に」


落ち着いたタツヲは戦闘に集中していく。なるほど、ドンタコスは強い。
僧兵としてもかなりのレベルだ。

武芸にはもちろん劣るが、それでも効率的な殲滅徒党においては十分な火力である。

「つぇえ…」

タツヲはドンタコスの強さに舌を巻いた。
確かにこのぐらいの火力と命中精度なら、オールラウンドにどのクエでもこなせるだろう。

タツヲも多少は自信があったが、それにしてもドンタコスのパフォーマンスは常軌を逸している。

それまで無言だった徒党の暗殺忍者が感嘆の声をあげた。

「ものすごい火力だなぁドンさん。龍尾さんの火力が一般的なはずだが飛び抜けてる」

「えっ^^;そうでしょうか…」

ドンタコスが控えめにそう言うと、党員は口々に「そうだよねえ、すごいや」と相づちを打った。

タツヲの肩身の狭さは自宅に置いてある冷蔵庫の隙間ぐらい狭くなった。

まるで、僧兵はドンタコスただ一人であるような…。俺もいるんだ、俺も僧兵なんだよ;
喉まで出かけた、言葉をぐっと押込む。

火力の文句は、光栄に言え!と言いたかった。

僧兵は火力だけでその存在意義を問われるわけではない。
攻撃・回復・サポート時には、最後の盾といった技能をバランスよく使いこなす思考の瞬発力が大事である。

いいさ。俺には総合力がある。火力だけでいいのは狩りだけでボスクエなんかはバランスだ。こんなスキルもへったくれもない狩りにおいて、火力勝負で勝っても意味が無い。

冷えていく感情の中で、タツヲのプライドに火がついた。

最後の戦闘になる前に、タツヲはある技能を実装にしのばせておいた。

ドンタコスが火力で魅せるなら、俺はこれが僧兵ってぐらいの神髄を魅せてやる。
戦闘が開始され、コマンド入力にある技能が表示される。

ここだ!!とばかりにコマンドを入れてやった。

暴れん坊・参


これぞ僧兵の真骨頂である。

党員は目を見張った。

そして先の野良陰陽の摩羅嫌が叫ぶ。

「すまない。ネタをやるならよそでやってくれないか?」


もちろん、タツヲが摩羅嫌を絶交登録に放り込んだのは言うまでも無い。


では諸君。良き3連休を。

テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

信オン狂の唄



真紅の上杉に武芸の徳川義直というプレイヤーがいる。
彼は一般的かつ装備的に言えば廃プレイヤーの部類に属するが、極めて一般的な家庭持ちのリーマンである。

まぁ、そんなプレイヤーは掃いて捨てるほどいるわけだが、奇特なことに、この腐ったブログに登場させてくれと懇願された。
ネタにしないで><と言われた事は数あるが、自らネタにしてくれとは池田の源ぐらいだろう。
源の場合は下半身ネタがリアルなので面白いから書いていたのだが、徳川さんの下半身事情はわからない。
最近で知るところは、あることから妻の逆鱗に触れて、1週間ほど家に入れてもらえなかったことぐらい。
まぁリアルネタになると生々しいのでやめておこう。


そんなわけでとりあえず彼を主人公にして物語を作ってみる事にした。
しかし、これによって彼の風評がどのように変化するのかは当局の関知するところではない。

人をネタにする場合は、その人の思考・行動パターンなどをある程度考慮しながら、味付けをしていくのだが、特徴が鮮明な人は楽だ。しかし、特徴が極めて薄い人は行動予測が思いつかないので、話が創りにくい。

徳川さんとは腹を割って話した事も無いし、リアルでも会ってもいない。
林檎ちゃんのようにブログをやっているわけでもないので、心根がわからない。

考えてみれば無謀だ。
このような人達は、よくも悪くもまったくネタになりにくいのである。

もちろん、アイタタタな人じゃなければネタにしにくいという事でもない。
実際、行動・言動は見ていてぶっとんでるのだが、笑えない、つまらないという人もいる。

ぶっちゃけ愛嬌がなければネタにしても面白くないのである。
可愛げと言ってもいい。

藤井さんやマソ君のように行動に突飛なものでもなければ、なかなか。
もちろん、人には誰しも語り尽くせないほど様々なドラマがある。
かといって、リアルな話をここで語ってもまったく意味がなーい。
それなら、学校の作文と同じだ。俺モッコリスト。


しかし、これはこれで初の試みであるからしてなかなか面白いのかも知れない。

そもそも、彼とは何回かは一緒にクエをしたり、手伝ってもらったりした。
対話もしょっちゅうしていたので、ネタ的に皆無ということはないのだから。

彼の場合はネタを掘り下げていくとかなりディープなネタになってしまうので、そこらへんはオブラートに繊細に包装して表現するしかない。


なんでもない、ありふれたネットゲームに棲息する1プレイヤー。
そんな、どこにでもいる信オンを愛した男の物語を綴ってみることにしよう。


まずは、俺の知る限りの徳川義直というプレイヤーを解体してみる。


性格:温厚、生真面目、心配性

言動:丁寧

行動:普通

スキル:良

装備:廃装備

稼動時間:やや廃

傾向:帰属意識はそこそこ高いが、一国に縛られるわけでもない

性癖:詳しくはわからんが女性には弱い

リアル:リーマン 家庭持ち

顔:見た事無い

身長:見た事無い

ちんこのサイズ:見た事あるわけねえだろ


知ってる限りはこんなもんだ。

この上記の情報で物語を作れというのだから、徳さんも酷な注文をする。
金とるよ金w


恋愛ものにしようか。それともストイックな孤高のプレイヤー?
ギャグっぽくいこうか。史実に絡めた本格的なものにしようとか。

ここで、ちょっとWIKを見てみる。

徳川 義直(とくがわ よしなお)は、江戸時代初期の大名。尾張藩の初代藩主で、尾張徳川家の始祖である。



史実にある実名をネームにするあたり、かなりこだわりがある性格なのだろう。
それとも何か縁でもあるのか。確かもとは織田にいたはずだ。
そして武芸を選んでいるあたり、彼はかなり王道のセオリーを大事にするタイプと見た。
国を織田に選ぶあたりに、彼の性根の探るヒントがあるのかもしれない。



真紅鯖 武芸侍 徳川 義直。以降はよしなおと呼ぶ。

では始めよう。




kan





アメリカンジョークだ。失礼した。


よしなお伝


あるところに、よしなおと呼ばれる身体の大きな若者がいた。

よしなおは、百姓をやめて剣の修行に励んで強い侍になることができた。

恵まれた体躯に、素質もあったのだろう。当代きっての使い手にまで成長していた。

「さて、そろそろ仕官をしたいものだ」

剣で身を立てられる時代だ。よしなおは、まず足軽で戦に参加して武功をたてようと思った。

しかし、先立つものがない。路銀を使い果たし具足などを買いそろえる余裕はない。

「困ったな。そうだ!おいはぎをやって金を稼ごう」


よしなおは、今の若者と同じように後先考えない行動をとった。

山の峠に身を隠して通りすがる旅人を襲っては金品を強奪し殺した。

若い娘がいれば、犯したあと殺した。

年寄りや子どもも容赦なく殺した。

既に仕官という目的などは忘れ、快楽殺人に酔った。

抵抗する若い男は、身体をバラバラに切り裂いて犬に食わせた。

国中に噂は駆け巡り、山の峠には鬼がでると言って誰も近づかなくなった。

いつしか、よしなおは山賊団の頭領になっていた。

近隣の村を襲っては、強奪を繰り返し村人達を悩ませていた。

うら若き娘達も、一人残らずさらわれて妾にされていた。

逃げ出すものは、必ず捕らえられて、首をはねられ一族郎党まで皆殺しにされた。

山賊よしなおの名は全国に轟いた。

「よしなお討つべし、討ちてしやまん」

よしなおは国中から忌み嫌われる咎人となった。

そんな、よしなおを打つべしと全国の猛者が討伐を志願した。

しかし、よしなおは討ち手をことごとく、鍛えた剣技で倒していった。


「くくく…。こんなものか。未熟!あまりにも未熟」

よしなおの剣閃は人の域を超えていた。

見えないのである。向かい合った瞬間にはもう首をはねられている。

恐るべき俊速の剣であった。


今日もまた豪壮な討ち手を返り討ちにして、亡骸を鴉に食わせていた。

「こいつはそこそこ手応えがあったな。しかし、まだまだだな」

テニスの王子様のような台詞を吐くと、摩羅がいきりたってきた。

人を殺した後は、必ずこうなった。よしなおは殺人をした後は女を犯さずにはいられない。

異常性癖の持主であった。

「まずは女どもしゃぶらすか」

腰をあげて、砦の屋敷に向かった。子分はいない。よしなおが癇癪を起こしてみんな殺してしまったのだ。

子分も人の子である。

ある時、若い子分の一人と、さらってきた娘が通じ合う仲になった。

二人とも美男美女のカップルだったが、娘はよしなおが一番気に入って毎晩夜伽をさせているものであった。

それを知ったよしなおは怒った。ジャンボ鶴田のように髪をくしゃくしゃにして怒った。

「許さない!絶対にだ」

泣いて謝るその子分を、一刀のもとに切り下げて、身体をバラバラに切断した後、豚の肥料にした。
その様子を見せつけられた娘は、気が狂わんばかりに悲しんで泣いた。

しかし、よしなおは構わずに泣いている娘を、三日三晩犯し続けて苛んだ。

娘はとうとう気がふれてしまったが、よしなおは「つまらん」と一言いって首をはねて殺した。

この、よしなおのあまりにも凄惨な残虐性に、子分は恐怖に震えた。

逃げ出す子分は捕まえて一人残らず殺した。側に残っていた子分も、ちょっとしたことで斬られて殺された。

よしなおはもう人の心を失っていた。

鬼である。顔つきももはや常人の相ではない。


よしなおは屋敷に戻る途中で、白装束を纏った旅人を見かけた。
身体つきから見て女人のようだ。

しめしめ、これはちょうどいいと、よしなおはこの女を犯してやろうと思った。


「こりゃ、そこの女。大人しく俺のものになれ」

声をかけられて、女は被っていた葛をはずして顔を見せた。

すると、息をのむような美しい女童である。

歳の頃は、12〜14歳ぐらいであろうか。

長い髪を後ろで縛り、透き通るような肌に、大きな目。

よしなおは、一目で気に入ってしまい、犯すことはせず砦に連れ帰った。

娘はよしなおの凶相を見ても怖れることは無く、黙ってついてきた。そこも気に入った。

屋敷に戻って10人の女を犯した後、娘を寝所に呼んだ。

酒をつがせながら娘に聞いた。

「娘、名はなんという」

「突」


それからよしなおは、突を寵愛した。

他の娘達とは違い、一切手を出す事なく大事に育てた。

なぜ、そのようなことをしたのかよしなおにもわからない。

数年がすぎ、突はますます美しく成長していった。

その合田、幾多の討ち手が挑んで来たが、よしなおの剣の前に全て倒れていった。

いつしか、よしなおは【外道剣聖】とまで呼ばれるようになった。


ある夜のこと。

「外道様、お食事です」

食事を運ぶのは突の仕事である。

匂うような美しさである。突がそこにいるだけで百花繚乱の宴が催されている気分になる。

「突よ。今日こそお前を犯してやろう」

よしなおは笑いながらながらそう言った。

「あい」

突は短く答えて頬を染めた。

いきなり突を抱き寄せると強引に押し倒した。

よしなおは、突を犯しながら羽化登仙の境地にいた。

突はよしなおに身体をあずけ、時々小さな呻き声をあげた。

よしなおは、遂に果ててしまい仰向けに転がった。

突は4回ほど貫かれると、着物を直して酒を運んできた。

いい気分で酒を呑んでいると、目が霞んできた。

飲み過ぎたのかな?と思ったがまだ一升も飲んでいない。

通常なら五升飲んでもびくともしないのだ。

そうするうち、手が震え身体が痺れてきた。

これは毒か?

「むむ…。これは」

突を見ると、表情を変えずによしなおをじっと見ている。

「突…。お前」

すると突は、すっと立ち上がってよしなおを見下ろしながら言った。

「ドクゼリ、トリカブト、ハシリドコロ、オニドコロ、スズラン…」

「なんだそれは…」

「毒草です。10年ありとあらやる毒をこの身体に宿しております。あなたが、この身を欲するのを心待ちにしておりました…」

「な…んだと」

鬼の形相で睨むが、身体の自由がきかず舌も痺れてきている。

恐ろしく強力な毒だ。常人なら絶命していてもおかしくない。


「覚えていますか。10年前のある村であなたが殺した一家の事を…」

「そ、そんなことは覚えておらん。お前とて食った魚の数を覚えておらんだろう…」

「外道!」


突はそう叫んで、よしなおの背中に懐剣を突き立てた。

「ぐあっ!」

赤い鮮血が飛散して、よしなおの背中が真っ赤に染まる。


「わたしはあなたに家族を殺された生き残りです。両親はおろか、兄弟、祖父母まで殺され、必ず復讐をと機会を待っていたのです」


「ぬかったわ。外道剣聖とまで呼ばれたこのワシが小娘の手にかかるとは…」

「復讐を誓ったときから、わたしも外道に堕ちました。驚いた?でもわかるでしょ。わたしはあなた自身なのだから…」


「ふ…不覚…」


よしなおは、口からどろどろと黒い血を吐きながら絶命した。

誰も討伐することが叶わなかった外道剣聖も遂にここに果てたのである。

突のその後の消息はいずれともしれない。

真紅鯖には、外道剣聖よしなおの塚が尾張の街道沿いにひっそりとあると言う。




甲府の屋敷で、地獄突と徳川が座して対峙している。


「……という話をジゴフミに出演ということで考えてみたよ。どうだい?徳川さん」

「………;」



【おしまい】

テーマ : 雑記
ジャンル : ゲーム

森とみさおの戦国はらぺこ道中記9 最終話

「やっと…」

「うん、やっと…」

「やっとでたまんこ!」


森の声が震えている。

みさをの顔が輝いている。

藤井が下ネタを言っているが、もちろんスルーされている。


近江から山城に入る関所を超えて、あれに見えるは左京の都。
艱難辛苦を乗り越えて、やっと来ました着きました。

評定は明日の朝だ。ぎりぎり間に合った。

森は急激に力が抜けていくのがわかった。
張り詰めていた気が一気に緩んだのだろう。

腰を落として崩れ落ちる身体を支えるみさを。

「もりりん!あと少しだよ。頑張ろうよ」

みさをはそう言って森を励ます。

森は腰を曲げ、両手で膝を抑えながら必死で身体を支えた。

枯れた声でぼそぼそとつぶやく。

「ああ…。わかってるよ、みさをさん。だけど…」

「だけど?」

「この疲労の原因は、ほとんどあなたのおかげなんだけど;」

「うそーん(笑)気のせいだよ」


藤井はその光景を見ながら、頬を染めていた。

「いぃ!」

相変わらず意味不明な男であった。


左京に入る手前に茶屋がある。
森は茶屋娘とは数年来の馴染みである。

茶屋娘は「お凛」と言った。

森はとりあえず、左京に入る前に挨拶をしていこうと、門の手前の茶屋に向かった。

「お凛さんは相変わらず息災かなぁ」

懐かしそうにそう言うと、みさをはニヤニヤしながら森の顔を覗き込んだ。

「モリリ〜ン。お凛ちゃんに懸想してたもんね」

「…いや私はそんなんじゃ」

「いいの。いいのよ。世の男なんざみんな若い娘がいいにきまってんだから」

「お凛さんもいい歳頃だし、誰かいい人ぐらいいるだろうさ。私なんか…」

「馬鹿っ!!このへたれ!」


みさをはいきなり森の頬げたをグーで殴りつけた。
鋼鉄の拳が森の頬にめり込む。
普通はビンタだろうと思われるが、そこはみさをだ。揺るぎない。

「ぐはぁっ!」

ぐしゃっと鈍い音が響く。

森は、メガトン級の攻撃で2間ほどふっとんで転がった。
みさをの必殺技のひとつ。タイタン・フィストだった。

「もりりんの馬鹿っ!闘う前からあきらめてどうすんのよ。人生に、自分に負けんなっ!」

みさをが涙を流しながら訴えている。

色恋沙汰には極度の反応をするみさを。

藤井がその様子を見て叫んだ。

「やめたげてぇ!森さんのライフはもうゼロよ!!」


その通りだった。森は度重なる疲労から開放された安堵感から、全身の筋肉が弛緩しきっていたのだ。
森の通常の近接防御力を100とすれば、現在は5ぐらいしかない。

加えて、みさをは元気はつらつオロナミンCである。
通常の近接攻撃、腕力での攻撃は120の状態だ。
そんな攻撃を、今の状態でまともに受けたら即死に近いダメージだ。

「ぐ、ぅぅうう;;」

「立て!立ちあがってよモリリン;自分に負けちゃだめっ!」

自分でぶっとばしておいて、なんたる言い草だ。
みさをという女の人間性をここに見た。

全盛期の藤井さんを凌ぐ外道っぷりだ。

森は仰向けになりながら、息も絶え絶えにかぶりを振った。


「……っていうか…あんたに負けてるんだけど;ぐっ;」

息も絶え絶えにそうつぶやく。


すると、茶屋の店先でそんなやり取りを見ていた、茶屋娘が走ってきて怒鳴り出した。


「やいやい、あんたら!痴話喧嘩ならよそでやってくんな!!商売の邪魔だよまったく」

威勢のいいタンカを切って怒鳴っている茶屋娘を見ると、噂のお凛ではなかった。

森はよろよろと起き上がって、まじまじと見る。
というか、今まで瀕死の状態であったのに、森もいい加減強い。

「あれ…?あんたは…」

「ん?あたしゃ、この茶屋のバイトのもんだよ」

「えっ?あの…お凛さんは?」

「あれま、あんたお凛さんの知り合いかい。ああ、お凛さんなら去年の秋に結婚して越後の大名のとこに嫁いでいったよ」

「………なんと!!」


これはショック。YOU は SHOCK!愛で空が 落ちてくる。


森の呆然とした顔はまるで、泣いてるような笑ってるような…複雑な感情をしきつめた表情になっている。

「モリリン……」

みさをそんな森の肩を叩きながら「どんまいっ」とやさしく声をかけたが、聞こえてはいないようだった。

「お凛さんもねぇ。なにやら織田にいる想い人をあきらめての事だったから、さぞ辛かったろうさ。でも、相手もいいとこの大名だしね。イケメンだったし」

追い打ちをかけるように、バイトの娘は言う。


「終わった…。俺の青春が…;」


人は言う。

「信オンは少年の心の中を走っている列車だ」と。

森は、ふと思う。

「この旅は、はじめから森一人の旅ではなかったのだろうか」と。

お凛は 森の青春を支えた幻影。
たくさんの若者の胸の中で生まれ、通り過ぎてゆく明日への夢。

いま万感の想いを込めて、汽笛が鳴る。
さらば、森
さらば、お凛
さらば、藤川みさを

さらば、森の少年の日よ…。


と、

藤井が森の後ろで勝手なナレーションをしていた。


「人の後ろで勝手なナレーションでいれないでくれるかな;」

森は泣きそうな声で震えながら言った。

「森さん。フィル・コリンズの【恋は素早く】って歌を知ってるかい?何事にもタイミングは必要なんだ。それを逃すとどんな幸運も手からすり抜けて、別の奴の所にいっちまうのさ…」

「……;;」


藤井がめずらしくまともでカッコいいことを言っている。

それをみながら、みさをは空を見上げた。天気を心配しているのである。


バイトの茶屋娘は、森を3人を見ながら茶でも飲んで休んでいきなと促した。
茶屋娘は藤井をまじまじと見ながら、呆れたような声を出す。

「しかし、藤井さんも相変わらずだねぇ。まだ、ポロロッカとか言ってるのかい」

藤井は、一瞬いぶかしんだが、ぱっと顔を輝かせた。


「あぁっ!!ふぇ、ふぇいたん!ふぇいたんじゃないの」

「久しぶり。あたしが、ふぇいふぇいです」


そう。
この茶屋娘は何を隠そう、烈風最大最古の晒し屋ふぇいふぇいである。

みさをが驚きの目で見つめている。

「こ、この人があの、伝説の特攻一番槍のふぇいさん…」

「伝説でもないさ。古いだけのロートルだよ」

少し照れながら、ふぇいは3人にお茶を差し出した。


「ふぇいたん、何でこんなとこでバイトしてるの」

「嫁入り前のちょっとした座興でね」

「え〜〜;;ふぇいたん結婚しちゃうの;やだやだ!一生独身でオールドミスでいてくんなきゃやだっ!」

さっきのカッコいい台詞を吐いた同じ人物とは思えない。
つうか、きもい。

「そろそろ年貢の納め時だしねぇ。ま、後はあんたらにまかせてあたしゃ静かに消えるさ」

「突さんとふぇいたん有閑クラブ一門を作ろうと思ってたのに…;;」

「さっぶっ!絶対つくるんじゃねーよ!意味分かんないんだよっ」

ふぇいが、この後にすぐ結婚をしたかはさだかではない。
しかし、ここから10年後の真紅に、ふぇいによく似たプレイヤーが現れるのだが、そんなこたぁ誰も知る由もなかったのは言うまでも無い。



茶を飲んで身体をあらかた休めると、森は気を取り直して立ち上がった。

森とみさをは顔を見合わせて、うなずいた。


「さて…切り替えよう。もう凹むのはやめだ。私たちには使命がある」

「そうそう。評定を無事に終わらせないとね。織田と足利の今後のためにねっ」

「僕はポロロッカ!を流行らせなくちゃ!」


3人は茶屋を後にして左京の門をくぐった。


両替には、一門員が数名待っていた。


「やっと着いたか…」

むっつりした顔で一門筆頭の長瀬が機嫌悪そうに睨んでいる。
冬場千鶴は、呆れた顔で腕を組んでいる。

「遅すぎだよ…まーったく」

その横にはなんと前筆頭であった勇馬もいた。
帰参キャンペーンでぷち復帰しているらしい。

「ゆーまきゅん!!」

みさをは勇馬を見るなり抱きついて、はしゃいだ。

勇馬はみさをの頭を押さえつけながら、ぐりぐりと梅干しをした。

「み〜〜さ〜〜を〜〜!相変わらず元気まるだしでアホだな!あと、マソと仲良くしやがって許さん!!」

「うう;ひどい…;;痛い><;」


他には、にゃん娘、奥多摩、新田、周防の顔が見える。


「お疲れさま〜」

口々にそう声をかけられて、労をねぎらわれた。


森は心底ほっとした表情でへたりこんだ。

「ともかく…フロに入って美味いものを食って…ぐっすり眠りたいな」

そういえば藤井はどうしたろうと思ってみると、いつのまにか姿を消していた。
おそらく…彼なりに気を使ったのだろう。
最後までわけのわからない人だったが、悪い人ではなかったな。

そう思うと、ここ数日間の旅もそう悪いものではなかったなと思えてくる。
多分またどこかで会えるだろうさと、下ネタではしゃいでいる藤井の姿を思い浮かべた。


「みさおさん」

「なにー?モリリン。もぐもぐ…」

森の呼びかけに振り向くと、みさをは既に屋台のイカの丸焼きを食べていた。

森は、みさをの膨らました頬をみながら、ため息をついて笑った。

「あんた、とことこんやのぅ…」

「食は宇宙の原理だよっ!同じアホなら食わなきゃ損損」


その後、評定はつつがなく行なわれ、織田と足利の新たな条約協定も結ばれた。

評定後、白夜の一門員は懐かしい人も顔を見せ、クエを行なう事ができた。
いい正月になりそうだった。

森は桶狭間の空を見上げて笑っていた。
越後に嫁いでいったあの人もこの空を見ているのかなと想いながら。






──正月明け。


「へい、ナミナミ館です!」

「ちょっと、おっさん!あんたの茹でる玉子固いよぅ。うですぎだってんだよ!」

ナミナミのラーメン屋で、借金を返すためにバイトをする地獄突の姿があったとさ。

【お終い】


テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

映画のような漫画



藤井さんが7番目の天使だった件。

む〜〜ん。
はらぺこ道中記を再開する前に書いておきたいことがあった。
だから書く。書かせて頂く。書けば。書いたら。書く時。

と・に・か・く

どうにも最近のメディアのワンピース押しがうざすぎる。

ワンピースに学べであるとか、そういったぶら下がりの書籍も出まくっているが、アホかと。
もちろん自身もワンピは好きな漫画ではあったが、さすがにステマすぎる宣伝に辟易した。

漫画ってやっぱりさぁ…とか言う気は毛頭ない。
それは時代の趨勢によっても河の流れのように変遷・推移していくものだ。
もちろん、それぞれの価値観や主観も当然ある。

しかし、やっぱ漫画ってこれだよな!って作品があるのだよ。

題材はあまり好きではないが、その描写力と絵の巧さには改めて脱帽する。
井上雄彦のバカボンドではない。あれもまぁ好きだけど。

dvdfgnb

ながやす巧 「壬生義士伝」 

実はこんな漫画を描けるようになりたかった。
しかし自分にはとても無理だった。

ながやす巧はアシスタントを使わず全て自分でモブ、背景まで描くという。
これぞ漫画の職人だ。

絵の巧さもさることながら、シーンひとつひとつが映画のカットのように呼吸している。
すごいのだ。

初めて漫画で泣いた作品は、ながやす巧の「Dr.クマひげ」である。
泣いた。そして感動した。漫画の力を思い知った。あれは小説では表現できない。

ワンピもなぁ。ロビンの話まではよかったんだがな。
ごちゃごちゃしすぎてもう読む気すらうせた。
だから、尚更ごり押しのプロモがうぜぇと思うのだろう。

結局、長期連載は大いなるマンネリズムを如何に次のエリアに持っていくかがキモなのか。
そういう意味では信の運営に似てるのか。

最近の漫画雑誌を立ち読みしてみたが、ジャンプなんか特にタッチが似通っている作品多くねー?
印象に残らんものばかりだ。銀玉はアニメの出来がいいのでアニメでしか見た事無いし。
だって、あれ吹き出し多すぎて読みづらいよまじ。

そんなわけで、最近は昔の名作漫画を見つけて楽しんでいます。
まぁ買わないで立ち読みするくらいだが。

ちなみに、妹が買っていた「なかよし」のキャンディ・キャンディで泣いたのは兄貴だ。
どこで泣いたのかはわからんが。
「バリバリ伝説」の秀吉が死んだ時に泣いてたのは、高校時代のダチだった。
しかし奴はカタナじゃなく、CBR400に乗っていたんだが。

藤井さんは「鬼平犯科帳」が好きでサイトウ・タカオの漫画を持ってたっけ。
俺的にはゴルゴ13とか全部集めたら1週間は退屈しなさそう。

今年はちょっと真面目にある事に取り組みます。本気です。じーまーです。
リアルです。にゃん恋です。ベツレヘムです。

さて次は戦国はらぺこ道中記再開。

ではまた!

テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

森とみさおの戦国はらぺこ道中記 【正月篇】



ジョジョの奇妙な〜を観てると懐かしいアーティストの名前を思い出すなぁ。
スージーQもこの人から取ってたはず。

と思ってたら、コメントでありがたいつっこみが入ったのでこれは訂正。
ちゃいますね。関係ありません!新年早々失礼しました。



それはともかく、新年一発目は漫談からスタート。今年もよろしゅうに。


「明けましておめでとうございます。本年もよろしく〜」

「おめでとうございます。本年もどうかよろしくです」

振り袖を着た藤川みさおが頭を下げて挨拶をすると、こちらも紋付袴を着た森は重ねて丁寧に挨拶をする。
さすがに二人とも年嵩もあるので貫禄の着こなしだ。

2013年。新年は明けてしまった。
明けたがどうしたオヤジの頭。八百屋町に灯が灯る。

森とみさおは並び合って正面を向きながら、雑煮を食べている。
BGMは正月恒例のチントンシャンのあれだ。


「明けましたねえ。昨年も色々とありましたが、今年も色々あるんでしょうねぇ」

森が箸を置いて話をふる。

みさおは、しゃべろうとしたが、餅が喉につっかえたらしく

「んがっ;んっ。んっ;;」

さざえさんのように声を詰まらせていた。

「…今年も多難だなこりゃ…」

森が呆れて、ぬるめのお茶を差し出すと、みさおが真っ赤な顔をしてがぶがぶと喉に流し込む。

「はぁはぁ…;んがっ。し、死ぬかと思った;」

「正月早々、餅を詰まらせて亡くなった老齢の人達多いですからねぇ。みさおさんも気をつけないと」

「…私そんなおばあちゃぁんじゃないよ。たわけた事ぬかすと脳天に風穴空けちゃいますわよ。ふふふ(怒笑」

「まぁまぁ^^;今日は正月だから」

「正月だから何?」

「まぁ…めでてぇって、言う事で(汗笑」

「もふー…まぁしょうがないね。正月だしね(笑」


森は知っていた。

みさおは護身用にコルト1911を常に携帯していることを。
下手にぶっ放されたら命に関わる。
何とかうまくごまかせたことに安堵していた。


「と、ところで、みさおさんの今年の抱負は?」

「モリリン唐突だなぁ…。でも抱負かぁ。うーん、信では新装備と家臣ちゃん育成と一門の活性化かしら」

「一門も人いないしねえ。一門クエもなかなかできない状況だし」

「人少ないよねぇ。無料キャンペーンで懐かしい人の名前も,見かけるけど完全復帰はないだろうしねえ」

「今はゲームそのものの面白さというより、のめり込む要素が昔ほどないんだよね。システム的にも飛躍的な技術が介在するわけでもないし、コンテンツと言っても目新しさはもうないし」

「そうねぇ。動画サイトやソーシャルゲーなんかの拡充で、別にネットゲーをしなくても余暇潰せるし。それにスカイプなんかで常時繋がれるし」

「オンラインのコンテンツによって結びついていた【絆】の構築が希薄になってきつつあるよね。どのゲームでも」

「クエストで知り合って仲間になって…とか、今は昔って感じ?」

「まぁ、でもやってるのは人だしね。結局人次第なんだろうけどさ」

「わたしはまだまだ信オンを満喫します。それが私の生きる道」

「パフィかよ。どう見ても天童よし(ry」

「うっさい!呪うぞ!!」


正月早々、しょうもない掛け合いをしている二人の前に藤井駿河守が現れた。


「どうも。あけおまんた分け!」

「あ、藤井さん。明けましておめでとう〜^^」

「藤井さんか。明けましておめでとうございます^^」


藤井の新年一発目のギャグも華麗にスルーする二人。
どうやらフジイズムには慣れたようだ。

藤井は二人の間に割って入ると、間髪入れずに喋り出す。


「ところで映画のけいおんって泣けるよね。もう号泣もの」

「…あれ泣ける話だったのかしら?わたしはホビット観て来た!」

「え〜〜と、けいおんってアニメの?さすがに観てないからわからないな」

「え!森さん観てないの?あれはいい。愛と感動のスペクタクルだよっ!是非観るべき」

「…藤井さん正月はそれを観てたのか」

「やることないしね。やる事と言ったら、酒飲み、ゲーム、DVD、オナニー。これぐらいしかない(笑。あとはパチンコぐらい」

「旅行とかは?」

「地元から出たくない(笑。めんどくさいし」

「完全にヒッキーだな…」

「藤井さんってアクティブなイメージがあったのに…。なんだか幻滅です;」

「ちょwww勝手に幻滅しないで!」

「ところで藤井さんは信には復帰したの〜?」

「棲息メインは紺碧なんだけど、真紅一本に絞ろうか迷い中。さすがに2鯖を行き来はもう辛いしね」

「真紅に来たら、突さんと遊べるじゃん!真紅に来て来て」

「実は突さんと信内で遊んだのは数えるほどしかない件!あとは対話しかしていない(笑」

「馬鹿みたい;;」


みさおがそう言うと、藤井はゲラゲラと笑いながら1円パチンコの地獄少女に会ってくると行って姿を消した。


森がはっと気がついたようにみさおに問う。

「突さんと言えばどうしてるんだろうね?みさおさん何か聞いてる?」

「う〜〜んと、何か風邪を引いたらしいよ〜。正月は寝て過ごしたらしいけど」

「風邪は万病のもとだからねえ。気をつけんと」

「わたし風邪とかまず引かないのよねぇ」

「……いや、あなたと一般人を同じにしてはいけない…」

「人を怪物みたいに言わないでよっ」

「ヒューマン・スタンドアローンみさお…」

「意味はよくわからないけど、また馬鹿にしてるわね。風穴空けるぞ、呪うぞぉ!」

「はいはい。それではそろそろ〆ときましょう。皆様にも本年は良き年になりますように」


喚き散らすみさおを無視して森は襟を正して座り直した。
みさおも諦めて、ちょこんと座り軽く咳をしてお澄まし顔に変わる。


「それでは…」

「それでは」


「今年もよろしくお願い申し上げます」





テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

カレンダー
12 | 2013/01 | 02
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最近の記事
最近のコメント
月別アーカイブ
リンク
最新コメント
ブログ内検索
RSSフィード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。