いやぁ…。
実は書いては下書き書いては下書きで、下書きだけで結局アップせず。
リアルの近況をながーく書いたんだが、他人にとっちゃど−でもいいことなのでアップせず。
やはり妄想駄文が気楽でいい。
さて…ひさびさに書いてみるか。
江戸時代に鎌倉河岸(現千代田区内神田)にできた酒屋がありーの。
この豊島屋が現代の居酒屋の原型だってこたぁ皆様周知の事実である。
ででーん。
しかしすでに戦国時代には恐るべき居酒屋が存在していたのだぁっ(エコー)
戦国居酒屋伝 【居酒屋ふぇいVer.】】甲斐と武蔵を隔てる関所の近くに呑み処があった。
といってもこの時代には、まだ居酒屋なんつー洒落たもんはねーんだよこれが。
辻売りとかいう屋台の類いもあったかどうかもわからない。
しかし、精緻な時代考証なんざ己の独創力と創造性を我侭に吹っ飛ばして、柔軟に楽しむのが粋ってぇもんだよ藤井さん。
とにかく、そんな呑み処があったと思いねえ寿司ぃ喰いねえ。
赤提灯が灯り、ヨシズで囲った掘建て小屋のようだが、暖簾をあげて入ると土むくれの匂いのする土間を中心に中はそこそこ広い。
そこには百姓や町人やら身崩れた浪人までもが毎晩集ってきている。
思い思いに一日の疲れを癒し英気を養う人々の顔がそこにはあった。
「しかしあれだにゃ。こう戦ばかりだとアキヤマンも大変だにゃん」
銚子をすでに2本転がしながら、タッチャマソは言う。これは方言である猫弁ではない。
明らかに某かのアニメの影響である。
アキヤマンと呼ばれた恰幅のいい侍が床机を対峙して手酌で呑んでいる。
「這いよるニャル子さんか…。俺も観てる。ま、それはともかく戦はええのう。男を磨ける。仲間もできるぜよ」
「しっかしそんな旧装備で大丈夫かにゃ?イーノック」
「大丈夫だ。問題にゃい」
そんな戦人達の声があちこちから聞こえて来る。
まさに世は大戦国じだ〜い。未知なる逸材を求めて探求するじだぁ〜い。
喧騒五月蝿くがやがやとした店内で、ひときわ甲高い怒鳴り声を張上げている女がいた。
ふぇいふぇいと呼ばれるこの呑み屋の女将である。
あだなはF様だが、最近は姐さんのが定着している。
ちなみにFカップではないらしい。
居酒屋を始める前は、戦場の骸から刀や鎧を剥ぎ取って生計を立てていた。
いわゆる追いはぎだ。しかしこの時代にはめずらしくもないことで、戦があるたびに転がして蓄財を増やす輩もいたほどである。
ふぇいはしばらくして器量もあったのか、そこらのならずものをまとめあげて、郎党を作った。
しかし、ならずものでも人を襲って食べてく山賊は嫌だった。生業を持たねばならないなら食物屋でも始めるかと開いたのが今の店だ。
最初は土民の百姓やら風体の怪しい町人やらが出入りしていたが、ふぇいの強面が効いているようで不思議と諍いは少なかった。
ふぇいは声を張り上げて、指示をする。
「凸子ぉ〜!こっち3番テーブルにビールと刺身盛り合わせだよ!林檎は5番を早く片しな!」
「はいはい〜」
「へ〜〜い」
自称Fカップの胸をたゆんたゆんゆらしながら、盆を運ぶ凸子と呼ばれる娘。
戦火で親も無くし、途方に暮れて関所まで来たところ、山賊に襲われなぶりものにされるすんでのところで、ふぇいに助けられたのだ。以来行く当ても無い凸子は住み込みで雇われ女給をするようになった。
今ではすっかり看板娘である。
「お〜いい!!こっちまだ焼鳥がきてねぇぞ〜」
「はいはい、すみませぇん〜!」
「凸子ちゃん、こっちは酒を熱燗で2合!」
「はいはい、お待ちを〜」
息をつく暇もない大繁盛だ。近くにこのような酒を呑ませ食物を出す煮物屋がないせいもあるが、
界隈でも値段は安く酒も肴も美味いと評判になっていた。
従業員はあと一人、林檎という若い衆が一人。あとは厨房で料理を作る藤井という中年がいた。
繁盛はしてはいるが、当然綺麗な飲み方をする客ばかりではない。
時にはどこかの連れ込み茶屋と勘違いをして、女の尻をなでるどころか強引に二階へ引っ張っていき、無理矢理手込めにしようとする輩もいた。
そんな時は男衆の出番である。
用心棒も兼任する林檎という若い衆は、頬に一文字の疵をもち優男ながら怖い性を持っている。
ふぇいのところでやっかいになる前は佐渡金山にいたという。素性は多くは語らないが、ひょんな縁からふぇいのところで世話になっていた。
板前の藤井も、これまた若い時分には大きな賭場の代貸しだった。れっきとしたヤクザもので骨がらみの悪党でもあった。人をいわしたのも、片手じゃ足りないぐらいである。
それが年下の女房を亡くしてからは、人が変わったように凶暴性はなりをひそめ、呑んだくれてぼろ雑巾のように酒場をうろついていたところをふぇいに拾われたという。
もともと釣りが好きで肴を捌いたり調理をしたりは得意だった。
ふぇいはそんな藤井の器量を見込んで調理場にたたせると、これが意外にしっかり仕事をする。
包丁を扱う筋もいい。たちまち、あそこの店は美味い酒と肴を出すからと口コミで広がるには時がかからなかった。
夜も更けそこそこ客足も収まってきた。ようやく一息つける状態になったのをいいことに、林檎は3人で呑んでいる娘の席へ顔を出す。
「よぅよぅ、姉さんがた。こんな美人が揃いもそろって女だけで呑んでるなんてさみしいじゃねえか。哀しいぜ。今度おいらも寄せてくれよぅ」
蓮っ葉な物言いがこれほど似合う衆もそうはいない。いやらしさがなく粋に見えるが、これを他の男がやったら間違いなく肘鉄ものだ。
娘の一人がきゃははと笑った。ころころと箸が転んでも笑う年頃の娘の唇には、女になる一歩手前の淡い色気が溜まっている。
「林檎兄さんそんなことをほうぼうでいい散らかしてるんでしょう?」ともう一人の娘は品をつくって聞き返す。
「とんでもねぇよ!おいらは惚れたら一途さ真剣さ。もっとも、あんたがたのような美人相手じゃ権現様に誓ったご誓約も尖閣諸島までぶっとんじまうがな」
「いやだぁ。うまいことばっか言っちゃってー」
若い娘の輪に入り仕事もそっちのけで談笑してはいるが、これもまた営業の一貫だ。ふぇいも林檎のけじめのつけ方は尊重していたし、あきれ顔で見ているも、女にも安心できる対応をするのは少なからず店にとってはプラスになっていた。女衆だって浮世を忘れて楽しみたいのである。
「さて、そろそろかねえ。凸子、表の提灯しまっておくれ」
「はぁい、姉さん」
はしゃいでいた娘達も、林檎に促され勘定を済ませて帰っていった。
残っている客はもう一人だけである。
しかし、その客は看板だというのに微動だにせずゆっくりと銚子を傾けている。
飲む速度が異様に遅い。ちびりちびりと舐めるような貧乏酒である。
風体は煤被りのほっかむりをして小柄な老人のように見える。
「ばぁ〜か!この貧乏人!!」
ふぇいがいきなりその客の首ねっこを掴んでひきずり倒した。
地べたに這いつくばって転げながらも、器用に体を丸めて奥の机台に体を預けた。
ほっかむりが取れて顔がめくれる。
「あっ!!」
と声がでるほど仰天した凸子と林檎。
まぁ髪は茶色で目は緋色。亜麻色の髪を後ろで縛って16〜18ぐらいの見目麗しき娘の姿がそこにある。
羽織も薄汚れていたから風体はよくわからなかったが、すっと立つと凛とした気品が備わっている。
「ふぇい姉さん、相変わらず乱暴だね」
娘は髪をかきあげながらふぇいに向かって微笑んだ。
にっこり笑った小さな口元が何とも愛らしい。
林檎は一目でぼぅっとなった。
「あ、姐さん!!この娘っ子と知り合いで?」
「…妹だよ。腹違いのね」
「い、妹ォ!?」
「富江…。何しにきたんだい…」
「あら。妹が姉のところに遊びに来ちゃいけないの?」
富江と呼ばれたこの娘はくすくす笑いながら、ふぇいに近づいた。
「ふん、襤褸に化けたってあたしは最初っから気づいていたよ。ろくなもんじゃない」
「つれないわねえ。2年ぶりに会ったって言うのにぃ。ああ、そうそう。お父様が帰ってきて見合いするなら勘当解いてもいいっていってたわよ」
「おきやがれ!誰があんな腐っていじけた家になんざ戻るもんかい」
「お母様も心配なさっていたわよ」
「はんっ!あんな欲の皮がつっぱった目ギツネに心配されるほど堕ちてやしないよ」
「全然変わらないわねえ姉さんは」
林檎と凸子が成り行きを見守っていると、火を落として仕事をしまった藤井が板場から出て来た。
「姉さん、今日のところはもう遅いんで…。そろそろ終いましょうや」
「…そうだね。こんなとこで犬のように吼えてても仕方ない」
富江は藤井の前にすすっと進み出て、じろじろと舐めるように顔を見た。
「あなたが噂の藤井さんね?」
「へい。藤井駿河守と申しやす。以後お見知りおきを」
×が悪そうに照れる藤井に対して、富江は慇懃に返礼したが、心なさそうな言葉は凸子や林檎にも伝わった。
「ところで…藤井さん。あなた…前に合戦である人を狩らなかった?」
「ぬくぅ…。さぁて覚えがありすぎやして…。木曽川以降はほとんど覚えてないんでやんす」
「白い馬に乗った武士道…」
「はっ!!」
藤井が伏せた目をあげた瞬間に、するどい匕首が脇腹にブスリと突き刺さった。
「きゃぁああ!!」
「うぉっ!!」
林檎と凸子は同時に悲鳴をあげ、ふぇいは素早く富江を藤井から引きはがした。
「ぐぅうううぅぅ……」
脇腹から流れ堕ちる大量の血を抑えながら、藤井は苦悶の呻き声をあげた。
「富江!あんた一体…」
「何がぐぅぅうううさ!私のアキヤマンをこいつは引退に追い込みやがったのさ。こいつは7垢でソロを延々と狩っていた。敵意もないソロをだよ。アキヤマンは兵站をやっていただけだった。それだけなのにこいつは…」
「いやそれ敵だし殺すのが当たり前じゃね?」とふぇい。
すると、富江は鬼の形相で言い返す。もとより恋する女に理屈なんざ通らない。
「関係ないわよ!20回も粘着して殺されりゃ、いかに無敵のアキヤマンだって精神が壊れるのは当たり前。夜の3割バッターだった彼は、それからすっかり私のミットへもなげれなくなってたのよっ!」
藤井は苦しそうに呻きながら、富江を見る。
「そうか…。お前さんがアキヤマンの…。だがあれは戦場のならい。許せとは言わねえ。でも…」
駆け寄って介抱しようとするふぇいを振り切って、藤井は富江に近づいて行く。
額には細かい汗が大量に浮き、顔色は青い。
「へっ…。やっぱ女はこえぇや。アキヤマンは復帰しただろうに。なんで今さら…」
「彼はもう以前の彼じゃない…。あんたにケツの毛までむしられてから、すっかりナディアにはまってしまって私のほうを見てくれなくなった。全部あんたのせいよ!あたしのアキヤマンをかえして!かえしてよっ!」
「へ…へ…。NHKも罪つくりなことを…しやがる…ぜ」
そう言って藤井はばたりと倒れた。
「ふじいーーーーーーー!!!!!」
ふぇいの大音響のような悲鳴が、五月の夜気に染み込んで行く。
一時の静寂が訪れた。それは刹那だったのかそれとも長い刻のようにも思えた。
その静寂を切り裂いて暖簾をくぐってきた男がいた。
「ごめんよー。藤井さんいるかい?」
男は倒れている藤井を見ると一瞬ひるんだが、にやにやしながら藤井の骸に近づいて来た。
「よいよ。藤井さんよぉ。寝転がってる場合じゃねえぜ」
ふぇいはもちろん、富江、凸子、林檎はこのいきなりの乱入者の行動にポカーンと動けずにいた。
「藤井さん、男祭りが始まるぜ!」
絶命したと思っていた藤井の口元がかすかに動いた。
ふぇい達は戦慄した。まさか…。
藤井は男を見ながらにこりと笑って
「それ飽きた」そう一言だけ言って今度こそ絶命した。
これが、有名なアキヤマン知床慕情殺人事件である。
知床は関係ねーだろとみなさんお思いでしょう。
そうだよ関係ねーんだよ。いい名前が思い浮かばなかったんだ。
というわけで、 居酒屋はほんとに地獄だぜぇ。ふはーっはっはっはっはっはっ。
その後の【呑処 ふぇい】も変わらず繁盛したという。めでたしめでたし。
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