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戦国麺 【その3/3 最終回】

地獄突と秋山左京太夫がこつ然と姿を消した晩の2週間後─

その晩から雅は信濃の関所前で陣取っていた。

かれこれ見張って一週間にもなるが、一向に戦国麺の屋台は姿を見せなかった。
といっても、体力的に夜明けまで見張るのは無理なので、丑三つを目処にしている。

さすがに寒いので、薪を燃やして暖をとっている。
食料も酒や餅などを持参してきていたので、軽く楽しめた。

「しっかし…凸さんなんかはどうしたろうなぁ」

先を越されたと思ったのだが、地獄突はあれ以来見たものも噂も聞きはしない。

「ま、どうでもいいか。それよりそろそろ現れてもいいものだがなぁ」

信濃の夜はやはり寒い。真っ暗な闇の中で薪の火を見つめていると、何か妙に懐かしい気がしてくる。
酒もほどほどに回っており、火に炙られた顔が火照って紅葉していた。

しかし、たかがラーメンのために一体俺は何をしているんだろうとたまに思う。
思ったら負けだ。他人とは相容れない価値観を持っていたからこそ、今まで生きてこれたのである。

学生時代に俺はラーメン通なのさと昔の彼女に自慢したことがあった。
彼女はニッコリ笑って「そういえば、あなたラーメンマンに似てるわねw」と言われて嬉しかったことを思い出した。
今考えてみりゃ「ねーよwww」と言わんばかりだが、その当時は日の本一のラーメン評論家になろうと志したものだ。
しかし、大海の蛙のなんとやら。世の中にはすげぇ奴が星の数ほどいることを思い知らされた。

ラーメン全国大会に出た事がある。これまでに何万種類のラーメンを食して来た。自分でも作ってみたり、アルバイトをやってみたりした。ラーメン理論なら完璧だった。
匂い、味はもちろん麺の手障りでその種類を言い当てる自信はあった。

しかし、それを超えるラーメンの天才がそこら中にいた。
大会中、順位は下から数えたほうが早いぐらいで完全に打ちのめされた。
それからラーメンは趣味にすることにした。天を取ろうと足掻いて堕ちたのだ。

なんで今、この篝火の前でいつ来る事もわからないものを待っているのか。
雅にもよくわからない。
わからないが、ぶすぶすと燻ったものが胸のうちにある。

薬師という職を活かして、薬剤ラーメンをやってみようかとも思ったあったが、どうにも今一歩踏み切れなかった。

だって神通だもん。涙がでちゃう。

寒いのを承知で意味不明なギャグを言ってみるが漆黒の闇は答えてはくれない。
薪の音がパチパチとぽつんと闇を照らすばかりだった。


もしかしたら、人生の分水嶺になるかもしれんな。
そんな想いがある。やらぬ後悔、やって後悔。同じアホならやらねば損損。

「この道をいけばどうなるものか 危ぶむなかれ 危ぶめば道はなし 踏み出せばその一歩が道となり その一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ」

一休宗純の名言である。ふと諳んじてみたりする。
雅は最近までこれをアントニオ猪木の名言だと信じていた。
まことに可愛い男だった。

火が小さくなりくべる薪もきれかけていた。

「今日はここまでだなぁ」

雅はどっこらしょと腰をあげて、暗く濁る越後の関所方面を見た。

「ん?」


越後の方面から、何やら小さく灯りが見える。
それはじょじょに大きく近づいてくる。確実にゆるやかにこちらに向かってきていた。

「むぅ…あれは」

雅のいる処まではかなりの距離があったが、それでも心は踊る。

とうとう、視界にとらえるまで近づいてきた時に、雅は小躍りして喜んだ。
小躍りといってエグザイルの真似はできないので、ドラクエの魔法の踊りである。

ミヤビンは魔法の踊りを踊った。
戦国麺の屋台は帰ってしまった。



冗談である。冗談はともかく、幟に「戦国麺」と書いてあり、一日千秋の想いを成すことができた雅の喜びはひとしおだった。

雅は屋台に向かって駆け出して大声で叫んでいた。

「おっ、おっ、おやっさぁん!!戦国麺をくれぇ!」

ほとんど半狂乱状態で屋台に向かって叫んだ。

「へぇ〜〜〜い」

屋台を引いていた鎧武者の主人は、屋台をとめて準備をする。

万感の想いでラーメンを食う。
初期の頃、涙の雫を初めてゲットした時より嬉しかった。

椅子に座ってラーメンを待つ。

わくわくどきどき。
こんな時に無粋な雑談はいらない。ただ出された麺を思いっきり食う。
それが礼儀である。
おためごかしの世辞などはいらぬのだ。


待っているあいだに、屋台の隅に妙な置物が置いてあった。
置物は二つで、招き猫とひこにゃん人形である。

よく見ると、二つの置物の眼の部分から涙が出ていた。

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<こりゃぁ一体…>

そう思った瞬間、主人が話しかけて来た。


「旦那は運がいい。今夜で店終いなんでね」

兜の中の眼が妙に優しく光る。

雅も驚いて聞き返した。


「ええっ!そりゃまたなぜに」

「潮時だからですよ旦那。この世に顕現できるのも今日が最後でね」

「顕現?まさかあんた人外のものなのか!」

「まぁ、妖かしといえばちょっと違いますわな。よく言えば仙人みたいなもので」

「仙人…か。ということはこの麺は仙人の食?」


主人は首を振って答えた。

「うんにゃ。これはただの麺じゃよ。ほんのちょっと丹などをつかおうておるがの」

「道理で…。ステータスが急激にあがったり、Fカップになったりマソのちんぽがバリカタになるわけだ…」

「ワシももとは人だったのじゃが。麺好きがこうじて放蕩したあげくに外道に堕ちた。
それから果心居士殿に拾って頂き、堕落仙人として顕現しとるっちゅうわけよ。ちょっとした悪戯をしてみたくてな」

「カティンコティン?変な名前だな(笑」

「果心居士じゃ。馬鹿め」

「ふうむ…。ところでそこの置物二つが妙に懐かしい気がするんだが…それはもしや…」

堕落仙人はカカと笑って、その置物二つを無造作に取り上げた。


「これは主の知人らしいのう。耳に聞こえぬ叫びをさっきからあげておる」

「やはり突さん達かこれは…」

「うむ。こやつらふとどきにもワシの鎧を脱がして、悪さをしよってな。とりあえず今日まで懲らしめていたところよ。お前さんがこなければずっとこのままにしておくかとも思ったがな」

そう言うと堕落仙人鎧を脱いで兜を外した。

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現れたのは麗しい若い隻眼の娘だった。

「うぉ!すげえ別嬪だ」

雅はびっくりしてひっくり返りそうになった。

「このワシの姿を見て懸想しおってな。まったく下衆な輩よ。ふふ」

苦笑しながら華のような笑みがこぼれる。

「でもまぁ、そろそろ許してやるかの。ほれ」


そう言うと、ポイと置物を投げ捨てた。

宙に舞った置物が地に届く瞬間に、人の姿に変わった。

「ぐあっ!」

「ぬくぅう!」


悲鳴が2つ聞こえて、しばらくすると大声を上げて走り去っていった。

「これに懲りてあの二人もちったぁ真面目になることでしょうよ」

雅はやれやれという風で、逃げさっていく男達を見ていた。

隻眼の娘に変わった堕落仙人は、うふふと笑いながら最後の一杯と戦国麺を出してくれた。

見ると具材も何もない唯の麺とスープだ。

スープをれんげで救い口に含むと、目の前がぱぁっと明るくなり、身体の中から何かが沸き上がって来た。

「戦国麺は人の願望が現実に顕現される。しかしその効能は90日じゃがな」

「そうか…。所詮一時の夢か」

「人は楽して力を手に入れるとろくなことにならんよ。己の力で掴むからこそ華がある」

「それもそうだな」

それを聞いて、堕落仙人はにこりと笑うとふっと消えた。

雅が一気に麺を啜り、スープを飲み干した瞬間に屋台は消えていた。
すでに夜明けが近く空が白みはじめていた。



それからのこと。

Fカップの巨乳娘の乳はしぼんでしまい、マソのちんぽは元通りのやわらか戦車になってしまった。
しかしマソはめげずに「俺にはまだ器具がある!」と走り回っているらしい。

突と秋山は、あれ以降すっかり改心して「トツ&アキ」という焼き鳥屋を二人でやっている。
そこそこ繁盛していると清音から聞いたが、先日食中毒者を出して奉行所にしょっぴかれたらしい。

雅はというと相変わらずラーメンを食い歩いているが、戦国麺の感動を得られるラーメンには、いまだ出会う事がない。多分これからも出会うことはないだろう。

材料を仕入れに町に来ていたが、
雅はふと立ちすくんで、戦国麺の味を確かめるように感慨に耽っていると、背後に藤井駿河守が現れた。

「戦国麺はあなたの青春の幻影。ふふふ」

そう言いながら去っていく藤井の背を見つめながら、梅雨にしめった家路を急ぐ雅であった。


【完】


次回からは【僧兵が斬る!】をお送りいたすかもしれません。
ではまた!


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テーマ : 信長の野望online-鳳凰の章
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
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