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武田は敗けて華と散る



信長の野望オンラインを10年近くプレイしていたが、
運がいいのか悪いのか鯖統合によって滅亡一歩手前だった武田は
怒涛の巻き返しで全国統一を成し遂げた。
あそこで多分、俺の信オンライフは実質終わったとも言える。
まぁ合戦で活躍したわけじゃないし、国力アップに尽力したわけではなく、
ただの傍観者として成り行きを見ていた雑兵だったが、それでもちょっとした達成感はある。
それは途中出奔もしたが、結局、最後まで武田であり続けたことだ。
些細なものだけど、10年近くやっても統一が成されなかった仕様が改変されて、多数のプレイヤーもけじめがついて戦国を去る人も多かったろう。

NHKの真田丸などを見ていると、やはり在りし日の信オンの合戦を思い出す。
思い出補正と言われようと、やはり初期の合戦が一番燃えた。一体感もあった。
武将と2時間格闘しながら折れて絶望したり、徒党に粘着されて憤慨したり、勝利に皆で喜んで近畿雀躍したり。
こんな連帯感をネットで感じることができようとは、夢にも思わなかった。

色々あった。色々あったよ本当にね。幾千の出会いと別れ。お涙提灯花風船。
己の人としての未熟さやいい加減さで、迷惑千万数知れず。
神輿に乗って調子に乗って浮かれて調子にのって悪ノリしすぎたり。
まだまだあの頃は若かったなぁとしんみりしょんぼり鯉のぼりだよおっかさん。

まぁ過去の反省や、慚愧の念は思い起こすと果てしもないが、ネトゲの恥はかき捨てと割り切るしかないのが、世の常人の常。今ではオフゲすら遥か遠いコンテンツとなり果てた。

今、あの頃の初期の信オンをやっても全然面白くないだろう。
あの時、その時だからこそ、あのコンテンツに心がときめいたのである。
懐かしのラーメン屋のラーメンが昔は超絶うまかったと記憶しているのが、今食ったらそうでもないとか、昔の欲しかった車を今乗り回しても大して感動は得られないのと一緒である。

時は過ぎてしまったのである。
それは脳が幾多の情報を消費していく中で、玉手箱のようにしまった記憶にリボンをかけているのと一緒だ。
懐かしがるのはいいが、決してその場所に帰れない追憶の感覚。昔の良き思い出は触れた途端に泥に変わることが少なくないものだ。いい思い出として信オンを大事にしたいがため、あえてちょい見程度のログインはしないのだ。
と、いうのは真っ赤な嘘だよ〜〜ん。メンドクセェ。それだけですはい。

でも、時代劇の戦国物とか見てるとやっぱ思い出す。
モニタに映る戦場の粉塵や、キャラたちの息遣い、風の匂い、地の鼓動。
何とも大げさだわな、はははのは。

武田は滅亡していく国だが、その哀しさがいい。
結局負けじゃん!とガキの頃はどうにもその憐憫たるカタルシスが理解できなかった。

今は滅びの美学に身を費やした武田のすべてが愛おしい。
ま、意地を張り通して判断をミスった結果なんだろうけど、信玄がもうちょっと長生きしてくれてたら歴史も変わってたのかもと思わずにいられない。

信オンの現在はどういう勢力図になってるのか窺い知れないし、知りたくもないが、
未だあそこで頑張ってる10年選手のつわものどもがいるのだろう。

俺としては、真田丸を見ながら思い出す程度ではあるが、あの頃ともに遊んだ知人たちをふとしたことで思い出す。
それぞれ息災でやっていれば、嬉しきことこの上なし。

で、信仲間のツカさんは、またタイに出張が決まり今度は6月までということだ。
本人は、相当嫌がっているようだが、現地妻でも調達してうまくやることだろう。

というわけで、雨がそぼ降る神保町より以上です。
良き週末を。



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テーマ : 日々のつれづれ
ジャンル : 日記

信on



とある都内の洒落たバー。

店内は間接照明が申し訳程度に光を落とす。
シックな黒のスツール10席が並ぶカウンターとテーブル席が4つ。
大窓には都会の夜景が広がり、流れるBGMはコルトレーンのBLUE TRAIN。
控えめな乾いたサックスの音色は恋人達が愛を囁くには十分すぎるテイストだ。
芸能人や著名人の顔も見かける都会のスポット。

カウンターに女性を挟んで男が二人。
どうやら女性は今夜のパートナーにどっちが相応しいか値踏みをしているらしい。
男性二人は如何にも高そうなブランドスーツに身を包んでいる。
時計も靴もブランド品だ。レースアップのフェラガモ、オメガ スピードマスター。
いささかスタンダードすぎる感はあるが、悪くはない。
スーツは奥の男がヒューゴ・ボス。手前の男がポール・スミスか。まぁ今の流行だが及第点だ。
女性はアウターとトップスを白黒のコントラストで決めてスカートは、ベージュのミディスカートだ。
3人とも30歳をやや超えているように見えるが私から見たら十分に若い。
バブル期のわたせせいぞうの漫画に出てくるような男女だ。

独り身の私は彼らから3席あけたカウンターの端で飲んでいる。
寂しく飲んでいるように思われるが、これはこれで楽しい。
特にまったく関わりのない男女の会話をツマミに飲むのは、このうえもなく下卑た中年の本道である。
その背徳感に酔う最低な男を演じるのは至上のエクスタシーだ。

ジャック・ダニエルご免なさい。
わたしはジャック・ダニエルに謝りながら、聞き耳を立てている。
老年で体のあちこちガタは来ているが、聴力だけはいまだに自信があった。
測定値は未だに成人男子の2倍はある。まさにデビルイヤーは地獄耳だ。
時に雑音が煩わしいことも多々あるが、それでもこの能力のおかげで命を落とさずに済んだこともあるし、
ありがたい能力であることは間違いない。

私はカランと落ちるアイスブロックに目を落としながら、今夜のターゲットを定める。
お気に入りのアメリカン・スピリットに火を点けて
さて、一体どんなお洒落な話をしているのか。
こっそりと耳を傾けてみよう。


「…みさおさんって、怒るとハシビロコウに似てるよね」

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ハシビロコウ(嘴広鸛、学名:Balaeniceps rex)
ペリカン目ハシビロコウ科の鳥類の一種。
エチオピア区の南スーダンからザンビアにかけての湿地に分布


奥の男が笑いながら云った。半身にして女性に体を向けて如何にも口説くぞという体勢だ。

「うふふ。ありがと。そういう高崎くんはアフラックのガチョウに似てるわよ」

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アフラックダック
「アフラック」とだけ話せる米国生まれのアヒル。



すると手前の男がすかさず口を挟む。

「いや、それ褒めてねーだろ。それにあれってアヒルだろ?」

すると。みさおと呼ばれた女性が人差し指を出して男の唇にすっと押し当てた。

「タツヲさん。こんな夜に野暮は言いっこなしよ。うふふ…」

手前の男はタツヲというらしい。

高崎と呼ばれた男が谷啓の真似をしながら
「ガチョーン!!」と古いギャグをかました。
寒すぎる…。こんなお洒落な都会のバーで、谷啓のギャグを見せられるとは…・

みさおはクスクス笑いながら口を手で抑えている。

「相変わらず面白いのねえ。高崎君は」

タツヲも手を打ちながら大笑いをしている。
他の客からの視線など気にもならないようだ。

それにしても…

なんという意味不明な会話だ。
お洒落なバーでお洒落な服に身を包んだ男女が何をしている。
もう少し小洒落た会話で艶っぽい話をしてくれまいか。

私はバーテンを呼び寄せて、ダニエルのダブルをおかわりして、さらに聞き耳を立てた。

「みさおさんは、どっちかっつうとアフリカオオコノハズクに似てるんだよ」

タツヲが手に持ったグラスを軽くみさおのグラスに合わせながらウインクをする。

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アフリカオオコノハズク(阿弗利加大木葉木莵、学名:Ptilopsis leucotis)
鳥綱フクロウ目フクロウ科に分類される鳥類の1種

「うふふ、光栄だわ。あんな可愛い猛禽類に似てるなんて。タツヲさんは…そうねえ。僧兵に似てるわね」

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僧兵タツヲ
1人炭堀、青だし三日放置は当たり前。様々な不遇を経て現在に至る。
かくいう私も僧兵でねAAは有名。僧兵であることに誇りを持つ。
極楽改作戦を極端に嫌う意地っ張り。


「似てるんじゃなくて、れっきとした僧兵なんだけどな」

タツヲが高崎に目配せをしながら、グラスを持ち上げる。

「織田の瞳に乾杯!」

高崎とタツヲのシンクロした所作に、みさおはにっこりと笑って自分のグラスをカチンと合わせた。

きき耳を立てていた私は困惑している。
なんなんだろうこいつらは…。
世界動物ふしぎ発見のスタッフか?
しかも僧兵とか織田とか意味のわからん単語も出てきている。
一体こいつらはどんな関係なんだ。

頭を抱えながら私は非常に興味を惹かれた。
もう少しつきあってみるか。
気を取り直して私はさらにデビルイヤーで彼らの声を聴く。


「まだこれからよね。信は。嗚呼、信長様…」
みさおが手前に置かれたホワイト・レディーに口をつけながらつぶやいた。

「鯖統合か。いよいよ時代が動くな。僧の上方修正あるで」
タツヲが眉毛を動かしながら爪を噛んでポーズを取っている。
何かっこつけてんだこいつは。

「ククク…。いよいよ高崎クリスタルの出番が来るね。武将は頂きさ!」
高崎が指をパチン!と指を鳴らしてドヤ顔で嘯く。
なにが武将が頂きさ!だよ。アホか。


私は彼らの会話にびっしょりと汗が出てきた。

こいつら信オンユーザーかよwwwwwwwwwww
俺もやってたしwwww
やめろよこんな場所でお洒落に決めて信話とかwwほんとやめてまじやめてw

思いっきりそう叫びたくなる衝動を抑えた。
信長の野望オンライン。当時は国内唯一の戦国MMOでシネマティックバトルとうたわれターン制のクローズド戦闘が売りだった。私もそこに身を置くプレイヤーだったのだ。

世の中は狭い。まさかこんなところで信話をする奴らに出くわすとは。
もう数年前に私はその世界から消えた。
卒業というわけではないが、自然に足が遠ざかりいつしかゲームそのものをやらなくなっている。
歳のせいにはしたくはないが、興味を失っただけではなく、意欲も失っていったのだ。

烈風、真紅鯖を駆け巡っていたあの頃。
何もかもみな懐かしい。

今なら彼らの話に加わることもできよう。
そこそこの武勇伝を聞かせながら、話もはずむだろう。
しかし、あそこは私の場所ではない。
ロートルは現役の場所に居座るべきではないのだ。

今日は希有な出会いをしたものだ。
この一杯で打ち止めとしておくか。

都会のお洒落なバーに集いし戦国のもののふ達か─
それもまたありかもな。

私は彼ら─いまだに現役の後輩を見ながら地球を見る沖田艦長とシンクロした。
ダニエルを飲み干して腰をあげようとした瞬間、耳を疑う言葉が出てきた。

「そういえばさ、地獄突って人知ってる?」

高崎がなんと私のハンドル名を出した。
少なくとも私の名前を知っているのは、彼らの二世代前のはずだが…。

「知ってるわよ。その人、両替前でいつも「しゅっしゅうしゅしゅう〜〜〜〜!!」とか叫んでるもの。痴漢車トーマスとか云われてるわ」

マソじゃねえかwwwwあの野郎www

「ああ、知ってるよ俺も。確か藤井駿河守という人と組んでいつもレスキルしてる。上覧とか二人で、お●こー!とか、ち●ぽー!とか騒ぎまくってGMに厳重注意受けてたぞ」

藤井さんwwwやめてよwww

かくして信プレイヤー達の熱い夜はまだまだ終わることがない。
私の戦国もいつか取り戻すことができるのだろうか。

そんなことを考えながら私は店を後にする。
それでは本日はこのへんで。
関係ないけどやっぱストレイキャッツはいいねぇ。

テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

鍋の夜


出来れば曲を聴きながら読まれたし。

鍋はいい。
何がいいかって楽でいい。
そして栄養を無駄無く摂取。

藤井の屋敷。
真紅の月が出ているいい夜だ。

長方形のテーブルに置かれた4つの取皿とタレの壷。
そして牛と豚の霜降り肉に各種の具材。
ガスコンロに焼べられた土鍋に綺麗に盛られた土鍋からは、既にいい匂いがぷぅんと匂ってくる。

「ふっふ〜ん。鍋は単純明快もういいかいってね」

藤井は上機嫌で冷蔵庫のビールの冷え具合を確認した。
鍋から溢れる煮佛の音がリズムよく耳にさえ心地いい。

「え〜と、箸はどこだ。箸、箸っと…ハッシ32てか」

キッチンの収納をまさぐりながら鼻歌まじりに箸を探す。

「おぅ、あった。割り箸サイ箸日本橋」

買ってあった割箸を袋を見つけて、煮立ち始めた鍋の火を少し緩めた。
あと少しすれば、十分に美味しい具に出来上がる。
まさにこれが至高の鍋。

鍋は盛りつけも重要だ。如何に美味しそうに見えるかも食欲をそそる大きなファクターになる。
藤井は均等に盛りつけられた野菜、肉と総菜のコラボにご満悦といった様子でニヤニヤと眺めている。

「冬はやっぱり鍋だぁね。よくぞ日本に生まれけりって痛いよ上段廻し蹴り」

鍋は宇宙と一体になる儀式である。
─と、室町時代のある食通は言ったとか言わないとか。

古来より倭人は医食同源にあり三里四方の野菜を食し琴棋詩酒を珍味佳肴で宴を楽しむ。
鍋はその宴の中心にあり、鍋を食するということは、人が宇宙と意識を一体化させるものだと言う。

春菊、白菜はエンベロープ。豆腐やつくね小惑星。椎茸、榎は流星群。霜降り肉はあまたの星々。土鍋は宇宙の一部を現す無限大。

そうだ。鍋を食する日本人は日常から宇宙へと意識をシンクロさせることに成功しているのである。
なんと素敵なジャパネスク。愛と希望のコスモゾーン。

友人達を待つこのひととき。
すべてが満ち足りたこの空間。

心から日本人に生まれてよかったおっかさん。
藤井は天に感謝する。そしていまだに天中殺を信じてる。火星に生物がいると信じてる。
ドラキュラ伝説を信じてる。どこでもドアを信じてる。夢は必ず叶うと信じてる。
最後に日本を信じてる。日本人を愛してる。

だからこそ、鍋を食せるのだ。
鍋は正直である。作った人の心を映す。

若い頃、やさぐれて組の構成員になりかけた時も、鍋が救ってくれた。
鍋を作ってくれた当時の彼女に言われた言葉を思いだす。

「ふーちゃん、あなた忘れたの?鍋は心の眼で食べるのよ」

転落しかけていた人生を救ったひと言である。
その彼女とは性癖が合わずに別れてしまったが、いまだに彼女の至言は心に残る。

心正しく安らかに。
鍋を食べる前の心得だ。

日本の鍋は宇宙一の食である。
鍋の中で息づく具材には全て小さな宇宙が宿っている。
欧米人は外へ外へと宇宙を求めるが、東洋では内へ内へと宇宙を探る。

そう。宇宙とは鍋そのものなのだ。
つまり宇宙鍋。
深淵なる宇宙の神秘にせまるには宇宙鍋を食し、
その精神を宇宙に浮遊させて幾億光年もの時を超えるしかない。

どれくらい、そんなことを考えていただろう。
長い時間だったような気もするし、刹那だったような気もする。


玄関の呼び鈴が鳴った。


「藤井さーーん、きたよぅ!」

友人の高崎の声だ。

続いて、みさお、タツヲ、周防の3人の声。

「お邪魔しますー」

友人の凸やマソも呼ぶはずだったのだが、凸はサラエヴォから帰国中に空港でエボラの疑いをかけられて出国できないと聞いた。
「ボスニア!ヘルツェゴビナ!」
そう云いたいがためだけに、サラエヴォに行ったらしいが、ジェットコースター級のアホである。
マソはマソで彼女ができたのだが、夜の打席で腰を痛めて療養中である。
さすがのマソでも、彼女相手にサイクルヒットを打つのは難しかったようだ。


「やぁやぁやぁって、ビートルズのズウトルビのゆっとるびー」

藤井は4人を迎えて冷えたビールを急いで冷蔵庫から取り出す。
4人は思い思いにツマミや酒を持ち寄ってきていた。

高崎が白いビニール袋からスナック菓子を取り出すと、タツヲ、みさお、周防も持ってきた土産をひろげはじめた。

広島名産伝説の「牡蠣チップス」、幻の横須賀原産大吟醸「兄者」、茨城の珍味「海老納豆」、湘南特産地酒「サザン」

藤井は4人を座らせて、キンキンに冷えている缶ビールを配った。

「いやいやまぁまぁ、よくぞ忙しいのに来てくれたもんたよしのりダンシングオールナイトってか」

「相変わらず寒いわね藤井さん。死ねばいいのに」

みさおがお決まりの毒舌を吐くと、追蹤して高崎がたたみかける。

「シベリアジョークの藤井さん、能書きいいから乾杯しよう…って」

見るとタツヲと周防は既にプルトップを開けて飲んでいる。

「あんたら、まだ乾杯もしてないのに早いよ早いのござ早漏のウサインボルト;」

藤井は頭を抱えて嘆くが、タツヲも周防も気にしない。
ちいせえことはいいんだよと、構わずぐいっと飲み続ける。

それにつられて、高崎、みさおも飲みはじめる。
鍋を始めるにあたっての禊とも言うべき「ご挨拶」はフライングによって流された。

藤井は一瞬殺意が湧くほど激昂しかけたが、深呼吸をして呼吸を整えた。

鍋は楽しく優雅であるべし。
些末な怒りに捕らわれて、宴を台無しにすることこそ愚の骨頂。
大人になれ俺。
そう自分に言い聞かせて、怒りを胸の箪笥にしまい込む。


「ま、まぁいいや。それじゃあ始めると師走かしますかパラダイス」

ところで鍋にも無限に種類はある。

今日はスキヤキ鍋だ。霜降り牛肉プレミアム。
藤井が回した商店街のクジで当たった最上級の肉である。

このとき藤井はまだ気がつかない。
4人の眼に光る怪しい揺らぎを。

一見、普段は仲良く温和に見える友人達だが今日は違う。
これはまぎれもなく「戦」だった。

野菜や他の総菜の具はもう準備完了だった。
割下に藤井は、山積みされた生玉子を一つ割って自分の椀に入れた。

「みんなも玉子は適当納豆ありがとうっと入れてね」

そう促しながら割下の玉子を溶かす。


みさおは既に缶ビールを3本あけて日本酒に突入している。
驚異的なスピードでアルコールを消化しているが、これはあとが怖い。
そろそろ目が据わってきている。

「おらっ!藤井。肉入れろ肉!」

待ちきれんとばかりに肉を催促するみさお。
既に酔っぱらってるのは明白だ。

「ペース速すぎつうのよ、スリーフォーファイブ。君ってばさぁ…」

トングで豚肉を鍋に入れて食す。うまし。
豚肉もスーパーとは言え高値の高級品。
最高品質の黒豚である。

そりゃ食うペースも速くなる。
一心不乱に肉にかぶりつく。
そして喜悦の表情を浮かべながら感動の嵐。

「こりゃうめぇ!」

周防が叫ぶ。タツヲが笑う。高崎食べる。みさおは食う飲む遊ぶの大乱調。

あっさりはまぐりペロッと2kgの豚肉を平らげて、いよいよ「和牛プレミアム肉」を投入する。
きめ細かく、肉と脂の色が美しい和牛のプレミアム。
肉の宝石流れる銀河。まさに芸術品と言っていい。
まだまだ、このグール達の腹は朽ちることなしこの上無し。

藤井は皿に盛られた肉を調理トングで挟んで一回二回とくるっと回す。

「さぁ、入れるぜぇプレミアム肉をばよぉってばよぉヨーヨー剣玉」

たっぷり勿体をつけて、鍋に投入。
う〜〜ん、肉の煮える匂いも上品な趣がある。

続いて肉を入れ続ける藤井。
この瞬間こそがホスト役の至極の誉れ。

─だが

4人の眼は既に獲物を狙う野獣の眼である。
いわばゲリラで武将に取り憑き武功を稼ぐ一匹の戦士。

お互いを牽制しながら出方を見ている。

高崎はまず外堀から埋めていく「野菜総取スプリット」
みさおは肉だけに焦点を定める「直取りクリスタル」
タツヲは手前の肉と野菜を入れ替える「肉返しサイクロン」

周防は…
具材に関係なく適当に手元にあるものを全部放り込んで食う「クロス・クロ肉ル」だ。


高崎の箸が掴んだ肉と、みさおの掴んだ肉がバッティングする。

「おや、みさおさん。この肉は俺が先に掴んだものですよ。他をお取り下さい」

にこっと笑って高崎は言うが、みさおも笑って肉を掴んで離さない。

「おほほほ。何をおっしゃってやがるのかしら高崎さん?肉を掴んだのは同時だし、ここはレディファーストが紳士の嗜みじゃなくって?」

酔っぱらいながらも平静さを保つ、みさおだがいよいよ化けの皮が剥がれてきた.
箸を持つ手を震わせながら、早くも両雄が激突必死、玄武と白虎。

目覚め始めている情熱が導く結末は運命さえも貫いていく。

みさおの笑顔の横に青筋が浮き上がってきている。
それは高崎も同様だった。

一方が引っ張れば一方がまた引っ張る。
そうしているうちに、漁父の利と言わんばかりにタツヲと周防が肉を食う。

目を糸にして笑いながらも、みさおの声は堅い。

「うふふふ。高崎さんも意外とせこいのねぇ。たかが肉ごときでこんな意地はっちゃってさ」

「ははは。それはそのままお返ししますよ。そもそも肉より魚を食べたほうが体に良い年頃なのでは?」

これに、みさおはぶちんと切れる。

「言うわね、言ってくれちゃうわね。切り干し大根みたいな顔して言ってくれちゃったわね」

「織田のパラジクロロベンゼンとまで言われているオイラになんてことを;」

藤井はそれを見てあわてて止めに入る。

「ちょ、ちょっと止めてよ、お二人さんかく又来て四角。、せっかくの鍋で喧嘩はだめヨン様冬ソナ、ペヨンジュンとかなんとか言っちゃったりなんかして」

みさおの耳に藤井の声は届いていない。
高崎があきらめて肉を離すと、みさおは親の敵とばかりに肉を割下につけて口にほうばる。
鍋の中の肉をあらん限りに掬い取り、自分の椀にわっせと持った。
どんだけ肉が好きやねん。

食べると鬼面の顔もほころんで相が変わる。
とろける食感、溢れ出す肉の甘み。
本当に美味しいものを食べてる時は、人は皆菩薩になると言う。

しかし、すぐに新たな獲物を求めて鬼の貌に戻ってしまう。
高崎はその凄まじい形相を、後にこう語っている。


「ええ…。あの時のみさおさんは、まさにキレた時の新日本プロレスの永田裕志でしたね。肉を食う度に敬礼してましたからね。いやぁ思いだすだけでも恐ろしいです(笑)」
織田議会所属 高崎談

するとタツヲが周防を何やら止める仕草をしている。
周防が手に持っているのは、山盛りの残りの具材だった。

「やめろってツカさん!まだ入れなくていいんだよそれ」

「いいっていいって。大は小をかねるんだから煮ちゃえば同じよ」

「おおぃ!」

周防の手から鍋にあらんかぎりの具材が投げ込まれた。
肉は具材の下に埋もれて視界から消える。

「何さらしとんじゃぁ!わりゃあ!!!」

みさおのガゼルパンチが周防の顎にヒットした。

「がはっ!?」

虚をつかれた周防は庭先まで吹っ飛んで気を失った。
半ケツを出しながら仰向けにひっくり返っている。
ここで肉争奪戦は1人脱落。

残るは藤井を含めた3人。高崎はすでに飲む方にスライドさせたようだ。
が、肉をあきらめたわけではない。
タツヲはてんこ盛りの野菜をどけながら肉を探索している。

藤井は肉には手をつけず、うつむきながら様子をただ静かに見守っていた。

みさおが咆哮しながら肉を食う。
高崎はやけになって、鍋にビールをいれて「コクがでるんだ」としたり顔。
タツヲは、周防の悪戯の後始末をしながら、プレミアム肉をくべ続ける。

もちろん藤井はプレミアムを一切れも口にいれてはいない。
テーブルのビールはひっくり返り、野菜や総菜の残骸がそこらにちらばる。

みさお、高崎、タツヲはもう肉のことしか眼中になく、奇声をあげて肉を争奪している。
周防は以前、半ケツで庭にぶっ倒れている。

とびちる煮汁。耳をつんざく罵声と怒号。
ほとんど、みさおと高崎のものだったが、そんなことはどーでもよかった。

藤井は傍らにある一升瓶をそのまま飲んだ。
しらふじゃもうやってられない見てられない。
程よく酒がまわってきたとこバシッと顔に肉キレが飛んでくる。
みさおと高崎が奪い合いをして、肉が滑って飛んできたのだ。

藤井はぶるぶる震えながら、この阿鼻叫喚の無限地獄を見ていたが、さすがにキレた。

「いー加減にしろてめぇらーー!!!」

藤井は高崎の後頭部にケリを見舞って、みさおの頭に拳骨をくれた。
タツヲは無言で肉を探して鍋をかき回している。

「人が下手に出てりゃあいい気になりやがって。おめーら見たいな悪(わる)は茶碗か皿かっくらいに覚悟しなって支那と韓国紙一重」


高崎とみさおが頭を抑えながら、ニカッと笑った。

「なにさらしとんじゃぁ禿げ…」

「やるっちゅうんかい、藤井の」

完全にバトルモードスタートである。

藤井は右手で来いよとばかりにクイックイッと合図をした。


「上等じゃあー!!!!」

高崎とみさおは藤井に同時に襲いかかった。
もう鍋どころではない。

肉をめぐってのバトルロイヤルだ。
絶対に負けられない戦いが始まった。

タツヲが顔をあげると3人が交差した火花が、美しい火花に見えた。


─数時間後

タツヲは深い眠りにおちていた。
周防は以前として気を失ったままだ。

藤井とみさおと高崎はというと…

殴り合って力尽きて3人ともにボロボロになって倒れていた。

高崎は空になった鍋に顔を突っ込んで気絶。

みさおは、襖をやぶって体を半身出しながらこれまた気絶。

藤井は血まみれになって、最後の一切れを食べようとして椀を持ったまま気絶。

壮絶な鍋の夜はこうして幕を閉じた。



一週間後の名古屋の茶店。

「藤井さん」

茶店で団子を齧っていた藤井に、みさおが声をかけてきた。

「やぁ」

「このあいだはごちそうさま。おいしかったぁあの肉。途中で記憶とんじゃったけどまた呼んでね」

「ああ、俺も途中からさっぱり記憶がねーんだけんども、にんともかんとも」

「なーんかあの後三日ぐらい体の節々が痛かったのよねぇ」

「俺なんかムチウチ・セイウチ・田子の月なんてもんじゃなかったよ。死にそうだった件」

「まぁでもやっぱり鍋は大勢でやったほうが楽しいよね。じゃっまたねえ」

去っていくみさおに手を振りながら、見上げる青空冬の空。

高崎はあれからばったりと菜食主義者になったそうな。あの夜のことは語りたがらない。
タツヲに聞くと、寝てしまった時に不思議な夢を見たらしい。
なんでもアンパンマンとラーメンマンとスーザンアントン子がバトルをしている夢だという。
周防は顎をくだかれていまだに入院中でしゃべることができなかった。

藤井の屋敷は半壊状態となって取壊しになっている。

様々な疵を残した「鍋の夜」で藤井は何を得たのだろう。
刹那に挑むあるがままに。

得ることよりも捨てることが今の世では難しいのかもしれない。
なーんて言っちゃたりなんかして。

【終】

テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

なんじゃかんじゃ【前半】





その日、藤井が瓦版を見ながら本日のクエストを物色していると、顔なじみの僧兵タツヲから声をかけられた。

「やぁ藤井さん。おひさしぶり」

「タツヲさん!まるで僧兵みたいな装備だね」

「いや、わたし僧兵だから。寺の和尚じゃないから」

「ああ、そうだった。タツヲさんは僧兵だった忘れてた」

そう云って嗤いながらごまかす藤井にタツヲはそっと耳打ちをした。

「藤井さん、よくないね」

「へっ?何が」

目をまるくして驚く藤井にタツヲは重ねて云う。

「よろしくないよ藤井さん」

「だから何がよ」

タツヲは意味深な目配せをしながら、辺りを見回して、近くの神社の境内に移動しようと云う。
藤井は大いに訝しんで、首を捻る。

はて?俺最近何かやったかな?と色々思い浮かべて見たが、上覧でちょっと騒いだくらいしか記憶がない。
大したことではないとは思うが、あれがまずかったのかしらと頭を掻いた。


境内には人気がなくタツヲと藤井の二人きりだった。

「そういえば、甲府の神社って懐かしいなあ」

藤井がそう云うと、タツヲも遠い目をして頷く。

「ああ、そう言えば2chの晒しで一時期、藤井さん晒されてたねえ。あのAA」

「あれさぁ、どうせ身内の仕業だろうけど結構長くネタにされててまいったよ」

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                          ゙i`    ,:;'' i; ヾi′
藤井駿河守 男祭り開催                |    '"  ;:  ゙|   
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甲府神社22:00にて                  |       ;;! ,!
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                       ,;-‐'′     ゙i i  i
                         /        ,!,!  ,!、
                     /        _,,ノノ   ; ヽ、
                      ,/       ,;-‐''′`ヽ、    ゙;、
                    i'  /_,,;-‐''′     ゙:、    ゙i
                    i   `i           ゙:、   ;゙ヽ、

「これでしょ」

タツヲが貼付けたAAを見ながら藤井は「それそれ」と頷いた。
PRIDE 男祭り2006のネタだ。
あれからずいぶんと時は経ってしまった。
それに反比例して息子のほうは勃ちが悪くなった。
歳は取りたくないものだと藤井は自嘲ぎみに嗤う。

「で、いったい何なのタツヲさん。よくないってさ」

藤井は話題を戻してちょっと真剣な顔をした。

「噂がたってる」

「噂?もしかして俺??」

「うむ」

「ちょっ、最近は大人しくしてるし目だたないように過ごしてるよ俺は」

「それがさ…実は藤井さんは織田の間者じゃないかって噂が流れてるのさ」

「は?織田に大麻なんて売ってなかったと思うけど…」

「ガンジャじゃないよ。それ大麻じゃん。か・ん・じ・ゃ。スパイの容疑が藤井さんにかけられてるのさ」

「スパイ?俺が?」

「うん」


藤井にはまったく身に覚えのないことだった。
元は武田にいて織田に流れたわけだが、武田のキャラも残して複垢を使用している。
だが間者なんてやるほど両国に対しての思入れはないし、初期の今川だったらいざ知らず織田の間者なんてだるくてやる間もない。

「なんでそんな噂が?」

「国政会議でさぁ、藤井さんらしき捨てキャラがここ最近、会議の内容をずっと傍聴しているのよ」

「だからってなんで俺www」

「そのキャラが出没し初めてから武田の旗色が悪くなってきたからだと思う。ほら、七垢だと献策も有利だし」

「俺、別に武田に恨みはないし。それに捨てキャラ使うときはセクハラ専用だよ!」

「そのキャラクターの名前がさぁ、アルミン藤井なんだよね」

「罠すぎるwwww俺じゃないw」

藤井はバカバカしいとい言わんばかりに笑い飛ばしたが、タツヲは笑わなかった。

「だからよくないのさ。藤井さんだってあらぬ疑いをかけられるとか気分悪いっしょ」

「よくはないけど…そもそも間者って運営のルール上は何の問題もないんじゃない?むしろ戦国だから当たり前の戦略だと思うけど…」

「そうだけど…信はよくも悪くもヌルゲーだからねえ。PTAみたいにモラルとか倫理観念とか色々持ち出してきて騒ぎ立てる輩が多いのさ。わたしだって、あまり感心はしないもの」

「俺は間者大いに結構だと思うけどなぁ。間者報酬とかシステム的に設けてもいいんでないと思ってるぐらいだし」

藤井は納得がいかないように爪を噛んだ。
以前は気に入らないことがあると股間をもんでいたのだが、さすがに体裁がよくないのでやめるようになった。

「藤井さん個人の感情はともかく、早いとこ誤解を解いた方がいいね」

「そのアルミン藤井って何者なの?」

「レベル1で無装備の神主だね。会議用チャットでも終止無言でいつも隅っこで正座してるよ」

「その時点で俺のキャラじゃない件w俺適当なことべらべらしゃべるし」

「わたしは藤井さんと親しいからねえ。ああ、これは違うなと思ったけど他の人たちはねえ…」

「で、そのキャラが何かしら情報を織田に流してるとみんな思ってるわけ?」

「うん。藤井さんならやりかねないとか云う人も出てきてさ」

「ちょっwwwwwwwwwやめてよw」

「風評被害でメンタル弱らす藤井さんとは思わないけどさ、変な誤解を受けると色々行動しにくくなるでしょ。色々と」

「そりゃまぁ…。でもそれなら織田全体にクレームがいくんじゃない?」

「織田も近隣の敵対勢力と微妙な関係らしくてね。わざわざニキビを破裂させるような真似はしないでしょと、みさおさんが云っていたね」

「四面楚歌じゃないかwひでぇww(((( ;゚д゚)))アワワワワ」

「今度の会議に参加して身の潔白を訴えるのがいいね。そのとき、アルミン藤井ってPCがいれば糾弾もできるでしょ」

「適切な案だけど…それ自演乙!とか云われないかな」

「そう言えば…藤井さんは自演も得意だったとか、誰か云ってたな…」

「おまwwwwwwどうしようもないじゃん俺ww」


タツヲは少し思案にくれた。
どう転んでも藤井にかけられた嫌疑は払拭できないかもしれない。

しかし─

友人である藤井のピンチをこのまま見過ごすことはできなかった。
タツヲはキン肉マンの愛読者で友情パワーをこよなく愛していた。
義を見てせざるはスティーブン・セガール

「藤井さん、わたしも協力するよ。藤井さんは変態だけど間者をするような男じゃないってことを武田民にわかってもらうために尽力する」

「タツヲさん…。え?ちょっと待って。変態って俺のこと?」

「まぁ細かいことはいいのさ。とにかく力を合わせて誤解を解こう」

「う、うむ…」


こうして、藤井の間者の疑いを晴らすため二人は結束した。

ほどなくして、タツヲから明日、武田の会議があると連絡を受けた。

藤井は緊張に震えて天に向かって吠えた。

「いざゆかん!戦国のキャンタマリーナ!!」

しかも意味不明だった。

作戦はこうだ。
まず、藤井の成りすましPCのアルミン藤井が会議に出ているところを確認する。
そして大方の人数が集まって会議が始まる時に藤井がチャットに入る。
そして無実だと公言しながらアルミン藤井というPCを吊るし上げて、冤罪を晴らす。
極めて単純な作戦だ。

藤井が国政専用会話チャットに加わって挨拶をすると、
賑わっていた、たわいのない雑談ログがぴたりと止まる。
重く融けた鉛のような緊張感が絡みつく。

藤井は胃がキリキリと締めつけられる感覚を覚えた。
見かけとは裏腹に意外にナイーブな男なのである。

藤井は何ともいえない座りが悪い居心地の悪さに毒づいた。

うんこ!(糞〜っと同義語)偽物野郎め。
奴のおかげで俺の沽券は地に堕ちてしまった。
こうなったら、とことこん奴を糾弾して身の潔白を白日のもとに晒すしかない。
間者はとにかく忌み嫌われる。
これは、信オンの一般プレイヤーがゲーム内に律する暗黙のルールをリアル社会さながらに遵守しようとしているからだ。
システム上問題なくても、卑怯な手を使うのは御法度。
それはやはり信オンに高齢のプレイヤーが多く存在することを意味する。
辻斬りPK、レスキル、粉投げの装備破壊、死人返り等々、ハラスメントぎりぎりのプレイをおこなう者は皆一様に晒された。また晒される覚悟なくしてそういった行為を行う者はいない。

ディアブロなどは、パーティになったメンバーに後からばっさり斬られて身ぐるみ剥がされるなど日常茶飯事である。海外のプレイヤーはゲームに関してはある程度寛容なのかもしれない。
ある一部、キーボードクラッシャーや、リネージュなどでリアルバトルを起こし殺人を犯すものもいるが。


藤井は、ため息をつきながら城に到着した。
既に100名以上の武田民が集まって正座をしている。
見ると議長や役員の陣取っている場所に、タツヲがいる。

タツヲが会議が始まる前に藤井の話を聞いてくれと頼み、
そこで藤井が申し開きをして身の潔白を訴えるという段取りだった。

先ほどタツヲから対話で、アルミン藤井が出席していることは確認している。

藤井が会議に姿を見せると、何やらざわつきが起こる。

「藤井さんだ…」

「あれが藤井の本体か」

「藤井さんてホモ?」

「藤井ボンバイエ!藤井ボンバイエ!」

「あれガチでヤクザだって噂だぞ。後藤組の鉄砲玉やってたらし」

「なんだ弱そうだな。俺のがつええよ」

「(((((((( ;゚Д゚)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガク」


ヒソヒソ話のように見えるが、実際にはチャットなので普通の会話と変わらなかった。

適当なことばっか云ってやがるし

藤井は一瞬、頭に火がついたように顔を真っ赤にしかけたが、それに気づいたタツヲが目配せをしてなだめる。


「えー、本日はお忙しいなか集まって頂きありがとうございます」

議長が大声で会釈をしながら挨拶をした。

「本日は会議の前に最近話題の間者について、僧兵タツヲ殿より皆様にお話があるそうです」

ざわつきが一層激しくなった。

「あの間者の名前を言ってみろやぁ」

「スパイをするような人には幻滅です幻滅ぅ〜」

「間者?ばっかじゃねえの。間諜だっつの」

「いやそれ意味同じだから」

「どうでもいいわ。間者なんざ大して影響ねえし」

「間者やられたんでパチンコ負けたんすけど。請求できますか?」

「間者だよ!ペペロンチンコ!」




「お静かに!お静かにぃ〜〜〜〜〜〜!!」

副議長の歌舞伎があらん限りの大声で制しながら見栄をきる。

「勘定奉行!!」

「なかむらや!!」と合いの手が飛んで、とりあえず場を落ち着かせた。

「えーーーー…あー…」

議長が会場の妙なテンションにあてられて、言葉がなかなかでてこない。

それを見かねてタツヲが前に進み出て、ぺこりと頭を下げる。

「えっと…武田の皆様お疲れさまです。お見知りの方もいらっしゃるとは重いますが、わたしは龍尾凶助(りゅうびきょうすけ)と申します。タツヲと呼ばれていますが正式名称ではありません」

軽い驚きの声が出るが気にしないでタツヲは続けた。

「このたび、武田家に蔓延している不穏な空気と、わたしの友人でもある藤井駿河守氏のあらぬ嫌疑を払拭すべく、僭越ながらこの場をお借りしてお話させていただきたいと思います」


藤井は堂々としたタツヲを見ながら感心した。

やるなぁタツヲさん。ところでタツヲじゃなかったら、あれは「りゅうび」って読むのかぁ。
凶助さんとか呼ばれてるのも見たことないし、やっぱりタツヲさんはタツヲさんだなあ。

そんなどーでもいいことを考えつつ、例の偽物、アルミン藤井をの姿を探した。

すると、左側の植木の中に埋もれながら正座をしているレベル1のPCがいる。

アルミン藤井

頭の上のネームにはそう表示されていた。

いやがった!!

藤井は、はやる気持ちを抑えてタツヲからの合図を待つ。

このファッキン野郎!ぜってぇ化けの皮を剥がしてチンコの皮も剥いてやる。
ぐらぐらと煮えたぎる怒りを鎮めながらタツヲを見据える。


「皆様も既にご存知のとおり、ここ最近の戦で我が武田家は非常に苦戦を強いられています。
多鯖の武田民に、真紅の武田の力が衰えているなどと好き勝手に云われ、毀誉褒貶の憂いに心を痛めている方も多いでしょう」

タツヲの雄弁な語り口に、ある者は頷き、またある者は拳を握りしめながら落涙していた。
真紅武田の騎馬軍団は史上最強と皆信じていた。
それがここ最近はやられっぱなしである。
負け戦はアルミン藤井が現れた時期と見事にシンクロしているので、合戦好きなPCが訝しむのも当然のことであった。

「皆さん!ここで、その藤井駿河氏に己の真実を語ってもらいます。今は敵国とは言え、一時期は武田に籍を起き友に闘った戦友でもある藤井氏は、浣腸はしても間諜などのスパイ行為を行うようなせこい真似をする男ではありません!」

会場の民はざわつきながら、一番後ろの藤井を一斉に見た。
藤井は突き刺すような視線に軽い興奮を覚えていた。
ジロジロ見られるのは嫌いだ。しかしこれは…。

見られているのは俺の魂だ。俺は魂で身の潔白を証明しなければならない。
清廉な”大人のプレイヤー"を演出することこそが肝心だ。

藤井は背筋を伸ばして、天に向かって人差し指を挙げると
あらん限りの大音声を張り上げた。

「我、蒼天に誓う!」

聴いている民の顔は皆食い入るように藤井を見つめている。

藤井は続けた。

「僕は浣腸はやってない!」

狭い城内の敷地に響き渡る藤井の声。

あっ!と思った時はもう遅い。

「間諜」と「浣腸」を間違えた藤井の言葉を信じるものはその場には誰もいなかった。
間者と言えば問題はなかったのに、何故に間諜という言葉を使ったのか。

それは最近、おつうじがよくなかったせいである。
便秘気味の藤井は、不動かずはからイチジク浣腸をもらって開通させるつもりだったのだが、
かずはは急にボルネオに旅立つことになり、イチジク浣腸をもらうことができなかった。
それ故の言い間違いである。

どうする、どうなる藤井の運命。
このままでは、浣腸野郎とレッテルを貼られて生きていくことになる。
鯖統合も目前で不遜な疑いをかけられたまま終わるわけにはいかない。

藤井は砂を噛むように奥歯をギリギリ言わせて震えている。
味方はいない。タツヲでさえももうあきらめている。
友人のみさおも高崎も今日はインはしていない。
みさおは縁故の女子会で「カツオの乱れ食いパーティ」に参加している。
高崎は広島カープファンの集いにて、カープ女子とよろしくうひひな状態だ。

武田民が一人二人と、藤井をなじり始めた。
そしてそれは、次第に大きな輪となって罵声と怒号の渦になる。

「落ち着いて!皆さん!落ち着いてください」

「うるせー間者は死ね!師ねじゃなくて死ね!!」

「藤井さんには憧れていたのになんだか幻滅です」

「 (( ;゚Д゚))ブルブル; (((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル; (((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル ... 」

「顔文字うぜぇぇwwwwwwwwwww」



口々に藤井に向けられる刃物のような譏り。
藤井はそれらを真っ正面から浴びている。

藤井は何かを悟ったように感情を殺した。

「(゚c_゚;)」

何を言われてもびくともしない念能力「キコ・エ・ナーイ」の発動である。
それとともに、すっと息を吐くと気配を断った。そこにいるのに誰もその存在を認識できない。

藤井の必殺スキル「ミスディレクション・オーバーフロー」である。

藤井は掻き消えたようにその場から姿を消した。
正確には、その存在を誰も認識できなくなったが正解だが。



もちろん

問題は、まったく解決していないのは言うまでもない。


【後半に続く】


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ジャンル : オンラインゲーム

一生懸命な藤井さん


中国アニメもなかなかです。


鈍臭い奴は何をやっても鈍臭い。
自分がそうだった。
不器用ですから。健さんが云えばカッコいいのだが、凡人のおっさんが云ってもだせぇだけ。
何をやっても広く浅くそこそこにこなせる人がいる。
いわゆる器用な人。
不器用な人は器用な人に追いつくために努力を有する。
しかし不器用な人が器用な人を上回る場合も少なくない。

免許を取るために何回も試験に落ちる人がいる。
適正がなく泣きながら何回も受ける人がいた。
8回目ぐらいで受かって嬉し泣きをしていたが、えてして下手糞な人ほど大事故は起こさない。
自分が下手なこと知っているからである。だから無茶をしない。
下手なのに巧いと勘違いしている人は例外である。それは運転をしてはいけないレベル。
教習所の教官が合格の時に云っていた。
「運転はうまくなくていい。安全に自己を起こさず基本をしっかり守れば下手でも優良ドライバーだよと云っていた。運転がいくらうまかろうが事故を起こしたり違反を繰り返したりする人は、運転する以前に迷惑だ」
なるほど至言だよおっさん。

不器用な人は、愚直に基本を反復練習しなければならない。
器用な人はどんどん新たなスキルを習得して先に進んでいく。
だが、よほどの天才でもない限り必ず壁にぶち当たる。
習得したスキルを更に高みにレベルアップさせるために、
今まで持っていた固定観念を捨てて一から学び直すこともあるのだ。

ここで壁を乗り越えずに、まぁいいやで終わる人がほとんどだ。
それは生涯これで飯を食おうと思ってはいないからだ。
資質や素質だけなら、現在、様々な分野で活躍している人たちよりもあった人は無数にいるはずだ。
しかし、途中であきらめたり目指す目標が違っていたり、そもそも興味がなかったり。

誰でも幼き頃は夢を見る。
そして夢破れて妥協点を見つけるか、新しい目標に設定をすり替えていく。
ミランの本田のように小学生時代に描いた夢を実現できる人はどれだけいるだろう。
己を信じてそれを成すことができる精神力は素晴らしい。
しかし多くの人間は、現実を己を計るのが賢く早い。
人間は愚かに素直に真っすぐに信じることこそが、夢に近づく第一歩かもしれない。
自分を信じられない人が、他人から信じてもらうことはできないだろう。
不器用な人は絶えず努力する。そしていつしか自分だけの技を会得する。器用貧乏にならなくていい。
ただひとつ己の誇れる「武器」を持てばいいのだ。

若い頃、知人のイラストレータの誘いで極真空手を始めた。
当時の城西支部は、日本ランカーや全日本優勝の指導者がいて、その人たちに指導を賜ったことがある。
ある黒帯の指導員が云っていた。
「実は自分、腕立て十回もできなかったんスよ」
稽古が終わった後の飲み会で照れくさそうに云っていたのを思いだす。
結局、武道は日々の弛まぬ鍛錬だという。
今日は10できなくても明日は…との執念にも似た思いで必死に鍛える。
そうすると体もそれに応えてくれる。いつのまにか50回も楽勝にできるようになっていたという。
一生懸命やるということは、そういうことなのかもしれない。


自分はネットゲームでも、色んなことを教わった。
ネットゲームをやっていなければ知り得なかったこと、興味も持たなかったことを教えられた。
ボスクエストで普通に寝落ちする人がいることも知った。
セックスしながらネトゲしている人がいることも知った。
↓「入れてます」とその知人からチャットが来たときはアクエリアス吹いた。

仕事もネットゲームも一生懸命やる人はできる人だ。
デキール星人と人は呼ぶ。(呼びません)

こんなゲームに一生懸命になってどうすんの?
とか負け戦のときは負け惜しみを云ってたり、負けはじめると楽しくやろうぜとかお茶を濁してみたりした。
悔しいからである。ニコニコ笑っていても負けるのはすげぇ悔しい。
相手が強くても巧くても負けるのは悔しかった。

それが慣れてくると、もうあきらめてどうでもよくなってくる。

所詮ゲームだろが、馬鹿じゃね?

そう思うようになってくる。
初期に負け戦が続き、声をあげて徒党を叱咤する人を見て「うるせーな、なら自分でやれや」と徒党内で云ったら、党員に「彼は彼ができることをやっているんだよ」と諌められた。

あの頃はそう云われて何かしら反駁したと思う。
しかし離れた今思うと確かにそうだ。できることを彼は懸命にやっていた。
そしてそれをきちんと見て評価していた人たちもいたのである。

先頃、その人が云っていた印象に残った言葉を偶然にスマホアプリの漫画で見つける。

「人の一生懸命を嗤(わら)っちゃいかん」

この言葉に何も言い返せなかった自分がいる。
いい歳をした大人がぐうの音もでなかった。
正論中の正論で悔しいが、矮小で情けない性根を叩き斬られた。
悔しいけど降参するしかない。

月日は流れて色々思いだすが、ネトゲで得たものは多い。
鈍臭いプレイヤーだった俺が、こうしてブログを未だに更新しているのも信オンのおかげである。
ブログを通じて得た友人もいるし、何よりこれを更新することによって、あの頃を思いだしてくれるプレイヤーも少しはいるかもしれない。


で、藤井さんなわけだが、彼は人の一生懸命を嗤わない。
でも俺の軍学侍の一生懸命は嗤う。

「凸さん、シーンですwwwww」←一匹もヘイトを稼げない・釣れない

そうしてわたしは、藤井さんにこのAAを投げつける。

hmhgfdhsgen


さて今度は、五反田で夜も一生懸命といきたいところですね藤井さん。

じゃ今週もよろしゅう。

テーマ : オンラインゲーム
ジャンル : オンラインゲーム

プロフィール

凸

Author:凸
カテゴリー:おっさん
生息地:都内在住
生業:印刷・ウェブ制作全般
血液型:B

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