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【池田の源が】信On 失恋レストラン15【現れた!仲間にしますか?【いいえ】】

ふぇいが再び眠りに落ちた頃、突と秋山は怪談レストランで食事をしていた。

腹が減っては戦はできぬ。ならぬ堪忍するがモンキー。
とにかく朝から飲まず食わずでたまらない。

お化けギャルソンに促され、まずは腹ごしらえとテーブルについたのである。

だされた料理は、漫画に出てくる例のアノ肉やらフカヒレのスープやら。
サラダやスイーツなデザートも一流レストランで出されるものである。
おまけに酒はシャトー・マルゴーの1970モノ。

秋山はいたく感動をして眼を光らせ涎を飲み込む。

「この世の食材に感謝を込めて。いただきます!」

食は力だ人生だ。

fvでfせsbsdr

突はあの漫画の肉にかぶりつき噛みちぎって、スープを流し込む。
舌に押寄せてくる肉の豊潤な甘みと歯ごたえ、胃にどっしりと流れ込むコクのあるスープ。
料理はどれも最高だった。
言葉はいらない。ただ食う。そして飲む。

秋山を見ると涙を流して食べている。
突もまたしかり。

感動で身体が震えている。
食べるというプリミティブな行為にこれほどまで感動を覚えた事はない。

目の前にある、肉、パン、麺、野菜、果物、スープ、酒はどれも極上だ。
ガツガツモグモグムシャムシャ。
食べるほどに食欲が増して来る。

目の前の食材が見る間に二人の胃袋に入っていく。
およそ半刻ほどで夢中食べ続けた。

あらかた食べおわり、食後のコーヒーが出てきた。
コーヒーを飲みながら満悦といった顔で秋山が云う。

「ふぅ。食ったのぉ…」

「ああ、もう腹がぱんぱんだ。もうくえねーよ」


突と秋山は腹を撫でながら、至福の時を味わっていた。
二人が椅子の背もたれにだらしなく身体をあずけていると、お化けギャルソンは、ニコニコしながらテーブルに寄って来た。

「如何でしたか。当店の料理は」

「最高ぜよ!また寄らしてもらいたいもんじゃ」

秋山が喜色満面で答える。


「いやぁうまかったよ。ご馳走さ…」

突が世辞を言い終わる瞬間に入口のドアがバァーーン!!と開いた。

立っていたのは、薄汚れた緑の物体である。


それを見て秋山が叫ぶ。

「長渕剛!?」


しかし、それは長渕ではなく検問所に置き去りにしてきた草摩モモだった。


「突さぁ〜〜ん…秋山さぁ〜〜ん」

まさに幽鬼のように邪悪のオーラを出しながら、ふらふらと近づいて来た。
自慢の束帯は先ほどのゴミ捨て場の放置によってボロボロだ。
顔も煤けて汚れている。
普段の洒落っけは微塵に吹き飛んでいる。

ゆっくりとテーブルに近づいて来るとテーブルに置かれた豪華な料理の残骸を見て、モモは力なくニカッと笑った。


「ふひっ、ふぇふぇ、ひひ…」

目が逝ってしまっている。
突は今までこんなモモの表情は拝んだことが無い。


「く、狂ってる…」

秋山がモモの形相に畏怖を感じてたじろいだ。


人は空腹の極限状態に陥ると、感覚が研ぎすまされてくるという。
モモの頭には、おそらく肉のことしか頭にないだろう。
今、目の前におっぱいがあってもかぶりつくはずだ。
それほどまでに精神的極限状態に追い込まれている。

多分、今ならモモはオナニーより肉をとるだろう。


「肉…。肉かぁ…いい匂いだなぁ」


そう言いながらモモは眼を光らせて突の背後に回って首にまきついた。

「突さぁ〜〜ん。教えてくれよぉ…。肉のことをよぉ…。味はどうですか?空は死にますかぁ?山は食えますかぁ、ふぇっふぇっふぇっ…」

「ひっ…」

モモは、シャーッ!と長い舌を蛇のように這わせて突の頬を舐めた。
冷たい舌だった。というかきめぇ。
さすがの突も生きた心地がしない。というよりも蛇に睨まれた蛙状態で動けない。


「わかったわかった;まぁ落ち着いて座らんかモモさんよ」

秋山が見てらんないといった感じでモモを制止した。


「あ、あの〜〜お取り込み中申し訳ないんですが…」

その様子を見守っていたお化けギャルソンが手を揉みながら割って入った。

「ん?ああすまんな。ちょっとこいつ腹が減りすぎて混乱してるんだよ」

「いえいえ。それは構わんのですが、ここまでのお食事の代金を頂きたく…」

「え?奢りじゃねぇの!?」

思ってもみなかったギャルソンの言葉に驚く二人だった。
ギャルソンは馬鹿馬鹿しいと云わんばかりに反り返って笑った。

「あっははは…。まさか!あの料理をただで振る舞う店はありませんよ」


わたされた伝票には、10万貫という法外な値段が書き込んである。

その数字を見て突と秋山は目ん玉が飛び出るくらい驚いた。

「なっ!!10万貫だとぉ??ぼったくりすぎだろこりゃ」

「10万!!なんじゃこりゃ」



狼狽する二人を見て、お化けギャルソンは今までの慇懃な態度から豹変して、ドスの効いた声で恫喝をし始めた。

「おうおう、おっさんがたよ。あれだけ食って飲んで満足してぼったくりとは人聞きが悪いなおい!まさか、あんたら揃いも揃って銭がねぇとか抜かすんじゃねぇだろうなコラ!!」

愛らしかった丸い身体から発せられる低く重い声だったが、なにせお化けギャルソンである。哀しいかなちっとも迫力がなかった。

「ねぇよ。ま、今度払うわ。つけといてくれ」

突がけんもほろろにそう云うと、お化けギャルソンは真っ赤になって怒った。
タコのように真っ赤でますます面白い物体になっている。

「ざけんなコラ!?銭がねぇならてめぇら強制労働キャンプのタコ部屋にでも行って稼いでもらうぜ。逃がしゃしねえぞ」

「タコ部屋?ばーか、そりゃお前のヤサだろが。お前が行けよタコ八」

「なっ…なんだとこの野郎…!?てめぇ…もう無事に帰れると思うなよ」


突は伝票を破りすてて、席を立つと空腹でフラフラしているモモを引きずって出口に向かった。
秋山もそれに続くが、突に耳打ちをして囁いた。

「おいおい、突さんいいのかいな。さすがに食い逃げみたいで気が引けるぞい。皿洗いくらいはしていったほうが義を通せるんじゃないかね」

「は?タコに義を通す義理なんざねえよ。そもそもあっちが勝手に料理を出して来たんだろうが」

「そうは言ってものぉ…」

秋山は、身体を真っ赤に染めて憤怒しているお化けギャルソンを振り返りながらバツが悪そうに背を丸めた。

お化けギャルソンは、くるりと背を向けて奥の厨房に声をかけた。

「おい!こいつら食い逃げだぜ!!出番だぞ」

すると厨房の奥からシェフ姿の痩せた男が出て来た。
手には日本刀=ドスを持っている。

「俺様の料理を食い逃げするたぁ、ふてぇ野郎だな…。どこのどいつだ。俺がぶっ殺してやる…」

シェフ姿の男は日本刀を右手にひっさげて、針金のような身体を揺らしながら厨房から出て来た。
どうやらここの料理人らしい。顔を見るとまだ若い。


「この舐めたおやじどもを膾にしてやれや!半殺しにして近江にある労働キャンプに叩き売ってやる!!」

お化けギャルソンは、シェフ姿の男に命を出した。


「どれ…てめぇらか。食い逃げジローってえのは…」

シェフ姿の男が、ゆっくり近寄ってきた。
身構える突と秋山だが、突とシェフ姿の男が顔を見合わせると「あ〜〜?」と声をあげた。

(;゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚) …!?

「お前…源、池田の源か」

「あんた、突…とっつあんかよ!横にいるのはアキヤマンじゃねぇか!?」

「おお!」


3人は顔を見合わせると、懐かしいなぁと肩を叩き合った。

お化けギャルソンはポカーンとその様子を見守っていた。

「こんなことで何やってんだお前は」

「いやぁよ。ちょいと料理人とかやってみたくてな。前のシェフに師事して修行してたんだが、我ながら料理のセンスはあったようだぜ」

「いや、なかなかのもんだったぜよ。またお願いしたいもんだのぉ」

そう言ってさらに笑いあった。


しかし収まらないのはお化けギャルソンである。

「おいおいおい!源。てめぇの知り合いだか何だかしらねぇがな。きちんと頂くもんは頂かなきゃけじめがつかねえだろ」

「ああ、そっか。おっさん達、今は金ねぇのか。しょうがねぇ、この場は俺の腕に麺じて勘弁してやってくれやw」

笑いながらラーメンを食う仕草をしておどけて見せた。もちろん駄洒落であるが、ギャルソンの怒りは天にまで届こうとしている。


「ふ・ざ・け・る・な!てめぇ、いつもいつもそればっかりでちっとも金になりゃしねえだろ!!てめぇの能書きで毎度毎度ことが収まるかと思ったら大間違いだぞコラァ!」

シュンッ!


「うるせぇ」

そう云って源の右手が光ったかと思うと、ギャルソンの動きが止まった。


「あ、あれ?」

ギャルソンの見ている視界が二つに割れてずれていく。

「あ…れ…え…」


なんと源はギャルソンを脳天からまっぷたつに切り裂いていた。
一瞬の早業である。

「池田流 秘の壱 閃光」

そう云うと、日本刀をびゅっと一振りした。

「げ、源ェン〜〜;」

ギャルソンはそう言い残すと、ボンと細かい粒子になって消滅した。

「正しい社会の構図だぜ」


突と秋山は口をあんぐりと開けて見ていた。モモは空腹でぶっ倒れたままである。

「おいおい…いいのかよ。さすがに殺っちまうのはまずいんじゃねぇのか」

「いいんだよ。安い時給でこきつかいやがってあのタコ。いつかタコ酢にしてやろうと思ってたしな。それにあんな時給ならマイアミの靴磨きでニッケル稼いでいたほうがましだぜ」

「なるほどな」

「せちがらいもんだのう」

「おう、そうだ。あのタコが死んだってことで、ここも時期に消滅するぜ。早いとこずらかるか」

「だな。それにさすがに寄り道しすぎた」


怪談レストランから出ると、辺り一面はだだっ広い野原だった。
建物、庭園などは雲散霧消していた。

「このレストランって一体なんだったんだ?」

「ここのレストランは、ある術師のおっそろしい妖力と式で成り立っていたのさ。あのタコはその術師の式ってわけだ」

「式ねぇ…。しかしなんで普通の人間のお前がここで働いてたんだよ」

「ああ、前任のシェフは妖怪だったんだが、料理の腕は絶品でよ。この山で遭難してるときに拾われて助けられてんだ。そんとき食わしてもらった飯が美味くてな。妖怪だろうが何だろうが、関係なく頼み込んで弟子にしてもらったのよ」

「術師との関係は?」

「なんでも…師匠とは親友とかライバルとかの間柄だったらしいがな…。それでこの店をまかされていたらしいが1年前に逝っちまったよ」


「ふむ…。失恋レストランとは関係なさそうだのぅ…」

秋山は残念そうに空を見上げた。


源がそれに反応した。

「失恋レストランって…あのカフェのことか?」

「お!知ってるのかよ場所」

「てか…場所は山の裏側だぜ?」

「……おかしいな。どこで間違えたんだろう」

「ああ…もしかしたらあの二手に別れた道かのぉ」

「しかし右は本道で左はあきらかにあぜ道だったが…」

「まっすぐって云われたはずだろ?右の本道は如何に大きい道でも曲がっていたはずだ。素直に行きゃ良かったんだよ」

「そうか…。まぁでも飯は食えたからよしとしよう」

飯に反応したのかモモが牙を剥いた。

「飯っ!飯っ!飯っ!飯っ!飯っ!飯っぃい!うりぃいい!!!」

「しょうがねぇなぁ。ほら握り飯だ。やるよ」


源は懐から笹で包まれた握り飯をモモに与えた。
モモはそれをひったくって、口の中一杯にほおばっている。
まるで野生の獣だ。

「ぐるぅるるう!!!がるぅうう!!!!」

「やれやれ…」


突は源に向き直って、「あてがねぇなら一緒にこねぇか」と言った。

「ふむ…。やることもねぇしなあ。ふぇいたんの乳も吸ってみてぇし…行くか!」

「決まりだな」

「おぅ。源も仲間か。いけいけじゃのう」

「ふぅ…助かった。あ、池田さんよろしくぅ」

源はにたりと笑って

「ふぇいたんと…ち、ちっすしたい、ちっす」

「しっかし…相変わらずだなお前は」

「おれぁ、まだおっさん達みてぇに水涸れしてねぇからよ!バリバリの性少年だぜい!」

「意外にふぇいはもてるんだな。不思議なことだ」

「しらねえのかよ?ふぇいたんは真紅でもAKBの前田敦子の次にランキングが高い女だぜ」

「あれとちゅっちゅっしたいのは藤井さんとマソぐらいだと思ってたわ」


ともかく源が仲間に加わった。

腕はたつけど女にゃ甘い。乳をしゃぶって30年。甘いの辛いのくーろいの。
特に主婦はご用心。黒光のすけコマシの源ここにあり。
そんな池田の源が仲間に加わった。

思いついたように突が口を開いた。

「しかしよ…よくよく考えてみりゃあのタコって何にも悪くねぇよな?」

「だのぅ。値段はぼったくりじゃったが…言ってることは正論だったしの」

「まぁ残念なタコってことでいいじゃねぇか」

「わたしは何も食べてないんだが…」

そうモモが云うと4人は顔を見合わせて大笑いをした。
腹を抱えて大笑いをした。
源はレストランから出る時に売上金を全部持ち出している。

式のギャルソン哀れ!まさに外道がいた。食い逃げ強盗殺人。
とんでもない奴らである。
でも所詮タコだからしゃーねーか。

そして目指すは失恋レストラン。
さぁ行けやれ行け突き進め。

そして結末いまだ見えないこの話。
明日から夏期休暇で帰省しますので次回は来週月曜の更新です。

ではまた。

【続く】
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テーマ : 雑記
ジャンル : ゲーム

【偽りの救世主】信On 失恋レストラン14【かずは】

甲府の甘味屋。

不動かずはは、あんみつパフェを食している。
周囲の客が引くほどに羽化登仙の境に入った満面の笑みを浮かべていた。

「美味しいな♡美味しいな♡」

古来より、女性が幸せな顔をして舌鼓を打っている姿を見て、気分が悪くなる男はまずいないだろう。
小動物が餌を食べるように一心不乱に食べる女は総じて愛らしく可愛いものだ。
いい女の条件はよく食べる。これは九州地方の常識である。

しかし、兄貴分の地獄突からは普段よく言われていることがあった。

「油断してると夏のが太るぞ」

女性にとって甘いものは別腹なのだろうが、夏のアイス太りはよくあること。
しかし、今のかずはには馬耳東風だ。

「美味しいものを我慢するのは人生の罪!」

そう言って耳も貸さずに食いまくっている。
都合の悪い事は耳にいれない主義なのだ。

いきなり携帯が鳴る。

「む!なんだぁ」

せっかくの至福のときを邪魔されたのが気に入らないとばかりに、手を休めてしぶしぶ携帯の着信表示を見る。

「あっ、三浦兄さんからだ」

通話ボタンを押すと、落ち着いた抑揚のない声が響いて来る。

「かずはさん、こんにちは。ふぇいふぇいが例の教団に捕まったらしい。これより作戦Cに移行するってさ」

「三浦兄さんこんにちわん♪そっか〜、ふぇいさんやっぱ拉致られたのねん。了解っ!じゃぁあたしも行動開始するねん」

「了解。よろしく頼みます」


通話を切ると、半分以上残っているあんみつパフェを眺めながら、名残惜しそうに席を立った。

「またの機会ってとこねぇ。残念」

勘定を置いて席を立つと、甲府の両替方面に向かって足早に駆けていった。



ここがどこか正確な位置はわからない。
あれから、いくつかの質問を投げては見たが、はぐらかされてばかりだ。

ふぇいは、アップル教団の内部にいる。
捕らえられた形にはなってはいるが、危害を加えようというわけではないらしい。

ふぇいはあれから、沐浴をさせられて白い作務衣を着せられている。
Tシャツよりはなんぼかましではあったが、やはりいつもの束帯でないと落ち着かない。

食事をご一緒にとさきほどの男に誘われて、食堂の席についている。

食堂といっても、豪奢な造りで至る所に金箔が鏤められたモダンなものである。
ヨーロッパの王朝貴族が食事をとるように長いテーブル。ふぇいと男の傍らにはメイド姿の若い娘が立っている。
料理も満漢全席もかくやと言わんばかりの豪華な料理である。

このご時勢に非常に贅沢なものだ。
しかも、以前に偽マソが市の相場を散々荒し回ってデフレスパイラルを巻き起こしている。
潤沢に財政が潤っているところなど一部の商人か、古参の大名ぐらいであった。
あるところにはあるというが、結局、民の財布の紐が固ければ流通は滞るし生産も低下する。
が、ある一部の組織は金を吸い上げながら逆に太っていく。

思想集団とは言うが、この教団の資金源はどこから出ているのか。

ふぇいは、目の前に出された、熊の手の食しながら思惑をめぐらせていた。

「どうです、ふぇいさん。熊の手のお味は?」

「まぁ…全然臭みがなくて美味しいですけど…これ相当な値段がするものですよね」

「ははは。値段はともかく、右手で蜂蜜をたっぷりつけて舐めていた熊ですから味は最高級ですよ」


ローブの男は、顔をほころばせながら自慢げに説明をした。
既にローブで隠すこともなく、しっかりと顔が見える。
黒髪を後ろで結い上げて、30歳手前に見える。眼は細く常時うっすら笑っている。

この男は実質的に教団ではナンバー2の存在であるという。
現在、リーダーに謁見することができるのはこの男だけらしい。

「私の名は教団の副団長を任されておりますカロッェリアと申します。以後お見知りおきを」

先ほどそう自己紹介されたが、これが本名とは思えなかった。

マソはあれからどこかに消えていた。おそらく教団内部での仕事の役割があるのだろう。
ふぇいとリーダは、長いテーブルの端と端に座りながら、対峙する格好で向き合っている。

「ワインはどうです?ふぇいさん。モンラシュの上物が入りましたのでね」

「できればグラーブの白をお願い。ボルドーにはボルドーってのがあたしの主義でね」

「お詳しいのですね…それは結構」

カロッェリアは、感歎の賛辞を送るが如く両手をパン!と打ってメイドに指示をした。


ふぇいは、悪びれもせず己の自己主張を肯定するかの如く、刺を投げた。


「こんな偉そうな女より、ジンジャーエールを頼むような可愛い女のほうが、一緒に食事をする殿方には楽しいんじゃない?」

「ははは。とんでもない。まぁ、ずけずけとおっしゃる物言いと、その振舞いに感動すら覚えますよ。楽しくてたまりませんね」

「へぇ、さすがでかい組織のナンバー2ともなると寛大でいらっしゃること」

「まったく、飽きない人ですねふぇいさんは」

カロッェリアは、おかしくてしょうがないといった風で口を抑えながら笑っている。
ふぇいはその様子に気にもかけず、メイドが運んで来たグラーブの白を軽くテイストして「うん」とうなずいた。


「で…あたしを攫って来た目的は?」

ふぇいがいきなり核心をつく話を切り出した。


するとカロッェリアはおだやかな表情から、一変して剣呑な面持ちで両肘をテーブルの前で交差させ下を向いた。
肩が震えているのがわかる。

そして蚊の鳴くような声でボソボソとつぶやいた。

「…しえな…い」


「え?」

よく聞こえなかった。ふぇいが聞き返すと男はいきなり立ち上がって両手でテーブルを支えるようにバンッ!と叩いた。

「…しえない」

「は?」

カロッェリアは顔を歪ませて笑いながら狂人のように叫び出した。

「おしえなーいっ!おしえないおしえないおっしえなーーいっ!ふぇいたんにはおっしえなーいぃ!」

「……!?」

あまりの豹変ぶりにさすがのふぇいも絶句した。
なんだこいつ…。こわっ!
こいつ誰かに似ている。そうあれは確か…。

叫び終わるとカロッェリアは、くるっと表情を変えてまたもとの柔和な顔に戻っていた。
はぁはぁと息を弾ませて、メイドに背中を擦ってもらっていた。

ようやく落ち着いたのか、ゆっくりと席に座ると、ふぅと息を吐いてふぇいに恥ずかしそうに顔を向けた。

「…失礼。私は少し疾患がありまして緊張が高まるとこうやって大声を上げて発散してしまうのです」

「…あらぁ。大変そうね」

「定期的カイジ症候群というものなのです」

「ああ…カイジの顔が歪む台詞のあれね」

やっぱりあれかとふぇいは納得した。あれは見ているほうも疲れる。

「お見苦しい姿をお見せしました。で、目的とおっしゃいましたね」

「ええまあ」

「単純です。ふぇいさんには我が教団に入って頂きたい」

「だからなんで私なのさ」

カロッェリアは一瞬押し黙ると言いにくそうに言葉をちぎった。


「…あなたが超能力因子を持つ者、だからですよ」


「は?超能力因子!?なにそれ」


何の事だかさっぱりだというふぇいに、カロッェリアはワインを勧めた。
まずは落ち着いて話を聞いてもらおうという事だろう。

「核心については食事が終わってからということで。まず1から簡単に説明していきましょうか」

ふぇいはワインを飲みながら、適当な理屈を作って信者勧誘をする手法かと胡散臭そうにカロッェリアを睨む。


「ふぇいさん。まずは今のこの世界をどう思いますか?」

「どうって…。別に可もなく不可もなくかな」

「プレイヤーはこの世界に立ち降りて、初心者と呼ばれる。しかし、いつしかそんな初心者も歳を重ねていけばベテランと呼ばれるでしょう。必ずね。しかしね…大人のプレイヤーになるのはいつなんでしょう?わかりますかふぇいさん」

「大人のプレイヤー?定義が色々ありすぎてわからないけど」

「おかしいと思いませんか?当時学生だったプレイヤーも社会人となり、家庭を持ち、おっさんおばさんになっていく…。10年も続いたコンテンツなのだから当然なのですが、そのプレイヤー達はいつ大人になったのでしょう?ネトゲにロマンを求めなくなったときですか?それとも、オフに出てみて恋慕していた隣人がネカマのおっさんだったときですか」

「色々自覚したときからじゃねーの。そんなん」

「そうです。プレイヤーは自覚するタイミングが必要なのです。だから我々の教団は、自由に対する自覚を啓発して、ネトゲに大人のプレイヤーを確立させていく!大人であれば些末な問題など意にも介しません。仮想現実という第二の空間でリアルとは違う自分を思う存分楽しむ。子どものプレイヤーにこれができない。仮想現実をリアルと混同してしまいますからね。真に開放された遊びをともに興じることができる大人のプレイヤーを真紅に!これが第一のスローガンなのですよ」


「…ちょっと言ってることがよくわかりません」


「ふぇいさん。あなたがたは一度、倫理懲罰委員会の輩に稲葉で会ったはずですね。彼らはこの世界の負の要素を全て排除しようと画策しています。とんでもないことです。オンラインゲームは義務教育の学校ではないんです。混濁した世界だからこそ面白い。それこそが大人であるプレイヤーが互いに共存していける世界なのですよ。この世界に警察も教師もいりません。我々は自由なのですから!」


高説をドヤ顔で能弁に語るカロッェリアの顔は興奮しているのか、頬が上気している。
さきほどまでの冷静で氷のように見えた男とは思えない。

ふぇいは、聞き終わると鼻で笑って問い返した。


「ふ〜ん。でも、その自由な大人の世界を作ろうとするご立派な組織が、何故市場を荒し回って格差をつけた社会を構築しようとするのかねぇ」

「…お気づきでしたか。さすがふぇいさんだ。しかししかたのないことでしょう。民衆の中からの改革より、上からの改革を起こさねば何も変わらない。負の行動や結果があったとしてもそれはそれで大いなる犠牲と未来への糧です。改革にはやはり資金が必要です。肥え太った豚どもから摂取するのは悪でもありません。これは改革に必要な仕掛けでもあるのですよ」


ふぇいは、うんざりした。
所詮、こいつらも己の利潤と手前勝手な言い訳を押し付けようとしてるだけのカルトじゃないか。

ふぇいはかぶりを振って席を立った。

「…はいはい。勝手にやればいいさ。あたしはそろそろ観たいテレビがあるから帰るよ。御馳走様」


カロッェリアは両手を組んで額に押し付けながらためいきをつく。

「残念ですね…。ふぇいさんなら良き仲間になってもらえると思ったのに…。しかし超能力因子を有するあなたをこのまま帰すわけにもいきません」

「だからその超能力因子って何だってのよ!」

「いまはまだ知る必要はありません。いまはまだね…」


そう言うと、席を立ってくるりと背中を向けた。

「いい夢を。特攻のふぇいさん」

ふぇいは、退出するカロッェリアの背中をみた瞬間、強烈なめまいに襲われた。

「ぐっ!?」

まさか、これは…さっきのワインの中に何か…!?

気が遠くなる。畜生…。またやられた…。
霞んでいくカロッェリアの背中に向かってふぇいは叫んだ。

「特攻…一番槍のふぇいだよ。馬鹿野郎…


眠りに堕ちたふぇいの傍らには誰かがいて、何やらしきりに叱咤している。

「ふぇい! オイ、ふぇい!! あんな負け方はないだろう。オイ、ふぇい!」

よく見るとアニマル浜口だった。

【続く】

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【マソと】信On 失恋レストラン13【Tシャツとふぇいふぇい】

ふぇいふぇいはまどろみの中にいた。

ふぇいふぇーい

ふぇいふぇーい

ふぇいふぇーい


遠くで誰かが呼んでいる。
その呼び声はじょじょに小さく溶けるように消えていった。

柔らかな日差しのなかで、あたり一面は無数の花。
その憧憬の中でまどろんでいる幼き自分を俯瞰で眺めていた。

死んだのかな。
なんとなくそう思った。

ま、いっか。どうせ地球も12月には滅びるし。
惑星Xが地球の周回軌道に割り込んで来て、太陽系の惑星軌道にねじれが生じて一貫の終わり。
笑っちゃうよねえ。所詮、宇宙レベルの意志の前では、人のちっぽけな思惑なんざ宇宙のチリにも劣るわけか。
アンビリバボーでもやってたしなー。所さん老けたなー。
思い残す事は色々あるけど、まぁ悪くもない人生だったんじゃない?
そこそこ楽しめたし。

あっ、サーティンワンの5段重ね。これだけは食べたかったなぁ。
それだけが心残りだ。

そろそろ考えるのもめんどくなってきたなぁ。
このまま消えちゃうんだろうな。相方は泣くかなー。泣くだろうなー。
ま、それもしかたないか。

…じゃあ、皆様。さようならでございますよって感じー。


「ふぇいたん、ふぇいたん」



また声が聞こえる。

地の底から這うような声だった。

うぜー。
地獄の牛頭馬頭だろうが閻魔様だろうが関係ねーよ。
あたしはふぇいふぇいだ。
安くはないんだ気安く呼ぶなっつーのタコ。


「おおーい!ふぇいたんってば」

「わっ!!」

耳元で響くトーンの高い声に驚いて、ふぇいは飛び起きた。
耳がきーんとして少し頭痛がした。

「っつ……」

耳を抑えながら顔をあげると目の前には、真紅でさんざん見慣れた顔があった。


「マ…マソ?」

「しゅっしゅっ!ふぇいたん!起きたね」

なんと、目の前にいるのは今まで行方のしれなかったマソである。
こっちは口調といいいつもどおりのマソであった。


ふぇいは、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐさまマソの胸ぐらを掴んでギリギリと締め上げた。
ふぇいの得意技フロントスリーパーである。
関西レディースのヘッドだった頃のカツアゲする時の十八番だ。


「マソォオオオ!!!!あんた今までどこにいやがったんだぃ!?あんたのせいでどれほど…」

「ちょ、ちょちょちょ〜〜;待って待ってふぇいたん、チョークチョーク!マタンキイ;」


ふぇいが手を離すとマソはゴホゴホとむせながら、喉元を抑えた。

ふぇいはあたりを見回した。ここはかなり大きな広間のようだ。天井は高く電気がついていない。
部屋全体が暗く、右側の壁には燭台の灯が一定の間隔で設置されている。

「マソ…。ここはどこ?あんた一体…」

「ふぇひっ。ふぅ…。ひどいな;ふぇいたん…。すっごく心配してたのにいきなり絞め技はないだろう;」

「いいから!そんなんどうでもいいから!ここはどこなのか答えなさいってのよ」

「まぁまぁ…。そう興奮しないで。怒ったふぇいたんも可愛いけど、俺としてはしゅびっびっぼきゃぁああ!なふぇいたんのがいいのよねん」

「…その意味不明な口調。どうやらあんたは本物らしいね」

ふぅと一息ついて、ふぇいは少し状況を整理した。


稲葉の屋敷で偽マソに捕らえられて…それから記憶はない。
あのイケメンの偽マソは一体なんだったんだろう。

「マソ、色々聞きたいことがあるけど順番にいくよ」

「はひぃ」

「まず。ここはどこ?」

「ここ?ここは教団内部の広間でしゅう」

「教団?なによそれ」

「アップル教団よん。ネトゲの自由恋愛とラブ&ピースを掲げた思想集団かな」

「アップル教団って…。まさかリーダーはジョブズとかいうんじゃないだろうね」

「ちゃうちゃう、ちゃうヨン様。でも僕ちんもリーダーには会った事ないのよねん」

「ふうん。で、なんであんたがここにいんのさ」

「ふぇいたんにこっぴどく振られてから、傷心の僕ちんは甲斐の屋台にいったんよ。そこでクダをまいてたら誘われてここに来たのれす。ワイルドだろぉ〜?」

「はぁ?あんた馬鹿ぁ?ワイルドも糞も怪しい新興宗教に感化されただけやん!」

「怪しくないよ!世界はひとつ。シュバーッシュバシュバシュバーッ!!唸るエンジン〜。ラブ&ピース!!」


マソはそう叫ぶといきなり、キラッ☆のポーズを決めてみせた。

「俺つええっすよ!」
vbfdngfmgy,
↑ドヤ顔のマソ


「キラッ☆じゃねーよ!このバカチン。それにこのださいTシャツはなんだい」

ふぇいは白いTシャツに林檎マークがプリントされたものを着せられていた。
マソも同様に同じものを着ている。

しかし、女性の白いTシャツ姿は艶かしく色っぽい。
マソはTシャツ姿のふぇいを見ながら何やらはぁはぁと息が荒い。

「じろじろ見るな馬鹿ぁ!」

さすがに恥ずかしくなったのか、ふぇいは胸を押さえて背を向けた。
背中を丸めて耳たぶを真っ赤に染めている。
これを見ると普段気丈なF様もただの可愛い女だった。

「ふぇいたん、アップル教団は素晴らしいところだよん。何をするも自由。所詮ネトゲだ踊らにゃ損損だもの。ふぇいたんみたいな人こそ入るべきだよぅ。俺たちは規定の枠に収まらないアンディーオナリーピポーなのさっ!しゅるん」

「ったく…。それで。なんで私がここに連れてこられてるのさ」

「それは…」


マソがそう言いかけた時に、広間の奥に灯が灯り数名の人影が現れた。
白いローブを羽織っていて顔はハッキリ見えない。

そのうちの一番背の高い一人が前にすすみ出て来て、ふぇいの前に立った。
全身を白いローブで包んで胸に林檎のマークがついていた。

「初めましてふぇいさん。その答えには私がお答えいたしましょう」

澄んだ男性の声だった。後ろの2名は背が低く線の細さで女性だとわかる。

ローブの男は、マソを一瞥するとマソに向かってポーズを取った。

「ラブ&ピース!!」キラッ☆

「ラブ&ピース!!」キラッ☆

マソもそれに答える。
どうやらこれは教団の挨拶らしい。これはひどい。

「なっ…。なんだいあんたらは!?」

「…真紅鯖を真に開放する者。そうお答えしておきましょう」

冷たい声だ。まるで氷のように冷えきって耳に傷みを感じる。

マソを見てみると、この男にかしずいて頭を垂れている。

どうなっちまってるんだいこれは…。


ふぇいは状況に混乱しながら、とにかくこのTシャツだけは嫌だなと思っていた。


【来週に続く!】

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【マソの】信On 失恋レストラン12【開眼物語】

「見えた!」

山の中腹のとっかかりに、白い建物が見える。
建物の手前には小さな柵があり、奥にはバロック調の庭園が広がっていた。

白い建物の入口の上部には看板が掲げられ、スクリプト調の金書体で「Cafe Heartbreak」と記してある。

「遂に来たか」

ほっと一息を着くと、急に便意をもよおすような感覚に陥った。
書店で本を探しているときに必ず起こるあの衝動である。

突はどうにもこの手の外装の建物は落ち着かない。
秋山は別段どうということのない風である。


「なぁ突さん」

「ん?」

秋山は難しい顔をしながら、庭園の入口で考え込んでいる。

「初めに…マソさんが消えたはずの失恋レストランは甲斐にあったはずよのう」

「うむ…。しかし今となってはそれもよくわからないな」

「これは、別の知人に聞いたことなんだが…実は他の地でも失恋レストランが出現したという報告があってな」

「ああ、俺もそれは聞いた。調べてみたが美濃、近江、紀伊、越後…色んな地域で出現報告はあるようだが」

「ここも、そのうちの一つかのぅ?」

「さてなぁ…。しかしこれにはあの懲罰倫理委員会が絡んでるのは間違いない。だが目的がよくわからん」

「わしらだけで大丈夫かのぅ…」

秋山は妙なところでリアリストだ。
ドラクエで言えば、最低限のレベルでラスボスつっこむことはせずに、レベル99近くまで上げてラスボスをボコるのだ。幽幽白書の仙水のような男だった。

「ふむ…。そんなに不安なら相談してみたらどうだ」

「誰によ?」

「お前さんの心の友。掲示板にいるだろ沢山」

「あっ!ほうじゃのう」


秋山は頭を叩いて意を得たりと、携帯で掲示板に書込みをした。
その素早さといったらまるで脱兎の如く。

信オン関連のスレは比較的きちんと対応してくれる住人が多い。
秋山は期待値を込めて願うように一字一字確かめるようにピッピッピッとボタンを鳴らしながら書込みをする。

「……で、アドバイスよろろん…^^っと」

書き終わると、秋山は更新しながら住人にレスを待った。

「おっ!きたきた」

早速レスがついたようである。
秋山の歓喜しながら携帯画面を覗き込む。

どれどれと突も一緒に覗き込んだ。



1:悩める武士道:2012/08/08(水) 00:33:04.62 ID:busido5963
ちょっとおまいらに聞きたいんだが、俺はいま巨大な敵に立ちむかうところなんだ。
でもびびってる俺がいる。
こんな時はどうしたらいい?アドバイスよろろん^^


2 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 00:55:41.40 ID:LjuWfmhm0
           ∩_ 
           〈〈〈 ヽ
          〈⊃  }
   ∩___∩  |   |
   | ノ      ヽ !   !
  /  ●   ● |  /
  |    ( _●_)  ミ/ こいつ最高にアホ
 彡、   |∪|  /
/ __  ヽノ /
(___)   /



3 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 03:03:03.55 ID:ddF7QWZ80
     ____
   /__.))ノヽ
   .|ミ.l _  ._ i.)
  (^'ミ/.´・ .〈・ リ  1はワシが育てた
  .しi   r、_) |
    |  `ニニ' /
   ノ `ー―i



3 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 04:50:00.57 ID:N6F2b4YG0
ハロワ行け


4 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 05:04:20.51 ID:bYPY5e1i0
行ってきた

5 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 06:08:24.29 ID:9XEBcR9+O
よろろん閻魔くん


6 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 08:15:44.84 ID:H7LkvyKd0
1は俺の嫁
なわけはない


7 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 09:23:28.16 ID:ddF7QWZ80
巨大なチンポに立ち向かうんだったら嫌だな

8 :名無しさん@ゴーゴーゴーゴー!:2012/08/08(水) 09:32:05.24 ID:9XEBcR9+O
>>1
秋山さんちーっす!



突はレスを見ると呆れた顔で秋山の肩を叩いた。

「アキヤマンってばれてる;しかもまともな答えがひとつもないじゃねえか」

「だめだこりゃ」

秋山もあきらめたらしい。所詮、2chの住人にアドバイスを求めること自体ナンセンスだったのだ。
信じるのは己の力のみ。ここまで来たらどうとでもなれと腹が据わった。
だが、腹が座るくらいには役には立ったようである。

「行こう」

「行くかの」


二人は庭園を抜けて本丸の建物の前に辿り着いた。
左手前には小さなテラスがあり、そこでも食事がとれるように円卓の白いテーブルが2つほど置いてある。

「さて…はいるぞ」

「おぅ」

突と十分に注意をしながら扉に手をかけた。
扉を開けると、転がるような音色でカランを呼び鈴が鳴る。

レストランの内装は外観と反してシックにまとめられていた。
右手前にレジスタが置いてあり、フロアー全体が暗い。

しかし─

ここはまだエントランスのようである。奥行きが思ったよりある。
レストランはまだ奥だろうか。

正面にインフォメーションカウンターがあり、何かふわふわしたものがいる。
何やら丸くてふわふわしているものがこちらに向かってきた。

それは燭台を片手に持って歩み寄ってきてぺこりと頭を下げた。


obake
「ようこそ。怪談レストランへ」





vfgngfnmfgmg
↑注:トツ&アキヤマン




BGM/怪談レストラン ED 「Lost Boy」


【続く】

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【モモはやっぱり】信On 失恋レストラン 11【強化系】

両脇を濃い緑で挟まれた林道を馬で駆ける突と秋山。

目指すレストランは目前だ。
いよいよ謎の核心にせまることができる。

しかし焦燥にくすむ突の胸中にひとつのしこりがあった。

林檎ちゃんが何者なのか、だ。徳川の隠密だろうか?
しかし、先ほどの少女の胴丸には織田の家紋が刻まれていた。
あの少女と通じているってことは、もしかしたら織田の間諜?

とにかく謎だ。謎ばかりだ。
まるで白いパズルのピースの角を探して暗中模索しているようだった。

こんなときパズラーの藤井さんでもいれば、何かヒントでもくれそうなもんだが。
しかし、藤井さんはいまパタゴニアに出張中だしな。

そう思案にくれていると、秋山が何やら携帯をいじくり回している。

「なんだアキヤマン。ニュー速でも見てるのかい」

そう突が問うと、秋山は神妙な顔をして馬を止めた。

「どうどう…。なんだよ一体」

「いや、突さん。これを見てくれ」

「んー?」

秋山が携帯を画面を向けながら、にやにやしている。

「いやなに…緊張をほぐすため2chを見てたら懐かしいスレがあってのう」

857名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! [sage]2006/03/17(金) 15:04:49ID:0Ejmpcka
俺もFとなんどか組んだ
そのときは信を始めて間もないころで
自分の立ち回りもよくわからないまま
上野屋敷に誘われ、ついていった
今思えばくだらない質問なのだが
わからない点を聞いてみたら
意外にもFが丁寧に教えてくれた
最後に「自分なりのスタイルが確立できるといいね」
と言われ、ちょっとほろっとした覚えがある



「こう考えてみりゃ、ふぇいさんっていい人だったよなぁ…」

秋山は遠い眼をしてせつなそうに云う。

「ああ…いい奴だったな。惜しい奴を亡くしたもんだ。藤井さんは、ちゅっちゅっしたかっただろうに」

「おいおい、まだ死んでねーだろ」

秋山はあわてて否定する。

「そうだったな。しかし─なんちゅう古い晒しだよそれ。日付が懐かしすぎるぞ」

「信onも10年か。光陰矢の如しだのぅ」

そう云って秋山はきつくなる日差しに眼を細めた。
朝露にぬれた木々の葉が照り返しをうけて輝いている。

仮想現実とは言え、美しい景観であった。


「アキヤマン…もしもよ、もしも…」

「あん?」

「いや…なんでもねぇ。行くか」

「ぬくぅ、気になるのぉ」

不満げな秋山を尻目に突は手綱を打って馬に合図する。
二人は再び馬を飛ばして林道を駆けていった。



一方、検問所に置いていかれた草摩モモだったが、以前として惰眠をむさぼっていた。

モモの特殊能力は、「フォゲッター」。つまり都合の悪い事はすっかり忘れてニュートラルになれることだった。
さきの門番の少女にずるずると引きずられていったのだが、ほかされた先は…

「ん、ん〜〜;」

モモは鼻をひくひくさせながら、異臭に気がつきようやく起きた。

起きて眼をこすりながら辺りを確認すると、何やらなにやら大きなドラム缶がある。
よく見るとゴミが周りに散乱していてゴミを消却する場所のようだ。

「な、な、なんだこりゃ…!?」

なんと、少女がモモをうっちゃった場所はゴミ処理場だった。
この状況を理解したモモは怒った。全盛期の鶴田のように怒った。
頭をくしゃくしゃにして怒った。

「ぬぅううう;あ、あのガキぃ〜〜!!!よくも、あ、あたちをゴミ扱いしやがったわねー!!あ、あたちをバカにしないでー!!」

モモはまじぎれすると、オカマ言葉になる。
わたしがあたちになるのだ。
これを読んでいる諸君は、猿渡哲也の「SOUL」をご存知だろうか。
その作中に出て来るゾッドというキャラクターのように、まさにモモはいまぶち切れているわけだ。

あのロリガキを探してとっちめて、ひんむいて道路にすっぱだかで晒してやるわ!と狂犬のようにあたりを探しまわった。

ここは、門の裏手にある崖側の下ったところのようである。
坂を登ると詰所は前方に見えた。

「あそこね…」

モモは残忍な笑いを浮かべると、あらゆる拷問方法を考えていた。

ここで説明しておくと、草摩モモはもともと地獄突や秋山などより相当格上のプレイヤーである。
初期のプレイに置いても、伝説の廃人と呼ばれた兵達が一目を置いていた。
あのままコンスタントにプレイしていれば、いまや真紅のイデオンと呼ばれる存在になっていたかもしれない。

それほどのポテンシャルを秘めたプレイヤーだった。
みかけに騙されると痛い目にあうといういい見本である。


鬼の形相でモモは詰所のドアを蹴破って叫んだ。

「オラァーーッ!!糞ガキぃ!人生の補習の時間だコラァ!!!」


そう叫んだ瞬間、モモは絶句した。

「あ?」

cvgnyつk

圧倒的な凄みに気圧されて、モモの胆は萎んでいる。
ていうか…こいつは幼女の皮を被った念使い…。
そういや、織田の忍びに変幻自在に体躯を変えられる化物がいると聞いた事があったっけ。
まさかこいつが…。

ひとつだけわかるのは、これは喧嘩を売ったら殺られる!ということだ。
モモの長年のカンがそう言っていた。

モモの特殊能力その2、「モモカン」。
危険が訪れる前に直感で回避する能力である。

この能力のおかげでモモはヤクザの追跡から何度も逃れている。
しかしこの能力はギャンブルで使用することはできなかった。

ともかく、この場は回避である。

「…失礼。部屋間違えましたワン♪」

あわてて会釈をして詰所を離れると、門の裏手を抜けて神速を使って二人のあとを追っかけた。

神速で風を切って駆ける中、モモは思った。

「いやぁ、人はみかけによらないのでむやみに喧嘩をうっちゃダメだな、うん」

またひとつ貴重な教訓を覚えたモモなのであった。

【続く】


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【働かざるマソ】信On 失恋レストラン 10【食う寝る晒す】

東雲(しののめ)の茜色が暗い山中をほのかに照らす。
3人は勾配のややきつい坂を、緩やかな螺旋状に旋回しながら馬で登っていた。

しばらく行くと、道幅が広がり前方に大きな門が見えた。
左側は崖となっており、右側は竹網で通り道を遮断されている。

「なるほど。これが検問だな」

門前には武装した2名の武人が立っている。おそらく門番だろう。

3人が馬からおりて門に歩み寄ると、早速片方の門番が前に出てきて制止した。

「ここは私有地だ。通り抜けはできんぞ」

6尺をゆうに超える大男の門番でよく通る太い声だった。
顔はホリエモンによく似ていた。

地獄突は、ひるまずに割り符を出して門番の前にかざして見せた。


「おい、堀井。通行証はあるぜ」

「誰だ堀井って?」

「おめーだよ」

「俺はそんな名前じゃない!」

「どーでもいいから通行証見せたしよー。早く門あけろよ堀井」

「ぐぬっ…この無礼もんがぁ!」


「待てっ!!」


顔を真っ赤にして斬り掛かろうとする堀井を、もう一人の門番が一喝した。

「ぐっ…!?」

堀井の動きはぴたりと止まり、岩のように固まっている。

一喝した門番が、固まっている堀井の方をポンと叩くと固まった身体がへなへなと崩れ落ちた。
気合いだけで寸当てをしたようである。

その門番は前に進みでてきて、ぺこりと頭を下げた。
小兵な体躯でよくもあんな胆力があるものだと感心する。
若侍といった風の出立ちである。

「相方が失礼いたしました。通行証をお持ちならただ今門をお開けいたしますね」

慇懃に謝を述べると、堀井に合図をして門を明ける準備を促した。
堀井はあわてて会釈をして、そそくさと門の解錠に向かった。


「いや…こちらも調子に乗りすぎた。どうか頭をあげてくれ」

「かたじけのうございます。では…」


頭をあげて顔がはっきりと見えると、3人は驚いた。
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草摩モモが唸る。

「わたし…より可愛い…だと!?」

モモは敗北を感じて放心状態になった。
さらにいじけてすやすやとモモは寝てしまった。
むかつくこと、嫌な事やだるいことがあると寝て忘れてしまおうというメンタルディフェンスが働くのである。

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モモはいい寝顔でぐっすり寝てしまった。
おそらく起きるのは2時間後だろう。
だめだこりゃ。


しかし、この童女…見ればまだ年端もいかぬ少女である。
見目も麗しくなんとも可愛らしい。
これは妹属性の野郎どもには堪えられない。

秋山はロリコンではなく、幼女に興味もない熟年好みだが、それでもこの可愛さには膝をつくほどだ。

「こりゃたまるか」

坂本龍馬かお前は。
そんなつっこみすら野暮に思えるほどの圧倒的な可愛さだった。


「なんと童女か…。しかもえらいめんこい娘だなぁ」

地獄突はこの幼女をジロジロみながら、ほ〜〜とかへ〜〜とか感嘆の声をあげた。

そんな2人の驚く顔をよそに、少女は態度を崩さずに小さな声で囁いた。

「徳川の林檎より連絡は受けています。まずはこれを」

そう言って白いカードを渡された。


「IDカード?林檎ちゃんから…。何者なんだよ一体」

「それはまだ明かせませんが、少なくともあなたがたの味方ということは間違いありませんよ」

それを聞いた秋山はふぅむと腕を組んで思案を巡らせるポーズをとった。

「ぬくぅ…。林檎…アップル…ジョブズ…ジョブ…ハローワーク…浅井…ま、まさか!?」

秋山はつぶやきながらハッと何かを思いついたようだった。


「突さん!もしかして林檎さんの正体は…」


突は秋山の問いに首を振って答える。

「いやいや、ねーよw」

地獄突は勝手に脳内暴走する秋山を制した。

とにかく敵ではないようだ。しかもサポートをしてくれるらしいし、ここは信じるしかない。

「ええっと…。このIDカードは何の意味が?」

「それはレストランに入った時に必要になるものですよ。使い方はいけばわかります」

「突さん、モモさんはどうする?完全に熟睡してるぞい」

「置いてくしかねーな。おい、お嬢ちゃん。ちょっとこいつを頼むわ」

「かしこまりました。ではご武運を」

そう言うと、少女はモモをずるずるとひきずりながら詰所に消えていった。
ゆがみがない行動だった。

門の解錠は既にされており、1本の道が蛇のように蛇行しながら中腹に続いている。

ここからが本番だ。
いよいよレストラン突入だ。
しかし8回チェンジをしたらヤクザがくるでござる。
ジロウ チェンジ キカイダーでござる。

この道をいけばどうなることやら。
というか、そろそろマソを活躍させないとなと思う次第でござる。

また明日でござる。

【続く】


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【このうさ耳】信On 失恋レストラン 9【地獄へ流します】

「ふぇいたんが消えたってさ」

ある野良徒党内の会話である。
マソの屋敷でふぇいが捕われてから二日しか経っていないのに、真紅鯖ではその噂で持ち切りだった。

信オン週間マガジン「真紅」でも、「ふぇいふぇい謎の失踪?」「ふぇいふぇいドバイに駆け落ち疑惑!?」など、様々な見出しがついた記事が掲載されていた。


出発する前に地獄突達はその記事を読んだ。
定期購読をしていた林檎がその記事を見つけたのである。

「ふぇい…!」

思わず呻くように声がでた。

さすがの地獄突もこれはのんびりかまえてる場合ではなくなった。
秋山は何やら同じところを行ったり来たりで落ち着かない。
モモは、額の「肉」の文字を消すのに必死だ。つか、簡単に消えねーよ。

心配だった。すごく心配だ。
世田谷区の中で一番ふぇいのことを心配しているのは俺だろうと地獄突は思った。
すごく狭い中での一番だった。


「林檎ちゃん、店の正確な位置はわかるかい?」

「わかりますが…ひとつ問題が」

「まさか、失恋してないと行けないとかじゃないだろうな」

「いえいえ。店にたどり着く前に検問があるのですよ。そこを通らなければ店には辿り着けません」

「検問?だりーなー。なんだってそんなもんがあんだよ…」

「守秘のためでしょうね。それだけやましいことがあるのでしょう。道徳だ倫理をうたっていても、一皮むきゃネトゲ廚ですし」

「力づくで突破するしかねえかな」

「無理でしょう。検問を守るのは委員会の中でも屈指の廃人集団ですし。自らをオラシオンセイスと名乗っているようですよ」

「あいたたたたた><やっちゃった名前だなそれは…」

「名前はDQNですが、奴らは確かに強いです。上覧上位者も数名いるようですしね」

「ソードアートオンラインみたいにソロ無双できりゃあいいんだがなぁ」

「突さんはシリカ派ですかね」

「……なぜ、なぜそれを知っている!?」

「あっはっはっ。妹萌えの突さんなら当然そうだろうと。ふふふ」

「林檎さんには適わんな。はっはっはっ」


突がやられたという感じで頭を掻きながらで高笑いをしていると

ゴンッ!!

と、鈍い音が轟いて後頭部に電撃に似たショックを感じた。


見ると秋山が不動明王の像で地獄突を殴りつけていたのだ。

「突さん、ふざけるのも大概にせえ!ふぇいたんがこうしてる間にも、触手で陵辱プレイされてるかもしれないというのに…。それを考えただけでワシはワシは…」

涙ぐみながら恫喝をする秋山をモモが後ろから抑えている。

「秋山さん〜〜><;も、もちつくんだ〜;!」


「ぬくぅ!離せモモさん。今日という今日は許さんぜよ。仲間をうっちゃって逃げ出すような奴は男どころか人じゃないぞい!」


いきりたつ秋山を必死に抑えるモモだったが、身体が幼女なみに小さいのでずるずる引きずられていく。


「あいててて…。どっからそんな像を持ってくんだよ。まったく」

突は頭を抑えながら立ち上がると、憤懣やるかたなしの秋山を見ながらためいきをついた。
秋山はモモをひきずりながら突に詰めよった。

突の胸ぐらを掴みながら、秋山が叫ぶ。

「突さんよぉ。ワシは今まであんたに腹を立てた事はない。三茶の雀荘で岡山から来たワシを、みんなでむしりにむしって、高速代しか残らんかったときも何とも思わんかった(ひでーな)…だがな!」

秋山の顔が真っ赤なタコのように燃え上がっている。
ギラギラと双眸が放つ光はなぜか暗く哀しかった。

「女じゃき。ふぇいさんは女じゃき!どがんしても守ってやるのが男っちゅうものじゃないのかね!」

そう言うと、掴んだ手を離してその場にへたり込んだ。


「アキヤマン……」

突は秋山を見下ろしながら、いまさらながらにわかったことがある。
この男は女に対する愛が大きいのだ。それもとてつもなく。
その愛の大きさ故に、よし子ちゃんが離れていったのかもしれない。何とも不憫な…。そして熱い漢である。

それまで秋山にへばりついていたモモがこの空気に耐えきれずに口を出す。

「な、なぁ秋山さん。ふぇい姉さんならきっと大丈夫さぁ。なんたってあの特攻一番槍のふぇいだよ。突さんの言う通りそう簡単にどうこうされるような人じゃないさ」

「ぬくぅ…」


さっきまでの勢いはどこへやら。秋山は気を吐きすぎたのか、萎れた花のようになっている。
うつむきながら、突に向かって頭を下げた。

「すまんなぁ突さん…。つい、よし子さんとのことがだぶってしまってのぉ…。あとボーナスが8千円だったので風俗にもいけんから、ついイライラしてしまって…」

「いいさ。俺もちょいとお気楽すぎたな。謝るぜ。それにな…」

突は秋山に手を差し出して立たせて耳打ちをした。

「言ったろ?この件が片付いたら3輪車延長ありだぜ」

そう言うとにやりと笑った。

「ははは…」

秋山もそれに応えて笑いを返す。何とも言えぬいい笑顔だった。


その様子を静観して見ていた林檎が、手を叩いて拍手をしている。

「雨降って地固まるですね。さて、ではこれを渡しておきましょう」


林檎は手に持っていた割り符を地獄突に渡した。


「林檎ちゃん、こりゃあ…」

樫の木で作られた割り符で、「失」という文字が漆彫りしてあった。

「通行手形ですよ。これを持っていけば正面突破する必要はありません」

「しかし林檎ちゃん、あんた何故これを…」

「それはまぁこの件がかたづいた後で…。夜ももう明けます。さ、急いでください」

「お、おぅ」


かくして地獄突一向は、店に向かって出発をした。

色々謎は多い。

マソの皮を被った羅刹。
消えたふぇいの行方。
委員会の存在。
三浦のサブ兄貴疑惑。

そして、林檎ちゃんって何者だ?
それが一番の謎である。

しかし─今は目の前の今はやるべきことをやるしかない。
ぶれずにやり遂げる事が第一である。

ふぇいがどこか遠くで呼んでいる気がした。
地獄突の脳裏によぎるのは、以前ドロップしたうさ耳をつけてはしゃいでいるふぇいだった。
ふぇいが、うさ耳をつけて「〜うさうさ」と言っていたのを思い出す。

あの時は、殺したくなるぐらいムカついたが、今となっては何やら無性に懐かしい。
うさっ娘ふぇいふぇいか。
助け出してこの件が片付いたら、うさ耳で踊ってもらうか。
マソも藤井さんもさぞかし萌えることだろう。

そんな想いを風に舞わせながら、突、秋山、モモの3人は、足早に三河の山中を目指して馬を飛ばすのであった。


あれ?そういやマソはどうしたかしら。
ま、いいか。それも失恋レストランに行けばわかるだろう。

なんかマソの件は二の次になっている突であった。

【続く】

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コーヒーブレイク 雑感

ふう…。
ちと考えるのも書くのもいささか疲れてきたんでここらでちょっと一息入れさせて頂きます。

本日はちょっと調子を変えて語りますね。
やだ、どきどきしちゃう。


さて、日頃よりこのような脳内駄文を辛抱強く読んで頂いてる諸兄にあらためて感謝と御礼を申しあげ候。
なにせ、すべてがいきあたりばったりで書いているので、結末どころか一寸先は闇のような暗い道を歩いているような状況です。
はっはっは。

しかし暑いっすねぇ。まったく。
みなさん水分とってますぅ?
俺は暑くてガリガリ君6本全部食ったら腹ぁこわして下痢しました。
さらに体力低下中です。今なら中学生にもカツアゲされそうです。
そしたら藤井さんに頼んで、全国ペンキ連盟の5万人を動かしてもらいます。
大人をなめんな。


ではまぁ、本日はですね。
信を休止してる者がなんでこんなわけのわからないストーリ仕立ての駄文を垂れ流しているのか。
それについてちょっと語りましょう。なんだこいつ、うぜえと思ったらすぐブラウザを消しましょう。


ひとつは、話を創るのが好きだからでしょう。
嫌いだったらこんなかったりーことやるはずがありませんわ。

もうひとつは、描いてみたい面白い人物達が信Onにいたからです。
もちろん、リアルではまったく面識もなく、信内でもほとんど絡んだこともない人もたまには描かせてもらいます。

いつもネタ=アイディアは真っ白で描いていきます。
というより、その人物がいればこう動くかな?と考えると、そのキャラが知らず知らずに話を引っ張っていくんですね。
ああ、パロディ風なものや、元ネタがあるのは違いますね。あれはただパズルのようにキャラをはめ込むだけですので楽です。
内容はどれも大したことのないネトゲの日常です。
常軌を逸脱した内容になりがちですが、それはまぁ創作なのでまぁいいかと。

面白い人とネタになる人は違います。

ここを見ている人にも、自分の周囲にとても面白い個性的な友人がいて、「なんだよ。こんな奴らより自分の身内のが面白いわ」と思ってる人もいることでしょう。

確かにそうですソースです。そんなん自分の身内話のが面白いに決まってますね。

まぁねえ。ふぇいふぇいが触手で陵辱されるシーンとか描けりゃもっと面白いんですが、さすがにそれはけじめがなさすぎるのでやめておきましょう。というかわたしの生命の危険です。ヤバ沢さんです。

もっと人の中へわけいっていけばねぇ。さらに面白い人はいくらでも出てくるはずですが、こう考えてみると人と人が知り合うってやはり縁なのだなと思います。

もちろん、色んな個性的な人達にもっともっと会ってみたいという欲求はあります。
しかし、そんな人達に会う機会はなかなかないのが現状です。
会ったとしてもなかなか心を開いて語り合うまでいくのは難しい。
フィーリングで合う合わないもあるでしょうしね。

ここで描く人物のほとんどは実際に信内で活動している、もしくはしていた人達ですが、それでも今まで知人登録した1/10にもなりません。

ここで描く以外にも当然面白い知人はまだまだいます。
そのほとんどが共に笑い遊び喧嘩もしたりした人ばかりです。

さらに自分の知らないかかわりのないコミュニティには、さらに強烈な個性を持ったネタ満載の人がいることでしょう。
しかし自分とは知り合わなかった。もしくは、接点がなかなか見つけられなかった。
それだけのことですがそれが全てですね。

正直もったいないとは思います。
もっと色んな人と知り合って、ちょっとしたことを掘り下げて描いていければさらに楽しい。

ここで描く、藤井さんやふぇいをはじめとしたキャラクターは、信オンの中ではまったく普通です。
というより、一般人レベルで超絶廃人でもありません。
マソ君などはわりと自らネタを作っていける人なのですが、それでもリネやFF、UOなどのからみたら一般人の域はでていません。
はっちゃけた奴は本当に言葉が通じないくらいいっちゃってますからねえ。

結局は誰しも普通の社会人なのですよね。その彼らを使ってもっとはっちゃけさせたいとの願望を処理しているのがこのブログであったりします。

ここを読んでくれてる林檎さんが、自分と同じようにストーリーを描いていますが、日頃人をネタに描いてる自分が、人の描く話に出て来ると何やらコッパズかしさを覚えます。林檎さんありがとう。
林檎さんのように丁寧に物事を描いていく人の文章を読むのは楽しいことでもあります。

自分は文章にしても推敲もしないでとっちらかって書いてるので、正直きっちり直したいなと思うとこも少なくないのですが、いきおいで書いたものは、めんどいのでそのままにしておこうと放置してあります。
いうなれば素描みたいなものですな。

まぁ、何が言いたいのかというと、そろそろ復帰して新たにネタにできる人を発掘しようかなと思ったり。

無言でもネタになる人もいれば、饒舌で楽しい人なのに、どうも文章にすると味けなくなる人もいます。
どちらかというと漫画で表現できればいいのですが、さすがにそんな作業をする力もなく。

いつもいつも、藤井さんがー ふぇいがー マソがー 三浦がー みさおさんがーではネタが尽きますわ。
しかも知人全員を表現なんざできるわけもなし。

ここで書かせて頂いているのは、比較的描きやすい人でもあります。
ふぇいなんかはとにかくユニークなキャラクターです。それがマソ君や藤井さんと絡ませると尚更ですが、あくまでもこれは自分がそう思ってるだけかもしれません。

アキヤマンは人間自体がネタなので非常に描きやすいわけですが、まぁ彼のような人はなかなかいないでしょう。
リアルで会えば100倍面白い男です。保証します。

たまに池田の源が真珠ディックで大暴れしたり、むらむすめさんが、ハムスターみたいにころころと活躍することもありますが、また新たな知人ができ、その人が自分の描くストーリーを引っ張っていってくれると楽だなと思います。要はよく言われていることですが、キャラが勝手に動き回るわけですね。

ただの友人を描きたいわけではなく、信オンを楽しんでいる隣人達の物語を駄文ながらお届けしたい。
そう思っています。ほんとです、本当なんです!


だからなんだというわけでもないんですけど
まぁこれからもよろしくです。

更新しなくなったら、のたれ死んだと思ってください。
次回はまた続きをアップします。

ではどなた様も熱中症にはお気をつけて。

また来週。よき週末を。




むう…。やはり柄にもない文体は疲れるわ。
ぬるす。

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【急いで】信On 失恋レストラン 8【口で吸え】

三河─岡崎城下。

徳川の魔界転生一門 林檎宅の茶室に地獄突を含む3人はいた。
秋山左京太夫と草摩モモである。二人ともボロボロに傷ついていた。


「いやはや…っていうわけで、まいっちんぐまち子先生だったというわけよw」

「そりゃまた難儀でしたなぁ。はははw」


地獄突と向かい合って茶を立てている林檎が、笑いながら労いの言葉をかける。

秋山とモモは沈痛な面持ちでうつむいていた。
地獄突だけがあいも変わらずの調子でヨタ話を林檎に振っている。

あの後3人は何とかマソを騙っていた化物から辛くも逃げ切っていた。
秋山は気絶していたモモをひっかついでの脱出だったので疲労も大きい。

ふぇいは捕われたままに捨て置いた。
まずは態勢を立て直してあの化物を倒せるだけの戦力を頼まなければならない。

心配は心配だが、ふぇいなら何とかなるだろう。
なるんじゃないかな。なるといいなあ。ならんと困るぞ。

そんな断腸?の思いで一時退散したのである。

地獄突が知人の林檎を訪ねたのはわけがある。
キレがあるのにコクがある。
要は林檎の持っている友人ネットワークに頼んで、あの羅刹を倒せるだけの廃人軍団を紹介してもらう算段である。


しかし─

地獄突は肝心の話はそっちのけで、まったく関係のない雑談ばかりしていた。

「突さんよぉ…。そろそろ本題をお願いしたらどうだね」

秋山が苦虫を噛み潰した面を地獄突に向けた。
モモは、額に肉と書かれたことはまだ知らない。
ここで応急手当をしてもらってはいたが、鬼勁をまともに受けたのでまだクラクラしていた。


「まぁ待てアキヤマン。慌てるティンポは皮かむりってことわざもある」

そう言って笑ってごまかす地獄突に、秋山はいい加減辟易しているといった風だ。

「……冗談はともかく!ふぇいさんが捕われているんだぞ。こうしてる間にも何をされているかわからんというのに。心配じゃないのかね?」

秋山は基本、実直で真面目な男だ。故に悪いほう悪いほうに考えが及んでしまう。
禿げるぞと言ってやりたかったが、さすがにこれ以上刺激するのはまずいので笑うだけに留めた。


「心配は心配だが、ふぇいは大丈夫さ。あいつが伊達に初期からバッシングをくらいながら一番槍を取り続けて来たと思うか?逆境につええんだ。死にゃしねえ」

「ぬくぅ…。ほんにあんたは楽観的じゃのぉ」

「悲観的な男と野暮を言う男はもてねえんだよ」


そのやり取りを見ていて、林檎が何かを思いついたらしく信書をしたためはじめた。

「林檎ちゃん、誰に信書を書いてるんだい?」

「羅刹について詳しい人にちょっと聞いてみようかと」

「羅刹っても、結局はただの鬼じゃねーの?廃人数名集めりゃ倒せそうなものだが」

「…多分、突さん達が遭遇したのは、羅刹天ですね。別名涅哩底王という神なるものでしょう。毘沙門天の眷属に連なる神のはずですが、醜悪な姿をしていたというのでちょっと気になりまして…」

「ぬぅ…。あんなおっかない顔をしているのに神なのかのぉ」

「本来、神という呼称は人が勝手につけたものであって、必ずしも人に福音をもたらすものではないということですねえ。自然というものが、いつでも恵みを与えてくれるわけではないのがいい例です」

「ふうむ。それにしても、あの羅刹はやけにふぇいに執着しているようだが…どうしたわけかな」

「神は人の持つ属性を顕現しますから、マソという人の欲望がそのまま顕現したともと考えられますが…。そして、ふぇいさんへの想いが混濁してあのような姿をとったのかも…」

「ぶっ!マソの低劣な情欲があの羅刹を生み出したんかい」

「いやそこまでは…(苦笑)。ただ、本当のマソさんがどこにいるのかがわかれば、あの羅刹天もあるいは…。今わたしが言える事は、現状ではあの羅刹天を倒すのはかなり難しいということですね」

「げっ!まじ?」

「まじです(キリッ」

「まいったなぁ…」


このままでは、マソどころかふぇいさえも助けることができない。
つうか、そもそも方向性がずれてねーか?最初は失恋レストランを探して三千里だったはずだぞ。
そこにアキヤマンを送り込んで、謎を解くはずがマソじゃなく羅刹天だったというわけのわからない流れになっているし。収集がつくのかこれ。

じゃ、本物のマソはどこにいるんだ。

やはり失恋レストランにすべての鍵がある気がする。
それに、あのはぐれメタルの別れ際の言葉…。


「突さん」

「はひ」

「もうひとつ気になることが」

「何かな」

「最近、どうも怪しげな組織が跳梁跋扈しているようで…。懲罰倫理委員会と名乗って、目立った行動をしている者をあたりかまわず粛正しているらしいのですが、少々度が過ぎているようで」

「懲罰倫理委員会って…ああ、あの爆乳女侍か」

「おや、突さんは既に遭遇済みですか」

「稲葉でちょっとね…。しかし、目立つ者を片っ端から粛正していたらきりがないだろう。個性的な奴らがいなくなっちまって公務員オンラインになるぜ。ちょっとした下ネタも言えない世の中じゃ」

「ですよねえ。しかし、それに賛同するものも多いらしく一般プレイヤーにも支持する輩も多いそうで。さらに困った事に、彼らはここ三河の山の中にアジトを作って構成員を増やしているようなんですよねえ」

「プレイヤー間のマナーは必要だろうがなあ。管理のための管理になるんじゃ本末転倒だ」

「禿同ですねえ」


林檎はうんうんとうなずきながら、茶をいれ直して3人に勧めた。

出された茶に最初に手をつけたのはモモだった。
ふうふうと冷しながら一口啜ると、それまで押し黙っていたモモが口を開いた。


「おい、突さん……」

肩をわなわなと震わせて絞るような声だった。


「お、モモ。あんまり静かなんで死んだかと思ったぞ」

「ひとつ聞いていいかな」

「なんだ」

「この…俺の額の「肉」って……どーいう意味なんだ」


持っていた手鏡で気がついたらしい。
幼い顔のせまい額に「肉」の一文字。

見た目は、滑稽で何とも可愛らしいのだが、やられたほうはたまらない。
しかも油性なので簡単には消せないのだ。

「あー?ああそりゃお前あれだ、奴を召喚しようと思ったんだよ。ほら、ピンチのときによ、あるじゃん」

「もしかしてよ…。キン肉マンをこれで召喚しようと思ったわけじゃぁねーよな…」

モモの声はますます震え、泣きそうな声になっていた。
地獄突を睨みつけた瞬間に、前髪が揺れて額に描かれた「肉」の文字が見える。

地獄突は、これを見て腰を折って吹き出し大笑いをした。

「wwwwwwwwwwwwwwwwwwww」

ひーひー云いながら涙を流さんばかりに笑い転げている。
モモはあくまでも冷静に正座をしながら、冷ややかにこの愚行を見つめていた。

「面白いよなぁ…突さん。芝をたんと生やしてよ。人の額に「肉」とか描いて悪戯してるんだもんな。さぞや楽しいだろう」

モモの顔に斜線が入って、歪んだ笑みを浮かべ、ますます冷たい表情になっていく。
キャラが幼女体系の童顔であるから、その形相はすさまじい。

「ははは…。はーはー…。いやモモよ、決してふざけてやっただけじゃないんだぜ」

「1000%悪気だろ!」

「君は1000%(きみはセンパーセント)は、1986オメガトライブのデビューシングル!」

「どーでもいいわそんなん!どうすんだよこれ!!当分消せねーだろ!!」

「気にするな。割と似合ってるぜ」


モモの憤りと反比例して地獄突は興味も無さそうに放り投げるように言った。


「わーん;バカ!バカ!突さんのバカ野郎〜;;」

そう泣き叫ぶと、モモは突にちびっ子パンチ(子供がくるくる振り回すパンチ)を浴びせた。
その様子がなんとも愛らしく可愛いので、地獄突は新しい何かに目覚めてしまうところだった。
犬や猫とじゃれるのとも似ていた。

「おいおい二人とも。今は争っている場合じゃないぞい。ったく」

呆れた様子で秋山が二人を制止する。


「突さん、最後にもうひとつお伝えしたい事が」

「ほう?」

林檎にそう言われて、地獄突はしつこく挑んで来るモモを押しのけた。


「さっきの、懲罰倫理委員会のアジトなんですが…表向きはどうも料理屋らしいのですよ。そこでおおっぴらに勧誘したり支持者を募っているようです」

「え!まさかその店の名前って…」

「そう。カフェ・ハートブレイク。通称、失恋レストラン…」

fdgdsbhg

地獄突は立ち上がって拳を固めた。

「よーし!待ってろよふぇい。必ずお前の泣き顔を拝んでやるからな」

必ず助け出してやるからなと言わないところが、この男の人間性であった。


【続く】



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【屁の突っ張りは】信On 失恋レストラン 7【いらんです】

目の前にいる偽マソを見て、ふぇいは驚愕していた。

やだ何このイケマソ。
イケマンというと何やら淫媚な響きになるのだが、それまぁいい。

「ふぇいさん?」

マソがそう声をかけるとふぇいは顔を真っ赤にしてうつむく。
胸の動悸が激しい。

どうしたんだろう。胸が苦しい。
このわたしがマソごときにときめいて…ないないそれはない。
ありえない。
いや、今目の前にいるのは、マソとはまったく異なる人格なんだ。

地獄突から話は聞いていたがまさかこれほどとは。
マソであってマソでないもの。
ふぇいは身体を丸くして何かものすごく恥ずかしい気持ちにとらわれていた。
というかなんかこれおかしくね?
何かの術を使われているような…。


「ふぇい姉さん、どこか具合が悪いのかい?」

様子のおかしいふぇいを心配したのか、モモがそう聞くと、ふぇいはいやいやするように首を振った。
いつもの気丈なふぇいではなく、しとやかでかよわそうな女がそこにいる。

「なんだかなぁ…。どうしちまったんだ姉さんは」

「なんでも…ない」

半身に起き上がって身体を固くしているふぇいに、マソは近づいて来る。

「ふぇいさん、いつぞやは失礼しましたね。今後は良き友達としてお付き合い願えませんか」

マソは、笑みを浮かべながらうつむくふぇいを覗き込むようにして問いかける。
ふぇいたんチュキチュキとか言っておどけていたあのマソはいない。
そこにいるのは、洗練されよく訓練されたマソだった。

そう言えば、地獄突が以前よくマソのことを語っていたっけ。

「マソのいいところ?う〜〜〜ん…」

「悩むくらいないの?」

「いや!元気はいいよ!!」


そう。なにがあっても元気はよかった。
その元気に救われた人だっていたはずである。
元気があればなんでできる。
元気が一番ごはんが二番。真紅元気でタッチャマソ。

しかし、この目の前にいるマソは端正な顔と耳ざわりのよい声、そして優雅な物腰。
もうマソと呼ばれた真紅の元気者の面影はどこにもない。

でも…何故だろう。
マソのあの目を見てしまうとどうしようもなく力がぬけて、吸い寄せられるように魅きつけられてしまう。
これは…まさか…チャ…。

ふぇいはマソが差し出す手を取って、立ち上がった。

「おっと危ない」

ふらっとよろけるふぇいをマソが支える。
ふぇいは、力なく立っているのがやっとの様子でマソに身を預けている。
通常なら考えられない光景であった。
ふぇいはまた気を失ったようだ。


「おいおい…。なんだかおかしな具合になってきたのぉ〜」


二人の様子を見ながら秋山が訝しむと、モモが叫んだ。

「姉さん、マソから離れろ!そいつ何だかやべぇ」


そう叫んでふぇいにかけよろうとした瞬間、マソが左の掌をモモに向けて一喝した。

「しぇあっ!!」

「ぐあっ!?」


マソの掌から巨大な気の塊が押し出され、モモは縁側まではじきとばされた。
鬼勁と呼ばれる禁忌の業である。巨大な体内エネルギーを気に乗せて打ち込むのである。
まともにくらったら、数時間は動く事もできない。


「モモさん!おいっ!」

秋山がモモにかけよるとモモは白目を剥いて昏倒していた。
いかに禁忌の術とは言えレベル65の仙論を一撃でボロボロにするとは恐るべきパワーだ。

「ぬくぅ…。だめだこりゃ完全にのびてるのぉ」

マソは間髪を入れずに秋山にも鬼勁を放って来た。

「しぇぇあっつ!」

「滅却!」


さすがに歴戦の兵である秋山は瞬時に結界を作って防御した。
鬼勁の衝撃はすさまじく結界が3枚ほど割れたが、なんとか直撃は回避した。

近くにいたふたりの側女の姿が大気に掻き消えてマソの身体に取り込まれていく。
マソの気が倍以上に膨れ上がり、辺りに禍々しい障気が満ちていく。

「な、なな、なんだありゃ…」

秋山はあわてて刀を抜いて身構えた。マソは天井に向かって獣のような咆哮をあげている。
見るとマソの端正な顔からペリペリと皮のようなものが剥げ落ちていく。
しなやかな腕は、どす黒い紫色に変化し、鬼のような鋭い爪を持つ手に変わった。

「うわ〜〜;羅刹かこいつは。こえ〜;」

秋山は青眼につけた刀をマソに向けて左回りにゆっくりと摺り足をとる。
ふぇいがしっかり抱きかかえられ、捕われた形になっているのでむやみに攻撃は仕掛けられない。

「おおいい!ふぇいさん、目を覚ましてくれぇ!」

秋山の呼びかけにも、ふぇいは目を覚まさない。

「むぅ…困ったわい」

この屋敷に入ってからどうも異質な匂いがあったのだが、…龍涎香かこれは。
特に女性にたいして強力な効果を放つ媚薬と言ってもいい。

加えてマソのあの眼。何かもごもごと唱えているのが見えたが、チャーム(魅惑)を使ったのだろう。
となると…これは絶対的に不利である。ふぇいは完全に籠絡されている。

マソの顔からは絶えず漆喰のような皮が剥がれ堕ちている。
顔の半分はもう下地が出ていたが、何とも醜悪な面相の羅刹であった。
あの強大な気から推定レベルはゆうに80を超えると予測される。

マソの姿をした羅刹は、ふしゅう〜と口から障気を吐きながら秋山の隙を伺っていた。
ふぇいを片手に抱いて、真っ赤な舌をちろちろ這わせている。
先ほどまでの優美な姿といっぺんした、なんとも不快な姿だった。


「貴様、何が目的なんじゃい。それに本物のマソはどうした」

秋山がそう問うと、羅刹はカカと笑いながらふぇいの頬を舌で舐め、地獄の底から響いて来るような濁声で答えた。

「それを知ったところでお前はここで死ぬ」

そう言うが早いか、羅刹は口から炎の礫を吐いた。
幾重もの礫が秋山に向かって飛んで来る。

それを間一髪でかわすが続けざまに襲って来る礫を全部よけきることはできなかった。
最後の結界が割れて、生気もわずかである。


「はぁはぁ;こりゃいかんぜよ、突さんはまだか突さんは…」

縁側の灯籠に姿を潜めて攻撃を凌ぐが、それだけで精一杯だった。
肩で息をする秋山は、背後に気配を感じた。

しまっ…

「呼んだ?」

振り返るとそこには地獄突がいた。暢気な顔をして銀ダコのたこ焼きをほおばっている。
普段、温厚な秋山もさすがにこのときばかりはキレた。

「突さぁ〜〜ん!!あんた何しとるんだよ!」

「いや…何ってたこ焼き食ってんだよ」

「この状況を見てそんな悠長な事言ってる場合かいな!やばいんだぞまじで」

「あれ…。なんであそこにモモが倒れてんだ。それにマソのあの顔…きめぇー。ふぇいはなんだって捕まってるのよ」

「説明はあとでするからとにかく今はなんとか奴から逃げないとあかんわ。ありゃ俺たちだけじゃ勝てない」

「ふむ…。よし、俺にいい考えがある」

「お?なんだそれ」


地獄突は、たこ焼きの箱を放り投げて倒れているモモを抱き起こして、ポケットから油性マジックを取り出した。


「おい…突さん一体なにする気だ」

「英雄召喚さ」


地獄突は気絶しているモモの前髪をあげた額をだす。

きゅっきゅっつきゅっ〜〜!

油性マジックの音が響く。
額の中央に「肉」と書いた。


「な?」
と得意げに秋山を見た。



「な?じゃねえだろ…何かの呪かそれ」

「いや?ただ一回やってみたかっただけ。めったにこんなチャンスねえからなぁw」


そう言うと、地獄突は印を結んで「屁のつっぱりはいらんですよ」と唱えた。


もちろん

何も起こらなかった。

そりゃそうですよねー。


【続く】

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【ハーレム】信On 失恋レストラン 6【チート】

恋は突然訪れる。
あなたも君にも誰にでも。

マソの屋敷である。
大広間の一番奥に座してマソは側女と戯れていた。

ふぇいはまだ地獄突の嗅がせたクロロホルムによって寝ている。
その側で秋山左京太夫と草摩モモが胡座をかいて座っていた。

地獄突は少し遅れてくるからとマソには断っている。


が、しかし──


「たっちゃん♡」

「南♡」


そう言い合いながらマソと側女は先ほどからキャッキャッうふふを繰り返していた。

「あ、あの〜〜マソさん…」

モモがもう耐えられない様子である。

「なんでしょう?」

涼しい顔で笑みを向けるが、興味もなさそうな生返事である。


「さっきから何やってんすかそれ」

「何って…タッチごっこですよ。知りません?あだち充原作の漫画」

そう言ってマソはタッチのハードカバーの6巻を見せた。


「いやそりゃ知ってますけど…」

「昔、恋人達の間で流行ったのですよこれ。ちょっと懐かしくてねぇ。ははは。」

「……」


器量のよい側女二人がマソの首に手をかけたり、肩を抱いたりしてべったりくっついている。
酒池肉林とまではいかないが、ちょっとしたハーレム気分なのだろう。


モモと秋山は思った。

こいつまじ殴りてぇーーー!と。

特に秋山は涙まで流していた。悔しさで握りしめた拳から血が噴き出してきそうである。
秋山がもしセイントだったら、今の小宇宙(コスモ)は、銀河まで届くだろう。
泣くな秋山、泣くな十円つのだじろう。
人生苦ありゃ死もあるさ。

モモはそんな秋山を見て哀れに思ったのか、懐からあるものを出して秋山の口につっこんだ。

「もがぁっ!」

狼狽する秋山だったが、口につめこまれたものが判明すると、見る間におだやかな顔になっていく。
さきほどまでの強烈な怒気が、急激に身体から抜けていった。

「秋山さん、イライラした時にはチュッパチャプスさ!」

モモは精神安定剤の変わりにチュッパチャプスを常備していた。
これがあれば、大概のイライラは解消される。沸点が高くいつもイライラしているような人間にはチュッパチャプスがお奨めなのだとモモは自負していた。

「う〜〜んむ…」

ふぇいが寝返りをうって呻く。
そろそろクロロホルムがきれてきたのだろう。

束帯の切れ間から覗く足が妙に…。いや、コレ以上は言うまい。

それを見てマソは立ち上がってふぇいに近づいていく。


「ん、んん〜〜?」

ふぇいは目をこすりながら身を起こした。
朦朧した意識の中で、優しくしっとりしたテノールで声をかけられた。


「ふぇいさん…ふぇいさん…」

「むぅ?」

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「大丈夫ですか、ふぇいさん」

「ほえぇ?ここはどこ?あんた誰ぇ?」

頭をくるくる動かしながらふぇいはあたりを見回す。
目の前には見た事もない爽やかなイケメン。
辺りを見ると何やらどこぞの屋敷の広間のようだが…。


「おきたかい、ふぇい姉さん」

モモがふぇいに声をかける。

「突さんも怪しいのぉ〜。クロロホルムを嗅がせるとは」

秋山も続けて声をかけた。



「はっ!」

ふぇいは、ようやく意識がハッキリしてきた。

そうだ、あの時、爆乳女侍に貧乳呼ばわりされてぶち切れたんだっけ。
それで後ろからハンカチか何かで顔を覆われて…。

状況が把握できたふぇいだったが、思い出すと静かな怒りが沸き出して来た。
そりゃ知人とは言えクロロホルムなんざ嗅がされたら誰でもキレる。

「あの変態糞オヤジぃ〜〜!!花も恥じらう乙女になんちゅう事を〜」


「乙女?」

「乙女?」

モモと秋山は思わず突っ込んでしまった。
あわてて口を抑えたが、ふぇいにきづかれないはずがない。

「なんか言った?おふたりさん♡」

ふぇいはニッコリ笑うと、式符を出して術を唱えようとしている。
剛鬼を召喚する気らしい。

肩を怒らせて憤怒しているふぇいに、マソは優しく語りかけるようになだめる。

「まぁまぁ…ふぇいさん。そんなに眉間に皺をよせたらせっかくの美人が台無しですよ(笑」

「……ところであなた誰?さっきからあたしの名前を普通に呼んでるけど」

「ははは。これはこれは。2度も振った男をお忘れですか?マソですよ。タッチャマソ」

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「ええっつ!!??」↑(注:ふぇい)



【続く】



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【おまえの乳を】信On 失恋レストラン 5【ワシにくれや!】

ぴろ〜〜ん♪

「ムッシュ!ホッシュ!」

テーブルに置かれた携帯電話が鳴る。
着信音は信オンのEDテーマだった。

マソは携帯電話を掴むと発信先を確認して通話に出た。


「はい…タッチャマソですが」

「もしもし─。ラーメンとレバニラ炒め出前してください。なんちゃってー」

「凸さんですか…。何用です一体」


くだらないギャグにつきあうつもりはないらしい。
地獄突はそんなマソの反応も想定内だったので、余分なおためごかしは言わずにストレートに聞いてみた。


「単刀直入に言うぞ。お前…失恋レストランに行ったな?」

「…ええ。行きましたがそれが何か?」

「それについて、聞きたい事があるんだ。明日そっちへ行ってもいーかな」

「構いませんよ夕方なら」

「よし。それじゃあ暮六ツ頃に伺う」

「お待ちしております」


最後まで慇懃に振る舞うマソに軽い怒りすら覚えた。

昔のマソだったら…。そう思うと胸が絞めつけられる。
精神の牢獄に捕われたマソ。縛鎖の呪詛が本当のマソを昼夜を問わずさいなんでいるはずだ。

おのれ許すまじ「失恋レストラン」。

ふぇい、秋山左京太夫、モモの3人にマソとの約束を取り付けたと連絡して、4人で偽マソのもとに向かうことにした。
合い言葉は「失恋レストラン」討つべし。
そう心のうちで唱えながら、地獄突は無意識に甲府の両替前でシャドーボクシングをしていた。

「討つべし…討つべし…」

周囲のプレイヤーからは、「きめぇ」と言われていることも知らずに。


その頃、草摩モモは自宅で28年ぶりの女子バレーボールの銅メダル獲得に涙していた。

「ううっ…おめでとう;さおりん、良かったなぁ…ぐひっ;」

そう。モモは感激屋なのである。中村屋ではない。
ちなみに地獄突からの招集の連絡は上の空で聞いていたのである。まったくの馬鹿野郎であった。
モモは冷蔵庫に入れておいたガリガリ君(ソーダ味6本入り)を齧りながら、オリンピックダイジェストを見ていた。テレビモニターには、なでしこイレブンの活躍が紹介されていたが、モモにはアメリカのモーガンが美人すぎて辛かった。
アイスを齧りながらふと思う。
はて?何か忘れているような気がする。そう思って携帯を確認すると、地獄突からの電話を思い出した。

「あ、そっか。突さんから連絡あったんだっけな」

ようやく思い出したモモは、熱帯後に餌をやって部屋を後にした。

稲葉の夕暮れ。
ほどよく暮六ツの頃合いに、稲葉の町に4人が終結した。

しかし秋山左京太夫の様子がおかしい。
何やらこの前よりさらに意気消沈している。
緩慢香でも嗅いだのだろうか。

「どうしたアキヤマン。前にもまして元気がないな」

「ショックだぜよ」

「何がどうした」

「ボーナスが8千円だった;;」

「ぐぇっ;;」

「さすがに8万ぐらいはくれるかと…。見た瞬間になんじゃこりゃあぁああ!と叫んじまったぜ」

「人生ってぇのは辛いもんだな…」

地獄突がポンと肩を叩くと、秋山左京太夫は天を仰いで涙を拭いた。
人はそれぞれ色んなものを抱えている。
秋山は修羅の中で生き抜いて来た男である。何度でも立ち上がるだろう不死鳥の如く。


「じゃあいこうか」

3人を引き連れてマソの店に向かおうと歩きだすと後ろから不意に呼び止められた。

「お待ちなさい」

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一向が振り向くと、そこには漆黒の甲冑を身に付けた隻眼の女侍が立っていた。
しかもえらいペッピンである。

「は?あんた誰」

地獄突がことも無げに返すと、女侍はふふふと笑いながら一行を見渡しながら答えた。

「私は信オン倫理懲罰委員会のものです」

「なんだそりゃ」とモモ。


「簡単に言ってしまえば、プレイヤーの有志による自治警察といったところですね」

女侍は得意そうに鼻を鳴らした。そんな姿までもが秀麗である。
秋山左京太夫は、女侍を見て何やらもじもじしていた。


「うわっ。胡散臭いねえ、早い話が大きなおせっかい集団じゃないか」

ふぇいがそう言うと、女侍は美麗な顔をいっぺんさせて険しい表情になった。

「大きなお世話とは心外ですね。私達はこの真紅鯖の清浄化に日々尽力しているのですよ?言われも無き誹謗・中傷や、暴言、ハラスメント、窃盗、RMTなどが横行しているこの世界。本来、ネットゲームとは、人と人が心を繋いでいく場であるはず。それが今じゃあご覧のありさま。まるで南米のスラム街と化しているじゃないですか。それを少しでも矯正していくことを志としているのですよ」

「いやそれがネットゲームだしー」

「あなたのような貧乳にはわからないでしょうがね、プレイヤーを大いなる愛で包み導いていく指標となるものが必要なのです。貧乳にはわからないでしょうがね」

「おい!2回も言ってんじゃないよ!!!大切な事かそれは!」

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ふぇいは、今にもとびかからんばかりにキレていた。
普段はクールでポーカフェイスなふぇいもよっぽど頭に来たらしい。これが藤川みさおだったら、多分ショットガンであたり構わず発砲しているレベルだ。
しかし女侍は見たところ89のFカップはありそうなボリュームだった。哀しいけどこれ現実なのよね。

地獄突たちはふぇいを掴んでなだめる。

「まぁまぁ…ふぇいよ。落ち着け。気持ちはわかるが大丈夫さ。世の中には貧乳マニアも多いしよ」

「ぐぬうう!殺す殺す殺す!!アンタらもあとで殺す!」

ふぇいは目に涙をためながら、女侍に飛びかかろうとしている。
いかんな。こんな町中で戦闘を始めたら大事だ。如何に我々でも他国でもめ事を起こしたらただではすまない。

おさまらない、ふぇいを静めるために地獄突は、緊急用クロロホルムをハンカチに含ませてふぇいに嗅がせた。
じたばたと暴れていたふぇいは、くたっと力が抜けて眠りについた。

「ふう…アキヤマン、すまんがふぇいを頼むわ」

「おいおい…。なんでクロロホルムとか持ってるんだ突さん?」

「まぁ細かいことは気にするな」

「犯罪者じゃねえか…」

モモは軽い怯えを隠せないでいる。
その反応にいちいちつっこんでる場合じゃない。

「とにかく先に行っててくれ。俺はちとこの侍さんと話がある」

秋山はふぇいを背中におぶると、モモとともマソの店に向かって歩き出した。

モモは振り返って突に向かって叫んだ。


「突さん、スタンガンは使うなよ!まじで捕まるからねっ!!」

「持ってねーよ!そんなもん」


足早に消えていく3人の姿を確認して、地獄突は女侍に向き合った。

「あんた…名前は?」

「これは失礼。私、信オン倫理懲罰委員会の副隊長を務めております「はぐれメタル」と申します」

「はぐれメタル…」


名前を聞いてドン引きしたのは言うまでも無い。
せめて桜子とか女らしい名前でいてほしかった。

「で、そのはぐれメタルさんが、俺たちに何用なんだい」

「警告です」

「警告?」

「タッチャマソの件から手を引いてください」

「むぅ。なんで、その事を知っている」

「あらゆる情報を仕入れとくのが我々の任務対応には不可欠ですので」

「なぜマソの件に関るなと?」

「それがあなた達のためだからですよ。詳しい話はお知り合いの三浦さんから聞いてください」

「三浦?なんで三浦を知ってるんだよ!」

「三浦さんは、現在、我々の組織のスーパーサブとして活動して頂いています。真紅に平穏を!の志を共に日々頑張っていらっしゃいますよ。今では組織内で良き兄貴として慕われていますしね」

「まさか三浦が…。ほ、本物や…。ほんまもんのサブ兄貴になりやがったのか…」

「ともかく警告はしました。快適な信オンライフを過ごしたかったら、触らぬマソに祟り無しですよ」


はぐれメタルは、そう言って踵を返すと稲葉の雑踏の中に消えていった。

地獄突は困惑していた。何か巨大な力が影で動いている気がする。鯖全体を揺るがすような大いなる意志が胎動している。不気味な黒い影が空を覆っているような錯覚に陥った。

これはもうマソだけの問題じゃないのかもしれん。

「おっと、まずは奴らを追っかけないと…」

マソの店に足早に向かいながら地獄突は言い訳を考えていた。
さっき使ったクロロホルムの言い訳を、ふぇいが気がついたらどう説明しようか…。

犯罪に使っていると思われたら、大いなる心外である。
あれは薬師の佐渡先生に、睡眠薬変わりにもらったものである。

不眠症だったから(笑)で通じるだろうか。


「通じねえだろうなあ…」

そう気を落としながら、暮れなずむ長屋をすり抜けてマソの店へと向かっていた。


【続く】

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【渡る世間は】信On 失恋レストラン 4【ゲイばかり】

「突さんよぉ。秋山さんは大丈夫かね」

草摩モモが心配そうに言う。
普段の秋山なら豪放磊落で細かいことは気にしないで突き進む男なのだが、女に振られて精神状態がちと危うい。
渋々引き受けたものの、途中で逃げ出すことも考えられる。


「大丈夫さ。武士道ってぇ人種はやる時はやるもんだ」

「んじゃ軍学は?」

「活殺だけだな!(・ω<)」

「さいてーだな!」


草木も眠る丑三つ時とは言うが、さすがに真っ暗な関所付近は不気味である。
近くには小さな祠もあり、小さく白く闇に浮かび上がっている。

ふぇいと言えば、肝が太いのか怯えた様子もない。
眠そうに欠伸をしている余裕がある。

「ん〜〜、眠いわ…」

そういって猫のように伸びをして、睡魔をとばしている。
普段は鬼のような女だが、可愛いところもある。
しかし地獄突はそれをこいつに言うと絶対つけあがるので決して言わない。

なにを今さらとか照れながらもスキップしてコサックダンスを踊るだろう。
それだけは決してさせちゃいけない。譲れない想いだった。
ふぇいはああ見えて、虎のような性格で究極のツンドラーだ。虎には虎。ツンドラーにはツンドラーの餌がいる。
奴には北一輝のような狡猾で慎重な対応が必要だった。


さて、地獄突一向は、件(くだん)の怪異である失恋レストランの秘密を探るため、マソが消えたという地点にいる。
ハートブレイクソルジャー秋山左京太夫を斥候(せっこう)に使い、内部を探らせる作戦である。

モモが小さな机台の前に陣取り、ノートPCに向かっている。
通信にはスカイプを使い、CCDカメラとノートPCを繋いで、秋山の状況を把握するのだ。

しかし、困った事にその失恋レストランの出現フラグは皆目わからない。
とりあえず、適当に秋山を泳がせていれば何かのフラグは立つはずである。


「アキヤマン、まだ何もおこらんか?」

地獄突がスカイプで確認すると、肉饅を食べながら関所の門前を行ったり来たりしている秋山が、同じくイヤホンを通して答えてくる。


「蚊に刺された;」

「我慢しろ」

地獄突が無慈悲にそう言うと、秋山はぬくぅとだけ唸った。

ふぇいが割って入った。

「虫除けスプレーあるよ。使う?」

「ありがとう、ふぇいさん。助かります」

すると今度はモモが叫んだ。


「うげっ!!カマドウマがぁ!!」


緊張感がまったくない。

4人ともイヤホンを耳につけ、リアルタイムな情報共有をしているのだが、ただの雑談のようになってきていた。

確かに明確な発生フラグがないと、いつまでたっても時間を無駄に潰す事になりかねない。


「まぁ…今夜は様子見ってことで一端解散するか。もっと情報を集めないとな」

「あのさ…突さん。俺よくよく考えたんだけどさ」


モモが言いにくそうに地獄突に進言する。


「なんだモモ」

「つうか…これマソさんに直接聞けばいいんじゃね?別に教えてくれなくもなさそうだしさぁ…」


「………」

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっつ!!!!!!!!!!」


地獄突は鳩が豆鉄砲をくらったように驚いて奇声をあげた。
真夜中の闇を切り裂いたその雄叫びは、眠っている動植物をざわめかせるには十分なほどだ。

数秒の沈黙の後、地獄突は口に手をあてて目を光らせた。


「そうもそうだな(キリッ)」

「ええ〜〜〜〜っつ;;(3人の声)」


その様子を茶屋の影に隠れて見ているものがあった。

fbyhkhli

「ふふふ…」

不敵に笑う隻眼の女侍。この女の正体は果たして。


【続く】


しかし、なでしこ負けちゃったね。でもいい試合だった、お疲れさまだ。
吉田の兄貴とイチョウは3連覇とかすごすぎる。
どう考えてもチートだろあれはw

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【また】信On 失恋レストラン 3【お前か】




地獄突はマソの人格が豹変する前の足取りを徹底的に調べた。

聞き込みを続けるうちに、旧人格のマソがそこそこ人望があったことに驚く。
面倒見もよく、企画立案もアクティブにこなし多くのプレイヤーと交流があった。

「ふうん。マソの奴は普段ふざけてるように見えても,ツボは抑えていたんだな」

地獄突は感心した。

しかし、やはりふぇいにこっぴどく振られてからの足取りが掴めない。
ふぇいの信書を確認すると6月9日の日付になっている。
そこから12日まで空白の3日間がある。

マソの一門の人に聞いてみると、6月9日の夕刻に武蔵に向かう関所の近くでマソを見かけた一門員がいたという。
あまりにも哀しそうな顔をしていたので、あえて声はかけなかったそうだ。

そこから3日間ほど姿を消している。13日にインして来た時には既にあの爽やかマソになっていたらしい。
そこから陰陽師と鍛冶屋をフル稼働させて、生産に没頭しはじめたという。
出来上がった生産品は、全て業ものというから驚きだ。しかも格安ショップのごとく市場に提供している。

それまでの生産職人からは当然疎まれた。いきなり現れた生産廃人に名声を持っていかれるどころか、今までのギャップからか、若い娘に大人気になっていた。
生産のカリスマ。マソブランドは市場を席巻し、熱狂的なファンによってFCまで作られている。

古参の生産廃人は言う。
「いるんだよなぁ…。ほら、学生時分に夏休みを区切りにキャラ変えしようとかする奴がよ。どうせ長く続かねーのに」

しかし、マソのあれはキャラ替えではない。人格そのものが変貌を遂げている。
だが地獄突にはある確信があった。

本当のマソは、奴の人格の牢獄にとらわれてしまった囚人だということを。
そこで助けを求めているに違いない。マソはマソである。あんなチャラいマソはマソじゃねえ。

例えば肉の入っていないカレー、またはシチューだ。
それに、あんなキャラばっかが横行するようなオンラインになっちまったら、たまらない。

いい人?大人しい人?思いやりがある人?みんなが暴言も吐かずに人に迷惑をかけずに楽しんでいる理想郷?

じょーーーだんじゃねえ。そんなつまらん仮想世界なんざまっぴらだ。
水だって綺麗すぎたら魚は棲めねえんだ。
それに天国じゃハンバーガーは食えないぜ。

なんとしても昔のマソを取り戻す。この俺のネトゲ人生を賭けてもだ。
地獄突は風にそう誓った。

何とも不毛な誓いであった。



「で、だ」

近江の戦国カフェ。

テーブルを囲んでいるのは、地獄突、ふぇいふぇい、そして武田の秋山左京太夫と草摩モモがいた。

「ここにマソの人格救出作戦委員会を立ち上げたわけだが…」

「はい!ちょっと質問」

草摩モモが手を挙げる。モモは烈風の古参陰陽で初期から緑の服を着て戦場を疾駆していた。
地獄突の旧来の友人でもあった。


「えーと…なんで俺がここにいるのw」

「モモ…。お前な、くだらん事を聞くなよ」

「えっ…」

「人助けに理由なんざいらねえ。男ってなあそんなもんだろ」

「いやぁ…でも俺かんけーねーんだけど…マソって人とも親交ないしさぁ」

「やかましい。とにかくお前は書記な。よろしく!」

「ちょっww」


わけもわからず召喚された草摩モモ。運がいいのか悪いのか。
やれやれと言いながら、あきらめた様子でアイスコーヒーをストローで掻き混ぜた。

その様子をみて、呆れたふぇいがモモを慰めた。


「相変わらず強引なおっちゃんだねぇ。モモちゃんも可哀想に」

「うるせーぞ。平成コスプレ女。お前は巫女の格好でもして盆踊りでも踊ってりゃいーんだ!」

地獄突がそんな暴言を吐いた瞬間、ふぇいは地獄突の背後を指差して叫んだ。

「あっ!Fカップの美女があんなとこに!!」

「え!?どこどこ!」


地獄突が後ろを剥いてキョロキョロした瞬間に、ふぇいはテーブル上のビール瓶を持って地獄突の頭を砕いた。

「げひゃん!!」

ビール瓶は粉々に砕けて、地獄突は蛙のように伸びてしまった。
というか、普通なら死んでいる一撃である。

「あらやだ。手がすべっちゃったぁ。てへ♡」


秋山左京太夫と草摩モモは、この人だけは敵にしちゃいけない。そう思ったのは言うまでも無い。

「ほらほら、おっちゃん。そんなとこでヒキ蛙みたいにのびてないで話を先に進めてよ」

ふぇいの鬼っぷりは揺るぎない。
特におっさんに厳しいと評判だったがここまでとは…。
総じて若く素直な娘には優しいというのだが。


「む、ぐぅう…」

呻きながら、頭を抑えて地獄突はよろよろと立ち上がった。

何やらまだ朦朧としている。

「ほらほら、早く!マソ救出するんでしょ。もたもたやってると日が暮れちゃうわよ」

「お、おう…」

頭を左右に振りながら、椅子に座り直してひと呼吸をする。

「ふぅ…。とにかくだ…」


両手を交差さえて祈るようにうつむいた。

しばらくの沈黙があった。

外はめずらしく雨が降っている。静かな雨だった。


静寂を破って地獄突が顔をあげて、3人の顔を見渡す。


「気になるぜ」

「なんだい。そんなにマソが心配なの」と、ふぇい。


「いや…そうじゃねえ。こんな日は…」

深刻な面持ちで地獄突は続ける。

「蠅とか蚊ってどこに隠れてるのかな?気になんねーかお前ら」

「……気になんねーすよ」

モモがぐったりした顔で答えた。


「というかのぉ〜」

秋山左京太夫がようやく重い口を開く。

「ワシもなんでここにいるのかわからんのだがのぉ〜。今はちと一人にしてもらいたい気分なんだが…」

そう言って秋山左京太夫は、ガラゲーで着信メールを覗いている。


地獄突は目を光らせて秋山を見ると、ニヤリと笑みを浮かべた。


「アキヤマン…。お前最近失恋したろ?」

「………!?」


「あら、秋山さん振られたのか」

「へぇ、だからさっきから涙目だったんだねぇ」


地獄突はさらにたたみかける。

「まぁなぁ…。辛いよな、苦しいよな。しかしそんな思いが人を助ける事ができるんだぜ」

「ぬくぅ…耐えてるんだワシ…。辛いなぁ…」


そう言うとアキヤマンは唇を噛みしめながら、宙を見上げて叫び出した。

「よしこちゃぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」


当然、この後、地獄突を含む3人が転げ回るほど大笑いをした。
大爆笑と言っていい。
涙を流しながら腹を抑えて転げ回っている。

「はっ、腹いてーーーーーーーーっ!!wwww」

「泣きが入っちゃおしまいだよ秋山さんww死ぬこれwww」

「腹筋が…wこれはひどいww」


笑い転げている3人を見て秋山左京太夫は憤慨した。


「あのねぇ…。ここ、ここねえ。笑うとこじゃないですよ…。あんたがたもご存知だろう?失恋がどんなに辛いものかをさ…」

そう言って涙目でうつむく秋山の肩を抱いて地獄突は目に涙を溜めながら(もちろん笑いで)悪かった悪かったとなだめた。

「と、とにかく、その失恋ってぇのが今回のポイントなのさ。マソを救い出す鍵を握っているんだよ」

まだ笑いの余韻が残ってはいたが、目は真剣だった。


「ぬくぅ…。一体ワシに何をさせる気かのぉ」

「まぁこれを見ろよ」


地獄突はそう言うと、一枚の紙を懐から出してテーブルに置いた。


「これは…失恋レストランの歌詞?」

ふぇいがそう言うと、モモがかぶせて言う。

「カラオケでは歌った事がないな…」


その紙には「失恋レストラン」の歌詞がフルで書いてあった。


失恋レストラン
つのだひろ 作詞/作曲

悲しけりゃここでお泣きよ 涙ふくハンカチもあるし
愛がこわした君の心を やさしく包む椅子もある
ポッカリあいた胸の奥に つめこむめしを食べさせる
そんな失恋レストラン いろんな人がやってくる
好きな女に裏切られて 笑いを忘れた道化師が
すがる失恋レストラン もうおどけることもない 今は
ネェ マスター 作ってやってよ 涙忘れるカクテル

悲しけりゃここでお泣きよ 涙ふくハンカチもあるし
愛がこわした君の心を やさしく包む椅子もある
愛をなくした手品師などは 恋の魔術を使えない
だから失恋レストラン なくした恋のふきだまり
歌をうたえぬこの俺でも 話し相手になれるなら
いいさ失恋レストラン 君のそばにいてあげる ずっと
ネェ マスター 唄ってやってよ 痛みをいやすラプソディー

悲しけりゃここでお泣きよ 涙ふくハンカチもあるし
愛がこわした君の心を やさしく包む椅子もある
みんな帰ったそのあとで 強がりいってたこの俺は
ひとり失恋レストラン まだ恋したこともない そうさ

ネェ マスター ラスト・オーダーは 失恋までのフルコース
ネェ マスター ネェ マスター ネェ マスター早く



「愛をなくした手品師などは 恋の魔術を使えない…か。意味がわからん」

秋山は歌詞を眺めながら頭を捻りながら唸った。



「ここ数ヶ月でマソだけではなく、数十人が人格変貌を遂げているらしい」

「え?マソって人だけじゃないのか」

「ああ、詳しく調べたら、かなりの人数がまるで人が違ったように穏やかな聖人君子になっちまったそうだ。まさに没個性のスパイラル」

「おいおい、真紅はカオスだったから面白かったんだ。いい人ばっかの争いもないユートピアなんぞ戦国じゃないのぅ」

「私もはっちゃけられない世界に興味は無いなあ。まぁ、マソはどうでもいいんだけどさ」


ここに集まった4人はやはりネット極道である。
しかし悪が存在しない世界に正義は存在しない。それを証明する神さえも生まれないのだ。

「わかったろう?マソの人格を救うってぇのは、もっと大局的な見知からの行動なんだ」

「なるほど」

3人は地獄突を見ながらうなずいた。

ようやく4人の想いが一つになった。
気がするようなしないような。


地獄突は歌詞のある部分を指差した。

「この歌詞の意味をよ〜く考えてみると、おかしいところがある。ここだ」

「ほう?」


ネェ マスター 唄ってやってよ 痛みをいやすラプソディー



「お前が歌えよ!!と言いたくなるだろう?なんでマスターに頼むねん。お前が歌ってやれよと」

地獄突は得意げな顔をして言い放つ。まるで謎をといた金田一少年のように。

しかし、ふぇいをはじめモモも同意はしなかった。

「ベツに…いーんじゃないのそこは…」

「うん…。そこは特に問題じゃないような気がするけど」

同意を得られなかった地獄突は顔を真っ赤にしてじだんだを踏んだ。


「じゃ、じゃあここはどーよ!!」

ひとり失恋レストラン まだ恋したこともない そうさ


「まだ恋もしたことないのに、どーやって失恋すんだよ!矛盾してるだろ!!」

「まぁ…確かに」

「うん、まぁそー言われてみると」

「な?」

と地獄突はふぇいとモモにドヤ顔をするが、秋山がそこに割って入る。


「矛盾しているのはわかったのだが…それがマソを救うのに何か意味があるのかの?」

「うっ…」


痛いところを疲れて思わず押し黙ってしまう地獄突。確かに救出作戦には関係はなかった。お前それが言いたかっただけちゃうんかと思われてもしかたない。

動揺している地獄突にふぇいが助け舟を出した。

「まぁ話を進めようか。とっぁん」

「お、おう…」


地獄突は気をとりなおして 説明を始めた。
今度は寄り道をせずに、事の起こりと経緯をかいつまんで話した。


「そーいうわけで、アキヤマン。その失恋レストランにはお前しか行けないってわけなんだよ」

「おいおい、それじゃ生け贄じゃねーかワシは」


秋山はうろたえた。当然だ。自分の人格が無くなるなんざ死ぬと同じことである。

「安心しろ。お前の身体に超小型CCDカメラを取り付けといてずっと監視しとくからさ。それに最新のセルフプロテクション・ウェポンも用意してやる。最新のライアットエージェントCSとか使えるんだゾ!」

「だゾ!じゃねえよ!それに、もしワシがワシでなくなったらどう責任取ってくれるんだ!?」

「……さぁ?」

「おいおい…突さん」

「頼むよ。アキヤマンしか現状そこに行ける奴はいねーんだ。真紅の傷みを止めるんだアキヤマン!」

「ぬくぅ…」

しぶる秋山にゴウを煮やしたのか地獄突は秋山に耳打ちをした。


「今度、川崎のカンカン娘で3輪車おごってやっからさ、な?」

「…延長するぜよ?」

「ま、多少ならな」

「仕方ない…」


話は決まった。
まずは敵の正体を知ることから始めるしかない。

マソ救出作戦決行は、今夜の丑三つ時。
失恋レストランとは誰が一体なんのために作ったものなのか。
開発の手違いか、それとも明確な意志か。

そしてアキヤマンの運命は。マソは元の人格を取り戻す事ができるのか。


真紅未曾有の危機に間然と立ち向かう4人の極道。
地獄突は雨に燻る闇を眺めながら決意を固めていた。
全身の血が泡立っていた。

いきなり携帯が鳴った。
見た事無い番号だ。

「誰だこれ…もしもし?」

一抹の不安を抱えながら受話器の向こうに悪意を感じる。


「凸さん、乳首タイムの 始まりだよ!!」

「またお前か」

プチッ、ツーツー。


藤井さんの悪意は闇に紛れて消えていった。


【続く!】


テーマ : 雑記
ジャンル : ゲーム

【マソにも】信On 失恋レストラン 2【衣裳】

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マソが振られようが、藤井さんがセクハラで捕まろうが、世はおしなべて事も無し。
変わらぬ日常がそこにはある。
ふぇいがマソを振ってから1ヶ月ほどが経っていた。


エジプトパーマに最近凝っているふぇいふぇいは、地獄突と近江の武将カフェにいた。

地獄突は、目の前のティラミスを掬いながらふぇいを見る。
相変わらず、かったるそうに横を向いてスマホをいじくっている。
待受画面がガンダムAGEの壁紙になっていた。


「おい聞いたぜ。マソを振ったらしいな」

「あたしはその方面では嘘はつけないんでね。それに気のない男を振り回すような悪趣味でもないよ」

「ご立派なことだがよぅ、もう少し男心をわかってやれないのかお前はよ」

「女心もわからないおっさんに言われたくねー」

「ったくよー、ああ言えばこー言う。屁理屈女め」

「屁理屈も立派な理屈だよ」

「むきぃ〜!かわいくねーなおめーは」


口ではやはり女に適わない。かといって口で言い負かしたところで価値もない。
男は辛いよ寅次郎。これだから女と坊主にゃ政はまかせられねえんだと舌打ちをする。
男女共同参画のこの時代に逆行するような物言いだが、さすがに口には出さなかった。

ふぇいは、スマホをしまって店員に水を要求した。
出された水を飲みながら、飲みかけのアイスココアのストローを弄ぶ。

ふぇいは、はぁと一つため息をついた。


「年寄りはしつこいねぇ…。やだやだ」

「お前なぁ…ちったぁ女らしい可愛げってもんを…」

「マイダーリンには毎日見せてるよ。それで十分じゃない」

「へぇ…。どんな風にだ」


すると、ふぇいは少し身じろぎしたが、急に身体をくねらせて艶っぽい声を出した。

「だぁり〜〜ン〜〜♪朝よ起きてぇ〜ん♡」


一気にあたりの空気が一瞬にして凍り付いた。
地獄突は空間歪みが生じた錯覚に陥った。
これは…新たな召喚の特化スキルか?

「………ウッ;」

背筋を走り抜ける強烈な悪寒に地獄突は呻いた。
この時、エンゼルハートというミッキー・ローク主演の映画を思い出していた。

人間には知ってはならないことがある。これは邦題のキャッチ・コピーだったはずだ。
うつむきながら、冷や汗が出て来た。恐ろしい…。これは現実か?

俺は禁断のパンドラの箱を開けてしまったのかも知れない。

地獄突の細かい汗は、まるで氷結の粒のように凍り付いた水滴のようだった。
人は絶対的な恐怖に対して肉体に防護壁を纏う。

ふぇいが、顔を赤くしながら照れ隠しに言う。
自分でもやりすぎたなと思ったらしい。

「なによ。だまっちゃってさ」

「い、いやもういい。それより本題に入ろう」


手を左右にふりながら、ナニもなかったと言わんばかりに話題を変えた。


「で…本題って何なのさ。あたしはこの後、ダーリンと【プロメテウス】観に行くんだからさっさと話して」

「実はな…。マソがあれ以来、おかしいんだ」

「いつでもおかしいよあの男は」

「いやそうじゃねえ…。まるで人が変わっちまったんだ」

「変わった?平田とかかい」

「新日のストロング・マシーンじゃねえよ。お前は藤波辰巳か」

「具体的にどーいうことなのさ」

「なんていうか…マソが、その…紳士になっちまったんだよ」

「は?なにそれ」

「実はよ、先日マソに会ったんだが…」


地獄突がマソに会ったのは、三日前だ。
稲葉にめっぽうかわいいアイドル出現の噂を聞いて、これはいかねば!と出かけてみたところ、見事にガセだった。意気消沈しながら、染めもの屋の前を通りかかったところ、水色の水干を来た何とも涼しげな男が店の前に立っている。

あれ、この男どこかで…。


「おや、突さん。お久しぶりですね」

男は地獄突を見るなり、丁寧にお辞儀をしながら挨拶をしてきた。
笑顔が何とも爽やかな男だ。

「え…??まさか、マソ…か?」

「はい。タッチャマソですよ」

「えええっ〜〜〜!!!!!」



今までのマソだったら、命!とかやりながら、ただ今参上!にゃるらとホテマソ!とか寒いギャグを入れて挨拶をしてくるはずだ。
しかも化粧もしてやがらねえ。まるっきり素の顔だ。いつもなら歌舞伎風の毒毒しい化粧をして見栄をキってやがるのに。
今目の前にいるこの男は、こ度は成程くすみたる程に古代に作り、髪をも常に結直し、 の慶次郎の太閤謁見のくだりではないが、当代きっての教養人に見える。


「マ、マソ。一体何があったんだ?」

マソのあまりの変わりように地獄突が狼狽しながらマソに問うと、マソは目を細めて首を傾げながら笑った。

「はて?何もござりませんよ。突さんこそ何をそんなに驚いているのですか」

「この変わり様…。まさか、ふぇいに振られて壊れてしまったかいな」

「ふぇい?ああ、ふぇい殿ですか。残念ながら私はお気に召さなかったようで。でも、まぁ届かぬ華があればこその恋でしょう。ふふふ…」


それを聞いて、地獄突は頭をかきむしって悶え苦しんだ。

「ぐぁ〜〜っ!!やめろ〜〜っ!やめてくれぇええ;;;」


マソはその様子を面白くもなく静かに静観している。
まるで静かな草木のように。
これではまるっきり別人だ。まさか中身が違うのか?


「おい…マソ。頼むからいつものマソに戻ってくれ。ほらいつもの挨拶でさぁ」

「いつもの挨拶と申されましても…。一体どのような?」


「ほらこれだよ!」

地獄突は両手を左右に広げて片足で立って奇声をあげた。

ばふんっ がふんぅ
ふんがああああああああああああああああ^^^^^^^^^^^^^



マソはその奇態を見ながら、ニコリともせずに涼しい顔で言った。


「突さん。恥ずかしくないのですか?」

「おめぇーにだけはいわれたくねえ!!」


ともかくマソがここまで豹変してしまったのは何故だ。
下ネタやセクハラをしない言わないマソなんてクリープを入れないコーヒーのようなものだ。

それってどうなの。それって日テレ。

とにかく何かしら理由があるはずだ。原因を究明しないと大変な事になっちまう。
ん?別に大変な事にはならないのか…。

まぁでも面白くはない。何かやってくれそうだったからマソは面白いのである。
真紅の核弾頭、本願寺の反逆児、烈風のドモホルンリンクス。
様々な忌み名を残し伝説にまで駆け上った男が、このままいい子ちゃんの爽やかイケメンになるなんざ、お天道様が許してもこの俺が許さん。
というかさみしいじゃねえかよぉ。マソよぉ。帰ってきてくれよぉ。

地獄突は泣いていた。男泣きである。


「突さん、いい大人が泣かないでくださいよ。周りの人も見ていますよ」

「う、うるせえやい。元はと言えば誰のせいだと…」

地獄突は涙を拭きながら、悪態をついた。
端からみるとだだをこねてるガキである。

染物屋の前のこのやり取りを見ていたものがある。

不動一葉だった。
おっぱいにプライド持つ数少ない女だ。
この娘は胸だけが自慢である。そしてハンマー投げの室伏広治のようなマッチョ好きの胸板フェチである。


「にぃに!泣いてる場合じゃないよ!」

見物人をかきわけて、一葉が前に進み出て来て地獄突を制した。


「かずは…。なんでおめぇがここに…」

「そりゃ買物だょ。新進気鋭のファッションデザイナーのマソ様のお店にね」

「は?マソ様ぁ???なんだそりゃ」

「知らないのぉ?ブランド マソと言えば、最近全鯖でも有名なのよん♡服を作ってもらうの予約待ちなんだからぁ」

「………」

     / ̄ ̄ ̄\ 
    / ─    ─ \ 
   /  (●)  (●)  \.   君たち騙されてAVビデオに出演している
   |    (__人__)    |女の子たちの気持ちを考えたことがあるのか
   \    ` ⌒´    /
   /              \

   / ̄ ̄\
 /   _ノ  \
 |    ( ●)(●)
. |     (__人__)  抜いてから言うんじゃねーよ・・・
  |     ` ⌒´ノ
.  |         }  ミ        ピコッ
.  ヽ        } ミ  /\  ,☆____
   ヽ     ノ    \  \ /     \
   /    く  \.  /\/ ─    ─ \
   |     `ー一⌒)  /   (●)  (●)  \
    |    i´ ̄ ̄ ̄ \ |      (__人__)     |
               \_   ` ⌒´    /
                /          \

「なんだ?このAA。にぃにの経験かや?」

「い、いや、これはなんでもない。唐突すぎたようだ、すまん」

「とにかくにぃにも、いい加減に大人しくてょ。こんな大騒ぎしてたらマソ様から予約していた服がもらえないじゃないの」

「…そうか」


地獄突はうなだれてマソを一瞥するととぼとぼと門に向かって歩いていった。
マソは軽く会釈をして涼やかな顔を崩すこともなく予約客の接客をし始めていた。

「マソ…一体どうしちまったんだ…」


地獄突が見たのはもうタッチャマソと呼ばれる真紅きってのカブキものではなく、トップデザイナー マソであった。洗練された立ち振る舞いと如才のない受け答え。加えて若い娘が群がるフェロモンを放ち、まるであれでは光源氏だ。ローラースケートこそ履いていないが、夢はフリーダムフリーダムと歌い出しそうな雰囲気である。


あれはマソじゃねえ。
何かある。ファッションデザイナーとか…この舞台にマソはあてはまらん。
地獄突はそんな思いを残しながら稲葉を後にした。

しかし─
よくよく考えてみればまったくの大きなお世話だということに、この時はまったく気がついていないのであった。



「─と、言うわけなんだよ」

「へぇえ、あのマソがねぇ」

カランと溶けた氷がグラスの中で音をたてた。
ふぇいは地獄突の熱のこもった話ぶりがあまりに真に迫っているので、いささか引き気味に話を聞いていたが、大方は信用したようである。


「でもさぁ、人ってそんな急に変わるもんかねえ。中身が違うとかじゃないの」

「いや…、ひとつ心あたりがあるんだ」

「へぇ、どんな?」

「失恋レストランって聞いた事あるか」

「清水健太郎の歌じゃないのそれ」

「その失恋レストランが…この真紅にあるらしいんだぜ」

「ばかじゃないの。何それ」

「聞いたんだ。噂を…。そのレストランは本当に恋に破れた人だけが行けるらしい」


聞き終えると、ふぇいは身を乗り出して、地獄突の額に手をあてた。

「わっ!なっ、なんだ一体」

あわてふためく地獄突に構わず静かに手をあてている。
ふぇいの手はひんやりして心地よかった。


「いや、熱はないなーと思って」

「びっくりさせるな;」

「あははは、こりゃ失礼しました」


カラカラと笑うふぇいを苦々しく眺めながら、地獄突は頭を掻いた。

「と、とにかくその失恋レストランにマソは行ったんじゃないかと思うんだ」

「その根拠は?」

「まぁ…あくまでも噂の域を出ないんだが…その店から帰ってきた人はすべからく人格がまるっきり変わってしまうという話を聞いた」

「サイバー企業の新手の人格矯正マシーンか、もしくは宇宙人の精神分離実験か…」

「どっちにしろ、あのままじゃマソという傑出したパーソナリティが消失してしまう。そうなったら信は終わりだ!あぼーんだ!!」

「おわんねーよ!むしろ良い事なんじゃないのそれ」


失恋レストラン。

それは愛が壊した心を癒すうたかたの店。
だが果たして真実は一体…。

ファッションデザイナーとなったマソの運命は。
そして地獄突とふぇいふぇいはマソを基に戻すことが出来るのか。
誰も期待はしていないのであった。


そして次回、アキヤマンが死にます。
乞うご期待

するわけねーか。

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【ねぇマスター 作ってやってよ】信On 失恋レストラン 1【涙忘れる装備】

ひさかたぶりの雨で、猛暑になぶられまくった身体にしばしの潤い。
雨がこんなにありがたいと思ったのは初めてかもしれない。

さて、近頃知人のライターと馴染みの店で飲んだのだが、その時に某音楽ライターの人も同席した。
10年ほど前に会っているのだが、その時も非常に面白くはっちゃけた人であった。

知人ライターと師弟の関係にあって、ポンユウと言ったところ。
彼らが身で体験してきた30数年にもわたるロックの歴史を肴に、楽しく興奮しながらの夜。
考えてみればFMファン、レコパル、Mマガジン、Mライフなどで活躍していた当時の彼らに、若輩であるところの俺なんぞがロック談義に加わるというのもおこがましいわけでもあるが、そこはまあ…これでも一応その業界の仕事に身を置いていたわけだから許されたし。

おっと、タイトルの布石なんだが、その彼らがロックを語るうちに、やはり出るのは女の事だ。
学生時代につきあっていた女を思い出すと、その時分聞いていた音楽を思い出す。
誰でもそうだよな。特に失恋したときの苦くしょっぱい音楽なんぞは耳にリフレインして甘酸っぱくせつないものだ。
藤井さんにだって、マソにだってふぇいふぇいにだって、誰にだって経験あるはず。

哀しけりゃ、ここでお泣きよ 涙ふく ハンカチもあるし

清水健太郎のヒット曲はやはり名曲である。

「ふられるってぇのは、全人格を否定されることだよなぁ。つらいなんてもんじゃないよな」

飲むと必ず出る知人作家の口癖である。しかし至言だ。若き日の失恋ほど辛いものはない。
そりゃおっさんになってからでも、失恋はあるだろうが諦観もあり、人生所詮そんなもんだろうと自嘲して終わるのがせいぜい。

そんな甘く切ないスイートピーを、体験しながら人は大人になるのだ。
そこで泣いて泣きまくって鼻をたらして次に向かう。
失恋は決して後ろ向きの経験ではなく、ステップである。
まさに命短しなんとやら。


恋破れたら、心おきなく涙枯れるまで泣かしてくれる。
そんな失恋レストランが真紅 信Onにあるという。

ぽっかり空いたムネの奥に詰め込むメシを食べさせる。
そんな失恋レストラン。色んなプレイヤーがやって来ると言う。


失恋レストランは、本気で失恋した人にしか行けないと言う。
しかも一回きりということだ。
そこで想いのたけを吐き出したプイレイヤーの前には二度と出現する事が無いという。


ここに甲斐の山道を早馬で疾駆する一人の漢がいた。斉藤のタッチャマソである。
手綱を握りしめ、目からは溢れんばかりの涙を垂れ流していた。

「うぅ〜〜、ひっく;ぐすっ;;ふぇいたんのばか野郎〜〜;」

マソは浅井のふぇいふぇいを豊島園にプールに誘おうとしていた。
しかし、見事に撃沈。

「ごめんなさいねぇ。今、親が来ているの(笑」

もちろん嘘であり、これを言われたら男はもう引き下がる他は無い。
直訳すると、「無理だから」と言うことである。

これは、かなりのダメージだ。関ヶ原の幸村1の反則攻撃に匹敵する。
あるいは大名クラスの一撃壊滅技だ。


前々からふぇいに気を寄せていたマソだったが、今度ばかりは決定的に振られた。
片手に握りしめた、豊島園のプール券は無惨にもマソの前でびりびりに破いて捨てられたのである。
傍目にはひどいと思われるが、まぁ…200円引きの優待券だったので、ふぇいの気持ちも分からないでもない。

とにかくマソはふられた。
このせつない気持ちをどうしていいかわからず、そこらに現れる低レベルの刺客や山賊を殺しまくっていた。
まさに触れるもの皆傷つけるである。

甲斐と武蔵の狭間の関所近くであらかた雑魚を殺しまくっていたら、もう夕方である。
むなしい。去来するせつなさ。マソはこのぽっかり空いた穴に何かを詰め込みたかった。
胸がしめつけられるほどの傷みである。

マソは、丹を飲んでみた。しかし肉体は充実しようとも心は癒えず。

そうだ!信書を書いてもう一度再確認してみよう。
ふぇいたんだって、もしかして本当に親が来ていたのかも知れないしな。

そう思い、信書を綴りはじめた。


──────────────────────────────────────────

ふぇいたんへ。

さっきはどうも。一つだけ言わせてもらいたい。
俺は貧乳でも構わない。問題はそこじゃないんだ、浪花節だよ人生は。
豊島園がダメなら花屋敷でもいい。そこで『おつまみセット』で盛り上がりましょう。
お返事待ってます。

あなたのマソより

──────────────────────────────────────────


「送信っと…」

マソはドキドキした。
恋はズッキンドキン。待つほうが圧倒的に心理的な負い目を感じている。

5分ぐらいしてポロリンと信書受信を知らせるアラームが鳴った。
マソは恐る恐る開封してみた。


──────────────────────────────────────────

マソへ。

てかさー、うざいんだけど。返信するのもめんどくせーしだりーし!
もう信書送ってくるな馬鹿!
今度やったら殺すよまじで。

ふぇい

──────────────────────────────────────────



これはひどい。
ふぇいはまるで鬼だった。
しかし、実のところこれは精一杯のふぇいの優しさだったのである。
気の無い男に気のあるふりをすることなど出来はしない。
あえて悪役になることでマソに次の恋に向かわせることにしたのである(本当か?)


マソもそんなふぇいの気持ちが痛いほどよくわかっていた。
わかっているからこそ辛かった。(ほんとかよ)


「……終わった。今度こそ完璧に」

さらば銀河鉄道999。さらば召喚陰陽ふぇいふぇい。

さらば。

少年の日よ。


これが失恋である。
マソは思いっきり泣きたかった。しかし…

人は本当に心の底から哀しいときは泣けないものだ。泣きたくても涙がでないのである。
心はハート・ブレイク・キャノンによって打ち砕かれてるというのに、嗚咽する声すら出て来ない。

ただ、ただ、空虚な想いが宙を舞うだけだった。

「日が…暮れていくなぁ」

夏の終わりの風を感じながら、マソは落ちていく夕日を屹立して眺めていた。
恋に破れた心に真っ赤な太陽ゴレンジャー。

哀しき漢がそこに立っていた。


そろそろ辺りも暗くなってきた。
馬が軽くいななく。マソはふらふらしながら馬に乗ろうとした。


「ん…?」


手綱に手をかけた時に、半里ほど向こうに灯りが見える。
はて?この辺りに店などあるはずもないのだが。


訝しい。物の怪の類いかもしれんが、今の俺にはどうでもいい。
酒を呑もう。今夜はとことん。けつを出すまで飲んで飲んで飲み潰れてやる。

馬にまたがり、灯りを目指してマソは駆けた。

その時、地獄突は──

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チャゲのようにノリノリだったという。

まぁ全然関係ありません。

2に続く!



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nobu

【あんた乳首が】信オンよもやま ★2【煤けてるぜ】

源は精神的にも肉体的にも追い込まれていた。

たかがネトゲ。されどネトゲ。オンラインに巣食う魔物は容赦なく源に襲いかかる。

汚れちまった悲しみに. 今日も小雪の降りかかる
汚れ ちまった悲しみに. 今日も風さえ吹きすぎる

死にたい。でも死ねない。このままではブルーコメッツ、いや破滅だ。
冗談をかましてる場合じゃない。

何とかしないと。

しかし、この場合の妙案なぞあるわけがない。アミダのように取捨選択しかないのである。

逃げちまうか。
あらほらさっさーで姿を消して1〜2年ほとぼりが冷めるまで大阪の南に潜伏してればいい。
時間が解決してくれるだろう。いやきっとそうだ。

逃げれば全て解決すると思っている時点で救えない外道だった。
この場合は腐れ外道の形容が正しい。

しかし、そんな奴こそ生き延びる。しぶといからだ。
戦場の前線で生き残る奴は、運がいいか極端に臆病かのどっちかである。
徳川の本多忠勝のような化物などそうそういるわけもない。

源は性にも執着があったが、それ以上に生に執着していた。
世をはかなんで自殺をするなど愚の骨頂と考えている。
それなら女を犯しまくって死刑になるほうがいいと考えている。

絵に描いたような性戯の味方だった。

そうと決まればこうしちゃいられない。
家に戻って旅支度だ。
マイレージも貯まっている事だし、エアプレーンの一人旅もひさびさに悪くないだろう。


ポロリン♪

おっと、信書だ。
まさか、あの女からじゃないだろうなあ。

女とはあれから三日ほど連絡を取っていない。
向こうからもコンタクトはなかった。
それが余計に不気味だった。



信書を開いてみると、地獄突からだった。


なんだよ、おっさんからかよ。
なんだよ一体…。

ほっと安堵しながら読んでみる。


____________________________________________________

源へ。さっきは悪かったな。
とりあえず俺からひとつアドバイスをしてやろう。



           ,,x-ー:: ":::::
        ,x '"::::::::::::::::::::
      ,、'":::::::::::::,, x-‐ ァ:  
    ,,x '"::::::,,、- '"     |:::  
    `"i`ー'"        ヾ  
      !  、 、,,,,,,,,,;;;;;;;;;彡ミ  
     |,,,,ノi `ーヾ;; '"----、  
     ヾ::ヽ     -┴'~   
      ~|:/ ' ' ' `ー ' "'"   
      /_              
     l    '' )    i   
      ヽ,,、'~`      U
       ゙, __ ,-、_,ノ`
 |/      ゙, `'" ,,y
 |/  彡  ゙、`-'"
   /|/     i
   /        !    ,, -'"
    |     `ー '"|::
    |      /|||ヽ
          /|||||/心
          |ヾ/ /`ー



以上。キモに命じておけ。

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源は読み終わると、自分の父親に電話をかけた。

「もしもし父さんかい?ちょっとお願いがあるんだけど、居間にあるショットガンちょっと貸してもらえないかな?」


さすがに父親には銃の免許がない奴には貸せるわけがないと断られた。
源はバッくれる前に、とことん調子に乗っている地獄突をいわそうと思ったが、
あえて犯罪者になるのも馬鹿馬鹿しいので止めた。

とにかく、ひとまず退散だ。女や婚約者には悪いが、俺にはまだやることがある。
ネトゲでアジアの歌麿になるまでは止められない。

源はパスポートとカードを懐に入れて、スーツケースに衣類その他を詰めてアパートをあとにした。
成田空港につきエミグレーションを通る。
行き先はマニラになっていた。

「さらば…日本ってとこだな」

源は浮き上がる機体を感じながら目をつぶって、今までであった女達を思い浮かべていた。



──10年後。

信長の野望オンラインもコンテンツとして存続できなくなり今はもう既にない。

阿佐ヶ谷のある居酒屋。

一人の老人が背中を丸めてカウンターで一人手酌で飲んでいる。
徳利が2本ほど横に転がっている。相当飲んでいるようだった。

何かをぶつぶつつぶやきながら猪口を舐めている。
横にこんな酔っぱらいがいたら誰もが席を替えたくなるだろう。

酒を仇のようにして飲んでいた。
かっての信オンプレイヤー。地獄突の成れの果てである。

酔っぱらっていても、どこか思考は冷めていた。
10年前、源が海外に逃走したらしいと秋山左京太夫から聞いた。
あの野郎…とっととケツまくって逃げちまいやがったが、あの後、できちまった女はどうなったのか。
今となっちゃあ知る由もねえが。
最近どうにも昔の事が思いだされてくる。

割とどうでもいいことのほうが妙に鮮明に記憶している。
当時の奴らは今頃どうしているのやら。

そういや源の野郎はあれだな。自業自得とは言えちいっとばかし可哀想だったかな。
中国の四大寄書の「金瓶梅」に出て来る西門慶ってえのが、あの野郎そっくりだった。
好色一代記。海の向こうでもやらかしていることだろう。気楽なもんだ。
そう考えると、妙に懐かしくもあり羨ましくもある。

信オンというコンテンツは自分という時代の1ページだったのかもしれないな。
そう考えると自然に笑いがこみ上げてくる。
木乃なんかに言わせれば信は遊びじゃないんだよ、か。

木乃や清音やコロッケもどうしたろう。
ふぇいふぇいもおばあちゃんになってることだろうな。


「信か…。何もかもみな懐かしいもんだ」

手元に置かれた突出しを箸でつつきながら、ふと考える。

もしかしたらあの野郎、とっくに帰ってきて信に復帰してたのかもしらん。
鯖を変えてキャラを変えて復帰している奴は多い。
信はMMO RPGの中でも復帰率がかなり高かった。

ひとえに本格的な国産の戦国MMOがなかったり、クローズ戦闘でのまったり感は年寄りにも優しい。
FFなどのオープンバトルなどはチャットをしている暇もないし、かといってそのためにスカイプをやる気力もない。まぁ…丹縛りの狩りなどは退屈極まるものだが。


今は亡き藤井さんがいまわの際にくれた信書にこう書いていたっけ。


僕たちは、信オンと言う世界で生きている。
それは時としては、平穏からは、ほど遠く。
だから僕は、この世界を晒して行こうと思う。
マソと共に。
いつかまた、戦国の大地で、凸さんと再会出来る日を祈って。

地獄凸殿へ。
藤井駿河守より。


「藤井さんか。思えばおかしな人だったな」


感慨にふけっていると、がらりと戸が開いて新しい客が入って来た。
長年の信友のほくとんだった。

ほくとんは地獄突を見ると呆れ顔で肩を叩いた。

「大分飲んでるなぁ。またリストラくったのかい」

「てやんでぇ。こっちから辞めてやったのよ。俺の見つけた空き缶をバカにしやがってあの小僧ども…。俺があと50年若けりゃぁあんなガキども…」

「空き缶拾いの凸も老いたなぁ。俺も歳をとるわけだ」

「けっ…」


ほくとんは、生を頼んで地獄突の横に座った。

「そういやちくっと聞いたんだがさ、ほら昔、女でしくってバッくれたとかいう凸さんの知人がいたろう」

「うん?あぁ、源のことかい」

「そうそうそれよ。この前マソに会って聞いたんだがな。なんでもマニラの夜王とか言われてるらしいぜ」

「マソ?奴がなんでそんなことを知ってるんだい」

「ああ、マソはフィリピンルートで密輸をやっているからな。マニラの事情にはかなり明るいんだ」

「ほう…。しかしやっぱあの野郎生きてたか」

「なんでも向こうで立ち上げた主婦カフェが馬鹿アタリだったそうでな。いまじゃ向こうでちょっとした顔役らしい。ちかじか日本にも支店をだすらしいが」

「あの野郎もえらくなっちまったもんだなぁ」


そうか。生きていたか。
しぶとい奴だ。

「信にもたまに顔を見せていたようだぜ。もちろん別鯖だったようだがな」

「こすい野郎だぜ」

しかしなんとも笑いが込み上げて来る。
好色一代記。サイコロふって己を投げる。どっちに転ぶかわかりゃしねえ。

ネトゲに興じてしんしょつぶすか成り上がるか。
俺しがない空き缶拾いだが、それでも悔いはねえ。


だけどよ…。だけれどもよ。俺は…。


「どしたい凸さん。急に元気がなくなったな。おや?泣いてるのかあんた」

「ば、バカヤロウ;目にゴミが入っただけでぇ。いい歳して泣くわけねえだろ」

「そうか…。あっ、おかみさん、おかわり!」

ほくとんは突の肩を叩きながら、生をもう一杯頼んでいた。


しかし誰が知ろう。

目の前の女将が、あの時の源の相手の女性とは。
そしてせわしなく動き回っている若い娘があの時の子供とは。

サーバーから生ビールをつぐ女将の目は冷たく蒼く光っていた。

【おしまい】


あれぇ、何か意味不明なオチになった。まあいいか。

ではまた。

テーマ : 雑記
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プロフィール

凸

Author:凸
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生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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